ハルマゲドンの勝利の側に立って生き残る
「そして彼らはともに叫んで言った,『み座にすわっておられるわたしたちの神に,そして子羊に勝利!』」― 啓示 7:10,新英語聖書。
1 ハルマゲドンにおける全宇宙的な戦争ののち,どんなものがその後に続きますか。わたしたちは今何を行なうのがよいですか。
ハルマゲドンを戦場とする全宇宙的な戦争の終わったのちには,一千年の平和が続きます。この世俗的な事物の体制のその最終的な戦争を生き残るのは,ほんとうに願わしいことでしょう。それに生き残ることは,勝利の側に立つ幸福な人たちの特権です。これは,政治および軍事上の予告者たちがいだく暗い見方とは大きく異なっています。そうした人たちは,核兵器をもってなされる第三次世界大戦のさいにはどちらの側にも勝利はないであろう,と言います。どちらの側もともに敗者になる,というのです。加えて,そうした世界戦争は人類家族全体の自殺になるであろう,との予言もなされています。しかし,そうした人間の論議を聞いても,恐れ驚く必要はありません。やがて到来するハルマゲドンの闘いのさいには,勝利を得る側があるからです。わたしたちは今,必ず勝利を得る側に自分の立場を定めるのがよいでしょう。そうすれば,勝利のすばらしい結果をその後に楽しむことになります。
2 今その勝利の側に立つためにこの世の政治にいっさい関与しないことが求められるのはなぜですか。
2 ここで勝利と言うのは,一つの政党もしくは国家ブロックが他の政党もしくは国家ブロックに対して勝利を収めることではありません。人間の支配に関するある特定の考えが,それを望まない敗北した民に,そして政治上の支配に関して別の考えをいだく人々に強制されるのではありません。また,勝者が敗者を一つの政治陣営の中に無理に入れ,そうしたかたちで人類世界を統合しようというのでもありません。そうしたことによって地上に恒久的な平和は実現せず,また,征服された民の自発的な服従は得られません。ここで述べる勝利は普通の意味での政治上の勝利ではなく,人間による政治を地上から全く除き去るような勝利です。わたしたちがその勝利の側に立つためには,人を分裂させるこの世の政治に関与しないことが求められます。
3 それで,今わたしたちにとって最も興味があるのはどんな点ですか。
3 今日,戦争について話したり考えたりするのを好まない人が多くなっていますが,ここで述べた重要な点が,やがて到来するハルマゲドンの宇宙戦争に魅力的な面を添えています。わたしたちにとって最も興味があるのは,勝利者はその勝利によって何を得るのだろうか,今その勝利者の側に立つ者にとってその勝利は何を意味するだろうか,それはハルマゲドンを生き残ることに価値を与えるものだろうか,という点です。
4 今日存在する政治勢力のどれか一つあるいはすべてが今後の世界的な争闘に勝利を収めるとしても,その勝利者が民に提供できるのはどんなものですか。
4 わたしたちは,これまでのつらい経験に基づいて,この事物の体制下の政治上の勢力が提供するものについて知っています。そのすべてがそろって,あるいはどれか一つのブロックが勝利を得たとしても,この点は変わりません。それは,最も良い場合でも,第一次世界大戦が燃えたった1914年以来それら諸勢力が人類に提供してきたものとさして変わらないでしょう。それはどのようなものでしたか。厳しい苦難の時代であり,一般の民にとって,その厳しさは時とともに増してきました。世界情勢に対する楽観の根拠はしだいに衰退し,悲観的な見方を余儀なくさせる要素が増大しています。現代の科学知識と進歩した工業技術を利用でき,国際協力のための機関として国際連合があるにもかかわらず,明敏な経済学者・社会科学者・環境学者などは,わたしたちが,立法者も政治家も警察関係者もまた教育者もその脱け道を知らない,全くの行き止まり状態に近づいていることを警告しています。こうしたことに加えて,別の世界戦争が起きた場合,その勝利のための,人命・物質資産・生活環境などの面での恐るべき代償についても考えなければなりません。したがって,政治上の勢力が提供しうるものは,1914年以来今日までに提供してきたものよりはるかに貧弱なものにすぎないであろうと言わねばなりません。
5 したがって,ハルマゲドンにおける願わしい勝利者はだれでなければなりませんか。なぜですか。
5 したがって,心の正しい人はみな,きたるべきハルマゲドンの戦争の勝利が,生き残ってそれをとらえたいと思わせるような将来を提供できるかたのものとなることを望みかつ期待すべきです。ハルマゲドンにおけるその願わしい勝利者としては,地上における人間の最初の生活環境を創造したかた,すなわち,神ご自身のほかにいません。これは道理にかなったことです。人間を取り巻く自然環境に関係する事がらは,神とも関係を持っているからです。全人類に影響する事がらは神にも影響を与えます。
6 きたるべきハルマゲドンの宇宙戦争は,地上における人間の最初の生活環境とどういう関係を持っていますか。
6 人間の最初の生活環境は,人間進化の理論を唱える人々が想像して教えるような,穴居人的なものではありません。この問題に関する歴史の事実は,人間のいた最初の自然環境が,完全な庭園,自然の美と喜ばしい生活条件とを備えたパラダイスであったことを示しています。したがって,ハルマゲドンにおける神の勝利による輝かしい結果の一つは,パラダイスを地上に,しかも全地球的な規模で再確立することです。人類のパラダイスへの復帰は,ハルマゲドンにおける神の勝利以外の方法ではもたらされません。これは,ハルマゲドンにおける宇宙戦争について考えるさいに不快なものを感じさせない要素の一つとなります。
人間ではなく,神に対する戦争
7 それで,あらゆる国民はだれに対して戦うことになりますか。しかし,諸国民自身はそうしたことに対してどんな見方をしていますか。
7 こうした論議は,地上のあらゆる国民がハルマゲドンの戦場で創造者なる神と戦うことを意味していますか。まさにそのとおりです! しかし,今日の諸国民は,自分たちが神とのそうした衝突に向かっていると聞かされると,不快に感じることでしょう。事実,政治上の諸国民,とりわけキリスト教世界の諸国民に,彼らがいま戦いの備えをしているのは実際には聖書の神に対してである,という点を納得させるのは難しいことでしょう。牧師たちは,キリスト教世界の諸国民に,西暦四世紀の最初のキリスト教国創立以来のあらゆる国際紛争において自分たちは常に神の側に立ち,神のために戦ってきた,と説いてきました。彼らは,ローマ皇帝コンスタンチヌスと同じような宗教的感情をいだいてその戦争努力を続けています。コンスタンチヌスは,キリスト教国を創立する前,十字架を旗じるしとして戦争を行ないました。このコンスタンチヌスは,自分の政敵との決戦に先だち,光輝く十字架の幻を天から与えられ,「これによって征服せよ」(ギリシャ語で,エン トゥート ニカ)というひらめくようなことばを聞いたと唱えました。
8 きたるべき戦争の戦場の名はどのように示されていますか。それはどれだけの地域を含みますか。
8 しかし,そうではあっても,あらゆる国民が神と戦うようになることを警告しているのは神ご自身です。その戦争が徹底的に行なわれる場所の名,つまりハルマゲドンという名を挙げているのは神ご自身にほかなりません。その戦場は地上であるに違いありません。諸国民がいるのはこの地上であるからです。それら諸国民が外界に逃れ出る道はありません。その戦場は全地を包含しています。つまり,地上のだれもその影響を受けないでいることはできません。
9 諸国民とともに歩みつづけるなら,わたしたちはだれに対して戦うことになりますか。しかし,ルカ 14章31,32節にある,どんな霊感の忠告に従うのがよいですか。
9 諸国民は,自分たちが戦うようになる相手が神であるということを納得しないかもしれませんが,たとえどの国民に属していようとも,わたしたちひとりひとりとしてはどうでしょうか。わたしたちは,神に対して戦うという考えを好みますか。もしそうでないなら,さまざまな国民のいずれかに属しているわたしたちは,この点について何を行なったらよいのですか。わたしたちは,諸国民とともに神に対して戦わせようとするこうかつな企てにあやつられてしまいますか。それを望まないなら,書き記された神のことばである聖書をひもとき,神がこの点でわたしたちに何を命じておられるかを学ぶことが必要です。わたしたちは,神の子の忠告に従わなければなりません。彼は,自分の行なおうとすることの代価をあらかじめ計算することを弟子たちに勧めてこう語りました。「どんな王が,別の王と戦いを交えようとして行進するにあたり,まず座って,二万の軍勢で攻めて来る者に,一万の軍勢で相対することができるかどうかを諮らないでしょうか。事実,それができないなら,その者がまだ遠く離れた所にいる間に,一団の大使を遣わして和平を求めるのです」。(ルカ 14:31,32)わたしたちも同じようにしなければなりません。世の諸国民とともにハルマゲドンに向かって行進を続けますか。それとも,今ただちに神との平和を求めますか。
10 神は,ご自分がハルマゲドンで諸国民と戦うということを,どこで,またどんな描写的なことばで述べておられますか。
10 では,どうしたら,ハルマゲドンへの行進から脱け出て,諸国民の側に立たないようにすることができますか。神は,ご自分がハルマゲドンで諸国民と戦うということを,どこでわたしたちに告げておられますか。それは,聖書の「ヨハネへの啓示」もしくは黙示録の16章16節です。それに先だつ数節は,諸国民が,見えない超人間の影響,つまり,悪意をいだく悪霊の影響によって,この並はずれの戦争に導かれるさまを予告しています。この,神に敵対させようとする影響を,目に見えない悪霊たちの「霊感による表現」として描写しつつ,福音宣明者であり,聖書の筆記者であったヨハネはこう述べます。「それらは実は悪霊の霊感による表現であってしるしを行ない,また人の住む全地の王たちのもとに出て行く。全能者なる神の大いなる日の戦争に彼らを集めるためである。……そして,それらは王たちを,ヘブライ語でハルマゲドンと呼ばれる場所に集めた」。
11 もとのヘブライ語の観点で見ると,その戦場の名にはどんな意味がありますか。
11 この預言的なことばは,当初,福音宣明者ヨハネにより,通俗のギリシャ語で書かれました。しかし,19世紀のヘブライ語に翻訳された場合,その第16節は次のようになっています。「そして,それらは,ヘブライ人がメギドの山[ハル メギドン]と呼ぶ所に彼らを集合させた」― 啓示 16:16,サルキンソン,ギンスバーグ共訳のヘブライ語訳。F・デリッチのヘブライ語訳も参照。
12 それで,ある人々は,最終的な戦争がどこで行なわれると唱えていますか。しかし,そうした考えはどんな質問を提起させますか。
12 ハルマゲドンという名称が『メギドの山』という意味であるために,聖書講釈者や,ラジオなどで世界的な放送をする著名な牧師の中には,きたらんとする宇宙戦争はイスラエルの国のメギドの峡谷,古代都市メギドの廃虚で戦われるであろう,と唱えてきた人たちがいます。現に,その廃虚を今日訪ねる旅行者は,その場所を示す標識とともに,ある人々の意見によるとそこが最終的な戦争の行なわれる場所である,という意味の掲示を読むはずです。しかし,古代メギドの荒れづかの前に広がる谷あいの低地が広いとはいえ,人の住む全地の王や支配者たちの軍勢をそこに集め入れることはできません。そして,文字どおりメギドの遺跡の前でなされる戦争がいったいどんな論争を解決するのですか。非ユダヤ人の諸国民は,戦艦,航空部隊,戦車,大陸間誘導弾,機動化された軍隊などを用いてイスラエル共和国と戦い,メギドを,全世界的な戦略上の中心的な戦場とするのですか。そして,イスラエル共和国がハルマゲドンという場所の勝利の側に立つのですか。
13 そうした意味に取る人は,「大川ユーフラテス」という表現にも示される,「啓示」に関するどんな事実を無視していますか。
13 ハルマゲドンもしくはメギドの山という名称を文字どおりの意味に取る人々はこうした質問を提起させます。そうした人々は,聖書の「ヨハネへの啓示」つまり黙示録が,多くの象徴や比ゆ的表現を用い,おおむね絵画的なことばで書かれていることを無視しています。例えば,同じ16章の12節は,神からの第六の災いが「大川ユーフラテス」の上に注ぎ出されることを述べていますが,それは,この第六番めの象徴的な災いが,今日イラクの国の中央を流れる実際のユーフラテス川の上に起きるという意味ではありません。昔の聖書の時代に,この川の中心をなしていたのはバビロン市でした。バビロン市は,聖書の歴史上三番めの世界強国であるバビロニア帝国の首都でした。したがって,象徴としてのユーフラテスということばは,今日なお存在している偽りの宗教の世界帝国,「ヨハネへの啓示」が,同じ16章の19節で,「大いなるバビロン」と呼ぶものに注意を引きます。同じように,この第16節は,その歴史的な連想のゆえに,ハルマゲドンという名称を象徴的な意味で用いています。
14 メギドという名はどんな二重の意味を含むようになりましたか。なぜ?
14 メギドという名称は躍動的なものを感じさせます。一般の歴史においても聖書の歴史においても,この名称は決定的な戦闘を想起させました。なぜですか。なぜなら,往時その都市は,欧州とアジアとアフリカを結ぶ陸上交通の要路を支配し,そのゆえに,その地方の住民はその地を利用して侵入者を迎え撃ち,その侵入をくい止めることができたからです。それで,メギドという名は二重の意味を含むようになりました。つまり,一方の側には悲劇的な敗北であり,他方の側には栄光ある勝利です。
15 メギドと特別な関係を持つようになったのはだれですか。どのように?
15 聖書の神はこの場所,そしてその近くにあるキシオン川と特別の関係を持つようになりました。この神は,預言者モーセの後継者となった裁き人ヨシュアとともにおられました。それはヨシュアが約束の土地を平定し,メギドを攻略しつつあった時のことです。(ヨシュア 12:21; 17:11)ヨシュアのあとに続いた裁き人たちの時代に,神はメギドの近くで,ご自分の選民に目ざましい勝利を得させました。それは,裁き人バラクと女預言者デボラの時代です。
16,17 (イ)だれにとってその戦闘はささいな事がらではありませんでしたか。それで,イスラエル人のために何がなされましたか。(ロ)バラクとデボラは歌の中でその勝利をだれに帰しましたか。
16 現代の戦闘に用いられる人員や物資の量に比べれば,当時の戦闘は規模の小さなものでした。裁き人バラクはわずか一万人の兵士と女預言者デボラを率いていました。一方,敵の将軍シセラは,普通の地上部隊のほかに,鎌を取り付け,馬で引く戦車900両を有していました。しかし,これは,神にとって決してささいな事がらではありませんでした。神はご自分の選民のためにその戦闘に介入されたからです。神はただ,時を見て豪雨を降らせ,キシオン川の低地に瞬間的な洪水を引き起こして,恐れおののく敵の戦車900両を動けなくしました。圧迫してきた敵のこの奇跡的な敗北ののちに神に対して歌った勝利の歌の中で,バラクとデボラは,こうして敵を打倒したことにおける神の重要な役割に注意を引いてこう述べました。
17 『もろもろの王きたりて戦へる時にカナンのもろもろの王メギドンの水のほとりにおいてタアナクに戦へり 彼ら一片の貨幣をも獲ざりき 天よりこれを攻むるものあり もろもろの星その道を離れてシセラを攻む キシオンの河これを押し流しぬ これかのいにしへの河キシオンの河なり わがたましひよ なんぢますます勇みて進め そのとき馬のひづめは強きものの馳せに馳するによりて地を踏み鳴らせり エホバの使ひ言ひけるはメロズをのろふべし なんじら重ね重ねその民をのろふべきなり 彼らきたりてエホバを助けず エホバを助けてたけき者を攻めざればなり』― 士師 5:19-23; 4:1-3,10,12,13。
18 デボラ,およびバラクとその軍勢が生き残った理由は士師記 4章14-16節にどのように述べられていますか。
18 女預言者デボラ,および裁き人バラクとその仲間の戦士たちは,メギドにおいて勝利の側に立ち,その戦闘を生き残りました。そのことの理由も士師記 4章14-16節に次のように述べられています。『デボラ,バラクに言ひけるは 起てよ これエホバがシセラをなんぢの手にわたしたまふ日なり エホバなんぢに先だちて出でたまひしにあらずやと バラクすなはち一万人をしたがへて[峡谷ぞいにメギドとは反対側にある]タボル山より下る エホバやいばをもてシセラとそのすべての戦車およびその全軍をバラクの前に打ち敗りたまひた(り)」。こののち,統制の乱れた敵勢の追い打ちと,そのすべてを滅ぼすこととは,裁き人バラクとその軍勢にとって難しいことではありませんでした。
19 (イ)バラクとデボラの歌の結びにある祈りのことばは,きたらんとするどんな戦争にあてはまりますか。(ロ)メギドの近くでのその勝利ののちにどんな意義ある事が続きましたか。
19 バラクとデボラがメギドにおけるその勝利ののちに歌った歌の結びにある霊感のことばは,一つの祈りとして,きたるべきハルマゲドンの戦争にあてはまります。彼らはこう歌いました。『エホバよ なんぢの敵みなかくのごとくほろびよかし またエホバを愛する者は日の真盛に昇るがごとくなれよかし』。(士師 5:31)この霊感の祈りの成就は,ハルマゲドンにおいて勝利の側に立つ,エホバを愛する人々すべてにとって,輝かしい将来を意味するものとなります。この点で意義深いのは,そのバラクとデボラの時代について,『こうして後,国は四十年のあいだ太平であった』と記されていることです。
20 今日,「ヘブライ語でハルマゲドンと呼ばれる場所」ということばは何を表わしていますか。
20 わたしたちの時代について見ると,「ヘブライ語でハルマゲドンと呼ばれる場所」ということばは何を表わしていますか。古代のメギドの場合と同じように,それは,決定的な戦争の行なわれる世界の局面をさしています。それは,神とこの世界との敵対関係において,その敵対関係の生じている論争に対する決着の求められるような段階をさしています。高台に位置していた古代のメギドは一つの陸地もしくは大陸から別の陸地もしくは大陸に通ずる陸上交通路を戦略的に握っていましたから,ハルマゲドンは,政治支配者たちがその意を通そうとして結束して力を用い,神がご自身の目的のもとにそれに対応する力で行動しなければならない,世界情勢の終極的な状態をさしています。こうして,宇宙の将来は,これら対立する勢力の対抗の結果によって決定されることになります。
21 (イ)ハルマゲドンに関するそうした見解を得れば,わたしたちは,どんなものに目を向けたり,どんなことを期待したりしませんか。(ロ)聖書をさらに調べることによってわたしたちは何を行なうことができますか。
21 こうして,ハルマゲドンの真の意味について聖書に基づく見解を得れば,誤った方向に目を向けたり,誤ったものを期待したりしないですみます。わたしたちは,イスラエルの国の古代メギドという地理的な位置に目を向けることはありません。また,諸国民の軍隊すべてがイスラエル共和国をその攻撃目標としてそこに結集するのを期待したりはしません。また,イスラエル共和国のユダヤ人が集団的に改宗してナザレのイエスをメシアとして受け入れるのを期待することもありません。そして,ハルマゲドンの勝利の側に立って生き残るためにイスラエル共和国の生来のユダヤ人にくみさねばならないといった考えに導かれることもありません。むしろ,わたしたちは,メギドの峡谷,そうです,イスラエル共和国の全土も,この場合の論争点とは関係のないことを理解します。そして,霊感を受けた神聖な書物の全体を勤勉に調べ,神の霊の助けを得て,ハルマゲドンにおける真の論争点をはっきりと見きわめます。こうしてわたしたちは,真のハルマゲドンにおける勝利者とともに生き残るために,自分が論争のどちらの側に立つべきかを知るのです。
ハルマゲドンにおける論争点
22 今日真のハルマゲドンへの動きをすでに始めているのはだれですか。
22 わたしたちはこの点で誤ることのないようにしましょう。今日,真のハルマゲドンへの動きがすでになされているのです。その方向に動いているのがだれであるかを知るなら,わたしたちは何が論争点となっているかを見きわめることができます。「ヨハネへの啓示」16章14節をもう一度読んでみることにしましょう。それは,宇宙史上の転換点ともいうべき時に,だれがハルマゲドンに向かって行進するかを予告しています。こう述べています。「それらは実は悪霊の霊感による表現であってしるしを行ない,また人の住む全地の王たちのもとに出て行く。全能者なる神の大いなる日の戦争に彼らを集めるためである」。
23 (イ)ハルマゲドンで戦争があるということはどういうことを示していますか。それはだれとの戦いですか。(ロ)それで,ハルマゲドンにおける論争点はなんですか。それはどれほどの範囲に及ぶものですか。
23 こうして集まったことが一つの戦争のためであるということは,そこに何かの論争が関係していることを示しています。論争の決着をつけるためにその戦争が行なわれるのです。これが「全能者なる神の大いなる日の戦争」と呼ばれていることは,全能者なる神と論争関係にあり,その点に関して神を相手に戦いぬこうとする者たちのいることを示しています。神に対して論争をしかけ,戦争によって決着をつけようとする者たちは,結果として何を失わねばならないのでしょうか。それらの者たちの,人の住む全地に対する公式の立場に注目してください。それらの者たちは政治支配者,「人の住む全地の王たち」です。彼らの王国の存亡が問題になっています。彼らがハルマゲドンにおけるこの戦争を挑発するのは,彼らの政治的な支配,彼らの王としての立場を,武力によっても擁護しようとするためです。したがって,ハルマゲドンにおいては,王国ということが最重要の論争点です! それは,英国の「王国」や,タイの「王国」や,スウェーデンの「王国」ではなく,「人の住む全地」を治める王国です。
24 したがって,物事を現状のままで存続させることに関してどんな質問が起きますか。
24 しかし,人の住む全地を治める王国ということがハルマゲドンにおける論争点とされるのはなぜですか。なぜ今,王,皇帝,大統領,その他地上の政治支配者たちを騒がせ,彼らの統治権の継続を問題にしなければならないのですか。人類世界は非常に長い間,事実四千年以上の間,つまりユーフラテス川に面したバビロンのニムロデ王の時代以来これら政治支配者たちのもとで暮らしてきました。したがって,なぜ現状を,つまり,これほど長く存続してきた地上統治の形態を,民自身がそのもとで耐えてゆこうとしているかぎり,あるいはその民主主義に基づく選挙を繰り返しているかぎり,そのまま続けさせないのですか。なぜせめて,この点に関して民の好むところを選ばせないのですか。なぜ,地上の支配に関して世界的な変化をもたらすのですか。世界はすでにたくさんの問題をかかえているではありませんか。
25 (イ)今やその必要を認めて「変化」を望む人々がいますが,そのことに関してどんな質問が起きますか。(ロ)しかし,「人の住む全地の王たち」はどんなことを強いて求めていますか。どんな影響のもとにそうしていますか。
25 しかしながら,「今や変化の時が来た」と確信する人々が今日しだいに多くなっています。でも,それは,現在の世界の統治の状態からどんなものへの「変化」ですか。そして,どのようなものへ変化するか,それをどのように行なうかについて人々は一致していますか。国際行動のための機関として創設以来29年を経た国際連合を持ちながら,今日の困惑した民は,すべての人の合意できるもの,人間のすべての必要にこたえ,今後いつまでも確実に存続するものへの「変化」という問題とうまく取り組むことができません。さらに,「ヨハネへの啓示」16章14節によると,現在行動している政治支配者たちは平和な変化を決して支持していません。彼らは,「全能者なる神の大いなる日の戦争」を最後まで戦いぬかねばならないような状態を強いて求めています。そして,これら支配者たちの背後には,悪意を持つ,超人間の勢力があります。
26 したがって何がなされねばなりませんか。ある人々がその回避を望まないのはなぜですか。
26 したがって,その戦争はなされねばなりません。それを避けたりわきにやったりすることはできません。情報に通じ,聖書の見解を知る人で,それを回避しようとする人がいるでしょうか。そうした人々は,正しい側の勝利を求めています。そして,その宇宙的な戦争ののちに続く,人の住む全地のための変化を待望しています。今の世代の人々の前に差し伸べられた機会についてはっきり知る彼らは,「全能者なる神の大いなる日の戦争」を生き残り,その戦争後の栄光ある特権にあずかることを願っているのです。
27 どんな事実を考えるといま正しい行動を取ることが必要ですか。これをどんな助けと導きのもとで行ないますか。
27 現在,このきたらんとする戦争に関して中立の立場はありません。それは全宇宙的な戦争であり,あらゆる人に関係しています。ハルマゲドンにおいて勝利の側に立つためには,その戦争が始まる前のいま正しい行動を取ることが必要です。心をこめてその側に立つことによってのみ,人は地上に生き残り,この地球の表面に今やきわめて必要な変化が実際に起きるのを見ることができます。いま正しい行動を取るための導きまた助けとして,わたしたちは,何が論争点になっているか,その論争においてどちらの側が正しいかについて,さらに考慮することが必要です。その正しい側が勝利を得るのです!
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ハルマゲドンを生き残る人々は,メシアの千年王国に関して聖書が預言する輝かしい事がらに地上で最初にあずかる者となる