第19章
神についての知識が地を満たす時
1,2 エホバの創造物は,どのように傷つけられるに至りましたか。
偉大な画家が,見事な絵を描き上げたとします。本人は当然のことながらその絵を見て,非常に良くできた,まさに傑作だ,と思います。しかし,嫉妬深い競争相手が夜中にその絵を汚してしまいます。そのため画家がひどく心を傷めたとしても無理はありません。そのような芸術の破壊者は刑務所に送り込むべきだ,と画家は思うでしょう。また,画家が自分の創作に元の美しさが戻ることを願う気持ちも,容易に理解できます。
2 エホバも,地球を整え,その上に人間を置いて,この画家のように一つの傑作を創造されました。エホバは男と女を創造された後,地球に関係したご自分の業はすべて『非常に良い』と宣言されました。(創世記 1:31)アダムとエバはエホバご自身の子供であり,エホバはこの二人を愛しておられました。エホバは二人のための幸福で輝かしい将来を予見しておられました。確かに,サタンはこの二人を反逆させましたが,神のすばらしい創造物は,修復が不可能なほど傷つけられたわけではありません。―創世記 3:23,24; 6:11,12。
3 「真の命」とは何ですか。
3 神は事態を正すことを決意されました。ご自分が当初意図されたとおりに人間が生活するのを見たい,と強く願っておられるのです。人間がわずかな年数だけ苦しみながら生きることは「真の命」ではありません。それは,エホバの考えておられるものと比較すれば,はるかに劣っているからです。神がわたしたちのために望んでおられる「真の命」は,完全な状態のもとでの「永遠の命」です。―テモテ第一 6:12,19。
4,5 (イ)楽園の希望はどのように実現しますか。(ロ)将来の希望について考えるべきなのはなぜですか。
4 神についての知識はエホバのみ前における責任を生じさせます。(ヤコブ 4:17)しかし,その知識を当てはめ,永遠の命を得ようと努めるときに味わう祝福について考えてみてください。エホバ神は,み言葉聖書の中で,間近に迫った地上の楽園で永遠に生きるとはどんなことかを示す美しい絵を描いておられます。もちろん,エホバの民であるわたしたちは,ただ報いが欲しくて神に仕えるのではありません。神を愛すればこそ,神に仕えるのです。(マルコ 12:29,30)さらに言えば,わたしたちはエホバに仕えた報酬として命を得るのではありません。永遠の命は神からの賜物です。(ローマ 6:23)そのような命について黙想するなら,わたしたちは益を得ることができます。というのは,楽園の希望は,エホバがどんな神か,つまり「ご自分を切に求める者に報いてくださる」愛の深い方であることを思い起こさせてくれるからです。(ヘブライ 11:6)わたしたちの思いと心の中で燃え盛る希望があれば,サタンの世の苦難を耐え忍ぶことができます。―エレミヤ 23:20。
5 ではここで,聖書に基づいた,将来の地上の楽園における永遠の命の希望に注意を向けてみましょう。神についての知識が地を満たす時,生活はどうなるのでしょうか。
ハルマゲドン後 ― 地上の楽園
6 ハルマゲドンとは何ですか。それは人類にとって何を意味しますか。
6 すでに述べたように,エホバ神は間もなく現在の邪悪な事物の体制を滅ぼされます。世界は,聖書がハルマゲドンと呼ぶものに急速に近づいています。この言葉から,戦い合う諸国家がもたらす核による大破壊を連想する人がいるかもしれませんが,ハルマゲドンはそのようなものではありません。啓示 16章14節から16節に示されているとおり,ハルマゲドンは「全能者なる神の大いなる日の戦争」です。それは,「人の住む全地の王たち」もしくは諸国家を巻き込む戦争です。エホバ神のみ子,つまり任命された王は,程なく戦場に乗り進まれます。その戦争の結末について疑問の余地は全くありません。神の王国に敵対し,サタンの邪悪な体制の一部になっている人は皆,除き去られます。エホバに忠節を尽くす人だけが生き残るのです。―啓示 7:9,14; 19:11-21。
7 キリストの千年統治の間,サタンと配下の悪霊たちはどこにいますか。それは人類にとってどのように益となりますか。
7 あなたがその大変動を生き残ったと考えてください。神の約束された地上の新しい世では,どんな生活を送ることになるのでしょうか。(ペテロ第二 3:13)憶測する必要はありません。そのことは聖書に記されており,聖書が述べる事柄は興奮を誘います。イエス・キリストの千年統治の間,サタンと配下の悪霊たちは活動できなくなり,底知れぬ深みという無活動の状態に閉じ込められるのです。わたしたちはそのことを知っています。それら邪悪で悪意に満ちた被造物が陰に隠れて問題を引き起こしたり,神に対する不忠実な行ないをさせようと画策したりすることは,もはやありません。これで本当に安心できます。―啓示 20:1-3。
8,9 新しい世では,苦しみ,病気,老化はどうなりますか。
8 やがて,病気と名のつくものは,すべてなくなってしまいます。(イザヤ 33:24)その時,足のなえた人は健康な強い足で立ち,歩き,走り,踊ることができます。耳がきこえず,音のない世界で長年生きてきた人も,周囲の楽しい音を聞くことができるようになります。目の見えなかった人は,色と形のある壮麗な世界が実際に眼前に広がるのを見て,畏怖の念に打たれ,息をのむでしょう。(イザヤ 35:5,6)ついに愛する家族の顔を見ることができるのです。その時,そのような人たちの視界は,ほんの一瞬,喜びの涙でかすむことでしょう。
9 考えてみてください。めがねも,松葉杖も,ステッキも,薬も,歯科医院も,病院も必要ではなくなるのです。人が感情的な病気やうつ病のために喜びを奪われることは,もう二度とありません。幼年時代に病気で苦しむこともありません。惨めな老化の過程は逆転します。(ヨブ 33:25)わたしたちはますます健康に,ますます元気になります。毎朝,さわやかな一晩の眠りから新たな力を得て目覚めるとき,わたしたちは活力にあふれ,活気に満ちた生活と満足のゆく仕事が待つ新しい日への期待で胸がふくらみます。
10 ハルマゲドンを生き残った人たちは,どんな仕事をすることになっていますか。
10 ハルマゲドンを生き残った人たちは,多くの楽しい仕事を行なうことになります。彼らは地球を楽園に変えるのです。汚染された古い体制の名残はことごとく除き去られます。スラムや荒れ地に代わって,公園や庭園が姿を現わします。住み心地のよい快適な住居がすべての人に与えられます。(イザヤ 65:21)時の経過と共に,地上の楽園のようなそれぞれの場所は徐々に広がって結合し,全地は創造者が昔エデンの園で設けられた美しさの規準を満たすようになります。その復興の業に参加するなら,深い満足感が得られるに違いありません。
11 人間と地球の環境との関係,また人間と動物との関係は将来どのようになりますか。
11 こうしたことはすべて,環境が破壊されないように,神の導きのもとに行なわれます。人間は動物たちと仲良くなります。人間は動物を情け容赦なく殺すのではなく,地球の管理人としての責任を再び担い,動物たちを十分に世話します。おおかみと子羊,ライオンと子牛が一緒に食べている様子を思い浮かべてください。家畜に危害が及ぶことは全くありません。小さな子供も野獣を恐れることはなく,新しい世の静けさが,残虐で獰猛な人々に乱されることもありません。(イザヤ 11:6-8)それは本当に平和な新しい世です。
人間も変えられる
12 イザヤ 11章9節は,今日どのように成就していますか。楽園ではどのように成就しますか。
12 イザヤ 11章9節は,地上のどこにおいても危害が加えられない理由を次のように述べています。「水が海を覆っているように,地は必ずエホバについての知識で満ちる」。この聖句は人間のことを言っています。動物は本能に支配されており,「エホバについての知識」を取り入れて変化することは不可能だからです。それに反して,わたしたちの創造者についての知識は,本当に人々を変化させます。あなたもすでに,神についての知識を自分の生活に当てはめた結果,幾らか変化を遂げておられるに違いありません。幾百万もの人々がそのようにしてきました。ですから,上記の預言は,エホバに仕える人々の間ですでに成就し始めているのです。しかしこの預言は,世界中の人々が動物的な,あるいは乱暴な特性を振り捨て,いつまでも平和を愛するようになる時を指し示すものでもあります。
13 地上ではどんな教育計画が実施されますか。
13 神についての知識が地を満たす時は,どんなにかすばらしい時となることでしょう。王イエス・キリストと14万4,000人の共同支配者の指示のもとに,広範にわたる教育計画が実施されます。その時に新しい「数々の巻き物」が用いられるようになります。それらの巻き物は,地に住む人々を教育するための基礎となる,神の指示が書き記されたものと思われます。(啓示 20:12)人間は戦争ではなく平和を学びます。破壊的な兵器はすべて永久に存在しなくなります。(詩編 46:9)新しい世に住む人たちは,仲間の人間に,愛と敬意と品位をもって接することを教えられるでしょう。
14 人類が一つの一致した家族になるとき,世界はどのように現在とは異なったところになりますか。
14 人類は一つの一致した家族になります。一致と兄弟関係を阻む壁はもうありません。(詩編 133:1-3)泥棒が入らないようにかぎをかけておかなければならない家は一軒もありません。だれの心も,どの家も,地上のどの場所も,平和によって支配されるのです。―ミカ 4:4。
喜ばしい復活
15 どんな二つのグループが地上に復活してきますか。
15 その千年期の間に復活が起こります。神の聖霊つまり活動力に対する故意の罪を犯し,悔い改めることなく,聖霊の表われや導きに反する行動を取った人たちは,復活しません。(マタイ 23:15,33。ヘブライ 6:4-6)だれがそのような罪を犯したかを見定めるのは,もちろん神です。しかし,はっきり異なった二つのグループ,つまり「義者と不義者」が復活します。(使徒 24:15)物事にはふさわしい順番というものがありますから,義者,つまり忠節を尽くしてエホバに仕えた人たちが最初に地上に生き返り,喜びをもって迎えられると結論するのは,道理にかなっています。―ヘブライ 11:35-39。
16 (イ)地上に復活してくる「義者」にはどんな人たちが含まれていますか。(ロ)あなたは,古代に忠実を示したどんな人たちに特に会いたいと思いますか。それはなぜですか。
16 エホバの僕たちは,戦争や災害や死に関する知らせを耳にする代わりに,復活に関するすばらしい知らせを聞くことになります。アベル,エノク,ノア,アブラハム,サラ,ヨブ,モーセ,ラハブ,ルツ,ダビデ,エリヤ,エステルなど,忠実な男女が戻ってきたことを知れば,心が沸き立つでしょう。それらの男女が聖書にある多くの記述の詳細な背景を話してくれるとき,感動的な歴史の事実が明らかにされるでしょう。彼らも,比較的最近亡くなった義者たちも,サタンの体制の終わりと,エホバがどのように聖なるみ名を神聖なものとし,ご自分の主権を立証されたかについて知りたがるに違いありません。
17 忠実な人たちは,復活させられる他の人々に,どんな援助を与えますか。
17 これら忠実な人たちは復活における次の段階において,つまり幾十億もの「不義者」が死のなわめから解放される時,どれほど大きな助けになるか分かりません。人類の大半は,これまでエホバを知る機会に全く恵まれませんでした。サタンが『彼らの思いをくらまして』いたのです。(コリント第二 4:4)しかし,悪魔の業は覆されます。不義者は,美しく平和な地上によみがえります。彼らを迎えるのは,エホバについて,また統治するみ子イエス・キリストについて教えるために十分組織された人々です。復活させられる幾十億もの人々が自分たちの創造者を知って愛するようになると,エホバについての知識が,前例のない方法で地を満たすことになります。
18 あなたは,復活してくる愛する人々を迎えるとき,どのように感じると思いますか。
18 復活はわたしたちの心に実に大きな喜びを与えます。わたしたちの敵である死による苦しみを味わわなかった人がいるでしょうか。実際,病気,老齢,事故,暴力行為などによって愛する人の命を奪われ,愛と友情の絆を断ち切られたとき,打ちのめされなかった人がいるでしょうか。では,楽園での再会の喜びを想像してみてください。母親と父親,息子と娘,友人と親戚が,笑いながら,喜びの涙を流しながら,互いの腕の中に走り込んでゆくのです。
ついには完全になる
19 千年期には,どんな奇跡が行なわれますか。
19 千年期の間ずっと,すばらしい奇跡が行なわれるでしょう。それは人類にとって,恐らくキリストの千年統治における最も感動的な特徴と言えるでしょう。エホバはみ子に指示を与え,忠実で従順な男女一人一人に贖いの犠牲の益が及ぶようにされるでしょう。そのようにして,すべての罪は除き去られ,人類は完全へと引き上げられます。―ヨハネ第一 2:2。啓示 21:1-4。
20 (イ)完全になるとはどういうことですか。(ロ)ハルマゲドンを生き残った人たちと復活した人たちは,いつから完全な意味で生き始めますか。
20 完全! それは何を意味するのでしょうか。それは,アダムとエバがエホバ神に対する罪を犯す前に営んでいたような生活に戻ることを意味しています。完全な人間は,身体面,精神面,感情面,道徳面,霊的な面など,考え得るいずれの面においても,神の規準に十分かなうことになります。しかし,その時になると,人は皆あらゆる点で同じになってしまうのでしょうか。決してそうではありません。木であれ花であれ動物であれ,エホバの創造物は皆,エホバが多様性を愛しておられることを教えています。完全な人間であっても,個性や才能は異なることでしょう。各人は,神の意図されたような生活を楽しみます。啓示 20章5節は,「残りの死人は千年が終わるまで生き返らなかった」と述べています。復活してくる人たちもハルマゲドンを生き残る大群衆と同様,罪のない完全な状態に達するとき,完全に生きることになります。
21 (イ)キリストの千年統治の終わりにどんなことが生じますか。(ロ)サタン,およびサタンの側に付く者たちはすべて,最終的にどうなりますか。
21 完全な人間は一つの最終的な試みに直面します。千年期の終わりに短期間,サタンと配下の悪霊たちが底知れぬ深みから解き放たれ,人々をエホバから引き離すために最後の手を尽くすことが許されるのです。神に対する愛よりも悪い欲望を優先させる人もいますが,この反逆は短くされます。エホバはこれら利己的な人たちを,サタンおよびすべての悪霊と共に,死刑に処されるでしょう。そのあと,悪行者はだれ一人,永久に存在しなくなります。―啓示 20:7-10。
あなたはどうされますか
22 あなたは楽園で何をすることを楽しみにしておられますか。
22 エホバ神を愛し,楽園の地に住む人たちの前には,永遠という時間が広がっています。彼らの喜びはわたしたちの想像を超えたものですが,あなたもそのような喜びをご自分で味わうことができます。音楽,美術,工芸 ― そのいずれの分野においても,完全な人間の偉業は,古い世の最高の大家の最高傑作をさえしのぐものとなります。結局,人間は完全になり,無限の時間が与えられるのです。あなたが完全な人間として行なえる事柄を想像してみてください。宇宙に広がる幾十億もの銀河から,原子の内部にある極小の粒子に至るまで,あなたが友達と一緒にエホバの創造物についてどんなことを学べるか,考えてみてください。人間が成し遂げる事柄はすべて,わたしたちの愛ある天の父エホバの心をいっそう喜ばせることになるのです。―詩編 150:1-6。
23 楽園での生活が決して退屈なものにならないのはなぜですか。
23 その時の生活は退屈なものではありません。時間がたつにつれて,生活はますます興味深いものになってゆきます。神についての知識に終わりはありません。(ローマ 11:33)さらに学ぶべき事柄,探求すべき新たな領域は永遠にわたって常に存在します。(伝道の書 3:11)さらには,エホバ神について学びつづけるとき,あなたはわずか数年ではなく,永久に生きつづけることになります。―詩編 22:26。
24,25 今あなたが,神についての知識に調和して生活すべきなのはなぜですか。
24 楽園の地での喜ばしい将来には,どんな努力や犠牲を払うとしても,そうするだけの価値があるのではないでしょうか。もちろん,そうする価値があります。エホバはそうした輝かしい将来へのかぎをあなたに差し出しておられます。そのかぎとは,神についての知識です。あなたはそれを用いますか。
25 あなたがエホバを愛しておられるなら,エホバのご意志を行なうことに喜びを見いだされるでしょう。(ヨハネ第一 5:3)あなたはその道を歩みつづけるとき,すばらしい祝福を経験することになります。神についての知識を当てはめるなら,問題の多いこの世にあっても,いっそう幸福な生活を送ることができます。それに,将来の報いは計り知れません。これは永遠の命に導く知識だからです。今はあなたが行動するための恵まれた時です。神についての知識に調和して生活する決意をなさってください。エホバに対する愛を実証してください。エホバの聖なるみ名を尊び,サタンが偽り者であることを証明しましょう。そうすれば,真の知恵と知識の源であられるエホバ神が,愛にあふれた,その広い心のうちで,あなたのことを歓ばれるでしょう。(エレミヤ 31:3。ゼパニヤ 3:17)そして神は,あなたを永久に愛されるでしょう。
知識を試してみましょう
「真の命」とは何ですか
ハルマゲドン後,地上ではどんなことが起こりますか
どんな人が地上に復活してきますか
人間はどのように完全になりますか。最後にどのような試みを受けますか
あなたは,楽園に関するどんな事柄を望んでおられますか
[188,189ページの図版]
あなたは,神についての知識が地を満たす楽園で生活したいと思われますか