-
聖書の34番目の書 ― ナホム書『聖書全体は神の霊感を受けたもので,有益です』
-
-
1 古代のニネベについてどんなことが知られていますか。
「ニネベに対する宣告」。(ナホム 1:1)ナホムの預言はこのような険悪な言葉で始まります。しかし,なぜ彼はこのような滅びの宣明を行なったのでしょうか。古代ニネベについてはどんなことが知られていますか。ニネベの歴史は,ナホムの述べた,「流血の都市」という短い言葉の中に要約されています。(3:1)イラク北部の現代の都市モスルの対岸,つまりチグリス川東岸に位置する二つの塚は,古代ニネベの遺跡のしるしとなっています。この都市は城壁と堀によって厳重な防備を施され,アッシリア史後期の同帝国の首都となっていました。しかし,この都市の起源は「エホバに敵対する力ある狩人」ニムロデの時代にさかのぼります。「彼はアッシリアに出て行って,ニネベ……の建設に取りかかった」と記されています。(創世記 10:9-12)こうして,ニネベの始まりは好ましいものではありませんでした。ニネベは,サルゴン,セナケリブ,エサル・ハドン,アシュルバニパルなど,アッシリア帝国末期の王たちの治世中に特に有名になりました。戦争と征服とを通じてニネベは自らを分捕り物によって肥やし,その支配者たちが多数の捕虜たちに加えた,残酷で,非人間的な仕打ちのゆえに広く知られるようになりました。a C・W・セラムは自著,「神々と墓と学者たち」(英文,1954年)の266ページでこう述べています。「ニネベといえば,ただ殺害と略奪,抑圧と弱者への暴虐だけが人々の意識に印象づけられた。また,その戦争と,あらゆる形の身体的暴力,その王朝の支配者たちの数々の血生臭い行為で知られるようになった。彼らは恐怖によって民を抑えつけ,また自分たちよりさらに凶暴なライバルたちによって粛正される場合も多かった」。
-
-
聖書の34番目の書 ― ナホム書『聖書全体は神の霊感を受けたもので,有益です』
-
-
3 (イ)ナホムの名前の意味はなぜ適切ですか。(ロ)ナホムの預言はどんな時期に行なわれたものですか。
3 ナホムの預言は短いとはいえ,尽きない興味を秘めています。この預言者自身について知り得ることは,その冒頭の節に,「エルコシュ人ナホムの幻の書」と記されていることだけです。彼の名前(ヘブライ語,ナフーム)には,「慰める者」という意味があります。彼の音信はニネベにとっては決して慰めとはなりませんでしたが,神の真の民にとっては,執念深い強大な敵からの確実で永続的な救いを意味するものでした。ナホムが自分の民の罪を取り上げていないことも,慰めをもたらすものとなります。エルコシュの場所ははっきり分かっているわけではありませんが,その預言はユダで書かれたものと見ることができるようです。(ナホム 1:15)ニネベの倒壊は西暦前632年に起きましたが,ナホムが自分の預言を記録した時,その倒壊はまだ将来のことでした。そしてナホムは,そのことを,それより少し前に起きたノ・アモン(エジプトのテーベ)の倒壊と比較しています。(ナホム 3:8)したがってナホムは,その期間中のいつかの時期に自分の預言を書き記したに違いありません。
-