股
剣は体の側面,つまり股に帯びました。(出 32:27; 裁 3:16,21; 歌 3:8; 詩 45:3)啓示 19章11-21節では,キリスト・イエスが白い戦闘用の馬にまたがり,「野獣」および軍隊を率いた地の王たちに対する戦いへと乗り進む様子が描かれています。「王の王また主の主」というイエスの称号がその外衣の股のところに書かれ,はっきりと知らされています。そこは普通は権威の剣を帯びるところです。
イスラエルの祭司たちの股引きの丈は腰から股まで,つまり股の端までありました。それで,祭司たちが聖なる所やエホバの祭壇のところで仕える時には,彼らの裸がきちんと覆われていました。さもないと,祭司たちは死ぬことになったでしょう。―出 28:42,43。
誓いを立てる際に時々行なわれたのは,誓う者が誓いの対象となった相手の人の股の下に自分の手を当てるという習慣でした。(創 24:2-4,9; 47:29-31)このことの意味については,「姿勢と身ぶり」(誓い)を参照してください。股を平手で打つという習慣は,悲嘆や悲しみ,あるいは悔恨の情を示しました。―エレ 31:19; エゼ 21:12。
生殖器 股は,体の生殖器がある辺りにあるので,子孫は『上股から出る』と言われています。(創 46:26; 出 1:5; 裁 8:30)このことは,隠れて姦淫を行なって有罪とされた女性にもたらされることになっていた処罰の本質の解明に役立ちます。
夫は,自分の妻に不忠実であるとの疑いをかけた場合,妻を祭司のところへ連れて行くことになっていました。祭司はその女性をエホバの前に立たせ,聖なる水(清浄で,新鮮な水と思われる)を取り,幕屋の床にある塵を幾らかその中に振り掛け,のろいの言葉を書き記して,それを洗う,つまりその中にぬぐい去ります。その女性は自分が潔白であると誓った後,その水を飲むよう求められました。もし有罪であれば,彼女の「股はやせ衰え」,腹は膨れました。もし潔白であれば,彼女の身に害がもたらされることはありませんでした。―民 5:12-31。
姦淫を犯した女性の『股がやせ衰える』とは,どういう意味ですか
股はこの節では性器を指す,当たり障りのない代用語として用いられているようです。(創 46:26と比較。)この処罰が悪行を犯す際に関係のあったそれらの器官に影響を及ぼしたのは,当然のことでした。(マル 9:43-47と比較。)「やせ衰える」という表現は,「衰える」(「聖書」,アメリカ・カトリック聖書協会訳),「縮む」(ダービー),あるいは「しなびる」(モファット)という意味であると解されており,性器の萎縮および生殖能力や受胎能力の喪失を示唆しているのかもしれません。潔白な妻が自分の夫によって身ごもることになっていたという事実は,姦淫を犯した女性が将来妊娠できなくなることを示しているようです。(民 5:28)さらに,有罪である妻の腹が膨れたのはのろいのためであって,妊娠という祝福の結果ではありませんでした。
これは決して,暗黒時代に行なわれた類の,時には実際に奇跡でも起きない限り生き延びることができないような神明裁判などではありませんでした。水自体にはそのような影響をもたらす物は何も入っていませんでした。とはいえ,その水は聖なる水であり,その中には聖なる土,つまり塵が入っており,のろいの言葉を書いたものがその中で洗われました。したがって,その水は強力な象徴的意義を含んでおり,エホバのみ前でエホバに対する厳粛な誓いとともに飲まれました。この事態の結果がはっきりしないということはありませんでした。もしその女性が有罪であれば,エホバはその飲み物が奇跡的な力を持ち,然るべき結果をもたらすようにされました。姦淫は死刑を招きましたが,この場合には必要とされていた二人の証人がいませんでした。(民 35:30; 申 19:15)また,この場合には大抵,同様に死に値する有罪の男性がだれであるかが明らかではありませんでした。