偽りの宗教に対する神の裁きの執行
「さあ,きなさい。多くの水の上にすわっている大淫婦に対するさばきを,見せよう」― 黙示 17:1,新口。
1 各人にはどんな権利がありますか。この点において他の人にはどんな義務がありますか。
自分の選ぶ宗教を実践する権利はだれにでもあります。極端に不道徳とかわいせつ,あるいは社会の良識に反する宗教を持つというのでなければ,この事は今なお真実です。自分の宗教を選んで実践する各人の権利を,すべての人が尊重しなければなりません。すなわち宗教に関しては寛容を示すことが必要です。
2 (イ)宗教上の寛容は何を意味しませんか。(ロ)ヒンズー教の一著者は,多くの神々の名前についてどんな見解を述べていますか。どんな疑問が生じますか。
2 すべての人が持つ宗教上の権利を認め,各人の宗教上の行為に干渉しないといっても,それは私たちが他の人の宗教を是認するとか,あるいは他のすべての宗教をよいものと認めるという意味ではありません。宗教的に寛容であっても,私たちはすべての宗教が正しく,有益であるとは考えません。すべての宗教が永遠の幸福な将来に通ずる道とはならず,どんな崇拝をしてもその神を永遠に楽しめるわけではないのです。またいろいろな名の神があるにしても結局は同じひとつの神を崇拝しているのであって,神に近づく道あるいは宗教的な儀式が違うだけなのだ,とよく言われますが,私たちはその考えにも同意できません。最近ヒンズー教に関する本の中に次のことが出ていました,「人の名前が人格とは無関係なように,神の名前は宗教に必須なものではない。……エホバ,バグワン,イシワール,アラー,ハリ,シバ,ラマその他何と呼んでも,人はおのおの育てられた環境に従って,宇宙の神秘および崇拝の観念をそれぞれ神に結びつけているだけで,名前は違っても神の本体は同じである」。a しかしこれは正しいですか。異なる神々の名前は同じ由来を持っていますか。異なる名を持つ神をそれぞれ崇拝している人々は,同じ神のことを考えていますか。
3 (イ)間違った宗教を暴露するのは,なぜ悪いことではありませんか。(ロ)このように暴露する際には,どんな根拠を持たねばなりませんか。
3 偽りの宗教があるのではありませんか。別の宗教が間違ったものであると言い,またそのことを示すのは,宗教の迫害ではありません。知識のある人が特定の宗教の間違っていることを公に暴露し,偽りの宗教と真の宗教との相違を他の人々に示すのは,宗教の迫害ではありません。しかし偽りの宗教の間違っていることを暴露し,また説くために,真の崇拝者は権威ある判断の手段,絶対に間違うことのない基準を持つことが必要です。偽りの宗教を公に暴露するのは,報道のあやまりを明らかにするよりも有益なことです。それは宗教の迫害ではなくて公共に対する奉仕であり,人々の永遠の生命と幸福に関連しています。それでもなお人々には選択の自由が与えられています。
4 真の宗教を持つ人は何をできるはずですか。
4 宗教を実践するからには,それが真実で正しい宗教であることを確信しているのは当然です。自分の宗教だけが正しい宗教であるものと信じていても,それをひとりよがりときめつけることはできません。しかしその人は自分の宗教が唯一の正しい宗教であり,永遠の祝福をもたらすという事を証明できなければならず,そうでなければせっかくの信仰も根拠のない軽言となります。
5 (イ)すべての宗教が正しいならば,何が見られるはずですか。(ロ)すべての宗教が正しいわけではありません。その事はどうして確かですか。
5 すべての宗教が真実で正しいとは言えません。正しい宗教すなわち至上の英知である神を崇拝する正しい方法は一つしかないのです。こう言うと意外に思う人があるかも知れません。しかしすべての宗教が正しいならば,どんな宗教を持っても向上と安全,永遠の益がもたらされるはずです。偽りの宗教は退廃と堕落という悪い結果をもたらします。この世において悪い実を生み出す偽りの宗教が,どうして人を救うことができますか。いまの世で悪い実を生み出している宗教が世界を向上させ,より良い世界をつくってそこに人々を導き入れることはできないでしょう。全部の宗教が正しいはずはありません。そのすべては互に矛盾しているからです。しかし本当に正しい宗教は他のすべての宗教と矛盾しなければなりません。
6,7 (イ)真実の科学は何を明らかにしていますか。(ロ)神のことばは,宇宙の創造の背後に神の知恵のあることをどのように示していますか。
6 従って正しい科学がひとつしかないのと同じく,正しい宗教もひとつです。19世紀前,正しい宗教をすすめ,学問もあった一人の人は「偽りの『知識』による反対論」を避けるようにすすめました。偽りにも科学また知識と呼ばれたものを受け入れたために,真の信仰から離れた人が多かったからです。(テモテ前 6:20,新口)唯一の正しい宗教は,単に科学と名づけられたものとではなく,証明された科学と完全に調和しなければなりません。
7 証明ずみの正しい知識すなわち科学は,宇宙の法則を明らかにしています。全創造のすばらしい調和と物質宇宙の法則は,科学によってますます明らかになってきました。宇宙の秩序と調和は科学の進歩と共にますます明らかになっていますが,たとえ肉眼をもってしても,全く調和のとれた宇宙の創造主なる神はおひとりであることがわかります。宇宙の調和が神の英知によってのみ可能なことは,昔しるされた次の言葉に言い表わされています。これは至上の創造主なる神の存在を否定した人々に対して述べられた言葉です。「神について知りうる事がらは,彼らには明らかであり,神がそれを彼らに明らかにされたのである。神の見えない性質,すなわち,神の永遠の力と神性とは,天地創造このかた,被造物において知られていて,明らかに認められるからである。したがって,彼らには弁解の余地がない」。(ロマ 1:19,20,新口)ではこの事からどんな結論をひき出すべきですか。
8 (イ)唯一の正しい崇拝である宗教は,どんな要求にかなわなければなりませんか。(ロ)真の崇拝はなぜ必らず勝利を得ますか。
8 至上なる全能の神はおひとりであり,それは真の宗教が唯一つであることを意味します。それは唯一の至上者である全能の神を崇拝する宗教です。この宗教は正しい信条に基づき,どこから見ても調和しています。それは本当の科学が調和していて内部に矛盾を持たないのと同様です。唯一の神の真の宗教は,自己矛盾を生ぜず,内部で分裂していません。それ自体の中に分裂,矛盾,不一致があるならば,その宗教は成り立たないでしょう。それは純然たる真理ではあり得ず,宇宙の科学的な法則とも合わないでしょう。また長い間にわたる真の宗教と偽りの宗教との争いに勝つはずがありません。しかし真の宗教は勝ちます。真理を滅ぼすことはできないからです。その理由で,世界には偽りの宗教が沢山あるにも拘わらず,真の宗教はたとえ孤立していても今日まで生きつづけてきました。全能の神がご自身の宗教を存続させないはずはありません。
9,10 (イ)真の崇拝をつづけた家系の最後の人はだれでしたか。なぜその人が最後なのですか。(ロ)そのかたは,エホバに専心の献身をすることをどう考えましたか。
9 人類が始まって四千年のあいだ,真の神の崇拝を代々守ってきた家系が存在しました。その家系の最後の人はイエス・キリストです。イエスは真の神以外の何者をも崇拝することを拒絶しました。真の神とその宗教に敵対したサタンに答えてイエスは言われました,「サタンよ,退け。『あなたの神エホバを崇拝し,彼のみに聖なる奉仕をささげねばならない」と書かれている』」。ここでイエス・キリストは,申命記 5章9節,6章13節にしるされた預言者モーセの律法を引用されました。律法のもとの言葉は,これらの節において神のみ名がエホバであることを告げています。
10 イエス・キリストは結婚せず,真の神エホバの崇拝を継がせるための家族を持ちませんでした。エホバ神の霊感によって書きしるされた預言によって,イエスはご自分が真理のために殉教者の死を遂げることをご存知だったのです。そこでイエスはご自分の死後,真の崇拝がひきつづき行なわれるように,忠実な追随者をお集めになりました。―ヨハネ 18:37。
11 イエス時代のあるユダヤ人は,どんな宗教の変化を経験しましたか。
11 イエスに選ばれた12使徒は,その時までモーセの律法に従って生活することに努めていました。しかしいまシモン・ペテロとその兄弟アンデレは宗教を変え,ユダヤ人以外の人と一切かかわりを持たなかったユダヤ人の宗教からクリスチャンすなわちイエス・キリストの追随者へと転じたのです。使徒ヨハネとヤコブも同様にして宗教を変えました。他のすべての使徒も同様です。そのすべては生来のユダヤ人でした。使徒パウロとなったタルソのサウロも以前はユダヤ教すなわちユダヤ人の宗教に従い,クリスチャンを迫害しました。しかし奇跡を経験してユダヤ教からキリスト教に転じました。(ガラテヤ 1:13-16。コリント後 11:22,23。ピリピ 3:5,6)しかし使徒たちがこのように宗教を変えたといっても,聖書が間違っていたというわけではありません。
すべての宗教をはかる手だて
12 (イ)イエスの言葉によれば,真理をはかる尺度は何ですか。(ロ)イエスがこの事を言われたとき,このような真理はどれだけありましたか。
12 事実を言えば聖書は全く正しいのです。使徒をはじめ改宗したユダヤ人は,ヘブル語聖書が正しいことを示すいっそうの証拠,時代に即した証拠を提出したことになります。当時,ユダヤ人のクリスチャンは創世記からマラキ書まで,今日の分け方で39冊より成るヘブル語聖書を持っていました。イエス・キリストご自身もヘブル語聖書の真実性を絶えず強調され,その預言の成就をお示しになりました。イエスは弟子たちと共に祈った最後の祈りの中で,ヘブル語聖書について次のように言われました,「真理によって彼らを聖別して下さい。あなたの御言は真理であります」。イスラエル民族から出てイエスの追随者となったユダヤ人の弟子たちも,指導者であるイエスの手本にならい,ヘブル語聖書が神の霊感による真実のものであることを証明しました。―ヨハネ 17:17,新口。ルカ 24:25-27,44-46。使行 17:2,3。
13 (イ)イエスの初期の弟子たちは,ヨハネ伝 17章17節に記録されたイエスのさとしにどのように従いましたか。(ロ)完結した神のことばは何から成り立っていますか。今日に至るまでそれは何の標準ですか。
13 それでキリスト教に改宗したこれらのユダヤ人は,人間がヘブル語聖書とエホバの崇拝につけ加えた宗教的言伝の間違いを暴露し,この点においてイエス・キリストと同じことをしたのです。このような人間の言伝えは聖書と矛盾し,神の戒めを空しいものにしました。そこで彼らは霊感によるヘブル語聖書の39冊の本に固くつき従い,宗教的教えと行いの真偽を判断する基準としてそれを使いました。これら真実のヘブル語聖書と一致して27冊のクリスチャンの本が書かれました。それは使徒および弟子たち8人が霊感により,はじめギリシャ語で書いたものです。これらの本は霊感によるヘブル語聖書に加えられ,66冊から成る聖書全巻が完成しました。イエス・キリストや1世紀の弟子たちにならって,今日の私たちも宗教の真理をためす基準として神から与えられた霊感の本,聖書を使います。
神は偽りの宗教に反対
14 神もキリストも偽ることがないゆえに,偽りの宗教をどう見られますか。
14 唯一の生ける真の神は偽らず,また偽ることができません。(テトス 1:1,2。ヘブル 6:18)神は真理に固く立って動かされることがないため,あらゆる偽りの宗教に反対であり,御子イエス・キリストも同様です。聖書の最後の本の中で神とみ子は使徒ヨハネを通して私たちに預言をお与えになりました。その預言はあらゆる偽りの宗教が倒れて滅びることを象徴的に描いています。
15 (イ)偽りの宗教の源はだれですか。その者はどんな名前で呼ばれていますか。(ロ)全世界で偽りの宗教が支配的なのはなぜですか。
15 唯一の真の宗教は唯一の生ける真の神エホバから出てエホバを神として崇拝します。同様にあらゆる偽りの宗教は,結局のところこの世すなわち組織制度の偽りの神である見えない霊者を崇拝するものです。(コリント後 4:4)この霊者は偽り者であり,偽りの父であって,真の神また創造主に敵対しているゆえに,偽りの宗教の源です。聖書の最後の本の中でこの霊者は,「巨大な龍……悪魔〔そしる者〕とか,サタン〔敵対者〕とか呼ばれ,全世界を惑わす年を経たへび」と呼ばれています。(黙示 12:9,新口)み子イエス・キリストを通して真の神を忠実に崇拝する人々は別として,サタン悪魔は偽りの宗教という手段により「全世界を惑わ」しています。そのわけで偽りの宗教は世界中にひろまっているのです。
16 (イ)真の宗教と偽りの宗教の間には,平和な関係がありますか。(ロ)真の宗教が勝ちを得るのはなぜですか。
16 真の神も偽りの神も互に他方の宗教を容認しません。真の神は偽りの神サタン悪魔の宗教に反対し,一方で偽りの神はエホバの崇拝に敵対して,真の宗教の迫害にその僕をかり立てます。従って何世紀ものあいだ,真の崇拝者は偽りの宗教家の手で苦しめられてきました。偽りの宗教はいま力を持ち,多くの信者を擁しています。しかし最後に勝つのはどちらの宗教ですか。答は一つしかありません。真理を滅ぼすことはできないゆえに,敗北をこうむって滅びるのは偽りの宗教です。真の神が偽りの神に勝つのと同様それは確かなことです。
17 (イ)大洪水に関する聖書の記録からわかるように,真の神にはどんな力がありますか。(ロ)では神が偽りの宗教の存在を今日まで許したのはなぜですか。
17 真の神は一瞬のうちに偽りの宗教を一掃し,ご自身の崇拝者を反対と迫害から解放できます。ノアの時代に神は全地を洪水でおおい,偽りの宗教をしていた人々を滅ぼしました。真の崇拝をした8人すなわちノアとその家族7人が生き残りました。(創世 6:5–7:24)全地をおおった大洪水以来,神は今日まで偽りの宗教の存在を許してこられたに過ぎません。神はご自身の崇拝者の誠実と忠節をためすために,偽りの宗教の存在をお許しになりました。神の霊感によって書かれた聖書によれば,神は何時までも偽りの宗教のはびこることを容赦しません。ご自身が創造して所有するこの地の上で偽りの宗教の行なわれることを,神は何時までお許しになるのですか。
18 偽りの宗教の終りが近いことは,どうしてわかりますか。
18 エデンにおいて最初の完全な人間が創造主なる神に罪を犯してよりノアの時代の大洪水まで1656年を経ていることを,聖書は示しています。洪水のはじまりから今日までの時を数えると,その2倍以上すなわち4300年以上になります。世界各地の様子を伝える資料によれば,今日の世界の状態は,偽りの宗教を実践した人々が大洪水によって滅ぼされる前に存在したはずの状態よりも悪くなっています。イエス・キリストの預言は,偽りの宗教もろとも悪魔の組織制度が何時終るかを示しています。その預言の中でイエスは,悪魔の世の終る前,地上には大洪水前と同じような状態が存在することを指摘されました。(マタイ 24:36-39。ルカ 17:26,27)イエス・キリストの預言した出来事や状態が1914年以来,歴史の事実となってきたこと,今の時代が大洪水前のノアの時代に似ていることを思えば,あらゆる偽りの宗教の終る時は間近いに違いありません。
それはどのように始まったか
19 大洪水後,だれが偽りの宗教を始めましたか。偽りの宗教は,洪水の物語についてどんな偽りを語っていますか。
19 では大洪水の後,偽りの宗教はどこで,どのように始まったのですか。それはノアの曾孫ニムロデの時代のことで,バベルすなわちバビロンの町においてでした。ニムロデはエホバ神に敵対した狩人で,バビロンの王となり,狩人の英雄となった人です。(創世 10:8-10。歴代上 1:10)ここから始まったバビロンの宗教は強大になり,ひろまりました。しかしバビロニア人はその宗教の起源を天地の創造に求めました。それでバビロンの宗教には神秘的な創造説すなわち宇宙の創造に関する哲学があり,またその生き延びた大洪水に関する哲学がありました。従ってそれは初めの宗教であり,真の宗教であると主張したのです。
20 偽りの宗教があらたにひろまったことに対しノアとセムはどのように正しい見方をしましたか。
20 しかしノアおよびノアと共に大洪水を生き残った息子のセムは宗教上の反逆者に加担せず,バベルの建設またこの町と塔の建設の背後にあった社会的,政治的,宗教的な思想をひろめることに加わりませんでした。ノアとセムはバベルすなわちバビロンで祭り上げられた新しい神の崇拝に加わらなかったのです。二人は創造主にして洪水をもたらしたかたである唯一の真の神を崇拝しつづけました。それでバビロニアの創造説に出てくる偽りの神々の崇拝から遠ざかっていました。
21 真の宗教はだれの手によってつづけられましたか。
21 このようにして偽りの宗教はバベル(バビロン)で始められました。真の崇拝はノアとセムの住んだところでつづけられ,セムの生涯は「エホバの友」と呼ばれたヘブル人アブラハムの時代に及びます。(ヤコブ 2:23。歴代下 20:7。イザヤ 41:8)アブラハムはセムの子孫の中でも傑出した人で,エホバというみ名を持つ真の神の崇拝は,アブラハムによって地上に存続しました。
22,23 (イ)真の神はバビロンから始まった宗教を是認しないことを,どのように示されましたか。(ロ)偽りの宗教はニムロデの都を何と呼びましたか。しかしエホバはこの町を何と呼ばれましたか。それは何を意味しますか。
22 バビロンの偽りの宗教を是認しなかった神は,バベルすなわちバビロンをも是認しませんでした。バベルおよび天に至らしめようとしたバベルの宗教的な塔は神の是認を得ませんでした。全能の神はそのことを示すため,建築者の言語を乱して彼らを散らしました。明らかにニムロデ自身の言葉も変化して,彼自身,純粋のヘブル語を話せなくなったに違いありません。しかし新しい言葉を使ったかどうかは別として,ニムロデは偽りの宗教をつづけ,その都は新しい言語のひとつで「神の門」を意味する名で呼ばれました。もちろんこれはニムロデが反対したエホバ神の門ではなく,新しい偽りの神の都となった宗教的な中心地でした。
23 文字に書かれた神のことばは,原語のヘブル語でニムロデの都をバベル(ギリシャ語でバビロン)と呼んでいます。このヘブル語の名バベルは「神の門」を意味せず,「混乱」を意味します。この町に臨んだ神の裁きのゆえに,ヘブル語でこの名がつけられたのです。バベルすなわちバビロンに栄光を与えようとした偽りの宗教は,その言語でこの町を「混乱」とは呼ばず,彼らの神を町の名前の中に持ち込みました。セムの歴史の中でこの町はバベル(「混乱」)と呼ばれています。ヘブル語またギリシャ語で聖書を書いた他の人々も同様な呼び方をしています。―創世 10:2–11:10。詩 137:1,8。マタイ 1:11,12,17。
24 バベルにおいて人々の言語が乱されてのち,偽りの宗教はどんな道をとりましたか。それで世界的に何が起こりましたか。
24 建設者が混乱させられ,散らされても,バビロンの偽りの宗教は滅びませんでした。むしろ人々の散らされたことによって偽りの宗教はひろまり,異なった言語を使って行なわれるようになりました。それで神々は異なる名を持つようになったのです。バビロンの建設者が散らされた結果,その宗教はいろいろな言語でアジア,アフリカ,ヨーロッパに伝わり,バビロンのみならず全世界で行なわれるようになりました。こうして祭司制度や宗教行事をともなう偽りの宗教の世界帝国が設立されました。この帝国を作りあげている諸宗教は言語,事物の名称,僧服を異にしていますが,その基礎は同じであって,すべてバビロンで始まった偽りの宗教に由来しています。
25 世界の諸帝国は,どのようにバビロンの宗教の影響を受けましたか。
25 以来バビロン的宗教の世界帝国は,神の許しによって存続してきました。それは聖書の中で歴史的にも預言的にも採りあげられている七つの政治的世界強国を支配してきました。世界を支配した順序にそれらをあげると,(1)エジプト(2)アッシリア(3)バビロニア(4)メデア-ペルシャ(5)ギリシャすなわちマセドニア(6)東西ローマ帝国を含むキリスト教の部分と異教の部分をあわせ持つローマ(7)イギリス-アメリカとなります。もっとも政治的に深い結びつきを持つイギリスとアメリカは,バビロン的な宗教ではなくキリスト教を実践すると主張します。
26 (イ)キリスト教国がバビロン的な基礎の上に立っていることを認めない人があるのはなぜですか。(ロ)偽りの宗教の世界帝国が永続しないことは,どのように確かですか。
26 これらすべての世界強国において行なわれた宗教は,七つの世界強国の領土の外にあった国々で行なわれた宗教をも含めて,バビロンにその基礎をおいています。そのすべてはこの世の偽りの神の見えない支配を受けました。キリスト教国もその例外ではありません。ただその宗教のいろいろな面にキリスト教また聖書の名を冠しているため,キリスト教国の宗教家はその事を悟らないのです。偽りの宗教の世界帝国がこのような起源と基礎を持っているために,聖書の最後の本の中でそれは大いなるバビロンとして象徴的に描かれ,またそのように呼ばれています。そのことは昔のバビロンが栄光を失って倒れ,全く滅びたのと同じように,大いなるバビロンも必らず倒れて滅びることを物語っているのです。
27 ソ連の新聞の批評にも拘わらず,共産主義のソ連を含めて,111の国連加盟国はどんな共通のものを持っていますか。
27 バビロン的宗教の世界帝国は,国際連合と呼ばれる組織が世界の舞台に登場した今日に至るまで,次々に起きた七つの世界強国を支配してきました。このバビロン的宗教の帝国主義が長いあいだ支配することは,聖書の最後の本,黙示録の17章に預言的に示されています。今日,国際連合には111の国が加盟しており,そのすべては急進的な赤い宗教をも含めて何らかの宗教を実践しています。赤い宗教における国家崇拝,英雄崇拝は,曾祖父の神エホバに反逆した狩人ニムロデを崇めたバビロンの英雄崇拝に類似しています。ソ連に関して1963年アメリカ年鑑の宗教の項(692頁)に次の事が出ました。
1962年のソ連の新聞は,宗教がいまなおソ連の社会で大きな力を持っていることを例によって批判し,反宗教運動の強化をすすめた。1962年,不法な宗教活動を行なった廉で20人以上の五旬節派の牧師また少なくとも7人のエホバの証者が投獄された……
赤い獣の神秘
28 七つの頭と十の角を持つ海の獣は何を表わしていますか。どんな奇妙な事が起きますか。
28 黙示録 17章にしるされているところによれば,クリスチャン使徒ヨハネは「神を汚すかずかずの名でおおわれ,また……七つの頭と十の角」とがある「赤い獣」を見ました。黙示,(17:3,新口)この獣がどこから来たか,またどのように出現したのかは,ここで明らかにされていません。しかし全体的に見てこれはヨハネが前に幻の中で見た別の獣に似ています。龍すなわちサタン悪魔はこの獣が海から上るのを見て位と権力と大きな権威をこれに授けました。海から上ったこの獣にも七つの頭と十の角があり,それらの角には十の冠がありました。これより前に書かれたヘブル語聖書の預言の光に照らしてみると,この海の獣は古代バビロンの時代から今日まで地上に続いてきたサタン悪魔の,見える政治組織を表わします。海の獣の七つの頭は先に述べた七つの世界強国,すなわち古代エジプトの世界強国から今日の英米世界強国に至るまで順に世界支配の主導権を握った七つの強国を表わします。不思議なことに,この海の獣の像が作られました。―黙示 13:1-7,14,15。
29 (イ)それで黙示録 17章3節の赤い獣は,何の像ですか。ゆえに聖書に使われている象徴に従えば,それは何であると言えますか。(ロ)黙示録 17章7,9-11節の獣について,ヨハネは何と述べていますか。
29 色を別にすれば,黙示録 17章の赤い獣は,七つの頭と十の角を持つ,海から上った獣とそっくりです。聖書に使われている象徴に従えば,赤い獣は政治組織ということになります。その頭は海の獣の頭と同じ意義を持ち,従って過去および現在の七つの世界強国を象徴するのです。これら世強国の昔のものも,すべてそれらの残存勢力が今日に至るまで存在しています。使徒ヨハネに黙示をもたらした天使は,頭の持つ意義をこのように説明しています。天使は「獣の奥義」を説明して次のことを語りました,「智慧の心はここにあり,七つの頭は女の坐する七つの山なり,また七人の王なり。五人は既に倒れて一人は今あり,他の一人は未だ来らず,来らば暫時のほど止まるべきなり。前にありて今あらぬ獣は第八なり,前の七人より出でたる者にして滅亡に往くなり」。―黙示 17:7,9-11。
30,31 (イ)「一見」したところ類似の点があっても,赤い獣がローマを表わしていないことはどうしてわかりますか。(ロ)従ってこの赤い獣は何を表わしますか。その七つの頭は何を象徴していますか。
30 この赤い獣は何を表わしていますか。バチカン市のあるローマを表わしていますか。たしかにヨハネがこの幻を見たとき,ローマは第六の世界強国として支配しており,キリストの真の追随者を迫害する計画の一部としてヨハネをパトモス島に流しました。また当時のローマ市が七つの丘に建てられていたのも事実です。しかし山また王たちにたとえられている七つの頭は,ローマの七つの丘からそれぞれ治めたローマの七人の支配者を指しているのではありません。また当時までに五人が去り,一人が治め,あと一人が来ることになっていた七人の歴代のローマ皇帝を指すのでもありません。
31 この赤い獣は異教のローマ帝国ではありません。それはローマよりも古く,また遙かに大きなものを表わしています。それはバベルすなわちバビロンの時代に始まった悪魔の,見える政治組織全体を表わします。その七つの頭は七つの世界強国を指しています。その五つは当時までにすでに倒れ,第六のローマがヨハネの時代にあり,第七の英米世界強国はヨハネの死んだずっと後に現われることになっていました。
32 赤い獣の正体について,黙示録は他に何を述べていますか。ゆえにそれは何時,世界の舞台に現われますか。
32 赤い獣自体について,天使はそれが七つの世界強国から出たものであり,それ自体は第八の王すなわち8番目の世界強国であると述べました。聖書の中で7は完全を表わす数であり,8はこの完全数より一つ多いゆえに何か余分のものを表わします。赤い獣は第八の王すなわち世界強国の最後のものであるゆえに,それは英米の同盟から成る第七世界強国の成立後につくられる政治組織を指しています。大英帝国とアメリカ合衆国の同盟は,第一次世界大戦前にかなりの協力があったにしても,その著しいものは1914~1918年の第一次世界大戦中に見られたものが最初でした。
33 従って第八の世界強国を表わすものは何ですか。それが共産主義諸国でないことはどうしてわかりますか。
33 では最後のものであって,最も最近に世界の舞台に現われた,この第八の世界強国は何ですか。ボルシェビキがロシアを支配するようになったのは,第一次世界大戦の英米同盟以後,1917年11月のことですが,それでも第八の世界強国は強大な共産主義諸国ではありません。共産主義のソ連その衛星諸国は黙示録の描写に合いません。共産ブロックは「前の七人より出でたる者」すなわち以前の七つの世界強国から出ていないからです。ロシア帝国がこれら七つの世界強国の一部であったことは一度もなく,従って「前の七人より出た」最近の第八世界強国は国際共産主義ではありません。むしろそれは最初に国際連盟の形をとり,現在,国際連合の形をとっている平和と安全のための国際的な組織です。
34 黙示録 13章15節によれば,だれが,どの程度まで第八の世界強国を支援しますか。
34 英米から成る第七世界強国は,世界平和と安全をはかるこの国際組織を主になって擁護し,また支援してきました。黙示録 13章11-15節は,英米世界強国がこの国際組織を提唱し,またそれに生命の息を与えることを預言的に述べています。この組織は海から上った政治的な獣の像です。
35,36 黙示録 17章8節に示されている通り,ヨハネは第八の世界強国について更にどんな驚くべきことを知らされましたか。
35 このように見てくると,七つの頭を持つ赤い獣すなわち第八の世界強国は,消滅した国際連盟そして現在その後継者となっている国際連合の象徴に違いありません。それが二度現われること,すなわち二つの形をとることさえも預言されていました。その預言は赤い獣がどのように存在するようになったかを述べた黙示録 13章にではなく,黙示録 17章8節の次の言葉に見られます。
36 「あなたの見た獣は,昔はいたが,今はおらず,そして,やがて底知れぬ所から上ってきて,ついには滅びに至るものである。地に住む者のうち,世の初めからいのちの書に名をしるされていない者たちは,この獣が,昔はいたが今はおらず,やがて来るのを見て,驚きあやしむであろう」。
37 第八の世界強国のどんな行動が黙示録 17章8節の成就となったかを説明しなさい。
37 この赤い獣は底知れぬ所に行き,地上から一時,姿を消して,機能を停止しました。この事は何時起きましたか。歴史によれば,それは1939年9月,第二次世界大戦の勃発した時のことです。平和を維持し,少なくとも世界戦争を防止する目的で第一次世界大戦後に組織された国際連盟も無力でした。第二次大戦の始まった当初から,象徴的な赤い獣は無力なことを示しました。それは事実上,存在しなくなったのです。たしかにそれは死んだような無活動の底知れぬ所に行き,国際連盟規約は有名無実のものになりました。また連盟に加盟していなかったアメリカ合衆国が戦争にひき込まれ,再び英国の同盟国となることを妨げ得なかったのです。また戦争の終結と平和会議の開催を早めませんでした。戦争の終結を早めたのは連合軍の優勢な力と原子爆弾の登場でした。たしかに象徴的な赤い獣は1939年から1945年まで底なき所にいました。
38 赤い獣が再び現われたことは,エホバの証者を驚かせましたか。なぜ?
38 しかしまだ戦争のたけなわだった1942年,エホバの証者は赤い獣が底なき所から上ることを予想し,黙示録 17章8節に基づいて確信したこの予想を,勇気をもって公に知らせました。b この確信には根拠があり,従って予想は的中しました。第二次世界大戦がまだ完全に終っていなかった,1945年4月25日から6月26日まで,ナチ,ファシストとその同盟国を除く50ヵ国の代表を集めて国際連合の設立に関する会議が開かれました。その場所はどこでしたか。七番目の世界強国すなわちアメリカ合衆国のカリフォルニア州サンフランシスコです。この会議において国際連合憲章が50ヵ国の代表によって締結されました。
39,40 第八の世界強国を組織し,それに生命を与えたのはだれでしたか。それは何時から運営を始めましたか。
39 国際連合の設立にあずかって最も大きな力があったのは,どの国ですか。国際連盟を提唱してそれに生命を与えたのと同じ国,すなわち黙示録 13章11-15節に預言されていた二つの角を持つ英米世界強国です。国際連合は同様な手段により同じ目的を達成しようとする点において,国際連盟ときわめて類似しており,実質的に見て同じ赤い獣です。こうして赤い獣は底のない所から出てきました。
40 1945年10月24日,国際連合憲章は連合国の5大国を含む29ヵ国の批准を受け,これによって国連憲章は国際法となりました。ここで底なき所から上った象徴的な赤い獣は,財政上の困難に面しながらも今日に至るまで第八の世界強国として君臨してきました。赤い獣が世界の舞台に再び現われたことは,聖書の預言に通じていたエホバの証者を除いて世界中の人々を驚かせました。
41 世界指導者のどんな言葉から見て,国連はその前のものと同じく神を汚す名でおおわれていますか。
41 これらの人々は赤い獣の生き返ったことに感嘆しました。世界平和と安全を保証するものとしてこの獣の力に大きな信頼が寄せられており,大きな期待がかけられています。また聖書から見て神をけがす名前がそれにつけられました。なぜならば,神の国とメシヤすなわちキリストだけのものである権力とわざが,この「獣」に帰せられているからです。1919年のこと,国際連盟は由々しくも「神の国の地上における政治的表現」と呼ばれました。さていま連盟の後継者である国連は,平和をもたらす最善の手段,いやそれ以上に「平和実現の最後の希望」とさえ称されています。そこで今日私たちは使徒ヨハネが象徴によって見たもの,すなわち赤い獣は「神を汚すかずかずの名でおおわれ」ているのを見ているのです。赤い獣を称賛するこのような言葉は,偽りの崇拝をする人々を創造主エホバ神の崇拝に導かず,人間の作ったものの崇拝すなわち偶像崇拝へ導いています。それは政治的な像,世界平和と安全を目ざす国際的な組織の崇拝です。―黙示 17:3,新口。
それに乗る者
42 (イ)この獣を崇拝する人々はなぜ救われませんか。(ロ)どんな時宜を得た質問が提起されますか。その驚くべき答は何ですか。
42 赤い獣のこのような崇拝は,驚き怪しんでいる地の人々にとって救いとなりますか。そうではありません。その人々は「世の初めからいのちの書に名をしるされていない」からです。(黙示 17:8,新口)しかしその人々はエホバ神の十戒を教える宗教を持ちながら,なぜ十戒の第一と第二の戒めに反する偶像崇拝をしているのですか。黙示録は象徴的にその理由を告げています。それは赤い獣に女が乗っているためなのです。次のように書かれています。
43 (イ)獣に乗る女の様子を説明しなさい。(ロ)彼女の名前はなんですか。彼女は何に酔いしれていますか。
43 「御使〔ヨハネに現われた天使〕は,わたしを御霊に感じたまま,荒野へ連れて行った。わたしは,そこでひとりの女が赤い獣に乗っているのを見た。その獣は神を汚すかずかずの名でおおわれ,また,それに七つの頭と十の角とがあった。この女は紫と赤の衣をまとい,金と宝石と真珠とで身を飾り,憎むべきものと自分の姦淫の汚れとで満ちている金の杯を手に持ち,その額には,一つの名がしるされていた。それは奥義であって,『大いなるバビロン,淫婦どもと地の憎むべきものらとの母』というのであった。わたしは,この女が聖徒の血とイエスの証人の血に酔いしれているのを見た。この女を見た時,わたしは非常に驚きあやしんだ。〔もちろん感嘆したのではありません〕」― 黙示 17:3-6。
44 (イ)神の僕の血で酔いしれていることは,何を証明しますか。(ロ)大いなるバビロンという名には,どんな意義がありますか。
44 この女が「〔神の〕聖徒の血とイエスの証人の血に酔いしれている」という事は,何を証明しますか。それは女がエホバ神に敵対し,メシヤすなわちキリストである御子イエスに敵対していることを示しています。従ってこの女は真の崇拝,唯一の真の宗教を支持していません。その額の名は奥義ではあっても,女の正体を物語っています。その名前のおもな部分は,むかしエホバに敵対したバビロンの名です。しかしこの女は,ニムロデがユーフラテス河畔に建設した町よりも大きく,従って「大いなるバビロン」と呼ばれています。昔のバビロンの都は紀元前539年に滅びるまできわめて宗教的であり,偽りの崇拝の指導者でした。いまわかるように,神秘的な大いなるバビロンは七つの丘に建てられた異教のローマではなく,全世界をその支配下におさめているバビロン的な宗教の世界帝国です。
45 (イ)淫婦の坐っている水は何を表わしますか。彼女はどの位の間この水の上に坐ってきましたか。(ロ)この淫婦はこれまでにどんな敏捷さを示しましたか。
45 ヨハネに奥義を説明した天使が次のように語ったのは,そのためです。「あなたの見た水,すなわち,淫婦のすわっている所は,あらゆる民族,群衆,国民,国語である。あなたの見たかの女は,地の王たちを支配する大いなる都のことである」。(黙示 17:15,18,新口)赤い獣が偶像崇拝の像として現われるずっと前から,この女は象徴的な水の上に坐り,地の支配者たちの上に勢力をふるっていました。第一次世界大戦後,この象徴的な獣が現われるやいなや,彼女はその背によじのぼりました。彼女の宗教的権力をもってすれば,それは容易です。第二次世界大戦中,「赤い獣」が底なき所にはいった時にも,彼女は相変らず「多くの水の上」すなわちあらゆる民族,群衆,国民,国語の上に坐りつゞけ,「地の王たちを支配」しました。(黙示 17:1,新口)とくに英米世界強国の助けを得てこの「獣」が底なき所から出ると,大いなるバビロンは再びその背に乗り,今日に至るまでそこに坐っています。
46 この悪しき女は「淫婦どもの母」であることをどのように示しましたか。
46 この獣が政治組織すなわち世界強国であってみれば,彼女がその背にまたがるのも不思議ではありません。大いなるバビロンは淫婦であり,「淫婦どもの母」と呼ばれています。「地の王たちはこの女と姦淫を行い,地に住む人々はこの女の姦淫のぶどう酒に酔いしれている」と,神の御使は語りました。(黙示 17:1,2,新口)赤い獣は政治的な組織すなわち第八の世界強国を象徴し,その七つの頭は「七人の王」つまり七つの世界強国を象徴するゆえに,大いなるバビロンは以前の七つの世界強国や他にも「地の王たち」と姦淫を行なった通り,例によって赤い獣とも姦淫を行ないます。象徴的に言って獣と淫を結ぶこの女は,獣姦を犯しているのです。神の律法はこの忌むべき行いを罪に定めています。―レビ 20:15,16。
47 この淫婦はなぜ世界政治に関心を持っているのですか。世の政府の歓心を買うため,彼女はどんな事までしましたか。
47 彼女の姦淫は,彼女の宗教が政治と手を結び,自らを肥やすために政治とたわむれたことにあります。彼女は政治にきわめて大きな関心を持っていますが,それは自分自身の利益のために政治を支配し,政治家を利用するためなのです。彼女は王を即位させ,また退位させる権威を神から授けられているかに振舞います。彼女は政治支配者の淫婦となりました。また支配者の野心を遂げさせるために自らの宗教的権力を用い,人殺しと変らない軍隊を祝福し,利己的な戦争を聖戦ととなえ,人を殺すため戦場に出て殺された人々に天国行きの直通切符を与ました。彼女がきらびやかに身を飾っているのも不思議ではありません。
48 「地に住む人々はこの女の姦淫のぶどう酒に酔いしれている」と述べた言葉を説明しなさい。
48 しかし彼女が世の支配者と姦淫を行なったことから,一般大衆は何を得ましたか。それは次の言葉に述べられています,「地に住む人々はこの女の姦淫のぶどう酒に酔いしれている」。多額の報酬をくれる情夫すなわち政治支配者を喜ばせるために彼女が協力し,また祝福したあらゆる種類の利己的,野心的かつ貪欲な企てのために,人々は苦しめられてきました。大いなるバビロンの「金の杯」から飲まされたもの,すなわちあらゆる災,苦しみ,略奪,圧迫のために,人々は酔いしれ,よろめいています。苦しむ人々にとっては,それが神のみ心であると宗教家に言われても,苦しみが軽くされるわけではなく,その傷をいやされ,心に慰めを得るわけではありません。彼女の杯の中は汚れで満ちています。
49 バビロンの生み出した娘の組織とは何ですか。
49 大いなるバビロンはその姦淫によって私生児の母となりました。その子供たちは母親の道を踏み行ないます。彼女は「淫婦どもと地の憎むべきものらとの母」です。彼女は娘ともいえる組織をいろいろな国に生み出してきました。それは宗教組織が政府と手を結んで教会と国家の連合を形づくっていたり,あるいは宗教が政治組織と密接に結びついてめかけになっているものだったりします。彼女は神の目に憎むべきもの,たとえば寺院の後援を受けてその神域で売春を営む者,不正な利益の分け前にあずかるために行なうとばく行為,偶像崇拝などを生み出しました。
50 バビロンには色々の面で重い流血の罪があることを説明しなさい。
50 創造主なる神のみ前における重い流血の罪が大いなるバビロンの上にのしかかっています。その宗教的な力を用いて戦争を防止しなかったことに対しても責任があり,また敵同志になった信者が信者と戦う破目になっても一向に頓着せず,彼女が祝福して戦争の神の祭壇にささげた人々の血に対して責任があります。彼女は宗教の名によって迫害をし,残酷な宗教戦争をおこし,戦死者に天国の報いを約束して聖戦を宣言してきました。またいわゆる異教徒に対してだけでなく,彼女が炎と剣をもって抹殺しようとした宗教を持つ人々に対して,狂信的な十字軍をおこし,悪魔的な異端審問所を作りました。人類史上もっとも流血の甚しかった第一次および第二次世界大戦に,彼女が強力な役割をはたしたことは歴史に記録されています。このようにして大いなるバビロンが殺した人々は,おもに大いなるバビロンの宗教を持つ人々ですが,それでも人間は神に造られたものであって,神はその血に対する責任を求めます。
51 彼女は神に対してとくにどのように罪を犯しましたか。
51 宗教的な迫害を行なった大いなるバビロンは,とくにこの点で創造主なる神に対して罪を犯しました。使徒ヨハネはこの点における彼女の流血の罪に注意をひいています。「わたしは,この女が聖徒の血とイエスの証人の血に酔いしれているのを見た」。(黙示 17:6,新口)ニムロデの曾祖父ノアに対して,血を禁ずる神の律法が与えられているにも拘わらず,彼女は平気で血を飲んできました。(創世 9:3,4)大いなるバビロンは,神の聖徒とイエス,キリストの証人を異端呼ばわりし,バビロン的な宗教の社会をおびやかすものとして国家の手を借りて迫害し,死においやりました。こうして神の聖徒とイエスの証人の血を飲んで酔いしれてきたのです。
52 七人の天使の一人が次に述べたどんな言葉は,とくに興味深いものですか。
52 それでバビロン的な宗教の世界帝国に神の裁きの執行される模様が,苦しめられていた「イエスの証人」の一人に幻によって示されたのも,不思議ではありません。ヨハネは黙示録のこの部分を次のように紹介しています。「それから,〔神の怒りの盛られた〕七つの鉢を持つ七人の御使のひとりがきて,わたしに語って言った,『さあ,きなさい。多くの水の上にすわっている大淫婦に対するさばきを,見せよう。地の王たちはこの女と姦淫を行い,地に住む人々はこの女の姦淫のぶどう酒に酔いしれている』」。(黙示 17:1,2,新口)裁きはどのように執行されましたか。
裁きを執行する
53 そこでどんな裁きが行なわれますか。この裁きが執行されるのはどなたのみ心ですか。
53 ヨハネは次の言葉でそれを描いています,「あなたの見た十の角と獣とは,この淫婦を憎み,みじめな者にし,裸にし,彼女の肉を食り,火で焼き尽すであろう。神は,御言が成就する時まで,彼らの心の中に,御旨を行い,思いをひとつにし,彼らの支配権を獣に与える思いを持つようにされたからである」― 黙示 17:16,17,新口。
54 赤い獣の十の角は何を表わしますか。なぜ十ですか。
54 これら十の角は赤い獣の七つの頭についていました。その十の角は何を表わしていますか。天使はヨハネに次のように告げました,「あなたの見た十の角は,十人の王のことであって,彼らはまだ国を受けてはいないが,獣と共に,一時だけ王としての権威を受ける。彼らは心をひとつにしている。そして,自分たちの力と権威とを獣に与える」。(黙示 7:12,13,新口)このように角は政治支配者を象徴します。(ダニエル書 8章2-8,20,21節とくらべて下さい)十という数は聖書の中で全体を象徴しますから,「十人の王」はすべての政治支配者,とくに赤い獣つまり世界の平和と安全を目ざす国際的な組織の一部になっている政治支配者を表わします。
55 バビロンあるいは十の角は,第一次世界大戦の終ったとき何をしませんでしたか。
55 第一次世界大戦の終ったとき,大いなるバビロンはこれら「十の角」にむかって,おのおの国家主権を神の国に渡すようにと命じませんでした。メシヤによる神の国は,全地を支配するためその時すでに天に建てられていたのです。「十の角」自らもまた神の国に主権を渡す考えはありませんでした。第一次世界大戦中彼らはエホバのクリスチャン証者を迫害し,設立された神の国の音信を軽べつし,それを受け入れることを拒絶しました。
56 いま十の角は,どのように神のみ心を成しとげますか。
56 神のお目的は,むかし預言された通りこれら象徴的な「十の角」を滅ぼすことです。いま十の角が滅びにむかって導かれているのは,神のお考えによるのです。その全部は同時に滅ぼされます。こうして目に見えないさまで「神は……彼らの心の中に,御旨を行(う)……思いを持つようにされ」ました。彼らはどのように御旨を行ない,心を合わせて神に敵対するのですか。世界平和と安全のための国際組織を作ることに彼らの考えは一致し,諸国家の連合とくに今日の国際連合が設立されました。こうして彼らは神に立ち向かったのです。それで国家主権をメシヤの政府に渡して国を神に与える代わりに,彼らは黙示録 17章17節の言葉の通り「御言が成就する時まで……思いをひとつにし,彼らの支配権を獣に与える」ことをしました。
57 諸国家はどのように権力と権威を「獣」に与えましたか。
57 こうして国際連盟規約が批准された1919年以降,彼らは赤い「獣」に彼らの国を与え始めました。すなわち権力と権威を与えたのです。第八の世界強国すなわち世界の平和と安全を図る国際組織に加盟することによって,「彼らは……獣と共に,一時だけ王としての権威を受け」ます。(黙示 17:12,13,新口)比較的に言えばそれは獣が滅びるまでの「一時だけ」に過ぎません。
58 バビロンは「獣」についてどう感じましたか。彼女と獣は最後にどうなりますか。
58 この国際的な行為は,エホバのクリスチャン証者が宣明していた神の小羊の国に敵対するものです。それにも拘わらずこのような獣に乗ることを熱心に望む大いなるバビロンは,それを是認しました。大いなるバビロンのペットである「獣」に国家主権と権力を与えることは,どんな結果になりますか。黙示録 17章14節はそれに答えています。「彼らは小羊に戦いをいどんでくるが,小羊は,主の主,王の王であるから,彼らにうち勝つ。また,小羊と共にいる召された,選ばれた,忠実な者たちも,勝利を得る」。底なき所から上っていま存在している赤い獣は,このようにして,またこの理由で「滅びに至る」のです。この事が起こるとき,「御言が成就」します。―黙示 17:8,17,新口。
59 しかしだれがまず滅びますか。だれの手によって?
59 赤い「獣」の背に乗る大いなるバビロンが滅ぼされるのは,獣の滅びと同じ時ですか。淫婦である彼女は獣の最後を見届けるまでその背に乗っていることができますか。そうではありません。すでに定められ書きしるされている神の裁きによれば,決してそうではありません。すでに下された神の宣告によれば,彼女の愛したものが,それ自身滅ぼされる前に彼女を滅ぼします。彼女は長い間この「獣」と十の角に対して淫婦の利己的な愛を抱いてきました。そして何時までも魅力を失わず,彼らの利己的かつ不道徳な快楽の欲求を満足させることによってその保護を得られると考えています。しかしそう考えるのは大間違いであり,彼女は意外な目にあわされてショックを受けるでしょう。
60 淫婦のすさまじい最後を述べなさい。
60 全能の神は,十の角がある獣と淫婦との利己的な結びつきを切りたちます。神は彼らの利己的な愛を激しい憎しみに変らせ,その結果,獣と十の角はその背に乗る淫婦を憎み,激しい憎しみを彼女にそそぎます。そのため彼女の宗教的パラダイスは荒廃に帰するでしょう。彼らは紫と赤の衣を彼女からはぎ取り,金と宝石の飾りを奪い,汚れで満ちている金の杯を彼女の手からたたき落とします。彼女は偽りの宗教として裸にされてしまいます。もはや彼女の肉体は愛撫と不道徳を行なわせるだけの魅力を持っていません。「獣」と十の角は彼女の肉をひき裂いて食べ,その骨を燃やして灰にしてしまいます。こうしてバビロン的宗教の世界帝国は灰に帰し,真の神エホバの崇拝者すなわち支配している御子イエス・キリストの忠実な追随者の足の下に踏みつけられるでしょう。―マラキ 4:3。
61 どなたが赤い「獣」を滅ぼしますか。
61 そのあとで赤い「獣」と十の角が滅びます。今度は底なき所ではなく永遠の滅びに陥るのです。彼らが戦いを挑む小羊は勝利を得,そのことが起こるようにします。
62 バビロンと共に滅びたくない人々に,何がすすめられていますか。
62 偽りの宗教の上に間もなく裁きが執行されることを知ったいま,私たちは何をすべきですか。バビロン的な淫婦は「多くの水の上」,あらゆる民族,群衆,国民,国語の上に坐っています。彼女は今なお私たちの上に坐っていますか。もしそうであれば,神の裁きの執行されるときに彼女と共に滅びるのを避けるため,いますぐにしなければならないことがあります。唯一の真の宗教を愛し,彼女の下から出て離れ去りなさい! 彼女は滅びに定められています! エホバ神の裁きによって大いなるバビロンは1919年に倒れました。その年以来,100万人以上に上る男女,子供がその中から出て来てエホバのクリスチャン証者となり,宗教的な自由を享受しています。いまや倒れた状態にある大いなるバビロンは,恐るべき永遠の滅びを間近にひかえています。そこで今なお,宗教的に大いなるバビロンの支配下におかれ,神を求める人々に向かって私たちは言います,大いなるバビロンを見捨てなさい!
63,64 バビロンと共に滅びることを避けるため,このような人は何に加わりませんか。しかし永遠の救いを得るため,どなたに組しますか。
63 これは「獣」とその「十の角」に加わって,バビロン的な宗教の世界帝国を滅ぼすことに手をかすという意味ではありません。この暴力行為をする「獣」とその「十の角」は救いを得ることがなく,また一緒になってそのような暴力をふるう人々も救いを得ません。偽りの宗教に対する裁きの執行者として神に用いられることは,盲目的な政治国家にまかせなさい。それは私たちのする事ではありません。
64 唯一の真の宗教が私たちの救いです。その宗教によって私たちは,メシヤすなわちキリストである御子イエスを通して救いを差しのべて下さる唯一の真の神を崇拝します。エホバ神に祈って「あなたの御言は真理であります」と言われたイエスの言葉を,心に留めて下さい。(ヨハネ 17:17,新口)大いなるバビロンから私たちを解き放つものは真理です。聖書におさめられた神のことばを心に深く受け入れ,勝利を得た神の小羊の足跡に従って,この栄光ある崇拝の自由を享受する身となりましょう。神の小羊は大いなるバビロンの政治的な情夫に対して勝ちを得,神の勝利の御国の下にある完全な自由の中に私たちを導き入れます。メシヤによる神の国の治めが永遠のものでありますように!
[脚注]
a インド,ニューデリー,ヒンダスタン,タイムズ出版社出版,ラジャゴパラチャリ著「ヒンズー教の説く生き方と教え」3頁。(第1版)
b 1942年,ペンシルバニア州のものみの塔聖書冊子協会が出した冊子「平和 ― それはつづくか」の18-22頁をごらん下さい。
[180ページの図版]
バベル ― ここから偽りの宗教が全世界にひろまった
[188ページの図版]
バビロン的な宗教の世界帝国の滅び ― 象徴を用いて天使が使徒ヨハネに述べたもの