3章
「聖なる力に満たされ[た]」
ペンテコステで聖なる力が注がれた後,どんなことが起きたか
1. ペンテコステの祭りの日,エルサレムはどんな雰囲気ですか。
エルサレムは活気であふれています。a 神殿の祭壇から煙が上がり,レビ族の人たちがハレル詩編(113-118編)を歌っています。通りは人でいっぱいです。エラム,メソポタミア,カパドキア,ポントス,エジプト,ローマなど遠くから来た人たちです。b 何があるのでしょうか。今日はペンテコステ,「初物の日」です。(民 28:26)ペンテコステは年に1度の祭りで,大麦の収穫が終わり,小麦の収穫が始まる頃に行われます。それでみんな喜んでいます。
2. 33年のペンテコステの日,どんな出来事がありましたか。
2 33年の暖かな春のこの日,朝9時ごろに,その後ずっと語り継がれるような出来事が起きます。120人の弟子たちが家に集まっています。突然,「激しい風が吹き付けるような音」,「強大な風あらしのとどろきのような」音が天から起こり,家の中に響き渡ります。(使徒 2:2。国際標準訳[英語])すると何と,炎のような舌が幾つも現れ,一人一人の上に1つずつとどまります。c そして,皆が「聖なる力に満たされ」,外国語を話し始めます。家から通りに出てきた弟子たちに会った旅行者たちは驚きます。弟子たちが,話せないはずの言語で話し掛けてくるからです。ここは異国の地なのに,母国の言語で弟子たちと会話ができます。(使徒 2:1-6)
3. (ア)33年のペンテコステでどんな進展がありましたか。(イ)この日,ペテロはどんな大切なことをしましたか。
3 こうして,エホバへの崇拝の歴史に新たな進展がありました。イスラエル国民に代わって,神に選ばれた人たちから成る新しい国民(クリスチャン会衆)が誕生しました。(ガラ 6:16)それだけではありません。この日群衆に語り掛けたペテロは,「王国の鍵」3つのうちの1つを使いました。(マタ 16:18,19)この鍵を使って扉が開くと,良い知らせを聞いて,神の聖なる力によって選ばれて新しい国民になる道が開かれます。1つ目の鍵は,ユダヤ人とユダヤ教に改宗した人に道を開くために使われました。d 続いてサマリア人に,そして異国人にも,鍵が使われることになっていました。神の聖なる力によって選ばれた人は将来,メシア王国で王また祭司になることができます。(啓 5:9,10)33年のペンテコステで起きた出来事から,どんなことを学べるでしょうか。
「皆一緒に同じ場所にいた」(使徒 2:1-4)
4. 現代のクリスチャン会衆には,1世紀と同じどんな良いことが見られていますか。
4 クリスチャン会衆は,120人ほどの弟子で始まりました。「一緒に同じ場所」(階上の部屋)にいた時に,聖なる力によって神から選ばれた人たちです。(使徒 2:1)その日の終わりまでに,クリスチャン会衆はもっと大きくなり,数千人にもなりました。でもそれは始まりにすぎず,現在まで成長が続いています。現代のクリスチャン会衆は「王国の良い知らせ」を「世界中で伝え」ていて,神を畏れる人たちの数が今も増え続けています。(マタ 24:14)
5. 1世紀も今も,会衆と一緒に働くと,どんな良いことがありますか。
5 クリスチャンは会衆と一緒に働くことで,頑張る力をもらってきました。天に行くよう選ばれた1世紀の人たちもそうですし,「ほかの羊」が多い現代のクリスチャンもそうです。(ヨハ 10:16)パウロはローマの会衆に宛てた手紙の中で,みんなで支え合えることの素晴らしさについて書いています。「皆さんに会うことを心から願っています。神からの贈り物を与えて,皆さんを力づけるためです。いえ,むしろ,皆さんの信仰と私の信仰によって励まし合うためです」。(ロマ 1:11,12)
6,7. 現代のクリスチャン会衆は,イエスから託された仕事にどのように取り組んでいますか。
6 1世紀も今も,クリスチャン会衆は同じ仕事に打ち込んでいます。イエスが弟子たちに託した,とてもやりがいのある仕事です。イエスは言いました。「全ての国の人々を弟子としなさい。父と子と聖なる力の名によってバプテスマを施し,私が命令した事柄全てを守るように教えなさい」。(マタ 28:19,20)
7 エホバの証人はみんなでこの仕事に取り組んでいます。世界にはたくさんの言語があり,伝道するのは簡単ではありませんが,エホバの証人は1000以上の言語で出版物を提供してきました。あなたもクリスチャン会衆と一緒に,神の王国の良い知らせを伝え,教えていますか。世界人口に比べると,そうしている人は決して多くありません。エホバのことを知っていて,エホバのために語れるというのは本当に素晴らしいことです。
8. 会衆はどのようにクリスチャン一人一人のためになっていますか。
8 この大変な時代でも前向きにやっていけるよう,エホバは助け合える仲間を与えてくれています。そういう仲間が世界中にいます。パウロはヘブライ人のクリスチャンにこう書きました。「互いのことをよく考えて,愛を表し立派な行いをするよう勧め合いましょう。仲間と集まることを怠ってはなりません。よく欠席する人たちに倣わないようにし,いつも励まし合いましょう。定められた日が近づいているのですから,ますますこうしたことを行っていきましょう」。(ヘブ 10:24,25)クリスチャン会衆があるおかげで,仲間を元気づけられますし,仲間から元気づけてもらうこともできます。家族のような仲間たちといつも支え合いましょう。集会に行くことを欠かさないようにしましょう。
「誰もが自分の言語で……聞いた」(使徒 2:5-13)
9,10. どんな努力をして伝道している人たちがいますか。
9 想像してみてください。33年のペンテコステの日,集まったユダヤ人とユダヤ教に改宗した人たちが興奮に包まれています。大半の人たちは共通の言語(ギリシャ語かヘブライ語)を話していたはずです。ところが,自分の国の言語が聞こえてきます。弟子たちがその言語で話しています。(使徒 2:6)母語で良い知らせを聞けたことに,きっと感動したでしょう。現代のクリスチャンは,奇跡的に外国語を話せるようにはなりません。でも,外国語で伝道している人たちがたくさんいます。言語を学んで,国内の外国語会衆で奉仕したり,外国に移住したりしています。母語で良い知らせを聞くと,多くの人は心を動かされます。
10 例えば,クリスティーンがした経験があります。クリスティーンは,エホバの証人のグジャラティー語講座を受講しました。生徒は全部で8人でした。その講座のおかげで,グジャラティー語を話す同僚の若い女性に,学んだ言語であいさつできました。すると女性は驚いて,どうしてこんなに難しい言語を学んでいるのか尋ねてきました。聖書について良い会話ができました。女性はこう言いました。「きっととても大事なことを伝えようとしているのね」。
11. 外国語を話す人に伝道するためにどんなことができますか。
11 もちろん,みんなが外国語を勉強できるわけではありません。それでも,できることがあります。JW Language®を活用できます。このアプリを使えば,町でよく聞かれる言語のあいさつを覚えたり,会話を始めるための簡単なフレーズを学んだりできます。また,jw.orgを開いてもらって,相手の言語の動画や記事を紹介することもできます。そのようにすれば,相手の母語で良い知らせを伝えた1世紀のクリスチャンと同じような楽しい伝道ができるかもしれません。
「ペテロが……立ち上が[った]」(使徒 2:14-37)
12. (ア)ヨエルはどんなことを預言していましたか。(イ)イエスの弟子たちは,ヨエルの預言の通りのことが起きていると分かりました。どうしてだと考えられますか。
12 「ペテロが……立ち上がり」,いろんな国から来た人たちに語り掛けます。(使徒 2:14)ペテロは,弟子たちが外国語を話せるようになったのは神による奇跡で,これはヨエルが預言していたことだと説明します。「私は聖なる力をあらゆる人に注ぐ」という預言です。(ヨエ 2:28)イエスも天に行く前,弟子たちに「私は天の父にお願いします。父は別の援助者を与えて……くださいます」と言い,この「援助者」は「聖なる力」だと言っていました。(ヨハ 14:16,17)
13,14. ペテロはどのように話しましたか。私たちはどのように倣えますか。
13 ペテロは最後にきっぱりとこう言います。「イスラエル国民は皆,神がその方を主ともキリストともしたことをはっきりと知ってください。そのイエスをあなた方は杭に掛けて処刑したのです」。(使徒 2:36)聞いていたイスラエル国民の大半は,イエスが杭に掛けられた時その場にいなかったはずです。でも1つの国民として共同責任がありました。とはいえ,ペテロは敬意を込めて話し,心に訴え掛けます。責めたいわけではなく,ぜひ心を入れ替えてほしいと思っていました。みんなどう反応したでしょうか。「心を刺され」,「私たちはどうしたらよいのですか」と尋ねました。ペテロが親身になって話し掛けたので,みんな心を入れ替えることができました。(使徒 2:37)
14 ペテロに倣って,心に訴え掛けるような伝道をしたいと思います。相手が間違ったことを言ってもいちいち指摘したりせず,共感できる点に注目しましょう。同じ視点に立つことができれば,聖書から話すきっかけが見つかり,説明しやすくなります。そうやって相手に寄り添いながら伝えると,きっと心に響くはずです。
「一人一人,……バプテスマを受けなさい」(使徒 2:38-47)
15. (ア)ペテロは何と言いましたか。反応はどうでしたか。(イ)ペンテコステの日にバプテスマを受けた人たちが衝動的にそうしたわけではない,といえるのはどうしてですか。
15 ペテロは続けて,聞いていたユダヤ人とユダヤ教に改宗した人たちにこう言います。「悔い改めなさい。そして一人一人,……バプテスマを受けなさい」。(使徒 2:38)それを聞いて,このペンテコステの日,約3000人がバプテスマを受けました。e エルサレム市内か近郊の池で受けたと思われます。彼らは単に気分が盛り上がったので,そうしたのでしょうか。今聖書を学んでいる大人や子供たちはどうでしょうか。いっときの感情だけでバプテスマを受けてよいのでしょうか。いいえ,そうではありません。この日バプテスマを受けた人たちは,聖書をよく学んでいましたし,国民としてエホバに献身したイスラエル人でした。また,すでに信仰が行動に表れていました。年に1度のこの祭りのために遠くからやって来ていました。そして今回,イエス・キリストには神から与えられた大切な役目があるということを初めて知って,これからはキリストの後に従いつつ神に仕えていきたいと思いました。それでバプテスマを受けました。
16. 1世紀のクリスチャンはどのように助け合いましたか。
16 バプテスマを受けた人たちには,エホバからの支えがありました。こう書かれています。「信者となった人は皆一緒にいて全ての物を共有し,所有物や財産を売っては,収益を全ての人にそれぞれの必要に応じて分配した」。f (使徒 2:44,45)こういう助け合いの心に私たちも倣いたいと思います。
17. バプテスマの前にどんなステップを踏む必要がありますか。
17 聖書によれば,クリスチャンの献身とバプテスマの前には幾つかのステップがあります。まず,聖書を学んで知識を身に付けます。(ヨハ 17:3)そして信仰を育み,これまでの良くない行いを反省し,心から悔やみます。(使徒 3:19)それから生き方を変え,いつも神に喜ばれる正しいことを行うようにします。(ロマ 12:2。エフェ 4:23,24)こうしたステップの後,祈りの中で「あなたにお仕えします」と神に約束して献身し,バプテスマを受けます。(マタ 16:24。ペテ一 3:21)
18. キリストの弟子になった人には,どんな大切な仕事が任されていますか。
18 あなたは,献身してバプテスマを受け,イエス・キリストの弟子になりましたか。もしそうなら,あなたには大切な仕事が任されています。聖なる力に満たされた1世紀のクリスチャンと同じように,神の王国について徹底的に教え,エホバのために働くことができます。
a 「エルサレム ユダヤ教の中心地」という囲みを参照。
b 「ローマ 帝国の首都」,「メソポタミアとエジプトのユダヤ人」,「ポントスでのキリスト教」という囲みを参照。
c この「舌」は「炎のよう」でした。実際の火だったわけではありません。まるで燃える炎のように見えたということと思われます。
d 「『改宗者』とはどんな人か」という囲みを参照。
e ちなみに,1993年8月7日,ウクライナのキーウで開かれたエホバの証人の国際大会では,6つのプールで7402人がバプテスマを受けました。全員が受け終わるまでに2時間15分かかりました。