19章
ハルマゲドン後,楽園となる地球
1 (イ)ハルマゲドンは一般にどのように見られていますか。(ロ)聖書はハルマゲドンについて何と述べていますか。
「ハルマゲドン」という言葉を聞くと多くの人はぞっとします。世界の指導者たちは,起こるかもしれない第三次世界大戦を指してよくこの言葉を使います。しかし,聖書はハルマゲドンのことを,神が戦う正義の戦争の場所として述べています。(啓示 16:14,16)神のこの戦争は義の新しい世のための道を備えます。
2 (イ)ハルマゲドンで滅ぼされるのはだれですか。(ロ)それでどんな行ないを避けるのは賢明ですか。
2 善人悪人の別なく殺してしまう人間の戦争とは違って,ハルマゲドンでは悪人だけが滅ぼされます。(詩編 92:7)審判者はエホバ神です。エホバは,ご自身の義の律法に故意に従おうとしない者をすべて除かれるのです。今日,多くの人は,淫行,泥酔,うそをつくことやごまかすことなどを,別に悪いこととは考えていません。しかし神は,それを悪いこととみなされます。ですから,そのような事柄を行ないつづける人々を,神がハルマゲドンで救われるようなことはありません。(コリント第一 6:9,10。啓示 21:8)これらの問題に関する神の律法を知ったなら,そうした悪い事柄を習慣的に行なっている人々は,自分の行ないを改めることが大切です。
3 (イ)イエスは現代の世の終わりを何と比較されましたか。(ロ)サタンとその配下の悪霊たちはどうなりますか。(ハ)以下のページに掲げた聖句によると,楽園の地上にはどんな状態が訪れますか。
3 ハルマゲドン後には,この邪悪な世のどの部分も残ってはいないでしょう。神に仕える人々だけが生きつづけるのです。(ヨハネ第一 2:17)イエス・キリストは,その状態をノアの日の状態と比較されました。(マタイ 24:37-39。ペテロ第二 3:5-7,13; 2:5)ハルマゲドン後,神の王国は地を治める唯一の政府となります。サタンとその配下の悪霊たちは,いなくなっているでしょう。(啓示 20:1-3)聖書は従順な人々が数々の祝福を楽しむことを示していますが,次の数ページでその祝福を幾つか考えてみましょう。
全人類が平和を得る
「わたしたちのためにひとりの子供が生まれ,わたしたちにひとりの男子が与えられたからである。君としての支配がその肩に置かれる。そして彼の名は……“平和の君”と呼ばれるであろう。……君としてのその豊かな支配と平和に終わりはない」― イザヤ 9:6,7。
「その日には義なる者が芽生え,豊かな平和が月のなくなるときまで続くことでしょう。そして,彼は海から海に至るまで,川から地の果てに至るまで臣民を持つ」― 詩編 72:7,8。
戦争はもうない
「あなた方は来て,エホバの働きを見よ。神が驚くべき出来事を地に置かれたのを。神は地の果てに至るまで戦いをやめさせておられる」― 詩編 46:8,9。
すべての人に立派な家と楽しめる仕事がある
「彼らは必ず家を建てて住み……彼らが建てて,だれかほかの者が住むことはない。彼らが植えて,だれかほかの者が食べることはない。……わたしの選ぶ者たちは自分の手の業を存分に用いるからである。彼らはいたずらに労することなく,騒乱のために産み出すこともない。彼らはエホバの祝福された者たちからなる子孫であり,彼らと共にいるその末孫もそうだからである」― イザヤ 65:21-23。
犯罪,暴力,邪悪な行為も過去のもの
「悪を行なう者たちは断ち滅ぼされる……そして,ほんのもう少しすれば,邪悪な者はいなくなる。あなたは必ずその場所に注意を向けるが,彼はいない」― 詩編 37:9,10。
「邪悪な者たちは地から断ち滅ぼされ,不実な者たちは地から引き抜かれるのである」― 箴言 2:22。
地球全体が楽園
イエスは,「あなたはわたしと共にパラダイスにいるでしょう」と言われました。―ルカ 23:43。
「義なる者たちは地を所有し,そこに永久に住むであろう」― 詩編 37:29。
すべての人に良い食物が十分にある
「万軍のエホバはすべての民のために……油を十分に用いた料理の宴を必ず催される。それは,滓の上にたくわえられたぶどう酒,髄と共に油を十分に用いた料理……の宴である」― イザヤ 25:6。
「地には穀物が豊かに実り,山々の頂であふれんばかりに実ります」。「地は必ず産物を出すことでしょう。神,わたしたちの神は,わたしたちを祝福してくださいます」。―詩編 72:16; 67:6。
4,5 (イ)楽園の地にはどんな状態がもはや存在しなくなりますか。(ロ)人々は,今日多くの国でできないどんな事柄を行なうことができるようになりますか。
4 最初の人間アダムは園の中で創造されましたが,あなたもきっとそのような楽園の地上で生きたいと思われるでしょう。(創世記 2:8。ルカ 23:43)考えてみてください。戦争や犯罪や暴力行為はもう行なわれないのです。昼の何時であろうと,夜の何時であろうと,どこでも歩くことができ,人から危害を加えられる心配はありません。悪人は全くいなくなるのです。―詩編 37:35-38。
5 このことは,人々を抑圧する不正直な政治家や貪欲な商業指導者たちがいなくなることをも意味します。人々はまた,兵器の支払いのために重税を課されることもなくなります。だれも,金銭的余裕がないために良い食物が得られないとか,快適な家に住めないとかいうようなことはありません。失業,インフレ,物価高などももはやありません。今日,多くの家族を悩ましている様々な問題もなくなるでしょう。だれもが喜んでできる仕事を持ち,自分の労働の結果を見,また楽しむことができるでしょう。
6 (イ)ハルマゲドンの生存者はどんな仕事を行ないますか。(ロ)神は行なわれる仕事をどのように祝福されますか。
6 ハルマゲドンの生存者はまず,地を清掃し,この古い体制の残がいを片付ける仕事をすることになるでしょう。それから,王国支配の指導の下に,地を耕作し,また美しい住みかにする特権を得るでしょう。それはどんなにか楽しい仕事になることでしょう! 神は,行なわれるすべてのことを祝福してくださるでしょう。作物の栽培や家畜の飼育に適した気候を備え,また作物や家畜が病気や害から守られるようにしてくださるでしょう。
7 (イ)神のどんな約束が成就しますか。(ロ)クリスチャンは神の約束にしたがって何を待ち望んでいますか。
7 聖書の詩編作者を通して与えられた,愛ある創造者の次の約束が実現します。「あなたはみ手を開いて,すべての生きているものの願いを満たしておられます」。(詩編 145:16)そうです,神を恐れる人々の正しい願いは,すべて完全に満たされるのです。地上の楽園での生活がどれほどすばらしいものであるか,わたしたちは想像さえできないのです。神がご自分の民を祝福するために設けられた取決めについて,使徒ペテロは,「神の約束によってわたしたちの待ち望んでいる新しい天と新しい地があります。そこには義が宿ります」と書いています。―ペテロ第二 3:13。イザヤ 65:17; 66:22。
8 (イ)わたしたちが新しい物質の天を必要としないのはなぜですか。(ロ)「新しい天」とは何ですか。
8 この「新しい天」とは何でしょうか。新しい天は新しい物質の天ではありません。神は今ある物質の天を完全に造られたので,それらは神の栄光となっています。(詩編 8:3; 19:1,2)「新しい天」とは,地を治める新しい支配権のことです。今の「天」は人間のつくった諸政府で成り立っています。その天はハルマゲドンでなくなります。(ペテロ第二 3:7)それに取って代わる「新しい天」は神の天の政府で,その王はイエス・キリストです。しかし「新しい天」の構成員としてイエス・キリストと共に支配するのは,イエスの忠実な追随者の14万4,000人です。―啓示 5:9,10; 14:1,3。
9 (イ)「新しい地」とは何ですか。(ロ)滅ぼされる地は何ですか。
9 では「新しい地」とは何でしょうか。新しい地は新しい惑星のことではありません。神は,惑星であるこの地球を,人間が生きていくのにちょうどよいようにお造りになりました。そして地球が永遠に存続することは神のご意志です。(詩編 104:5)「新しい地」とは,人々の新しいグループもしくは社会のことです。聖書は「地」という語をたびたびそのように用いています。例えば,「全地[人々の意]は一つの言語,一式の言葉のままであった」と述べています。(創世記 11:1)滅ぼされる「地」とは,この邪悪な事物の体制のものとなっている人々のことです。(ペテロ第二 3:7)彼らに取って代わる「新しい地」とは,この邪悪な人々の世から離れた,神の真の僕で構成されます。―ヨハネ 17:14。ヨハネ第一 2:17。
10 (イ)今だれが,何の中に集められていますか。(ロ)続くページの聖句によると,楽園の地では,人間の政府にできないどんなことが行なわれますか。
10 「新しい地」の一部を構成するあらゆる人種や国籍の人々が,今クリスチャン会衆の中に集められつつあります。その人々の間に存在する一致と平和は,ハルマゲドン後の楽園の地上での生活を非常に楽しいものにするのが何であるかを,わずかに予示するにすぎません。実際,神の王国は,人間のつくるどんな政府も希望することさえできないような事柄を実現させるのです。では,続くページで,その祝福を幾つか考えてみましょう。
全人類の愛ある兄弟関係
『神は不公平な方ではなく,どの国民でも,神を恐れ,義を行なう人は神に受け入れられる』― 使徒 10:34,35。
「見よ,すべての国民と部族と民と国語の中から来た,だれも数えつくすことのできない大群衆……彼らはもはや飢えることも渇くこともな(い)」― 啓示 7:9,16。
人々と動物の間の平和
「おおかみはしばらくの間,雄の子羊と共に実際に住み,ひょうも子やぎと共に伏し,子牛,たてがみのある若いライオン,肥え太った動物もみな一緒にいて,ほんの小さな少年がそれらを導く者となる」― イザヤ 11:6。イザヤ 65:25。
病気,老齢,死はもはやない
「その時,盲人の目は開かれ,耳の聞こえない人の耳も開けられる。その時,足のなえた者は雄鹿のように登って行き,口のきけない者の舌はうれしさの余り叫びを上げる」― イザヤ 35:5,6。
「そして神みずから彼らと共におられるであろう。また神は彼らの目からすべての涙をぬぐい去ってくださり,もはや死はなく,嘆きも叫びも苦痛ももはやない。以前のものは過ぎ去ったのである」― 啓示 21:3,4。
死者は生き返る
「記念の墓の中にいる者がみな,彼の声を聞いて出て来る時が来ようとしている」― ヨハネ 5:28,29。
「海はその中の死者を出し,死とハデスもその中の死者を出(す)」― 啓示 20:13。
11 人々は今でも楽園に似たものを作りますが,それはしばしば何によって損なわれますか。
11 この古い体制がもたらし得るどんなものよりも,神の王国下の楽園のほうがどれほど良いか分かりません! 確かに一部の人々は,今でも,自分たちの住む場所を楽園のようにしています。しかし,そのような場所に共に住む人々も,意地悪で,利己的で,お互いに憎み合ってさえいるかもしれません。そして,やがてはその人たちも病気になったり,年を取ったりして死にます。しかし,ハルマゲドン後の地上の楽園では,美しい家や庭園や公園があるだけでなく,もっと多くのものがあるのです。
12,13 (イ)ハルマゲドン後にはどんな種類の平和がありますか。(ロ)こうした状態をもたらすには何が必要ですか。
12 考えてみてください。あらゆる人種や国籍の人々が,兄弟姉妹から成る一つの家族として共に住むことを学ぶのです。お互いに心から愛し合います。利己的な人や不親切な人は一人もいないでしょう。だれも,人種や,皮膚の色や,出生地だけを理由に他の人を憎むことはありません。偏見もなくなります。世界中の人が皆お互いに真の友人,また隣人となります。実にそれは霊的な面でも楽園なのです。あなたは,その「新しい天」の支配を受けるこの楽園に住みたいと思いますか。
13 今日,人々は平和共存を盛んに語り,「国際連合」機構をさえ設立しました。にもかかわらず人々や国々は,かつてないほどに分裂しています。何が必要なのでしょうか。人々の心の変化が必要です。しかし,そのような奇跡を行なうことは,この世の政府には全く不可能なことです。ところが,神の愛についての聖書の音信はそれを行ないつつあるのです。
14 この楽園の状態が実現することを示すどんな事柄がいま起きていますか。
14 義にかなった新しい体制について学ぶと,多くの人々の心は動かされて神を愛するようになります。そして他の人に対しても,神がなさるように,愛をもって行動するようになります。(ヨハネ第一 4:9-11,20)これは生活における大きな変化を意味します。どう猛な動物のように,意地悪で嫌われ者だった人々が,このようにして多数,柔和に,穏やかになりました。その人々は,従順な羊のようにクリスチャンの群れに集められています。
15 (イ)クリスチャンにはどんな二つのグループがありますか。(ロ)「新しい地」を構成する最初の人たちはだれですか。
15 キリストと共に支配する14万4,000人のクリスチャンの「小さな群れ」を集めることは,1,900年以上にわたり,行なわれてきました。そのうちの少数がいま地上に残っています。ほとんどはすでに天でキリストと共に支配しています。(ルカ 12:32。啓示 20:6)しかし,ほかのクリスチャンについてイエスは,「わたしにはほかの羊がいますが,それらはこの[「小さな群れ」の]囲いのものではありません。それらもわたしは連れて来なければならず,彼らはわたしの声を聴き,一つの群れ,一人の羊飼いとなります」と言われました。(ヨハネ 10:16)この「ほかの羊」の「大群衆」はいま集められています。彼らは「新しい地」の最初の人々となります。エホバは,この邪悪な体制の終わりの時に彼らを保護して「大患難」を通過させ,地上の楽園で生きつづけるようにしてくださるでしょう。―啓示 7:9,10,13-15。
16 どんな奇跡によって動物との生活は楽しいものになりますか。
16 ハルマゲドンのあと,さらに別の奇跡が行なわれて,楽園の状態は一層すばらしいものになります。ライオンとかトラ,ヒョウ,クマなど,今では危険な動物がおとなしくなるのです。森の中を散歩する時に,そばに寄って来たライオンと一緒にしばらく散歩したり,少しして大きなクマと一緒に散歩したりするのは,どんなに楽しいことでしょう! もうだれも,ほかの生き物を恐れる必要はないのです。
17,18 (イ)楽園の地には,悲しみの原因となるどんな事がもはや存在しなくなりますか。(ロ)わたしたちはなぜ,すべての人が完全な健康を楽しむようになることを確信できますか。
17 しかし,家や庭がどんなに美しくても,人々がどんなに親切で愛があっても,動物たちとどんなに仲が良くても,もしわたしたちが病気になり,年を取り,そして死んでしまうなら,やはり悲しみがあることになります。それにしても,だれがすべての人に完全な健康体を与えることができるのでしょうか。人間の政府は,ガン,心臓病その他の病気を一掃することに失敗しました。仮にそうするとしても,人々の老化は食い止められないことを,医師たちは認めます。わたしたちはやはり年を取ります。やがて目はかすむようになり,筋肉は弱くなり,皮膚にはしわがより,体の中の色々な器官は衰えてゆきます。そして死が訪れます。本当に悲しいことです!
18 ハルマゲドン後の楽園の地では,神がすばらしい奇跡を行なわれて,そうしたことがすべて変化するのです。聖書は,「『わたしは病気だ』と言う居住者はいない」と約束しているからです。(イザヤ 33:24)イエス・キリストは地上におられた時,アダムから受け継いだ罪の結果である,あらゆる種類の病気や疾患をいやす力のあることを証明されました。(マルコ 2:1-12。マタイ 15:30,31)王国の支配下では老化も止まります。老人は若返るのです。そうです,『人の肉は若いころよりもみずみずしくなる』のです。(ヨブ 33:25)朝起きるたびに,前の日よりも健康になっていることに気付くのは,どんなにか胸の躍ることでしょう!
19 どんな最後の敵が,どのようにして,無に帰せられますか。
19 若々しい,しかも完全な健康体で楽園の地上に住んでいるのですから,死にたいと思う人などもちろんいないでしょう。それに,だれも死ぬ必要はありません! 彼らが贖いの犠牲の益を受けるということは,最後に「わたしたちの主キリスト・イエスによる永遠の命」という神のすばらしい賜物を享受するということです。(ローマ 6:23)聖書にある通り,キリストは「神がすべての敵を彼の足の下に置くまで,彼は王として支配しなければならないのです。最後の敵として,死が無に帰せしめられます」。―コリント第一 15:25,26。イザヤ 25:8。
20 いま生きている人々のほかにだれが楽園の地を楽しみますか。それはどのようにして可能になりますか。
20 いま死んでいる人々でさえ楽園の地を楽しみます。その人々は生き返るのです! ですからその時には,死亡通知などではなく,復活した人々についての喜ばしい知らせがあるでしょう。死んだ父,母,子供や他の愛する者たちを墓から迎えるのは,どんなにすばらしいことでしょう! 葬儀施設,墓地,墓石などが残って,楽園の地の美観を損なうようなことはありません。
21 (イ)「新しい天」の律法や教えが実施されるよう見届けるのを助けるのはだれですか。(ロ)「新しい天」と「新しい地」を本当に望んでいることを,どのように示せますか。
21 では,だれが楽園の地での色々な活動を管理したり,指導したりするのでしょうか。律法や教えはすべて上にある「新しい天」から来ます。しかし,地上には,それらの律法や教えが実施されるのを見届けることを任じられた忠実な人々がいます。その人々は天の王国を特別な仕方で代表するために,聖書は彼らを「君である者たち」と呼んでいます。(イザヤ 32:1,2。詩編 45:16)今日のクリスチャン会衆においても,会衆の諸活動の世話と指導を行なうよう,人々が神の聖霊によって任命されています。(使徒 20:28)ハルマゲドン後も,キリストは,ふさわしい人々が任命されて王国政府の代表となるよう取り計らわれることを,わたしたちは確信できます。その時には,キリストは地の事柄に直接関与されるからです。あなたはどうすれば神の「新しい天」と「新しい地」を熱心に待っていることを示せるでしょうか。それには,正義の新体制の中で生活するための要求を満たすようあらゆる努力を払うことです。―ペテロ第二 3:14。