聖書に対する洞察 ― 新しい聖書事典
エホバの証人の「神の公正」地域大会で,「聖書に対する洞察」という表題の新しい聖書事典が発表されました。全2巻,総2,560ページで,全体が鮮明な読みやすい活字で印刷されています。現在のところ,この出版物は英文のものしかありませんが,すでに他の幾つかの言語への翻訳がかなり進んでいます。
「聖書に対する洞察」には,先に「聖書理解の助け」という本に掲載された資料が多く含まれており,ほかにもたくさんの事柄が取り上げられています。では,「聖書に対する洞察」という本はどんな点が違うのでしょうか。かなりの部分が改訂され,最新のものになりました。また多くの項目が新たに設けられ,特色も幾つか増えています。
聖書の書
聖書の各書には特別な注意が払われてきました。価値ある参考資料が提供されています。聖書のすべての書について新鮮な概説が述べられており,各概説はその書の際立った特色に注意を引いて,その書の内容の簡潔で包括的な概観を分かりやすく伝えています。例えば,地上でのイエスの生涯と宣教に関しては四つの福音書がありますが,それぞれの目的は異なっています。福音書の紹介に際して各概説はその目的を次のように示しています。『イエスの生涯に関する使徒マタイの記述はおもにユダヤ人を念頭に置いて書かれました。この福音書はイエスこそ予告されたメシアなる王であることを立証しています』。『マルコはイエスの生涯を簡潔に,速いテンポで記述し,奇跡を行なう神のみ子としてイエスを紹介しています』。『イエスの生涯に関するルカの記述は,キリストの生涯を取り巻く出来事を確証するためのものであり,すべての国の人々の心に訴えるような書き方になっています』。『イエスの生涯に関する使徒ヨハネの記述は,イエスが神のみ子なるキリストであり,そのキリストによってとこしえの命が得られるようになった,という主題をクローズアップしています』。こうした紹介の言葉の後,限られた数の主な見出しのもとに,その書の内容の概略が示されています。これは,聖書筆者が発展させた主要な考えを覚えるのに役立ちます。
洗練
この出版物では種々の言葉が丹念に分析されていますが,これは原語の聖書の中で用いられている言葉の意味に照らしてなされました。そして,原語の言葉の聖書的意味範囲を読者が認識できるよう,詳細な点も含められています。さらに,聖書に出てくる名前の意味が,新世界訳聖書におけるそれらの名前の基本的要素の実際の訳し方に照らして一層明確にされました。
また,この出版物中の資料が近年の「ものみの塔」誌に載せられた記事と合った最新のものとなるよう,勤勉な努力も払われました。例えばわたしたちは,心,命の書,義と宣すること,その他多くの事柄についてたくさんのことを学びました。そのような情報も,「聖書に対する洞察」の本に収録されています。
世俗の歴史の詳細な点に関しては,元の資料の内容について他の筆者が述べている事柄にただ依存するのではなく,その資料が参照できる場合はそれに照らして調査されました。またそのような情報がどこにあるかを示すため,幾百もの参照資料が載せられています。科学的な面は最新のものにされました。地理的な位置については,近年行なわれた考古学的調査に基づいて徹底的な再評価がなされました。
聖書地図
「聖書に対する洞察」の本には70ほどの地図が含まれており,聖書の中で言及されている幾百もの場所が示されています。ですから,この出版物には広範にわたる聖書地図が含まれていることになります。ほとんどの場合,個々の地図は聖書か世俗の歴史の特定の面だけに焦点を当てているので,その文脈の中で特に重要な場所に注意を引いています。アブラハムの旅路を説明した地図,イスラエルが荒野で放浪した道筋を概略した地図,約束の地の征服を扱ったもの,逃亡者としてのダビデの生活を追ったもの,ダビデの王権と関係した出来事を示したもの,イエスが地上での宣教期間中に旅行された大体の場所を示す一連の地図,それに歴史上の様々な期間のエルサレムの詳細を示す幾つかの地図などがあります。地図索引もありますから,ある土地や場所に関する極めて有用な情報を提供する特定の地図を探すのに役立ちます。
多くの地図と共に,地名や,その場所がなぜ考慮中の特定の歴史的背景の中で重要なのかを示す聖句も列挙されています。隣のページには,その地図に出ている場所のカラー写真が載せられています。これらの特色は,読者が一つの場所と別の場所との関係を理解し,そこで起きた事柄に関する詳細を読み,その場所は今日どうなっているかを見て,聖書の記述から一層豊かな益を得るのに役立ちます。
四色刷りで提供される特別な特色
この出版物の準備に際しては,聖書の記録と関係のある貴重な物品を探すため,北アメリカ,ヨーロッパ,中東などにある博物館の徹底的な調査が行なわれ,非常に価値ある物に関する写真が手に入りました。それに加えて,最も役立つ写真を選ぶため,聖書に出てくる場所の写真の幾つかのコレクションがもう一度検討されました。その結果,実際的な価値のある,16ページにわたる四色刷りの差し込みが8か所に収録されました。それらはあなたも楽しめ,また他の人を教える際にも多くの方法で用いることのできる魅力的で際立った部分です。
例えば,「わたしたちはどのようにして聖書を得たか」という題目の部分があります。この部分は,聖書がわたしたちの手元に達するまでの歩み,つまり最初に書かれたものから現代の翻訳に至るまでを図式的に描いています。また,幾つかの最古の写本の一部を示す写真と,写した写本の文字の数まで数えた昔の写字生の注意深さを証しする目に見える証拠も含まれています。
ほかに,「ノアの日の大洪水」についての部分もあります。「箱船はすべての動物を収容できたか」,また「洪水の水はどこへ行ったか」といった問題も取り上げられています。この部分には六つの大陸と海洋の島々から集めた洪水伝説に関する分析も載せられていて,ノアの日の洪水の記憶が全地の様々な文化の人々の間に見られることを示しています。
他の部分では,約束の地,および古代のいろいろな帝国の中でもその活動がイスラエルに影響を及ぼした帝国の地理的な特徴が扱われており,旅行者が今日のエルサレム内外で見ることのできる場所を写真の上で訪れることができるようになっています。異なった興味深い事柄が合わせて50,四色刷りで展開されています。
こうした情報はすべて,この本にある総合索引を使って簡単に見つけられるようになっています。またこの索引を利用すれば,引用されている聖句や挙げられている項目の優れた解説を見いだすことができます。
第1巻にはこの本を概観する次のような序文が掲載されています。「本書の目的は,聖書に対して洞察力を得ることを願う人の助けになることです。それはどのように行なわれているでしょうか。聖書のあらゆる部分から,検討事項に関する詳細な情報が集められています。また原語の言葉とその文字通りの意味に注意を向けています。一般の歴史や考古学上の研究,科学の他の様々な分野から得られる関連情報などを取り上げ,聖書に照らしてそれらを評価しています。視覚に訴える補助資料も提供しています。そして聖書の述べる事柄に調和した行動をすることの価値が認識できるようになっています」。そのようなわけで,「聖書に対する洞察」の本には,自分自身と他の人を益するために用いることのできる本当に貴重な情報が盛り込まれているのです。