真の平和を求めてそれを追い求めなさい
「命を愛して良い日を見たいと思う者は,……悪いことから離れて善いことを行ない,平和を求めてそれを追い求めよ」― ペテロ第一 3:10,11。
1 イザヤのどんな有名な言葉は必ず確かな成功を見ますか。
「彼らはその剣をすきの刃に,その槍を刈り込みばさみに打ち変えなければならなくなる。国民は国民に向かって剣を上げず,彼らはもはや戦いを学ばない」。(イザヤ 2:4)この有名な聖句は,ニューヨーク市にある国際連合世界本部のそばに掲げられてはいますが,いかに想像をたくましくしても,その世界組織がこの聖句を成し遂げてきたとは言えません。しかし,その宣言はエホバ神の絶対確実な言葉の一部であり,成果を収めずに終わることはありません。―イザヤ 55:10,11。
2 イザヤ 2章2,3節によれば,「末の日に」必ずどんなことが起きますか。
2 イザヤ 2章4節のこの言葉は,実際には,驚くべき預言,つまり真の平和についての預言の一部であり,このわたしたちの時代にまさに成就しつつあります。その預言は,戦争や戦争のための武器がもはやなくなるという胸の躍るような見込みを宣明するに先立って,こう述べています。「末の日に,エホバの家の山はもろもろの山の頂より上に堅く据えられ,もろもろの丘より上に必ず高められ,すべての国の民は必ず流れのようにそこに向かう。そして多くの民は必ず行って,こう言う。『来なさい。エホバの山に,ヤコブの神の家に上ろう。神はご自分の道についてわたしたちに教え諭してくださる。わたしたちはその道筋を歩もう』。律法はシオンから,エホバの言葉はエルサレムから出るのである」― イザヤ 2:2,3。
人は平和を求める者になれる
3 どのようにして好戦的な人が平和を好む人に変われますか。
3 人は平和な道を進んでゆけるようになる前に,エホバの道を教え諭されなければならない,という点に注目してください。エホバの教えに従順にこたえ応じるなら,人の考え方や行動の仕方は変わり,好戦的であった人も平和を求める人になります。この変革はどのようにして達成されるでしょうか。ローマ 12章2節はこう述べています。「この事物の体制に合わせて形作られるのをやめなさい。むしろ,思いを作り直すことによって自分を変革しなさい。それは,神の善にして受け入れられる完全なご意志を自らわきまえ知るためです」。わたしたちは神の言葉から学べる原則や諭しで思いを満たすことによって,自分の思いを作り直す,つまり,それまでとは異なった意欲を抱くようになります。聖書の定期的な研究はそうした変化の助けであり,自分に対するエホバのご意志が何かをわきまえ知ることができるようにして,行くべき道をはっきり見させてくれます。―詩編 119:105。
4 人はどのようにして平和を好む,新しい人格を身に着けますか。
4 聖書の真理は,思考のパターンだけでなく,人の行動や人格をも変革します。これは使徒パウロの勧めた次のことを行なう助けになります。「あなた方の以前の生き方にかない,またその欺きの欲望にしたがって腐敗してゆく古い人格を捨て去(りなさい。)そして,あなた方の思いを活動させる力において新たにされ,神のご意志にそいつつ真の義と忠節のうちに創造された新しい人格を着け(なさい)」。(エフェソス 4:22-24)思いを活動させるこの力は内面のものです。これは,エホバとその律法に対する愛が成長するにつれ,変革されて強力なものになり,わたしたちを霊的で平和を好む人にならせます。
5 イエスが与えた「新しいおきて」はどのように弟子たちの間の平和を推進しますか。
5 こうした変革が必要なことは,イエスが弟子たちと過ごした最後の数時間にお与えになったこの教えからも理解できます。「わたしはあなた方に新しいおきてを与えます。それは,あなた方が互いに愛し合うことです。つまり,わたしがあなた方を愛したとおりに,あなた方も互いを愛することです。あなた方の間に愛があれば,それによってすべての人は,あなた方がわたしの弟子であることを知るのです」。(ヨハネ 13:34,35)キリストに似た,利己心のないこの愛は,弟子たちを結び合わせて完全に一つにならせます。(コロサイ 3:14)この「新しいおきて」を受け入れ,それに従って生活しようとする人だけが,神の約束しておられる平和を享受するようになります。今日,それを行なっている人々がいるでしょうか。
6 世の人々とは対照的にエホバの証人が平和を享受しているのはなぜですか。
6 エホバの証人は自分たちの世界的兄弟関係の中で愛を示すように努めています。彼らは世界のあらゆる国民の中から引き寄せられていますが,たとえ厳しい政治的,宗教的圧力を加えられようとも,世の論争にはかかわりません。一致した民として,エホバに教えられ,平和を享受しています。(イザヤ 54:13)政治上の闘争に中立を保ち,戦争には参加しません。以前には暴力的であった人もそのような生き方を改めました。彼らは平和を愛するクリスチャンとなり,キリスト・イエスの模範に倣っています。そして,心をこめて,ペテロのこの忠告に従います。「命を愛して良い日を見たいと思う者は,舌を制して悪を口にせず,唇を制して欺きを語らぬようにし,悪いことから離れて善いことを行ない,平和を求めてそれを追い求めよ」― ペテロ第一 3:10,11。エフェソス 4:3。
平和を追い求めている人たち
7,8 戦いをやめて真の平和を追い求める者となった人の例を挙げてください。(あなたのよく知っている人のことも述べてください。)
7 例えば,以前に対テロリスト特別部隊の将校だったラミ・オベドがいます。この人は敵を殺すよう訓練されて,イスラエル国家主義の熱烈な信奉者となっていました。もっとも,それは,ラビたちが彼とその愛する女性との結婚を,彼女がアジア人つまり異邦人というだけの理由で認めようとしないことに気づくまでのことでした。ラミは聖書の中に真理を探し求めるようになり,その後エホバの証人と出会いました。そして,証人たちと聖書研究をすることによって,もはや熱狂的国家主義者であることはできないと確信するに至りました。クリスチャンとしての愛を抱くことは,戦争や武器を放棄し,どの人種の人をも愛するようになることでした。この人は,ある親切な手紙を受け取った時,冒頭の「私の兄弟ラミ」という呼びかけに,本当に驚きました。どうしてそれが驚くほどのことだったのでしょうか。差し出し人がパレスチナ人のエホバの証人だったのです。「パレスチナ人は私の敵で,その一人が私に『私の兄弟』と呼びかけるとは信じ難いことでした」と,ラミは述べています。ラミとその妻はいま神の道にしたがって真の平和を追い求めています。
8 別の例は,第二次世界大戦中ロシアに侵攻したドイツ軍の兵士ゲオルグ・ロイターです。彼はその後まもなく,世界支配をねらうヒトラーの仰々しい企てに幻滅しました。そして,戦地から帰還したとき,エホバの証人と聖書研究を始めました。こう書いています。「ついに,物事がはっきり見えてきました。……流血行為に神はいっさい責任がないことを私は悟りました。全地にわたる楽園を確立し,従順な人間に永遠の祝福をもたらすのが神の目的であることも学びました。……ヒトラーは自分の“千年帝国”を誇りましたが,わずか12年支配したにすぎません。しかも,その結末は何とひどいものだったのでしょう。……地球に対する千年統治を確立でき,実際にそうするのは,ヒトラーではなく,キリストなのです」。ゲオルグはこれまで約50年間全時間宣教に携わって,真の平和の使節として奉仕してきました。
9 ナチ・ドイツでエホバの証人が経験した事柄は,彼らが勇敢で,しかも平和を好む人々であることをどのように実証していますか。
9 ナチ政権下のドイツでエホバの証人が守った忠誠と中立は,50年余りたった今なお神と平和に対する彼らの愛の証しとなっています。ワシントン特別区にある米国ホロコースト記念博物館が発行した小冊子にはこう述べられています。「エホバの証人はナチ政権下での激しい迫害を耐えた。……拷問や強制収容所での虐待に,時には処刑にさえ面しながらも大多数が[自分の宗教を捨てることを]拒んだその勇気は,同時代の多くの人々の敬意を勝ち得た」。そしてさらに,「各地で収容所からの解放が始まった時にも,エホバの証人は業を続け,生存者たちの間を巡って改宗者を作った」と述べています。
さらに大々的な変化
10 (イ)真の平和が訪れるためにはどんな大々的な変化が必要ですか。(ロ)このことはダニエル書にどのように描かれていましたか。
10 これは,エホバの証人が,大勢の人をクリスチャンの中立という信条に転向させることによって全世界に平和をもたらせると信じている,という意味でしょうか。そうではありません。地上に平和を回復するためには,もっと大々的な変化が必要です。どんな変化でしょうか。分裂を生じさせる抑圧的で暴力的な人間の支配は,神の王国による支配に道を譲らなければなりません。イエスはそのことを祈り求めるよう弟子たちに教えたのです。(マタイ 6:9,10)しかし,それはどのように起きるのでしょうか。預言者ダニエルが神の霊感による夢で知ったとおり,終わりの日に,『人手によらずに切り出された』大きな石のような神の王国が,地に対する人間の政治支配を表わす巨大な像を打ち砕きます。次いでダニエルはこう言明しました。「それらの王たちの日に,天の神は決して滅びることのないひとつの王国を立てられます。そして,その王国はほかのどんな民にも渡されることはありません。それはこれらのすべての王国を打ち砕いて終わらせ,それ自体は定めのない時に至るまで続きます」。―ダニエル 2:31-44。
11 エホバはどのようにして平和のために必要な変化をもたらされますか。
11 世界の状況にこのような徹底的変化が生じるのはなぜでしょうか。なぜなら,地を汚染し破滅させている者すべてを地から一掃する,とエホバは約束しておられるからです。(啓示 11:18)この大変化は,エホバがサタンとその配下の邪悪な世に対して義の戦いを行なわれる時に生じます。啓示 16章14節と16節にこう書かれています。「それら[すなわち,汚れた霊感による表現]は実は悪霊の霊感による表現であってしるしを行ない,また人の住む全地の王たち[政治支配者たち]のもとに出て行く。全能者なる神の大いなる日の戦争に彼らを集めるためである。そして,それらは王たちを,ヘブライ語でハルマゲドンと呼ばれる場所に集めた」。
12 ハルマゲドンはどのようになりますか。
12 ハルマゲドンはどのようになるでしょうか。それは核による大破壊,つまり人間の引き起こす災害ではありません。そうです,これは,人間の戦争すべてを終わらせ,そのような戦争を促進する者すべてを滅ぼし尽くす神の戦争です。平和を愛する者たちに真の平和をもたらすための神の戦いなのです。そうです,ハルマゲドンは,エホバの意図されたとおりに到来しようとしています。遅れることはありません。エホバの預言者ハバククは霊感のもとにこう書きました。「この幻はなお定めの時のためのものであり,終わりに向かって息をはずませてゆく……。それは偽ることはない。たとえ遅れようとも,それを待ちつづけよ。それは必ず起きるからである。遅くなることはない」。(ハバクク 2:3)人間的な感覚からは遅いように思えるかもしれませんが,エホバはご自分の予定を守られます。ハルマゲドンはエホバがあらかじめ決めておられる時に襲来します。
13 神は元凶である悪魔サタンをどのように処置されますか。
13 この決定的な行動は,真の平和への道から障害を一掃します。しかし,真の平和が確立されるには,ほかにも必要なことがあります。分裂や憎しみや争いを引き起こしている者が除かれることです。聖書は,まさにそのことが次に生じると預言しています。つまり,戦争誘発者で偽りの父であるサタンが,底知れぬ深みに投げ込まれるのです。使徒ヨハネは預言的な幻の中でそのことを見ました。啓示 20章1節から3節にこう記されています。「わたしは,ひとりのみ使いが底知れぬ深みのかぎと大きな鎖を手にして天から下って来るのを見た。そして彼は,悪魔またサタンである龍,すなわち初めからの蛇を捕らえて,千年のあいだ縛った。そして彼を底知れぬ深みに投げ込み,それを閉じて彼の上から封印し,千年が終わるまでもはや諸国民を惑わすことができないようにした」。
14 サタンに対するエホバの勝利の行動はどのように描写されていますか。
14 これは決して夢ではありません。神の約束であり,聖書は,『神は偽ることができない』と述べています。(ヘブライ 6:18)それで,エホバは預言者エレミヤを通してこう言うことができました。「『わたし(は)エホバであり,愛ある親切,公正そして義を地に行なう者である……。わたしはこれらのことを喜びとするからである』と,エホバはお告げになる」。(エレミヤ 9:24)エホバは公正と義によって行動し,ご自分が地にもたらす平和を喜びとされます。
平和の君による支配
15,16 (イ)王として支配するようエホバによって選ばれているのはだれですか。(ロ)その支配はどのようなものとして述べられていますか。だれが共にその支配を行ないますか。
15 エホバは,ご自分の王国の取り決めのもとで生活する人すべてに真の平和が確実に訪れるようにするため,真の平和の君イエス・キリストに支配権をゆだねておられます。そのことがイザヤ 9章6,7節に次のように予告されています。「わたしたちのためにひとりの子供が生まれ,わたしたちにひとりの男子が与えられたからである。君としての支配がその肩に置かれる。そして彼の名は,“くすしい助言者”,“力ある神”,“とこしえの父”,“平和の君”と呼ばれるであろう。……君としてのその豊かな支配と平和に終わりはない。……実に万軍のエホバの熱心がこれを行なう」。詩編作者もメシアの平和な支配について預言的に,「その日には義なる者が芽生え,豊かな平和が月のなくなるときまで続く」と書きました。―詩編 72:7。
16 それだけでなく,霊で油そそがれた14万4,000人のキリストの兄弟たちも天でキリストと共に支配します。これらの人はキリストと共同の支配者です。パウロはそれらの人々について,「平和を与えてくださる神は,まもなくサタンをあなた方の足の下に砕かれるでしょう。わたしたちの主イエスの過分のご親切があなた方と共にありますように」と書きました。(ローマ 16:20)そうです,それらキリストの兄弟たちは,戦争挑発者である悪魔サタンに対するキリストの勝利に天においてあずかるのです。
17 真の平和を受け継ぐためには何をしなければなりませんか。
17 それで今,問題は,真の平和を受け継ぐために何をしなければならないかという点です。真の平和は神の方法によってのみ到来します。それを自分のものとするために積極的に行動しなければなりません。平和の君を受け入れ,その方に頼らなければなりません。つまり,罪ある人類を請け戻す者またその贖い主としてのキリストを受け入れなければならないのです。イエスご自身,「神は世を深く愛してご自分の独り子を与え,だれでも彼に信仰を働かせる者が滅ぼされないで,永遠の命を持てるようにされた」という有名な言葉を語られました。(ヨハネ 3:16)あなたは,真の平和と救いをもたらす神の代理者であるキリスト・イエスに,進んで信仰を働かせておられますか。平和を樹立して,その確かさの保証となる名は,天の下にほかにはありません。(フィリピ 2:8-11)なぜでしょうか。なぜなら,イエスは神の選ばれた方だからです。イエスは,かつて地上に存在した最も偉大な平和の使者なのです。あなたはイエスの言葉に耳を傾け,その模範に従ってゆかれますか。
18 ヨハネ 17章3節に記されているイエスの言葉にこたえて何を行なうべきですか。
18 イエスはこう言われました。「彼らが,唯一まことの神であるあなたと,あなたがお遣わしになったイエス・キリストについての知識を取り入れること,これが永遠の命を意味しています」。(ヨハネ 17:3)今は,王国会館で開かれているエホバの証人の集会に定期的に出席して,正確な知識を取り入れるべき時です。この教育的な集会では,知識や希望を他の人に伝えたいという動機を鼓舞されることでしょう。あなたも神の平和のための使節になれます。エホバ神に依り頼むことにより,あなたも今,平和を享受することができます。そのことがイザヤ 26章3節で,「新国際訳」によれば,「あなたは,思いの確固としている者を,完全な平安のうちに保たれます。その者はあなたに依り頼むからです」と述べられています。あなたはだれに依り頼むのでしょうか。「あなた方はいつまでもエホバに依り頼め。ヤハ,エホバに,定めのない時に至る岩があるからだ」― イザヤ 26:4。
19,20 今日,平和を求めてそれを追い求める人の前途には何がありますか。
19 では,神の平和な新しい世での永遠の命を得られるよう自分の立場を定めてください。神の言葉は啓示 21章3,4節でこう保証しています。「見よ! 神の天幕が人と共にあり,神は彼らと共に住み,彼らはその民となるであろう。そして神みずから彼らと共におられるであろう。また神は彼らの目からすべての涙をぬぐい去ってくださり,もはや死はなく,嘆きも叫びも苦痛ももはやない。以前のものは過ぎ去ったのである」。これこそ,あなたが切に願う,平安な将来ではないでしょうか。
20 そして,神が約束しておられることを思い出してください。こう記されています。「柔和な者たちは地を所有し,豊かな平和にまさに無上の喜びを見いだすであろう。とがめのない者に注目し,廉直な者を見つめよ。その人の将来は平安だからである」。(詩編 37:11,37)その喜びの日が訪れる時,「真の平和がついに実現した! 真の平和の源,エホバ神によって!」と,感謝をこめて言うことができますように。
説明できますか
□ 人が考えや行動の面で変化するのにどんなことが助けになりますか
□ エホバの証人は,個人として,また集団として,真の平和に対する愛をどのように実証してきましたか
□ エホバは憎しみや戦争を促進する者すべてをどのように処置されますか
□ 平和の君による支配は人類のために何をもたらしますか
[14ページの図版]
イザヤの言葉は,国連によってではなく,エホバの教えにこたえ応じる人々によって成就されている
[15ページの図版]
これら二人は変化して平和を追い求めるようになった
ラミ・オベド
ゲオルグ・ロイター
[16ページの図版]
真の平和は平和の君の支配のもとで行き渡る