人類の大群衆をハルマゲドンから救い出す
「かれらは大なる患難より出できたり」― 黙示 7:14,文語。
1 ハルマゲドンの戦いが起きる時を熱心に待ち望む人々がふえているのはなぜですか。
ハルマゲドン,それは恐ろしいもののように聞こえても,人類の滅亡のことではありません。近づいているハルマゲドンの戦いは,人類にとって実際には人類史上最大の幸福がおとずれる前ぶれとなります。そうであればこそ,今日日毎に増し加わる「大ぜいの群衆」が,ハルマゲドンの宇宙戦争のくる日を待ち望んでいるのです。確かな根拠があって彼らはその戦いに生き残り,その後の繁栄と平和の時代に生活することを望んでいます。皆さんも,希望にみちたこの幸福な人々のひとりになってください。
2 ハルマゲドンはなぜわたしたちの想像ではありませんか。なぜそれはすぐに忘れてしまうようなものではありせんか。
2 ハルマゲドンは人間が想像した,あるいは考え出したものではありません。ハルマゲドンは戦場の名であって,1870年余の昔からあることばです。この名は,やはりそのころ完成された何百頁の本の中に1回だけ出てきます。その名を読むと,それに結びついている事柄のゆえに私たちは畏怖と驚きに打たれます。それはすぐに忘れてしまうような名ではありません。それは人類がやがては直面しなければならないものを表わしています。私たちがそれに直面し,それを経験する時は迫っています。人類がそれに近づくのを私たちがとめることはできません。それは世界的な規模の,必要な災害であり,しかも人類にとって永遠の益となります。
3 人類はどんな二つの方面から生命をおびやかされていますか。宇宙の運命に関する天文学者の推測はなぜ正しくありませんか。
3 今日,人類は二つの方面から生命をおびやかされています。しかしそう言っても共産主義,全体主義,独裁主義の諸国から成る東の陣営および民主主義,帝国主義,資本主義の諸国から成る西の陣営のことではありません。ここで言うのは人間自身の側からするものと,人間の創造者の側からするものとの二つです。宇宙について,現代の天文学は,遠い将来に銀河系および膨張する宇宙の他の銀河が過程を逆転して収縮を始め,おのずから崩壊して地球とその上の生命をおしつぶしてしまうものと予想しています。しかしそのようなことはありません。宇宙は創造者の御手の支配下にあり,人類に対して愛にみちた不変の目的を持たれる創造者はそのような崩壊を許されないでしょう。では創造者である神の側から人間はどのようにおびやかされているのですか。一方,人間は人間自身の側からどのようにおびやかされていますか。二つの側のうちのどちらから人類はまもなく打撃を受け,その生存を著しくおびやかされるのですか。
4 どんな面で人間の生存は人間自身の手によっておびやかされていますか。この脅威はなぜ国際連盟によって軽減されませんでしたか。
4 人間のほうの側を見ると,人間が地球の管理の不手ぎわによってみずからの生存をおびやかしていることは,多くの証拠からますます明白になっています。これは画期的な年1914年以来,まがうことのない事実となってきました。その年,全世界が全面戦争にまき込まれたことは,今日なお生きている何億の人の記憶にはっきり残っています。第一次世界大戦で人命と資産がおびただしく失われたことに狼狽した政治家と宗教家は,世界の平和と安全のために国際組織すなわち国際連盟を設立しました。全面戦争は二度と起きないはずでした。しかし国際平和組織の存在にもかかわらず,諸国家は国を守る軍備の強化と大量殺りくの新兵器の開発を必要と考えていたのです。こうして20年もたたないうちに国際連盟は野心的な支配者によってまっこうから無視され,5600万人の犠牲者を出した第二次世界大戦が1939年に勃発しました。
5 国際連合はいつ,そしてだれの益のために設立されましたか。その保護の下にあっても,なぜ問題が内在していますか。
5 2発の原子爆弾の爆発の余波がさめやらぬ1945年9月に第二次世界大戦は終わり,そのとき地上には21億3995万8919人の人が残されていました。20億余のこの人々と子孫を生きながらえさせるため,世界の指導者は1945年に世界の平和と安全を図る新しい組織すなわち国際連合を設立しました。その後の20年間に,小規模な,しかし危険な戦争や革命にもかかわらず,人口は倍増が予想され,1967年までには32億8500万人に達するものと予想されていました。(1946年度世界年鑑,ニューヨーク版377頁。1967年度版379頁)産児制限を適切に実施しないかぎり,このように急速な人口増加のために世界は深刻な食糧問題に直面します。経済的,社会的,政治的,宗教的な影響もこれに加わって,世界は何年もたたないうちになかば飢餓の状態になることも予想されています。増加する人々を受け入れるために国境を延長したり,拡大したりすることはできず,地球を大きくすることもできません。
6,7 (イ)害虫対策が危険をかもしているのはなぜですか。(ロ)環境の汚染について,権威者は最近なんと述べましたか。
6 化学そして最近は原子力を応用した機械や工場が,かつてなかったほど地球上にふえています。人類にとってその代価は高いものにつき,大気,土地,水の汚染は危険な程度に達しました。化学殺虫剤の使用は明らかに増加しており,「我々の周囲はいま毒で満ちている」と述べた一雑誌の見出しにも,その危険が示されています。
7 大気の汚染に関してアメリカ保健,教育,厚生省長官が最近,警告したところによると,大気汚染の問題は対策がおくれています。「すでに見られた進歩は心強いものではあるが,我々は問題の表面にふれたにすぎない。問題は今なお深刻であるのみならず,急速に大きくなっているため,対策がたちおくれている」。米国科学学会がアメリカ政府に出した報告は,廃棄物処理のために大気,海,大地を利用することがもはや不可能な事態に立ち至ったと述べています。固形,液体を問わず廃棄物を経済の中に還元するなんらかの方法を発見することが必要です。汚染に関するこの報告によると,ある面においては「事態は前例を見ないほどに悪化しており,絶望的でさえある」と言われています。―1966年6月8日,1966年4月1日付ニューヨーク・タイムズ。
8 前述のこととは対照的に,どんな世界的な災害が突然に襲う危険がありますか。なぜそれは先のことではありませんか。
8 食糧生産量の不足,生活環境の一般的な汚染から生ずる災害は徐々に,しかし確実に人類に忍びよってきます。しかも全世界が突然に破滅に陥る危険はすでに存在しているのです。第一次世界大戦の終結から第二次大戦勃発までの平和な時期を基にして計ると,1945年に第二次大戦が終わって以来の現在の平和の時期は,一雑誌の表現を借りて言えば,いまや「満期」になっています。それは名ばかりの平和の時期にすぎませんでした。第三次世界大戦への準備が国際的な規模ですすめられてきました。それは化学および細菌兵器,核兵器による恐るべき大量殺りくの戦争となるでしょう。核分裂また核融合の爆弾はすでに貯蔵されているものだけでも,もし人間を死から生命に何回もよみがえらせることが可能ならば,全人類を何回も殺すことのできる量に達しています。
9 最後的な戦争の可能性はなぜ大きくなっていますか。一部の国々はそれについてどう感じていますか。
9 原子爆弾を作ることはますます容易かつ安価となり,また一般的に知られるようになりました。原子爆弾を独自に開発し製造する国がふえることの危険は容易に認められます。そのようになれば,核兵器を用いる最後の世界戦争の可能性は大きくなるでしょう。核兵器をこれ以上作ることをやめなければなりません。すでに核兵器を所有する国々は,原子爆弾を持つ国がこれ以上ふえるのをとどめ,核兵器の拡散を防止する条約を諸国家間に結ぶ必要を感じています。核保有国の恐れは現実のものです。核兵器を持つ国も持たない国も等しく危険にさらされています。それでこの問題は17か国の参加する国連世界軍縮会議において緊急に討議されているのです。
10,11 (イ)2月21日に開かれた世界軍縮会議において,一元首から寄せられたどんなメッセージが読まれましたか。(ロ)すべての国に共通の,どんな“平等”に関して警告が発せられましたか。
10 その証拠として,新聞は原子爆弾の製造を禁止する国際条約がアメリカによって提案されたことを報じています。1967年スイスのジュネーブで世界軍縮会議が再開された時,2月21日の初会合においてアメリカ大統領のメッセージが提出されました。それを読みあげたのはアメリカの軍縮局の局長でした。その中でジョンソン大統領は,核兵器がこれ以上他の国に普及するのを禁ずる条約の,改正されたアメリカ草案に対し,核兵器を保有しない一部の国々が異議を唱えていることにふれています。ジョンソン大統領はメッセージの最後のところで共通の危険を前にしては核兵器を持つ国と持たない国の利害の衝突が消滅してしまうことにふれて次のように述べました。
11 「核兵器競争に終止符を打たねばならないことは全く自明の理である。核兵器を保有する国とそうでない国の利害はこの点において全く選ぶところがない。共通の危険を前にして我々は厳しい平等の立場に立たざるを得ない。私は会議の成功を神に祈るものである」― 1967年2月22日付ニューヨーク・タイムズ。
12 (イ)ジョンソン大統領の結びのことばは何を暗示していますか。(ロ)人類の生存をおびやかすものに関して,大統領の警告は何を示していますか。
12 大統領の結びのことばから察すると,神は,核兵器の拡散禁止や17か国軍縮会議によって核戦争による人類の自滅を防ぎ,人類を救うことを考えているように思えます。この考えがたとえまちがっていても,事態の恐ろしさを痛感した大統領が世界の破滅を回避するために全能の神の助けを願っても,不思議ではありません。人類の生存が人間自身の手でおびやかされていることを示す前述の諸事実と考え合わせて,ジョンソン大統領の警告はもっともなものです。神の手が下されなくても人類は自滅しますか。一部の神学者の言うように「神は死んでいる」とすれば,それはあり得ます。
神の側からおびやかされている
13,14 (イ)人類が神の側から受ける脅威に関して,どこから情報を得るべきですか。(ロ)嘲笑する人も,今日の世界の軍事情勢に関して何を否定できませんか。
13 しかし今日の世界の人々の生命は神の側からもほんとうにおびやかされていますか。その問いに答えるには,神のことば聖書をひもとかねばなりません。聖書には今の時代また今の世代に関する預言がしるされています。現代の問題に対する答えを聖書に求めるからといって,笑うべきではありません。嘲笑しても,聖書の述べるハルマゲドンの戦いは避けられないのです。嘲笑する人があれば,今日の世界になぜ軍縮会議が必要なのかを自問すべきでしょう。それは,国連加盟国が軍縮の必要を認めているからです。現在のように諸国家が破壊的な兵器で軍備を強化した時はかつてありません。そのことはだれでも認めるでしょう。諸国家が,今ほど巨額の軍事費を支出したことはありません。ある国々は,自国の製造した兵器を小さな国々に供給し,すでに戦争をしているか,あるいは将来の戦争に備える国々を援助しています。
14 新興国をも含めてすべての国に今日ほどナショナリズムが盛んになったのはかつてないことです。どの国も他のすべての国を恐れ,他国や国連に対する不信をつのらせています。今日の地上は兵営と化しました。世界の指導者たちとその軍隊はどこに向かって行進していますか。なぜその場所に向かっているのですか。
15,16 そのことからどんな質問が出ますか。その質問に答えているのはどんな本ですか。その本の黙示録 16章13節から16節には何がしるされていますか。
15 今日,地上で最も広く流布されている本がその問いに答えています。この本は19世紀前に完成したにもかかわらず,その巻末の章において今日の世界の事態を述べ,全地の支配者たちが彼らの軍隊をひきいてどこに向かっているかを明らかにしています。この本の黙示録 16章13節から16節のことばは次のようです。
16 「また見ると,竜の口から,獣の口から,にせ預言者の口から,かえるような三つの汚れた霊が出てきた。これらは,しるしを行う悪霊の霊であって,全世界の王たちのところに行き,彼らを召集したが,それは,全能なる神の大いなる日に,戦いをするためであった……三つの霊は,ヘブル語でハルマゲドンという所に,王たちを召集した」。
17 (イ)王たちとその軍隊を戦場に導いているのは,どんな宣伝ですか。(ロ)この戦いは,時になんと呼ばれていますか。共通の敵はだれですか。それはだれにとって「大いなる日」ですか。
17 地の王たちを宇宙戦争にかりたてる宣伝は疑いなく悪霊のものであり,人間のものではありません。しかし悪霊の霊感した表現は,軍隊の先頭にたつこれらの支配者をどこへ導いていますか。ヘブル人であったクリスチャンの使徒ヨハネはその場所つまり事態をハルマゲドン(一部のほん訳によるとアルマゲドン)と呼んでいます。それは地の支配者たちとその軍隊が最後の戦争を決定的に行なう場所です。彼らの共通の敵はだれですか。だれに敵対しているのですか。それは全能の神です。ゆえにこれは「全能なる神の大いなる日(の)戦い」と呼ばれています。それはだれにとって大いなる日となりますか。王たちや軍隊ではなく全能の神にとってです。この戦いはハルマゲドンにおいて戦われるゆえに,しばしばハルマゲドンの戦いと呼ばれています。
18 (イ)諸国家が神に敵対して戦うと言っても,それはなぜ笑いごとではありませんか。(ロ)どんな重要な点で,諸国家は神のみこころを行なっていませんか。
18 地上の王や軍隊が,宇宙の創造者である見えない神と戦うということを聞いて笑う人がいますか。人間が神と戦った例は人類史に記録されており,これらの実例は嘲笑する人の口をふさいでしまいます。紀元前16世紀のエジプトのパロは神と戦って滅びました。紀元前8世紀にアッシリア帝国のセナケリブ王はやはり神と戦い,18万5000人の兵士を一晩で失っています。では今日はどうですか。今日,地上の支配者たちとその軍隊は現代科学の作り出したものによって全人類の生存をおびやかしています。そのことにおいて彼らは神のみこころを行なっていますか。世界の指導者たちは対立する諸国家をそれぞれ維持することによって全人類を,分裂と相互の憎しみの状態に陥れています。軍隊を擁する世界の指導者の行ないは神のみこころと一致していますか。
19 (イ)「神と国のために」ということばを口にしても,諸国家はそれぞれ自国に対して何をしていますか。(ロ)したがって国々はどんなあかしを受け入れませんか。
19 彼らは愛国主義者らしく「神と祖国のために」というスローガンを唱えるかもしれません。しかし人間の支配者は自分たちの国が神の手に帰するのを阻止していませんか。創造者がみずからの創造物であるこの地球を,そして国々を所有することを拒んでいませんか。諸国家がそれぞれの主権を堅く保持している限り,国々は地に対する神の正当な主権に挑戦していませんか。国々は,全地の支配が創造者なる神すなわち宇宙主権者の手に帰することを,その軍隊によって阻止しようとしていませんか。そうです,そうであるからこそ諸国家は「この御国の福音」を受け入れないのです。イエス・キリストは,現存する事物の制度に終わりが臨む前にすべての国の民に対するあかしとしてこの福音が全世界に宣べ伝えられると言われました。―マタイ 24:14。マルコ 13:10。
20,21 (イ)聖書が明白にしているように,キリスト教国と異教国の支配者はだれに敵対して戦いますか。(ロ)その証拠に黙示録 19章11節から16節にはなんと述べられていますか。
20 王たちとその軍隊はハルマゲドンにおいて全能の神に敵対するために心を合わせ,戦列をととのえています。神ご自身の本,聖書によれば,全地の支配者とその軍隊,その支持者がハルマゲドンにおいて戦うのは,神と神の御子すなわち地の将来の王に対してです。そのことには一点の疑いもありません。聖書巻末の本は,キリスト教国と異教国の支配者に面と向かって,この事実を宣言しています。彼らがそれを読まず,また,それが自分たちに適用されるのを悟ろうとしないならば,ここにそれを述べることにしましょう。
21 「またわたしが見ていると,天が開かれ,見よ,そこに白い馬がいた。それに乗っているかたは,『忠実で真実な者』と呼ばれ,義によってさばき,また,戦うかたである……その名は『神の言』と呼ばれた。そして,天の軍勢が,純白で,汚れのない麻布の衣を着て,白い馬に乗り,彼に従った。その口からは,諸国民を打つために,鋭いつるぎが出ていた。彼は,鉄のつえをもって諸国民を治め,また,全能者なる神の激しい怒りの酒ぶねを踏む。その着物にも,そのももにも,『王の王,主の主』という名がしるされていた…。
22 黙示録 19章17節から21節によれば,戦いをする地上の者たちはどうなりますか。
22 「なお見ていると,獣と地の王たちと彼らの軍勢とが集まり,馬に乗っているかたとその軍勢とに対して,戦いをいどんだ。しかし,獣は捕えられ,また,この獣の前でしるしを行って,獣の刻印を受けた者とその像を拝む者とを惑わしたにせ預言者も,獣と共に捕えられた。そして,この両者とも,生きながら,硫黄の燃えている火の池に投げ込まれた。それ以外の者たちは,馬に乗っておられるかたの口から出るつるぎで切り殺され,その肉を,すべての鳥が飽きるまで食べた」― 黙示 19:11-21。
23 ハルマゲドンにおいてどのように「神の大宴会」が開かれますか。神はだれによって立証されますか。どの点において?
23 霊感された聖書の預言によれば,これがハルマゲドンの最後の戦いです。地の支配者たちや軍隊はこの戦いからなんの栄光も受けないでしょう。勝利を収める王の王,主の主の口から出るさばきの剣は彼らに滅びを宣告し,天使の軍勢がその刑罰を執行します。ハルマゲドンで滅びる神の国の敵対者は王すなわち支配者とその軍隊だけではありません。神の天使のことばによれば,将軍,勇者,馬と馬に乗る者,自由人,どれい,大いなる者と小さき者も滅びを受けます。彼らは葬られず,その死体は腐肉をついばむ鳥のために開かれる神の「大宴会」に供されるでしょう。この滅びは神の御手によるものだからです。(黙示 19:17,18)全能の神の「大いなる日」の勝利はこのような結末となります。王の王,主の主イエス・キリストを用いて,全能の神は,ご自身の主権を立証されます。
24 (イ)今日,諸国家はどんな戦争を回避することに努めていますか。(ロ)人々がハルマゲドンから救い出されることを切実に必要としているのはなぜですか.
24 この預言的な黙示の光に照らして,私たちは前途にあるものの重大さを認識しますか。来たるべきハルマゲドンの戦いは,人類がかつて経験したことのない艱難の最高潮となります。地上の支配者は諸国家間の全面戦争を回避しようと努めているにすぎません。しかし創造者なる全能の神とのこの大戦争を避けようとは努めていないのです。それで悪霊の霊感する宣伝の表現にあやつられて,人間の支配者はその軍隊と人類の他の者をどこに導き入れていますか。それは滅びです。神の側から臨もうとしている滅びです。現存する事物の制度とその支持者がのがれる道はありません。人々はハルマゲドンから救い出されることが必要です。その必要は全く明白ではありませんか。
25,26 (イ)ハルマゲドンにおいてだれが王の王,主の主であることが明らかになりますか。どのように?(ロ)マタイの福音書 24章19節から39節において,彼はこの艱難の時とその最高潮を預言し,どんな警告を与えましたか。
25 犠牲の死を遂げてのち復活し,天で栄光を受けられたイエス・キリストは,ハルマゲドンの戦いをする使命を与えられています。かつて犠牲となった「神の小羊」は,そのときこそ王の王,主の主であることを立証するでしょう。地上の王や主でキリストに立ち向かい,勝利を得る者はひとりもいないからです。(ヨハネ 1:29,36。黙示 17:14)神の最大の預言者としてキリストはこのハルマゲドンの戦いを予告されました。ハルマゲドンの名をあげ,それを描写した黙示録は1900年前に神からキリストをとおして授けられたからです。(黙示 1:1; 22:16,20)それのみならず,エルサレムの城壁の外で犠牲の死を遂げる3日前に,キリストは今の世に臨んでいる艱難と,ハルマゲドンにおけるその最高潮のことを預言し,それが未曾有の艱難であることを次のように述べられました。
26 「その日には,身重の女と乳飲み子をもつ女とは,不幸である。あなたがたの逃げるのが,冬または安息日にならないように祈れ。その時には,世の初めから現在に至るまで,かつてなく今後もないような大きな患難が起るからである。もしその期間が縮められないなら,救われる者はひとりもないであろう。しかし,選民のためには,その期間が縮められるであろう……その日,その時は,だれも知らない。天の御使たちも,また子も知らない,ただ父だけが知っておられる。人の子の現れるのも,ちょうどノアの時のようであろう。すなわち,洪水の出る前,ノアが箱舟にはいる日まで,人々は食い,飲み,めとり,とつぎなどしていた。そして洪水が襲っきて,いっさいのものをさらって行くまで,彼らは気がつかなかった。人の子の現れるのも,そのようであろう」― マタイ 24:19-39。
27 人命の喪失という点で,ノアの時代の洪水とハルマゲドンの戦いはどのようにくらべられますか。
27 ノアの時代の大洪水は当時の人にとって未曾有の大災害でした。それは人間の創造から1656年後のことです。当時の世界人口は,洪水から4300年以上を経た今日とくらべてずっと少なかったことでしょう。したがってもっと大ぜいの人の生命がおびやかされています。ノアの時代の洪水と同じくハルマゲドンの戦いは全地に影響を及ぼすからです。どんな国,また地球上の,人の住むどんな土地も免れることはできません。反対者つまり神の国と神から油そそがれた王イエス・キリストの側にいない者は,ひとりも見すごされないでしょう。その時に生命を失う人間は人類史上に例を見ないほどおびただしい数に上ります。
28 ハルマゲドンにおいて人は無差別に殺されますか。
28 これが第三次世界大戦であればミサイル,細菌兵器,毒ガス,核兵器によって無差別の大量殺りくがくりひろげられるでしょう。しかし,そのような混乱や偶発的また無差別の殺りくが起こるのではありません。ハルマゲドンにおいて,エホバ神は戦士イエス・キリストを用い,ご自身の敵に対して戦われます。それは欺かれた世の友となっている人々に対してであって,神ご自身の友に対してではありません。ノアとその家族あわせて8人の人間は,40日にわたって全地に臨んだ大洪水のあいだ箱舟の中にいました。そのことを心にとめてください。それは希望がさしのべられていることを表わしています。
29 (イ)イエスがその再臨在をノアの日とくらべられたことは,生き残る希望があることをどのように示していますか。(ロ)人間に臨む災害のうちで,ハルマゲドンの戦いがその後も二度とない最大のものであるのはなぜですか。
29 では全能の神の大いなる日の戦いを生き残る人が地上にいるのですか。文字にしるされた,全能の神の絶対確実なことばは,生き残る人がいることを述べています。イエス・キリストはその再臨在およびご自分がハルマゲドンの戦いを始められる時のことを,洪水の臨んだ時のノアの時代にくらべられました。したがって8人が洪水に生き残ったとすれば,人の子の再臨在とそれに伴う出来事にも生き残る人がいるはずです。聖書におさめられた霊感の手紙2通を書いた使徒ペテロはこう述べています。神は「古い世界をそのままにしておかないで,その不信仰な世界に洪水をきたらせ,ただ,義の宣伝者ノアたち8人の者だけを保護された」。(ペテロ第二 2:5)きたるべきハルマゲドンの戦いは大洪水あるいは「世の初めから現在に至るまで」のどんな災害よりも大きな艱難です。そのような艱難がその後二度と起こることはありません。なぜならその必要はないからです。ノアの時代におけると同じく,ハルマゲドンの戦いを生き残る人々はその中から助け出されねばなりません。助け出される人がいることでしょう。