「真理を買え。それを売ってはならない」
「真理を買え。それを売ってはならない ― 知恵と懲らしめと理解を」。箴言 23:23
1,2. (イ)わたしたちにとって一番大切なのは何ですか。(ロ)どんな真理を大切にしていますか。なぜですか。(冒頭の写真と挿絵を参照。)
あなたにとって一番大切なものは何ですか。それを何かと交換したいと思いますか。エホバに献身したわたしたちにとって,一番大切なのはエホバとの関係です。他のどんなものとも交換したいとは思いません。聖書の真理も大切です。それによって,天の父エホバとの友情を築けたからです。(コロ 1:9,10)
2 偉大な教訓者エホバは聖書を通してどんなことを教えてくださいましたか。ご自分の意味深い名前や素晴らしい特質を明らかにされました。人類を深く愛し,イエスを贖いとして地に遣わしたことも教えてくださいました。メシアの王国についても知らせ,油そそがれた人たちには天的な希望を,「ほかの羊」には地上のパラダイスで生きる希望を与えておられます。(ヨハ 10:16)クリスチャンとしてどのように行動すべきかも教えてくださっています。わたしたちはこうした真理を大切にしています。創造者との親しい関係を築き,充実した生活を送ることができるからです。
3. エホバは真理と引き換えにお金を求めますか。
3 エホバは,真理を求める人に良いものを惜しみなく与えてくださいます。愛する子イエスの命をさえ無償で与えてくださいました。神は真理と引き換えにお金を求めたりはされません。他の人に聖霊を与える権威を手に入れたかったシモンは,使徒ペテロにお金を渡そうとしました。その時,ペテロはシモンを叱責し,こう述べました。「あなたの銀はあなたと共に滅びてしまうように。あなたは神の無償の賜物を金銭によって手に入れようと考えたからです」。(使徒 8:18-20)
真理を「買[う]」とはどういう意味か
4. この記事ではどんなことを学びますか。
4 箴言 23:23を読む。聖書の真理を知るには努力が必要です。どんな犠牲でも進んで払う気持ちがなければなりません。箴言の筆者は,「真理」をひとたび「買[った]」なら,「売ってはならない」,つまり手離してはならないと述べています。では,真理を「買[う]」とはどういう意味か,何を支払う必要があるかを考えましょう。そうすれば,真理の大切さがいっそうよく分かり,決して「売っ[たり]」しないという決意が強まります。真理を買うことには,犠牲をはるかに上回る価値があることも学べます。
5,6. (イ)真理を買うのにお金は要りませんが,何は必要ですか。例えで説明してください。(ロ)真理を買うなら,どんな良い結果が得られますか。
5 箴言 23章23節の「買[う]」というヘブライ語には「手に入れる」という意味もあります。これらの言葉には,価値のある物を得るために努力したり,代わりに何かを渡したりするという意味合いがあります。ただの物を手に入れるのにも努力が必要です。例えば,ある店が「バナナ無料」と宣伝したとします。でも,そのバナナは自動的に食卓に届くわけではありません。バナナはただですが,時間を取って店に取りに行かなければならないのです。真理を買うのにもお金は要りません。でも,手に入れるためには努力が必要です。
6 イザヤ 55:1-3を読む。この聖句を読むと,真理を買うとはどういうことかがよく分かります。エホバは,ご自分の言葉を水や乳やぶどう酒に例えておられます。エホバの言葉は,きれいな冷たい飲み水のように,人をさわやかにします。また,栄養豊かで子どもを成長させる乳のように,わたしたちの信仰を養い,成長させます。エホバの言葉はぶどう酒にも似ています。聖書はぶどう酒を喜びと結びつけています。(詩 104:15)エホバは「ぶどう酒……を買え」と述べることにより,ご自分の言葉に従って生活するなら喜びが得られると保証しておられます。(詩 19:8)神の言葉の真理を学び,当てはめるなら,素晴らしい結果が得られるのです。必要なのは努力です。では,真理を買うためにどんな努力が必要でしょうか。5つの点を取り上げましょう。
真理を買うために必要なこと
7,8. (イ)真理を買うために時間が必要なのはなぜですか。(ロ)ある女性はどんな犠牲を進んで払いましたか。どんな結果になりましたか。
7 時間。真理を買う人は皆,時間を費やさなければなりません。王国のメッセージを聞き,聖書や出版物を読み,個人研究を行ない,予習をして集会に出席するには,時間がかかります。あまり重要ではない事柄から時間を「買い取[る]」必要があります。(エフェソス 5:15,16を読む。)聖書の基本的な教えについての正確な知識を得るのに,どれくらいの時間が必要でしょうか。比較的短期間で学べる人もいれば,もっと多くの時間がかかる人もいるでしょう。でも,エホバの知恵や道や行ないについて学べることには限りがありません。(ロマ 11:33)「ものみの塔」の創刊号は,真理を「一輪の目立たない小さな花」に例え,こう述べています。「ただ一輪の真理の花に満足してはならない。満足してしまうなら,それ以上のものを得ることはできない。さらに集め,さらに多くを求めよ」。こう自問してください。「わたしの真理の花束はどれほど大きなものだろうか」。時間がいくらあっても,エホバについて学ぶことには終わりがありません。大切なのは,今ある時間を賢く使い,状況の許す限り多くの真理を買うことです。では,実際にそのようにした人の例を考えましょう。
8 日本の真理子aという若い女性は米国ニューヨーク市の学校に留学していた時,家から家の奉仕で訪ねて来た姉妹に会いました。真理子は宗教を持っていましたが,聖書の真理を知ってとてもうれしくなり,週に2回レッスンしてもらうことにしました。学校は忙しく,パートタイムの仕事もしていましたが,すぐに集会に出席し始めました。真理を学ぶ時間を買い取るため,友人との付き合いも減らしました。そのような犠牲を払った結果,信仰がどんどん強まり,1年足らずでバプテスマを受けました。半年後の2006年には開拓奉仕を始めました。今も開拓者として熱心に奉仕しています。
9,10. (イ)真理を買うためには,お金や物に対してどんな見方をする必要がありますか。(ロ)ある若い女性はどんな夢を捨てましたか。そのことについてどう感じていますか。
9 お金や物。真理を買うために,お金になる仕事をやめた人もいます。漁師のペテロとアンデレはイエスから「人をすなどる者」になるよう勧められた時,「網を捨て」ました。(マタ 4:18-20)もちろん,真理を学ぶ人が皆,すぐに仕事をやめるわけではありません。家族を養うという聖書的な責任があるからです。(テモ一 5:8)しかし,お金や物に対する見方を変え,優先順位を見直す必要があるかもしれません。イエスもこう述べました。「自分のために地上に宝を蓄えるのをやめなさい。……むしろ,自分のために天に宝を蓄えなさい」。(マタ 6:19,20)ある若い女性の例を考えましょう。
10 マリアは小学校に入る前からゴルフをして遊んでいました。高校時代にはみるみる腕を上げ,大学の奨学金をもらえることになりました。マリアにとってゴルフは人生であり,プロゴルファーになってお金を稼ぐことが夢でした。そんな時,聖書を学び始め,素晴らしい真理だと思いました。生き方を変え,深い喜びを味わいました。こう言います。「自分の見方や生き方を聖書の規準に合わせれば合わせるほど幸せになれました」。マリアは,お金や物を追求しながらエホバに仕えることはできない,ということにも気づきました。(マタ 6:24)プロゴルファーになってお金や名声を得るという夢を捨て,真理を買うことを選び,今では開拓奉仕をしています。「最高に幸せで充実した生き方をしています」と述べています。
11. 真理を買うと,友人や親族との関係はどうなるかもしれませんか。
11 友人や親族との関係。聖書の真理に従って生きることを選ぶと,友人や親族との関係が変化するかもしれません。なぜでしょうか。イエスは弟子たちについてこう祈りました。「真理によって彼らを神聖なものとしてください。あなたのみ言葉は真理です」。(ヨハ 17:17)「神聖なものと[する]」という表現には,「取り分ける」という意味もあります。真理を受け入れると,世から取り分けられます。世の型に合わせることをやめるからです。人々は,価値観が変化したわたしたちを以前とは異なる目で見るかもしれません。わたしたちは聖書の真理という規準に従って生きているのであり,分裂を引き起こそうとしているわけではありません。でも,友人や親族の中には,距離を置いたり反対したりする人がいるかもしれません。これは驚くには当たりません。イエスは「実際,人の敵は自分の家の者たちでしょう」と述べました。(マタ 10:36)そして,どんな犠牲を払うとしても,真理を買うならはるかに大きな報いが得られるとも保証しました。(マルコ 10:28-30を読む。)
12. あるユダヤ人の男性は,真理を買うためにどんな犠牲を払いましたか。
12 アーロンというユダヤ人のビジネスマンは若いころ,神の名前を口にすべきではないと教えられました。でも,真理を知りたいと思っていました。ある時,エホバの証人から,神の名前を表わすヘブライ語の4つの子音を母音符号と組み合わせると「エホバ」と発音できる,と聞きました。驚いたアーロンは,はやる気持ちでユダヤ教の会堂に行き,ラビにそのことを話しました。でも,期待したような反応は返ってきませんでした。一緒に喜んでくれるどころか,つばをかけられ,追い出されたのです。家族からも反対されました。それでも恐れずに真理を買い,生涯エホバの証人として奉仕しました。アーロンのように真理に従って歩もうとすると,社会的な立場を失ったり,家族関係にひびが入ったりするかもしれません。あなたはそのような犠牲を進んで払いますか。
13,14. 真理を買うためには,どのように考え方や行ないを変える必要がありますか。例を挙げてください。
13 神に喜ばれない考えや行ない。真理を受け入れ,聖書の道徳規準に従って生きるには,考え方や行ないを変えなければなりません。ペテロはこう述べています。「あなた方は従順な子供として,以前無知であったために抱いた欲望にそって形作られるのをやめ,……すべての行状において聖なる者となりなさい」。(ペテ一 1:14,15)不道徳な都市コリントの人々にとって,真理を買うことは,生き方を大きく変えることを意味していました。(コリ一 6:9-11)今日でも多くの人は,真理を買うために,神に喜ばれない行ないをやめました。ペテロは当時のクリスチャンにこうも述べました。「過ぎ去った時の間,あなた方は,みだらな行ない,欲情,過度の飲酒,浮かれ騒ぎ,飲みくらべ,無法な偶像礼拝に傾いていましたが,諸国民の欲するところを行なうのはそれで十分……です」。(ペテ一 4:3)
14 デビンとジャスミンは長年,酒浸りの生活をしていました。デビンは簿記の仕事をしていましたが,お酒の問題のために長続きしませんでした。ジャスミンは気性が荒く,乱暴なことで知られていました。ある日,ジャスミンが酔って町を歩いていると,2人のエホバの証人の宣教者に会い,聖書レッスンを勧められました。翌週,宣教者たちが約束どおりデビンの家に行くと,デビンもジャスミンも酔っ払っていました。まさか本当に家に来るとは思っていなかったのです。その後,2人は心を入れ替え,まじめに聖書を勉強し,学んだことを当てはめるようになりました。3か月でお酒をやめ,正式に結婚しました。2人の変化は村の人たちに知れ渡り,多くの人が聖書を学ぶようになりました。
15. 真理を買ううえで特に難しいのはどんなことですか。なぜですか。
15 聖書に反する慣行。真理を買ううえで特に難しいのは,聖書に反する慣行をやめることです。聖書を学び,そうした慣行が正しくないことをすぐに認める人もいます。でも,家族や同僚や友人からの反対を恐れ,聖書に反すると分かってはいてもやめられないと感じる人は少なくありません。特に,亡くなった親族のための儀式や慣行の場合,周りの人は感情的になるかもしれません。(申 14:1)勇気を示して変化した人の手本は励みになります。1世紀のエフェソスの人たちについて考えましょう。
16. エフェソスには,真理を買うためにどんなことをした人がいましたか。
16 エフェソスでは多くの人が魔術を行なっていました。真理を買うため,以前に行なっていた魔術をやめ,改宗した人たちもいました。どんなことをしたでしょうか。聖書にはこうあります。「魔術を行なっていたかなり大勢の者が自分たちの本を持ち寄って,みんなの前で燃やした。そして,それらの値を計算してみると,合わせて銀五万枚になることが分かった。このようにして,エホバの言葉は力強く伸張し,また行き渡っていった」。(使徒 19:19,20)彼らは大きな犠牲を払いましたが,豊かな祝福を得ました。
17. (イ)真理を買うために,どんな努力を払う必要がありますか。(ロ)次の記事ではどんなことを考えますか。
17 あなたは真理を買うために,どんな努力を払いましたか。わたしたちは皆,真理という花を集めるために時間を費やしています。お金や物を犠牲にする人もいます。真理に従うことを選んだために,友人や親族との関係が変化した人もいます。多くの人は考え方や行ないを変え,聖書に反する慣行をやめなければなりません。どんな犠牲を払うとしても,聖書の真理にはずっと大きな価値があります。エホバとの親しい関係という一番大切なものを得られるからです。真理を知ることによって得られる祝福について考えると,それを売ろうとする人がいるのが不思議に思えます。なぜそのようなことをするのでしょうか。どうすればそのような大きな間違いを避けられますか。次の記事で考えましょう。
a この記事に出てくる一部の名前は変えてあります。