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この目で確かめてみたかったのです目ざめよ! 1988 | 7月22日
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しかし,クリスチャン・ギリシャ語聖書の写本の中で,知られている最も古いものはどれでしょうか。
マンチェスターの小さな宝
それは,ヨハネ 18章31節から34節,同37節と38節を収めた横8.9㌢縦5.7㌢の小さな断片にすぎません。ヨハネの福音書の原本が書かれたのは,西暦98年ごろのことでした。今は断片となっているこの写本は,そのすぐ後に作られた,西暦100年ないし150年ごろのものです。どこに行けばこの写本が見られますか。それは,19世紀に綿糸産業で急成長を遂げた英国の町,マンチェスターです。その町のジョン・ライランズ図書館でこの断片が展示されていますが,一般公開されることはまれにしかありません。
図書館員は親切に,そうした断片からどのようにこの書の最初の大きさが計算できるかを説明してくれました。この断片は,本誌のサイズと同じくらいの,130ページから成るヨハネの福音書の冊子本の一部であろうと見られています。2枚のガラス板にはさんで固定されているその断片は,極めてもろいウエハースのように見えます。それでも,多くのパピルスは驚くほど柔軟性に富んでいるということです。
年代はどのように確定できるのでしょうか。用いられているパピルスの種類,全体の外観,それに文字の書き方がかぎになるそうです。専門的な写字者のものとはみなされていない筆跡が,私の見たベラムの写本の筆跡と違うことは私でも分かりました。ベラムのほうは,縦の線が太く,横の線はその端が大きな点になっています。
この小さな断片にはどんな意味があるのでしょうか。この断片は,四福音書がイエスの弟子たちによって書かれたものではなく,実際には2世紀に偽造されたものだとする一部の批評家たちが唱える説の誤りを証明しています。しかし,マタイ,マルコ,ルカによるそれぞれの書がヨハネによる書の前に書かれたことは一般に広く認められているので,この断片から,それらがみな1世紀に書かれたという証拠を得ることができます。出来事を目撃し,それを述べた人たちがいて,どんな誤った話も論駁できた1世紀には,欺きを働くどんなグループも,そういう話を作れなかったでしょう。
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この目で確かめてみたかったのです目ざめよ! 1988 | 7月22日
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[22ページの図版]
ヨハネ 18章の一部を含む2世紀初期のこの断片は,クリスチャン・ギリシャ語聖書の本文のうち,これまでに知られている世界最古のものとみなされている
[クレジット]
Courtesy of The John Rylands University Library, Manchester
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