第21章
天における神のメシア王国の誕生
1 (イ)ヨハネの啓示の幻の中で,どんな女が初めて現われますか。(ロ)幻の中の彼女の出現は,どんな事態に引き続いて起こりますか。
パトモス島の使徒ヨハネに与えられた幻が進展するなかで,今度は「女」が初めて天に現われます。この秘義の人物は,地上のテアテラ会衆に関連して,先に啓示 2章20節で述べられた「かの女イゼベル」ではありません。これは是認された「女」です。誉れある結婚をしており,結婚のきずなを通して良い実を生み出そうとしています。彼女の実体に関する秘義は,使徒ヨハネがその女についてわたしたちに告げる事柄を基にして解くことができます。彼女について話す前に,ヨハネは第七の使いがラッパを吹き鳴らすのを聞きました。そして,「神の秘義」の終了したことが彼に示され,次いでヨハネは,全能の神エホバが天の神殿の聖所で統治しておられる証拠を見ました。その後,彼はこう告げています。「大きなしるしが天に見えた。それは太陽で身を装った女で,月がその足の下にあり,頭には十二の星の冠があって,彼女は妊娠していた。そして,苦痛と子を産むもだえのために叫ぶ」― 啓示 12:1,2。
2 (イ)妊娠した女の幻は,彼女がだれの妻であることを明らかにしていますか。(ロ)創造者は彼女の夫として,その女にどのように衣服,装飾品また導きを与えましたか。
2 この天的な「女」の実体を明らかにする助けとなる名前は,彼女に与えられていません。それはシオンと呼ばれてはいません。啓示 14章1-4節によると,シオンとは山の名で,その上に神の子羊が14万4,000人の忠実な追随者,つまり,彼の名と彼の父の名を額に書かれた者たちと立っているのが見られます。彼女はエルサレムとも新しいエルサレムとも呼ばれていません。それは,それら14万4,000人の追随者から成る,子羊の妻の名なのです。(啓示 21:2,9-14)しかし,この「女」の産む子を受け取るかたは,そうすることにより,自分がその夫であり,彼女が自分の妻であることを明らかにされます。そのかたは,彼女が自分の装いとしている象徴的な太陽,また,その足の下にある象徴的な月,そして頭の冠にしている十二の象徴的な星を創造されたかたです。夫は妻に衣服や装飾品,また,導きを与える責任がありますが,同様に創造者も,自分の「女」のために天の霊的な光を備えられました。彼女がそれを装い,日中はそれにより輝き,夜はそれによって歩み,それを冠として自分を美しくするためでした。
3 女が自分の冠にしている十二の星は何を表わしていますか。
3 星は夜輝きます。その女が自分の冠としている星の数が十二であったことは,この光が組織の光であることを示しています。十二という数は,組織の完全さ,また政府の完整さの象徴だからです。この意味は,霊的イスラエルが十二部族,さらに子羊の使徒が十二人であるという点にはっきり見られます。また,聖なる都市,新しいエルサレムには,四方に各三つ,合計十二の門があり,その都市は使徒の名の記された十二の土台の上に築かれています。(啓示 7:4-8; 21:12-14,19-21)地上にいる霊的イスラエルの「十二部族」の場合と同様,この天的な「女」にも組織の光があります。―ヤコブ 1:1。
4 (イ)女は何の「しるし」ですか。(ロ)エホバが「妻」を持っておられることを示すどんな預言が外にありますか。イエスがその預言を適用されたことは何を明らかにしていますか。
4 天のこの女は「しるし」となる女,つまり何かに関する「大きなしるし」また象徴です。何に関してですか。創造者の「女」つまり「妻」という意味での,啓発を受けた,創造者の天的組織に関する象徴です。神がそのような組織の「妻」を持たれるという考えは,別に新しいことではありません。なぜなら,使徒ヨハネに啓示が与えられた時より八世紀以上も前,預言者イザヤは女にも似た都市に向かって,霊感の下にこう記しているからです。「なんぢを造り給へる者はなんぢの夫なり その名は万軍のエホバ……又なんぢの子輩はみなエホバに教をうけ なんぢの子輩のやすきは大ならん」。(イザヤ 54:5,6,13)イエス・キリストご自身もこの言葉を引用され,ご自分の忠実な追随者たちに当てはめました。(ヨハネ 6:44,45)こうして,エホバ神の天的「女」が子つまり息子たちを持つことが示されたのです。忠実で聖なる天の使いたちが,その「しるし」の女を構成する成員たちです。
5 (イ)天の女が出産の痛みのために叫んだということは何を表わしていますか。(ロ)この天における出産は,天に住んでいる者たちにとってどんな意味を持ちますか。
5 エホバの「女」に不妊であるとの恥辱は当たりません。使徒ヨハネは,『彼女が妊娠していた』のを見ました。しかし,彼女が「苦痛と子を産むもだえのために叫ぶ」,と彼が述べているのはどういう意味ですか。(啓示 12:1,2)この組織の「女」は,自分が子を産む時が近いことを知っていました。苦痛ともだえがすでに自分に臨んでいたからです。人間は誕生の時を大抵前もって知ることができます。それは懐妊の時から九か月あるいは四十週だからです。同じく,神の天的な,女のような組織も,差し迫った出産のおおよその時を知っていました。天の敵たちでさえ,やはりその時を知っていたのです。天における誕生は,神の聖なる使いすべてにとって,また,独り子イエス・キリストにとってさえ,新しい事物の体制の始まりを意味しました。これは明らかに,天的な事物の管理に多大の変化を,また,天的な事物に関する組織の全般的な変革を意味しました。これは物事をかき立てることになります。
6 預言者サムエルの時代,王国への変化はイスラエルの十二部族にとって何を意味しましたか。
6 古代イスラエルにおいて,預言者サムエルの時代に,エホバ神の立てられた裁き人から,エホバ神の下にある見える地的な王へと管理体制に変革が生じた時,それはイスラエルの十二部族にとって徹底的な変化を意味しました。預言者サムエルは,その管理機関の変化により,国民が種々の拘束を受けることを事前に警告しました。変革を望み,かつ切望した民は,そうした変化を受け入れると同意したものの,現実にはサムエルの警告どおり,多くの国家的苦痛を経験したに違いありません。(サムエル前 8:7-22; 12:1から13:2)それからというもの,各人は自分の目に正しいと思えることをするだけではすまされず,王統政府に付き従わねばならなくなりました。―士師 21:25。
7 「諸国民の定められた時」の満了する正確な年が天で分かっているのなら,その時が近づくにつれて何が行なわれると考えられますか。天に住む者たちはどんな決定をしなければなりませんか。
7 天における管理形態の切り替えは,古代のこの描画と著しい類似を見せながら,物事の構成および運営に関し必要な変革を要求します。異邦人の時つまり「諸国民の定められた時」がいつ終わるかは,その終わりが何年かという点に至るまで,前から分かっていました。それは,神のみことばの研究と聖書の時間表とを基に,その幾十年も前から地上で知られていたのです。(ルカ 21:24)異邦人の時の終わりが近づくと,天および地における物事の管理に変革を導入するため,その切り替えに対する必要な準備が行なわれます。(エフェソス 1:8-11)その新しい管理の下に来る者たちは,その変革に服するか服さないかについての決定をしなければなりません。
8 (イ)天の新しい管理機関はどのように設置されますか。(ロ)天にいる者たちにとって,新管理機関の誕生に関する準備は,出産の痛みを経験する女の状態に似ています。どのようにですか。
8 新しい管理が,当然必要な事前の準備を経ずに,整然と運営を開始するとはとても考えられません。政治上の非常手段とか,野心に燃えた成り上がり者や権力に飢えた陰謀者団による政権奪略,奪位などあろうはずはありません。エホバは『無秩序の神ではない』ので,新しい管理機関の設置は正式かつ正当な準備を経て,正式に行なわれるはずです。それを設置する時は,神に油そそがれた,古代イスラエルの王が倒されたことによって始まった,異邦人の時の終わりにおいてです。ということは,神の油そそがれた王,すなわちキリストによる管理機関を元に復す,つまり再び設置することが要求されました。これはその影響を受ける者すべてを厳しく試みることになります。それゆえ,新しい管理機関の正式かつ公式な誕生に関する準備は,目に見えない,使いたちの天を大きくかき立てました。神の妻のような天的組織にとって,これは産みの苦しみにも似た経験でした。それは,新しい管理機関の誕生を完了し,物事を明確に定めるためのもだえだったのです。
「別のしるし」
9 ヨハネが次に幻の中で見たことから明らかなように,神の妻のような組織に属さない他のだれが,新しい管理機関の誕生をやはり期待していましたか。
9 これに付随するすべての状況から判断すると,天における神の妻のような組織に属さない他のだれかが,新しい管理機関の誕生およびそれが近いことを予知し,それを待ち受けていました。使徒ヨハネはその者を次のように描いています。「また,別のしるしが天に見えた。見よ,火のような色の大きな龍であって,七つの頭と十本の角があり,その頭には七つの王冠があった。その尾は天の星の三分の一を引きずって,それを地に投げ落とした。そして龍は,いまにも子を産もうとする女の前に立っていた。彼女が子を産んだ時に,その子どもを食い尽くすためであった」― 啓示 12:3,4。
10 火のような色をしたこのへびに似た龍は何の「しるし」ですか。
10 この恐ろしい形相をした生き物は,「しるし」としての龍であり,何かのしるし,また象徴です。それは奇怪な海のへびに似ています。(イザヤ 27:1)その態度自体,それが神の敵であることを物語っています。というのは,それは神の「女」の敵,また,まだ生まれてもいないその子の敵だからです。龍は,創世記 3章15節で,エホバ神が秘義の預言を述べた時に言及されたへびと同じ立場に自分を置きます。「我汝と婦の間および汝の苗裔と婦の苗裔の間に怨恨を置ん彼は汝の頭を砕き汝は彼の踵を砕かん」。それは龍のように,“飲み込む者”です。しかも七重の意味においてです。なぜなら,それは七つの頭を持っているからです。(エレミヤ 51:34,新)また,その色が火のようであるということは,それが破壊的な傾向を持ち,火のように焼き尽くすものであることを示しています。それは悪魔サタンの「しるし」としての象徴です。
11 龍の「七つの頭」は何を表わしていますか。
11 龍の「七つの頭」は何を表わしていますか。それは,悪魔サタンが,地上に相次いで登場する七つの政治的世界強国の上に,またそれを通して頭の権を行使する,ということを表わしています。それらの強国は,記された神のみことば聖書の中に,その歴史的順序に従って記録されています。その国々は,すべてエホバの民の敵また圧政者であり,次のとおりです。(1)古代エジプト,(2)アッシリア,(3)バビロニア,(4)メディア-ペルシャ,(5)ギリシャ(マケドニア),(6)ローマ,(7)聖書の中に名は明記されていませんが,後代の歴史が示すところによると,大英国およびアメリカ合衆国(北半球)による二重世界強国。「七つの」そうした象徴的な「頭」が,それぞれの世界強国を知力をもって制御しているということは,悪魔サタンが七つの相次ぐ一連の世界強国によって行なう人類の世に対する政治支配が,いかに全面的なものであるかを物語っています。
12 龍の「十本の角」は何を象徴していますか。
12 角は聖書の中で,攻撃・防御両面の力の象徴として用いられています。龍が十の象徴的な角を持っていることは,悪魔サタンが地上の諸政体を通じて行使してきた見えない力の完全さを示しています。イエスは彼を「この世の支配者」と呼ばれました。―ヨハネ 16:11。
13 (イ)「天の星の三分の一」は何を象徴していますか。(ロ)龍の「尾」はどのように彼らを地に投げ落としましたか。
13 この象徴的な龍の尾も,同じく強力です。「その尾は天の星の三分の一を引きずって,それを地に投げ落とし」ました。(啓示 12:4)それら「天の星」が,エホバの聖なる天の組織に属していた,明るく輝く使いたち,すなわち神の天的な霊の子たちを表わすと考えるのは不合理なことではありません。(ヨブ 38:7)自然界の星が本来占めるべき場所は,わたしたちの頭上に広がる空つまり天です。しかし,強力な尾を持つ象徴的な龍は,それら象徴的な星をそのあるべき天の場所から地に投げ落としたのです。ですから,それら「天の星」が,利己的な理由のために神の聖なる天における「自分本来の立場を保たず」,地にいる人間の美しい娘たちと同棲し官能にふける目的で,「そのあるべき居どころを捨てた」特定の使いたちを表わしていることは明白です。こうしてその使いたちは,エホバ神に対して「罪を犯し」,象徴的な龍の側に付くことになりました。(ユダ 6。ペテロ第二 2:4。ペテロ第一 3:19,20。創世記 6:1-4)悪魔サタンはこのことを成し遂げるために,自分の影響力を「尾」のように用いたに違いありません。それにより,彼らを地に投げ落とし,神の聖なる組織から分離させたのです。
14 (イ)サタンはいつそれらの使いたちを自分の支配下に置きましたか。(ロ)異邦人の時が1914年におけるその終わりに近付いていた時,それらの使いたちは何をしていましたか。
14 このようにして象徴的な龍,悪魔サタンは,「み使いたち」を自らの「胤」として獲得しました。サタンは,龍のように彼らを飲み込んで,食い尽くしたり滅ぼしたりはせず,強大な尾を使って彼らを投げ落としました。彼がそれを成し遂げたのは洪水以前つまり,七つの世界強国が形成される前のことです。サタンは,王権を表わす「七つの王冠」を頂く「七つの頭」によって,それら世界強国を監督することになっていました。論理的に考えると,異邦人の時の終わる1914年が近付き,神の「女」の前に龍が立ち続けていた時,龍のそれらの使いたちは,彼女の「子」を誕生時に「食い尽くす」か飲み込むかして,新しい管理機関を阻止しようとしていた龍を助けるため,彼の後ろに整列して立っていたはずです。
15 それら反対の立場を取る使いたちは,「天の星の三分の一」であると示されています。その数は一体どれくらいですか。
15 反対の立場を取るこれら使いたちは,「天の星の三分の一」を含んでいました。これは少数の星とはいえ,かなりの数の星です。「三分の一」という分数は,強調の象徴として用いられるからです。したがって,「悪霊どもの支配者」である「火のような色の大きな龍」の支配下には,幾万もの悪霊,数軍団の悪霊たちがいたことでしょう。―マルコ 5:9-15。マタイ 12:24。
み座のための子の誕生
16 誕生にかかわる神の目的の遂行を龍がはばむことができたかどうかに関し,幻は何を示していますか。
16 その誕生にかかわる神の目的をざ折させようと龍が油断なく見張っていたにもかかわらず,完全な出産が定めの時に天で起こりました。というのは,予期されていた産児の父親は完全なかたであり,その妻,母なる組織も完全だったからです。しかし,子を手にしたのはだれですか。王なる父,すなわち神ですか。それとも,象徴的な龍の「七つの頭」のどん欲なあごが子を奪い取りましたか。啓示 12章5,6節の使徒ヨハネの記録は,次のように報告しています。「そして彼女は子を産んだ。男子であり,あらゆる国民を鉄の杖で牧する者である。そして彼女の子どもは神のもとに,そのみ座のもとに連れ去られた。それから女は,神によって備えられた自分の場所がある荒野に逃げた。それは,彼らが千二百六十日の間そこで彼女を養うためであった」。母親も,そして子どもも,龍から逃れます。
17 龍がその『子,男子』を『食い尽くそう』と躍起になっていたのはなぜですか。
17 龍がその『子,男子』を『食い尽くそう』,つまり飲み込もうと躍起になっていたのは驚くに当たりません。なぜなら,神の目的は,それが『あらゆる国民を鉄の杖で牧し』,最後にはその杖によって彼らすべてを打ち砕くことだったからです。サタンなる龍は,七つの相次ぐ世界強国に対する自分の完全な霊的王権を象徴する「七つの王冠」を,絶対に奪われまいと決意していました。自分が目に見えない支配者また「神」として君臨した「あらゆる国民」が,神の新しい管理機関によって粉砕されることを望んではいませんでした。そこで,その女の「子」を生まれるとすぐに,つまり当然最も弱いと思われる時をねらって食い尽くそうとしたのです。しかし彼はそれに失敗し,大いに悔しがりました。
18 その『子,すなわち男子』は何を表わしていますか。
18 その女の「子」は,王妃ではなく,『子,すなわち男子』でした。それはだれを,あるいは何を表わしますか。それは,イエス・キリストではなく,神のメシアによる王国を表わしています。それが神のもとに,そしてそのみ座のもとに連れ去られたのはそのためです。こうして神は,その子がご自分の「女」による子孫であることを認められました。
19 (イ)メシアによる王国は単なる理論に基づくものでも,抽象的なものでもありません。そうであれば,象徴的な『子,男子』の誕生に関し,何が要求されましたか。(ロ)「子」が神のもとに,そのみ座のもとに連れ去られるということは何を表わしていましたか。(ハ)「神の秘義」はどの時に終了しましたか。
19 しかしながら,このメシアによる王国は,単なる理論に基づくものでも,政治上の単なる定則でもありません。それが存在し,権限を得るには,王国の権利を有し,王国の責任を担い,かつ行動し得る者,つまり実際に統治することのできる実在者,すなわち「男子」にあって,生きた現実のものとされなければなりません。その者とは,神の独り子,神のキリストつまりメシアなる,栄光を受けたイエスでした。ですから,神の妻のような組織が王職のために組織の正当な成員を生み出した時,つまり備えた時に,象徴的な『子,男子』の誕生が起きました。神のメシアの王国は,その女の「子」が神のもとに,そのみ座のもとに連れ去られた後に,そして,王国を運用可能な現実のものとするためエホバが油そそがれたみ子を即位させられることにより,天において実際に建てられました。それは異邦人の時の終わり,すなわち西暦1914年のことです。その時その場で,つまりこの即位のさい,用いることの可能な,王国の全権限がメシアに付与されるに及び,「神の秘義」は終了したのです。―啓示 10:7,ア標。
20 順調に出産を終えた後,「女」には何が起こりましたか。
20 それにしても,この順調な出産の後,なぜ神の「女」は千二百六十日の間養われるため,「荒野に逃げた」のですか。その理由は,天のメシアによる王国の誕生と即位の後に何が起きたかを調べることにより明らかになります。聖書は何が起きたか(啓示 12:7-12)を述べた後,神の女が荒野に逃げたことを再び取り上げており,その理由の説明を可能にしています。では,彼女の「子」の即位後に,やはり何が生じましたか。
天における戦争
21,22 幻によると,王の即位後,何が直ちに天で起きましたか。それは天および地にどんな影響を与えましたか。
21 使徒ヨハネはそれを次のように報告しています。「また,天で戦争が起こった。ミカエルとその使いたちが龍と戦った。龍とその使いたちも戦ったが,優勢になれず,彼らのための場所ももはや天に見いだされなかった。こうして,大いなる龍,すなわち,初めからのへびで,悪魔またサタンと呼ばれ,人の住む全地を惑わしている者は投げ落とされた。彼は地に投げ落とされ,その使いたちもともに投げ落とされた。そして,わたしは大きな声が天でこう言うのを聞いた。
22 「『今や,救いと力とわたしたちの神の王国とそのキリストの権威とが実現した! わたしたちの兄弟を訴える者,日夜彼らをわたしたちの神の前で訴える者は投げ落とされたからである。そして彼らは,子羊の血のゆえに,また自分たちの証しのことばのゆえに彼を征服し,死に面してさえ自分の魂を愛さなかった。このゆえに,天と天に住む者よ,喜べ! 地と海には災いが来る。悪魔が,自分の時の短いことを知り,大きな怒りをいだいてあなたがたのところに下ったからである』」― 啓示 12:7-12。
23 イスラエル人はミカエルのことをすでに知っていました。どのように。
23 ヨハネへの啓示の中で,この天の戦士ミカエルが出て来るのは,これが最初であり,この個所だけです。しかし,預言者ダニエルの時代つまり西暦前6世紀から,彼の名は知られていました。ペルシャのクロス大王治世の三年目,ひとりの使いがダニエルに現われ,どのように「ミカエル,最たる君のひとり」が自分を助けに来たか,また,ダニエルの民に対する霊者なる君であるこの同じミカエルが,どのように自分と共に苦難の中にあって力強くとどまってくださったかを告げました。次いで,「北の王」と「南の王」の最後の動静を述べた後,その使いはこう言いました。「その時汝の民の人々のために立ところの大なる君ミカエル起あがらん是艱難の時なり国ありてより以来その時にいたるまで斯る艱難ありし事なかるべしその時汝の民は救はれん即ち書にしるされたる者はみな救はれん」。―ダニエル 10:13,21,新; 12:1。
24 西暦1914年におけるミカエルと悪魔の対決は,モーセの死の時における対決とどのように異なりますか。
24 そればかりか,天で戦争が起こる前に,エホバの民の天的な君ミカエルは,目に見えない領域で悪魔サタンと対決したことがあります。それは,西暦前1473年,預言者モーセの死んだ直後のことです。霊感を受けた弟子ユダは,この不思議な対決を次のように報告しています。「しかし,み使いの頭ミカエルは,悪魔と意見を異にし,モーセの体について論じ合った時,彼に対しあえてあしざまな言い方で裁きをもたらそうとはせず,ただ,『エホバがあなたを叱責されるように』と言いました」。(ユダ 9)それにもかかわらず,この論争ではミカエルが勝ちを収めました。なぜなら,しもべモーセの体は,サタン悪魔でさえ地上のだれにも明かすことのできない所にエホバ神が葬られたからです。(申命 34:5,6)しかし,神のメシアによる王国の誕生と即位が西暦1914年に終了した後の今日,エホバが悪魔サタンを叱責されるのをミカエルが待つ,という場合ではもはやありません。むしろ,エホバがミカエルを用いて悪魔サタンとその使いの悪霊たちに対して戦い,彼らを天から追い出されたのです。それはなんという「救い」また勝利だったのでしょう。
25 このみ使いの頭ミカエルとは一体だれですか。
25 このみ使いの頭ミカエルがだれかについて,疑問の余地があるでしょうか。それは,神の独り子イエス・キリストにほかなりません。彼は,西暦紀元の始まる前,ダニエルをも含む,エホバの民の天的な君であったかたです。神のメシアによる王国の関心事に仕えるため,また,完全な人間の犠牲としてご自分を神にささげ,全人類を贖うために地上で完全な人間となった時でさえ,彼はその天的な名に対する権利を決して放棄されませんでした。(ヨハネ 18:36,37。マタイ 20:28)死人の中から復活し,天に戻られた後,彼は再びその天的な名を取り上げました。
26 (イ)ミカエルを「み使いの頭」と呼ぶのはなぜ正当なことですか。(ロ)創世記 3章15節の預言の成就に関し,彼はどんな役割を果たしますか。
26 彼は,地上にいた時にしばしば話されたように,ご自分の使いたちを持っていました。ですから,彼が神の「み使いの頭」であるというのは正当なことです。また,「神による創造の初め」であって,エホバ神のために妻のような組織を共に構成する,他のすべての天的な使いの創造に先立って生み出されました。(啓示 3:14)西暦1914年,「北の王」と「南の王」に関して「終わりの時」が始まった後,彼は王なるメシアの権をもって立ち上がられました。彼がこうして立ち上がることは,「国ありてより以来その時にいたるまで斯る艱難ありし事なかるべし」,と書かれている苦しみの時に至るはずでした。(ダニエル 11:40から12:1)彼は,へびの頭を砕く,つまりそれゆえにサタンを天から投げ落とす,神の「女」(妻のような組織)の主要な胤また子孫なのです。―創世記 3:15。
27 (イ)イエスとミカエルの名の意味を比較しなさい。(ロ)天における戦争およびその目的について,わたしたちは何を知っていますか。
27 イエス(エホシュアの短縮形)という名は,「エホバの救い」を意味します。ミカエルという名は質問の形を取っており,「エホバのごとき者はだれか」という意味です。彼はエホバのためには,それが悪魔サタンであろうが,その使いの悪霊であろうが,だれに対してでも擁護者,挑戦者となります。ミカエルと彼の使いたちが,龍とその使いたちにどう戦ったか,またどんな武器を使ったかは聖書に述べられていません。他の多くの科学的な事柄と同じく,わたしたちにはとても理解し難いことなのでしょう。その戦争がどれだけの期間続いたかも告げられていません。ただ,龍とその使いたちが天から追放されたという,その結末だけが報告されています。それらの上なる天には,彼らの居るべき場所はもはやありません。龍が日夜神の前に提出する訴えは,すべて偽りであることが証明されました。大論争を決着させるため,龍が神の臨在と謁見の場のごく近くにとどまり,訴えをもって執拗に食い下がる必要はもはやありませんでした。―箴言 27:11。
28 (イ)神に反対するこの大敵対者にはどんな名が与えられていますか。(ロ)天における悪魔の成功の程度と,地上で彼が成し遂げたこととを比較しなさい。
28 この大いなる告訴者には,方形を成す四つの名が与えられています。飲み込む者,を意味する“龍”。たぶらかす者,欺く者,惑わす者という意味を持つようになった“へび”。「逆らう者」という意味の“サタン”。そして,「中傷する者」という意味の“悪魔”。(エレミヤ 51:34。創世記 3:4,5。コリント第二 11:3。テモテ第一 3:11。テモテ第二 3:3)龍は天に関しては,その尾により天の星の三分の一だけを引きずって,地に投げ落としました。しかし地に関しては,さらに多くの成果をあげました。というのは,彼は「人の住む全地を惑わしている」からです。―啓示 12:4,9。
29 天の戦争で,どんな強力な使いたちが悪魔の側について戦いましたか。彼らはどんな戦果を収めましたか。
29 象徴的な龍に属し,彼と共にミカエルおよびその使いたちに敵対して戦った使いたちの中には,疑いなく,ダニエル書 10章13,20節(新)に述べられている霊者なる君すなわち,「ペルシャ王国の君」と「ギリシャの君」が含まれていたことでしょう。これは,七つの世界強国の他の五つの強国にも霊者なる君がいたことを意味しています。つまり,エジプト,アッシリア,バビロニア,ローマ,英米二重世界強国それぞれの霊者なる君です。これらの「君」およびそれより下位の他のすべての使いたちは,「龍」と共に地に投げ落とされ,二度と天に戻ることはできません。
30 天における大きな声が,「今や,救いと力とわたしたちの神の王国とそのキリストの権威とが実現した」,と真実に言い得たのはなぜですか。
30 龍とその悪霊の使いたちが天から放逐され,地球の近辺に封じ込められたことは,聖なる使いたちにとって何という安らぎだったことでしょう。「大きな声が天で」次のように言い得たのは,至極当然のことでした。「今や,救いと力とわたしたちの神の王国とそのキリストの権威とが実現した」。(啓示 12:10)龍とその使いたちの放逐は,「救い」つまり勝利を意味し,それは,神が勝利をもたらすご自分の力を行使されたことによります。龍とその使いたちに対するこの勝利は,「わたしたちの神の王国とそのキリストの権威」の最初の表現だったのです。龍と使いたちの放逐は,神の王国が権を取り,「そのキリスト」つまり油そそがれた王が,神から与えられた権威を行使し始めたことを示すものでした。
31 悪魔とその使いたちが『男の子』の誕生の直後に天から放逐されたということは,何を証明していますか。
31 これは,「女」の産んだ男子の誕生と即位が,神のメシアによる王国の誕生と始まり,つまり「神の秘義」の終了を表わしていたことを証明します。この神のメシアによる王国は,その誕生と始まりにおいて,生まれたばかりの赤子のように弱いどころか,極めて強力であることを示しました。どのようにですか。それによって,『わたしたちの兄弟を訴える者が投げ落とされた』からです。エホバ神とその聖なる宇宙組織の主要な敵ともあろうものが,投げ落とされたのです。
訴えられた『兄弟たち』
32,33 悪魔はだれを神の前で訴えましたか。
32 訴えられた者たちはだれですか。悪魔サタンは彼らに関しどんな訴えを提起したのですか。天の忠実な使いたちは,訴えられた者たちを「わたしたちの兄弟」と呼んでいます。とはいえ,訴えられた者たちは天の使いではなく,「子羊の血のゆえに,また自分たちの証しのことばのゆえに彼[訴える者]を征服し,死に面してさえ自分の魂を愛さなかった」者たちです。―啓示 12:10,11。
33 この描写から,訴えられた者が,子羊イエス・キリストに追随する,献身し,バプテスマを受け,油そそがれた者たちであることは間違いありません。彼らは,罪を取り除く,イエス・キリストの完全な人間としての犠牲の血の益を必要としています。彼らは地上にあって,犠牲にされた子羊のみならず,子羊を備えてくださった神に関しても証しをする者です。子羊の犠牲は,全人類のためにこの神にささげられたのです。それで,天の使いではなく,彼らこそ,神の子羊の活発で従順な追随者であるがゆえに,殉教の死に直面する者たちなのです。
34 悪魔は彼らに関しどんな訴えを提起しましたか。
34 彼らに関して悪魔は何を訴えているのですか。それは次の事柄です。訴えを提起する悪魔サタンによる誘惑と抵抗に徹底的にさらされ,しかもなおクリスチャンの行動の規範を守り,罪を憎み,イエス・キリストに倣い,支配者として人間よりエホバ神に従う ― そのようなクリスチャンを全能の神は地上に置くことはできない。彼らにとって悪魔サタンは余りにも強力である。クリスチャンが,彼ほどの策略をろうし,圧力を加える者を征服することは不可能である。
35 信仰のゆえに死ぬことは,キリストの霊的兄弟たちにとって何を意味しますか。それはエホバ神にとってどんな勝利となりますか。
35 ですから,彼らが聖書に従う真のクリスチャンとして神の是認を得て死ぬことは,悪魔サタンを征服することになります。つまりそれは,彼が偽りの告訴者であること,そして神こそ,被造物からいかなる犠牲をも辞さないほどの深い愛を受ける創造者,また支配者であることを証明します。したがって,神の勝利は,龍とその使いの悪霊に対する戦いによるだけでなく,キリストの追随者の愛が,イエス・キリストと同じく,だれよりも神に従うためには命をもなげうつほどに強いということを証明することにもよるのです。これはエホバ神にとって倫理的な勝利であり,サタンが偽り者であることの証明でもあります。
36 肉によれば罪人であるという理由で,悪魔はクリスチャンに有罪の告発をする根拠を持っていましたか。
36 悪魔は油そそがれたクリスチャンが罪人であると訴えたのですか。肉体によれば,彼らは確かに罪人でした。堕落したアダムの子孫として罪を持って生まれたからです。しかし,彼らはイエス・キリストの贖いの犠牲を受け入れました。罪を償うキリストの血の価値により罪の汚点から清められ,神の目に義と宣せられることに信頼を置いたのです。ゆえに,彼らに関しこう記されています。『神の選ばれた者たちに対してだれが訴えを提出するでしょうか。神が彼らを義と宣しておられるのです。罪に定める者はだれですか。キリスト・イエスは死んでくださったかた,いえ,死人の中からよみがえらされたかたです』。(ローマ 8:33,34)彼らは不本意の罪を悔い改めることにより,罪に対する憎しみを立証し,キリストの血を通して神のゆるしを得ます。このようにして,地上の生涯を忠実に終えるそれらクリスチャンは,「子羊の血のゆえに」悪魔サタンを征服したのです。この点に関するサタンの訴えは偽りです。
37 悪魔は他のどんな訴えを提起しましたか。それは実証されましたか。
37 さらに,神の前で訴えを提起するこの告訴者は,彼らはおどされたり脅かされたりすると,エホバ神およびそのキリストつまりメシアを否定するようになる,と主張しました。しかし,1914年における神のメシア王国の誕生,および天における戦争ぼっ発の時に至るまで,この大いなる告訴者が作り出したいかなる状況の下にあっても,神とそのキリストを否認することを拒んだ忠実なクリスチャンたちがいました。パトモス島にいた老齢の使徒ヨハネと同じく,彼らは地上の生涯の最後に至るまで,「神について語り,イエスについて証し」し続けたのです。―啓示 1:9。
38 クリスチャンは,「自分たちの証しのことばのゆえに」龍を征服した,と言うことができます。どのように。
38 西暦1877年においてさえ,1914年の異邦人の時の終わりを指摘し,神のメシアによる王国がそのとき完全に建てられることを広く証しした人たちがいました。a 1914-1918年にわたる第一次世界大戦の苦難のさなかに至るまで,国際聖書研究者たちは,多くの言語による大量の印刷物や,個人また公開講演による口頭の手段を通じ,さらに,聖書に基づくカラースライドと映画で説明を加えた,有名な“創造の写真-劇”の無料上映によってそうした事柄をふれ告げていました。したがって,天からサタンとその悪霊たちが放逐された後,天の大きな声により,次のように言うことができました。すなわち,第一世紀以降の忠実なクリスチャン「兄弟」たちは,「自分たちの証しのことばのゆえに」大いなる龍を征服した,と。ですから,この点に関しても,神の前に訴えを起こすこの大いなる者は,偽り者であることが証明されました。
39 クリスチャン「兄弟」たちは,神とキリストに忠節を保つため何をすることさえいといませんか。
39 それらクリスチャン「兄弟」たちは,神とそのキリストに対し忠実と忠節を証明することを生活の主要事とみなしました。天における大きな声が彼らに関して行なった,「死に面してさえ自分の魂を愛さなかった」との証言は真実でした。彼らは,殉教の死を遂げる数年前に次の言葉を述べた,使徒パウロのようであることを証明しました。「自分の行程と,主イエスから受けた奉仕の務め,すなわち神の過分のご親切に関する良いたよりについて徹底的に証しすることとを全うできさえすれば,わたしは,自分の魂を少しも惜しいとは思いません」。(使徒 20:24)彼らは,神とキリストに真実であるための代価として,自分の地的魂をなげうつことさえいといませんでした。「だれでもわたしのために自分の魂を失う者はそれを見いだすのです」,というイエスの言葉に信仰を持っていることを証明したのです。(マタイ 16:25)このため,死の脅しをもって彼らを沈黙させようとした悪魔サタンの邪悪な努力は失敗に終わりました。他方,キリストの忠実な追随者たちの破れることのない,不動の忠節により,エホバ神の正しさが立証されたのです。
40 (イ)サタンと悪霊が投げ落とされたことは,地の住民にとって何を意味しますか。(ロ)サタンは今や何を決意していますか。
40 もはや龍の居る場所のない,目に見えない天に住む使いたちは,天のその大きな声にこたえ,大いなる龍とその使いの悪霊たちが放逐されたことを非常に喜びました。しかし,わたしたちの地と海についてはどうですか。それは,そこに住む人びとに対し特別の「災い」の時を開始させました。なぜなら,「悪魔が,自分の時の短いことを知り,大きな怒りをいだいてあなたがたのところに下ったからである」。(啓示 12:12)天の戦争における悪魔の敗北は,彼が鎖によるかのようにつながれ,底知れぬ深みに監禁されるまでの残りの時間に限りがあること,しかもその時間が短くなっていることの確実な前兆となりました。彼は長い間「人の住む全地を惑わして」きましたが,今度は,迫り来る大いなるバビロン(偽りの宗教の世界帝国)の滅び,およびそれに続く『ハルマゲドンの戦い』において,陸と海にいるすべての者を神のみ手にかけて滅びに遭わせようと決意しています。その事態を作り出すため,悪魔と悪霊たちは可能な限りの苦難と偽りの宣伝により,全人類を勝利を収める神の王国から引き離そうとします。さらに,「王国の良いたより」を宣べ伝える業に対しても戦いをいどみます。彼はその時以来,これらすべてのことを試みてきました。
悪霊による迫害
41 「大いなる龍」とその使いたちは,天から放逐されたことに対しどんな反応を示しましたか。この点,幻は何を示していますか。
41 さて,「大いなる龍」とその悪霊の使いたちは,聖なる天から永久に放逐されたことに対しどんな反応を示しましたか。この質問に対し,二十世紀の歴史は,使徒ヨハネが幻で見た出来事と一致する答えを提供します。ヨハネはこう記しました。「さて,自分が地に投げ落とされたのを見た時,龍は,男の子を産んだ女を迫害した。しかし,大きな鷲の二つの翼が女に与えられた。荒野の中の自分の場所に飛んでゆくためであった。そこは,一時と二時と半時のあいだ彼女がへびの顔から離れて養われるところである」。(啓示 12:13,14)これは,今世紀の歴史の中でどのような成就を見ていますか。
42 天から放逐されて以来,悪魔はどのように「女」を迫害して来ましたか。
42 「龍」にとって,天から放逐されたことに対する「大きな怒り」を表明する一つの方法は,神の「女」を迫害することでした。彼女は,「男の子」つまり,神のメシアによる王国を生み出したゆえに,龍の放逐に重大なかかわりを持っていました。それで龍は,女を迫害するのです。今や天から永久に締め出されたとはいえ,卑しめられた地的場所にいる龍とその悪霊たちは,象徴的な「女」を構成する使いたちが,建てられた神の王国の関心事のため地の事態に介入しようとする度に,その介入をできるだけ困難にさせます。また,地上にいる『女の』胤,つまりその子孫の残りの者も彼女の一部であり,いわばその胎から出て来た者たちです。したがって,まだ地上にいる,キリストの油そそがれた追随者の残りの者たちを迫害することにより,龍とその悪霊たちは神の「女」つまり王国の母を迫害しているのです。龍と悪霊の地的活動に関する使徒ヨハネのその後の記録は,彼らがまさしくそうした行動を取ったことを確証しています。
43 龍の放逐後,「女」は何をしましたか。
43 龍が放逐された後,「女」は,太陽で身を装い,足の下に月を飾り,頭の回りに十二の星の冠を帯びた姿で占めていた天の場所を去ったようです。なぜなら,『女は神によって備えられた自分の場所がある荒野に逃げた』,と啓示 12章6節は述べているからです。いつ女は荒野に逃げ,へびから離れたその場所で養われたのでしょうか。
44 「大きな鷲の二つの翼」は何を象徴していますか。聖書の例から証明しなさい。
44 荒野に行き着くために,「大きな鷲の二つの翼」が彼女に与えられました。この飛翔方法は,西暦前十六世紀の古代のある事柄に似ています。西暦前1513年にエジプトで行なわれた最初の過ぎ越しの夕食の後,エホバ神に率いられたイスラエルの十二部族は,紅海の水を奇跡的に通過し,シナイ山の荒野に導き入れられ,そこに九か月以上とどまりました。エホバ神は後に,預言者モーセの歌の中でこのことに触れながら,次のように言われました。『わしのその巣びなを喚起しその子の上にまひかけるごとくエホバその羽を展て彼らを載せその翼をもてこれを負たまへりエホバはただ独にてかれを導きたまへり別神はこれとともならざりき』。(申命 31:30; 32:11,12)イスラエル人に十戒を与える前,シナイ山においてもエホバ神はモーセを通しこう彼らに言われました。「汝らはエジプト人に我がなしたるところの事を見我が鷲の翼をのべて汝らを負て我にいたらしめしを見たり」。(出エジプト 19:1-4)同じく,象徴的に言って,「大きな鷲の二つの翼」は,迫害の脅威にさらされている神の「女」が,サタンの放逐後,荒野に飛んで行くのを助けたのです。
45 (イ)「大いなる龍」と悪霊たちの放逐は,いつまでに成し遂げられましたか。神の「ふたりの証人」は,世界大戦が行なわれている間何をしていましたか。(ロ)残りの者は西暦1919年の春に釈放された後,何を必要としていましたか。
45 「大いなる龍」と悪霊たちの天からの放逐は,第一次世界大戦の終わりまでには完全に成し遂げられていたものと思われます。啓示 11章1,2節によると,「聖なる都市」は「四十二か月」,つまり1914年の秋から1918年の春に至るまで,異邦諸国民によって踏みにじられました。1,260日として語られているこの同じ期間に,神の「ふたりの証人」は「粗布を着」,自分たちを損おうとする努力にも屈せず預言しました。それら「ふたりの預言者」はその後に,底知れぬ深みから出てきた「野獣」に殺されたのです。しかし,三日半にも似た短期間の後,彼らは死の状態からよみがえらされ,天的な奉仕へと高められました。そしてその時,油そそがれた残りの者の釈放が生じました。(啓示 11:3-13)それは西暦1919年の春のことです。その時までには,油そそがれた残りの者たちにもたらされた第一次世界大戦中の迫害は終わり,今度は,戦後の迫害がこの忠実な残りの者たちを待ち受けていました。そのため,彼らは霊的食物によって強められる必要がありました。それで,この時は,地上における彼女の胤の残りの者によって代表される神の「女」が,荒野に逃げて養われるための適切な時期だったのです。
46 (イ)イスラエル人がエジプトから出た時の型によると,「女」が飛ぶことを開始する適切な時は1919年のいつでしたか。(ロ)その時,霊的な強さを与える『養う』業はどのように始まりましたか。
46 西暦前1513年,古代イスラエルがエジプトから出たのは,ニサン14日の過ぎ越しの直後のことです。それと対応して,過ぎ越しの時が西暦1919年の出発点となります。ユダヤ暦によると,1919年ニサン1日は3月31日の夜始まったので,ニサン14日は,1919年4月13日,日曜日の夜始まることになります。その時,国際聖書研究者たちは年ごとの主の夕食あるいは晩さんを祝いました。(「ものみの塔」誌,1919年5月15日号,151ページ)1919年3月25日,六人の仲間の囚人と共にアトランタ州の連邦刑務所から釈放され,翌日保釈の身となった,ものみの塔聖書冊子協会の会長と会計秘書は,この主の夕食の祝いにあずかりました。戦後最初の年に得られた部分的な報告によると,その年の記念式には1万8,000人以上の人びとが出席しました。そのすぐ後,公式雑誌「ものみの塔およびキリストの臨在の告知者」は,1919年4月15日号の誌上で,「キリストにおける自由」と題する主要記事(英文)および他の聖書的な資料を通して,時宜にかなった霊的食物を与え始めました。こうして始まった,養育計画はいつ終わりましたか。
47 啓示 12章6節と14節の聖句を比較すると,「女」が「荒野」にいた期間について何が明らかになりますか。
47 啓示 12章6,14節によると,神の「女」は,神が彼女のために荒野に備えてくださった場所に「千二百六十日の間」,または「一時と二時と半時」つまり三時半いることになっていました。b これは,各「時」が360日つまり,一月を三十日とする十二か月に相当するという意味です。ということは,この三年半が預言的な年であることを示しており,したがってこの期間は,随時十三の太陰月から成るうるう年または太陰太陽年を有する,ユダヤ太陰暦による三年半に相当します。
48 グレゴリオ暦によると,「千二百六十日」はいつ始まりましたか。そしていつ終わりましたか。
48 ユダヤ太陰暦によれば,1919年ニサン14日の過ぎ越しの日から三年半の期間は,1922年ティシュリ13日,つまり1922年10月5日の日没時に終わります。(太陽暦によるとこの期間にはうるう年が一度[1920年],ユダヤ太陰暦によると,十三か月の年つまり太陰太陽年が一度[1921年]含まれています。)ですから,「へびの顔から離れ」,象徴的な荒野で特別に養われるこの期間は,1919年4月13/14日の過ぎ越しの時に始まり,ユダヤ暦の新年(ローシュ ハシャナー)から十三日目に当たる1922年10月4/5日に終わったわけです。この期間は本当に霊的な養育の時でした。
49 この養育期間の始まりに引き続いて,どんな出来事が直ちに起こりましたか。
49 「女」を養うこの時期の初めに,国際聖書研究者協会は,アメリカ,オハイオ州における第一回シーダーポイント大会を開きました。1919年9月1-8日にわたるこの大会で,新しい雑誌「黄金時代」の出版計画が9月5日,金曜日に発表されました。翌月,1919年10月1日,「ものみの塔」誌に加えて,雑誌「黄金時代」(今日「目ざめよ!」誌として知られている)の出版が始まりました。1919年10月1日号の「ものみの塔」誌は,その時の国際大会に関し9ページにわたる報告を掲載しました。また,ある国々では,ものみの塔聖書冊子協会の全部の出版物または種々の文書に対する禁止処分が解かれ始めました。
50 この養育計画の初期に啓示された真理にはどんなものがありますか。
50 極めて適切なことに,1920年3月,ものみの塔協会は,「死者と話す」(後に「生きている人は死人と話すことができるか」に変更)と題する本(英文)を出版しました。これは,当時全地にはびこっていた心霊術,悪霊崇拝を,豊富な資料を裏付けとして暴露したものです。それから間もなく,1920年7月1日号の「ものみの塔」誌は,「王国のこの良いたより」を宣べ伝えることに関するマタイ 24章14節が,1914年の王国の誕生以降特に適用されるとの説明を載せました。その六か月後,1921年1月1日号の「ものみの塔」誌は,第二記事の中で,啓示 13章14,15節の不可思議な「野獣の像」が,当時存在していた,世界の平和と安全のための国際連盟を象徴していることを明らかにしました。連盟は現在,国際連合に受け継がれています。
51 「千二百六十日」間の霊的な養育計画の中で,どんな手段が重大な役割を演じましたか。
51 1921年の終わり近い10月,「神のたて琴」(英文)と題する,聖書研究を助ける新しい本が出版され,同年12月1日,注文者への発送が開始されました。「聖書研究」第七巻の摘要を目的としたこの384ページの本は,最終的には,22か国語で581万9,037冊配布されました。必要な霊的食物を供給する手段となるこの本や他の出版物が,引き続き発行され,配布されました。
52 霊的に特別な意味で築き上げることを目的とした三「時」半は,いつ最高潮に達しましたか。
52 やがて,三「時」半つまり1,260日の終わりごろ,壮大な最高潮が訪れました。それは,1922年9月5-13日の間,国際聖書研究者協会がオハイオ州シーダーポイントで開いた,第二回国際大会という形で訪れました。(1922年11月1日号の「ものみの塔」誌は,エホバの油そそがれた残りの者によるこの際立った大会の報告に全部の紙面を割いています。)それから間もなく,すなわち1922年9月22日に,その年のユダヤ太陰年は終わりました。次いで,ティシュリ13日,1922年の10月4/5日が来ました。それは,同年におけるユダヤの「仮庵の祭り」の少し前に当たり,荒野の状態にある神の「女」を特別に養う期間の終わりを表示するものでした。この時までには,地上にいる彼女の胤の油そそがれた残りの者は十分に養われており,前途の神の業のために霊的に強められていました。そのわずか26日後(1922年10月31日),彼らは,シーダーポイント大会における「挑戦」と題する決議を,全世界で4,500万部配布する業を開始しました。
「女」を飲み込もうとする試み
53 「龍」が「女」に向かって吐き出したものは,「かえるのように見える三つの汚れた霊感の表現」の宣伝ではありません。なぜですか。
53 1922年9月,オハイオ州シーダーポイントの第二回国際大会開催と共に,一連の「七つのラッパ」が吹かれ始めました。(啓示 8:1-7)それは,龍が,卑しめられたことに対して怒り,行動を起こす時でもありました。1914年に彼女の「男の子」を飲み込むことができなかったと同じく,神の「女」を飲み込むことのできなかった大いなる龍は,「女」の後ろに何物かを吐き出しました。それは,「かえるのように見える三つの汚れた霊感の表現」の一つによって表わされる,龍の悪魔的宣伝のようなものではありませんでした。そのような宣伝は,「人の住む全地の王たち」を,ハルマゲドンにおける「全能者なる神の大いなる日の戦争に」集めるのに龍が使うものです。(啓示 16:13-16)しかし千二百六十日(三「時」半)の後に龍が吐き出したものは,まだ地上にいる「女」の胤の残りの者,今や十分に養われたその残りの者を除き去るための何かでした。龍はこの試みに成功したでしょうか。
54,55 「女」を「おぼれさせるため」に,「龍」が吐き出した象徴的な「川のような水」について説明しなさい。
54 使徒ヨハネはその点に関して見た幻を次のように告げています。「それから,へびは口から川のような水を女の後ろに吐き出した。彼女をその川によっておぼれさせるためである。しかし地が女の救助にまわり,地は口を開いて,龍が自分の口から吐き出した川をのみ込んだ」― 啓示 12:15,16。
55 象徴的なへび,つまり龍は,地上でその胤の油そそがれた残りの者によって代表される神の「女」に対し,いわば“人類の海”とも言うべきものによる攻撃を試みました。へびなる龍が吐き出した「川のような水」は,「大水のなりひゞくが如く」自分の主義・主張のために騒ぎ立つ人類,あるいは男女の集団から成っていました。(イザヤ 17:12,13)殺害による死とシェオールつまり墓が待ち受けているとの威嚇をもって,「女」の胤の油そそがれた残りの者たちを恐怖に陥れようとする,「悪のみなぎる流」があったのです。(詩篇 18:4,5,16,17)その結果,油そそがれた残りの者は,狂信的なファシスト党員,共産主義者,ナチス党員,カトリック信徒会,また,ファシズムおよびナチズムによる神聖ローマ帝国再建を切望する宗教家たちの象徴的な水により,脅威にさらされました。同じく,軍国主義や国家主義的愛国者,また攻撃的な帝国主義者の「水」によってもです。そうした「水」は,「川」のようになりました。
56,57 象徴的な水が地の色々な場所で発生した様子を説明しなさい。
56 1922年10月,ペニート・ムソリーニは黒シャツ隊を率いてローマに進軍し,二十年以上も存続したファシスト政府をイタリアに樹立しました。同年,教皇の支配権を促進させるため,教皇ピオ十一世によりカトリック信徒運動が組織されました。
57 1924年1月21日,共産国ロシアのレーニンが死ぬと,スターリンによる残忍な独裁制と共産主義による侵略が表面化してきました。1931年,日本の帝国主義者たちは,アジア本土の多くを手中に収めようと侵略を開始しました。1933年,アドルフ・ヒトラーはドイツで政権を握り,間もなくナチスの世界制覇に対する恐れが人類に脅威を与えました。1936年,スペインの共和制に敵対する国家主義“運動”が起こり,カウディーヨつまり“元首”による全体主義的独裁政権が誕生しました。隣国ポルトガルでは,それより前の1934年に独裁政権の確立を見ました。アメリカ合衆国には平時徴兵制が採用され,狂信的な愛国者たちが広範な影響力を持つようになりました。こうして象徴的な「水」は,神のメシアによる王国,つまり「男の子」を生み出した神の「女」を「おぼれさせ」ようという一つの主要な目的をもって,へびなる龍の口から波状を成して注ぎ出たのです。
58 (イ)それらの「水」は,悪魔が地に投げ落とされたために生じた「災い」の一部でした。なぜですか。(ロ)それらの「水」に対し,多くの人はどんな反応を示しましたか。
58 それら野心的で暴力を好む人たちの波が,神のメシアによる王国を支持するものでなかったことは言うまでもありません。その源は,神の主要な敵つまり,象徴的なへびなる龍,悪魔サタン以外の何ものでもありません。ですから,それら人間から成る「水」は,天から放逐され,この地球の近辺に下ってきた悪魔が,少しの時間しか残されていないのを知り,非常に怒っているがゆえにもたらされる,「災い」の一部だったのです。地上の国民の多くはそれら象徴的な「水」が災いであることに気づき,それに抵抗しました。当然予期されることですが,それは第二次世界大戦を到来させました。その結果,神の「女」をおぼれさせるため全地を「水」で覆おうとしたへびなる龍の努力は,失敗に帰しました。使徒ヨハネが叙述的象徴の下に前もって見たのは,実はそのことだったのです。すなわち,「地が女の救助にまわり,地は口を開いて,龍が自分の口から吐き出した川をのみ込んだ」― 啓示 12:16。
59 「地」はどのように神の「女」の救助にまわりましたか。「地」および「地」の取った行動の目的は何でしたか。
59 「地」は,自分の権利と自由,立憲的また伝統的統治形態,自分のはぐくみ育てた文化を保存しようとする,人類社会のより安定した民主的,保守的な部分を象徴していました。言うまでもなく,この地は神の「女」を助けることに直接関心があったわけではありません。それは,「地」が彼女の「男の子」つまり,神のメシアによる王国を支持しなかったのと変わりありません。「地」は抵抗を試みました。そしてそれは,自分の地的関心事を保護するため,「水」の突進に逆らう結果となりました。「地」のこの行動は実際には,全体主義的また官憲主義的な「北の王」と民主主義的な「南の王」との間に,熱い戦争および冷たい戦争を生じさせました。「終わりの時」におけるこの両者の動きは,ダニエル書 11章27節から12章4節に予告されています。いずれにせよ,安定した「地」が講じた手段の多く,そして攻撃的な「水」の敗北は,神の「女」を益することになり,こうして「地」は,「女」がおぼれないようその救助にまわったのです。
60 「女」を「おぼれさせ」ようとした「龍」の努力が屈辱的な失敗に終わったことを示しなさい。
60 まだ地上にいた「女」の胤の油そそがれた残りの者たちは,以前よりも強くなって第二次世界大戦から出て来ました。これは,へびなる龍を悔しがらせました。彼らはどのように強くなりましたか。それは,第二次世界大戦の終結した1945年,神のメシアによる王国の地的臣民である,幾万人もの「大群衆」が彼らに加わったことによります。これらの者たちは特に西暦1935年以降,迫害を経験しなければならないにもかかわらず,油そそがれた残りの者たちと行動を共にしてきました。「エホバの証人の1946年の年鑑」(英文,218ページ)は,世界が分裂状態にあるにもかかわらず,次のように報告することができました。「報告の示すところによると,1945年のある月には14万1,606人の伝道者が野外奉仕に携わりました。これと比較して,全奉仕年度の月平均は12万7,478人でした」。戦前の1938年には,そのような王国伝道者は4万7,143人しかいませんでした。ですから「龍」は,聖なる天から永久に追放されたことに加え,この点においてもざ折させられたのです。こうしたことすべては,へびなる龍である悪魔サタンと悪霊の使いたちに,どんな影響を与えましたか。ヨハネはこう述べています。
61,62 (イ)悪魔は大敗を喫した後,次に何をしましたか。なぜですか。(ロ)今日,主に何が,地上にいる「彼女の胤のうちの残っている者たち」を顕著な存在としていますか。神のおきてと政治支配者のそれとが相いれない場合,彼らはどんな立場を取りますか。
61 「それで龍は女に向かって憤り,彼女の胤のうちの残っている者たち,すなわち,神のおきてを守り,イエスについての証しの業を持つ者たちと戦うために出て行った」― 啓示 12:17,新。新英。
62 神の「女」を滅ぼすことができなかった,龍のような悪魔サタンは,実際には「女」に属する油そそがれた残りの者に腹いせをすることにより,彼女に対し高まる憤りをぶちまけることができます。というのは,彼らは,まだ地上にいる,「彼女の胤のうちの残っている者たち」であったからです。真のクリスチャンはだれも,次の重要な事実を見落としてはなりません。すなわち,今日,悪魔サタンの主要な対象となっているのは,地上で神の「女」を代表するこの油そそがれた残りの者たちである,ということです。彼らが顕著な存在であるのは,エホバのクリスチャン証人という名で通っているからだけでなく,特に,この「終わりの時」に,クリスチャンに対する『神のおきてを守っている』からです。「神のおきて」と政治的な「上にある権威」によるおきてとが相いれない場合でさえ,彼らは,西暦一世紀,エルサレムの最高法廷の前に出された,イエス・キリストの使徒たちと同じ立場を取ります。「わたしたちは,自分たちの支配者として人間より神に従わねばなりません」― 使徒 5:27-32。
63 他のどんな重要な点に関しても,油そそがれた残りの者は顕著な存在となっていますか。
63 油そそがれた残りの者は,「イエスについての証しの業」を持つという,神から与えられた特権によっても顕著な存在となっています。彼らは宗教的な迫害が厳しさを増して行くにもかかわらず,イエスについて,特に,1914年の異邦人の時の終わり以来,神のメシアなる王として支配しておられる,その「イエスについての証しの業」を推し進めています。
64 サタンと悪霊たちが負け戦をしていることを示すどんな証拠がありますか。
64 龍のような悪魔サタンと悪霊たちは,神の「女」の胤のうちの油そそがれた「残っている者たち」に対し,負け戦をしているのです。彼らは龍の世からどんな圧力を受けようとも,「神のおきて」を守り,「イエスについての証しの業」を拡大することをやめません。戦いをいどむ龍が引き続き敗北を被っていることを示す別の証拠は,油そそがれた残りの者と共に,神および統治しておられるキリストの側に立場を取る「大群衆」が,増加の一途をたどっているという注目すべき事実です。(啓示 7:9-17)1969年初期の野外奉仕報告によると,「イエスについての証しの業」に毎月定期的に参加し,活発な奉仕をしていた人は,200の国や島国に122万9,016人を数えました。その人たちの中には,1968奉仕年度中に水のバプテスマを受けた,8万2,842名の人びとが含まれています。
65 エホバの証人および「龍」と悪霊たちの将来はどうなりますか。
65 エホバ神が,地上にいるご自分の献身したしもべを祝福し,保護しておられることは極めて明白です。ですから,怒ったへびなる龍は,望むなら,油そそがれた残りの者と,献身した彼らの仲間の証人である増えゆく「大群衆」に対し,引き続き戦いをいどめばよいでしょう。龍は,彼らがハルマゲドンにおける「全能者なる神の大いなる日の戦争」で滅ぼされるのを見る代わりに,その者たちが生き残るのを見るのです。その後,つまりハルマゲドン後に,大いなる龍と悪霊が底知れぬ深みに投げ込まれるのを見るのは,実にそれら生き残った者たちにほかなりません。―啓示 20:1-3。
[脚注]
a 例えば,N・H・バーバーおよびC・T・ラッセルがニューヨーク州のロチェスターで1877年に出版した,「三つの世,もしくは贖いの計画」(表紙)と題する本(英文)をごらんください。その本の初めに掲げられた二ページにわたる表は,最後から二番目の欄でこう述べています。「『異邦人の時』は,ネブカデネザルが全世界の支配権を与えられた西暦前606年に始まり,『七つの時』の間続く。七つの預言的な時は,7に360を乗じて得られる2,520。したがって,それは西暦1874年から四十年後,すなわち西暦1914年に終わる」。この点を確証するものとして,例えば,「収穫」と題する上部見出しの付された129ページ,3節をごらんください。
b 三「時」半が1,260日に等しいのですから,7(2×3 1/2)「時」は2,520日に相当します。したがって,異邦人が地を支配する『七つの時』は,2,520の時間単位すなわち象徴的な2,520日,つまり西暦前607年の初秋から西暦1914年の初秋に至る2,520年です。―ダニエル 4:16,23,25。ルカ 21:24。
2,520は不思議な数です。1から9のどの数字の倍数でもあり,また当然のこととして,そのどの数字によっても,さらに十(10)によっても割りきれます。