4,5. 神の怒りは不完全な人間の怒りとどのように違いますか。
4 まず理解しておく必要があるのは,エホバの怒りは不完全な人間の怒りとは違うということです。人が激しい怒りに任せて行動すると,たいてい収拾がつかなくなり,良い結果になることはまずありません。例えば,アダムの長男だったカインは,弟アベルの供え物がエホバに受け入れられたのに自分の犠牲は退けられたので,「激しく怒り」ました。その結果どうなったでしょうか。カインは正しい人だったアベルを殺してしまいました。(創 4:3-8。ヘブ 11:4)エホバの心にかなう人と言われたダビデについても考えてみてください。(使徒 13:22)ダビデは善い人でしたが,自分や部下たちが裕福な地主ナバルから侮辱されたと聞いた時,ひどい罪を犯しそうになりました。激怒したダビデと部下たちは「剣を身に着け」,恩知らずのナバルだけでなくその家の男性全てを殺そうと出掛けていきました。幸いにも,ナバルの妻アビガイルに説得されて,復讐を思いとどまりました。(サム一 25:9-14,32,33)エホバが聖なる力によりヤコブを導いて次のように書かせたのも,もっともなことです。「怒りの気持ちからは,神が求める正しさは生まれません」。(ヤコ 1:20)
エホバの怒りは常に制御されていて,根拠もはっきりしている。
5 理不尽に表されることが多い人間の怒りとは対照的に,エホバの怒りは常に制御されていて,根拠もはっきりしています。エホバは非常に激しい怒りを抱いても,必ず正しい行動を取ります。敵と戦う時に,「邪悪な人と一緒に正しい人も」滅ぼすことは決してありません。(創 18:22-25)さらに,エホバが怒りを抱くのは,正当な理由がある時だけです。2つの理由を調べて,何を学べるか考えましょう。
6. エホバはご自分の名が汚される時,どうしますか。
6 理由: エホバの名が汚される。エホバに仕えていると言いながら悪いことを行う人は,エホバの名誉を傷つけ,当然ながらエホバの怒りを買います。(エゼ 36:23)この本ですでに取り上げたように,イスラエル国民はエホバの名に大きな非難をもたらしました。彼らの態度や行動がエホバを怒らせたのも当然です。しかし,エホバは怒りでわれを忘れることはありませんでした。ご自分の民に適度な処罰を与え,度を越すことはありませんでした。(エレ 30:11)そして,処罰を終えた後は,憤りを抱き続けたりしませんでした。(詩 103:9)
7,8. エホバがどのようにイスラエル人を扱ったかに関する記録から何を学べますか。
7 学べること: エホバがどのようにイスラエル人を扱ったかに関する記録は,私たちにとって身の引き締まる警告となります。古代イスラエル人と同じく,私たちは光栄なことにエホバの名を負っています。エホバの証人なのです。(イザ 43:10)私たちの言動は,エホバの評判に直接影響します。恥知らずにも間違ったことを行い続け,エホバの名に非難をもたらすということなど,決してしたくはありません。そうした偽善的な生き方は必ずエホバの怒りを招きます。遅かれ早かれ,エホバはご自分の名誉を守るために必ず行動します。(ヘブ 3:13,15。ペテ二 2:1,2)
8 エホバが「非常に激しい怒り」を抱くことがあるからといって,エホバに近づくのをためらうべきでしょうか。そうではありません。エホバは辛抱強く,寛大に許してくださる方です。(イザ 55:7。ロマ 2:4)とはいえ,感傷的になって処罰を控えることはありません。かたくなに罪深い生き方を続ける人に対しては怒りを燃やし,ご自分の民の中にとどまることを許しません。私たちはそのことを理解し,エホバへの畏れを抱きます。(コリ一 5:11-13)エホバは,どういう理由で怒りを抱くのかを,私たちにはっきり教えてくださっています。エホバの怒りを招く態度や行動を避けるかどうかは,私たち次第です。(ヨハ 3:36。ロマ 1:26-32。ヤコ 4:8)
9,10. エホバはご自分の忠実な民が敵に脅かされる時,どうしますか。どんな例がありますか。
9 理由: エホバの忠実な民が敵に脅かされる。保護を求めてエホバのもとに避難している忠実な人たちを敵が攻撃する時,エホバは怒りを抱きます。一例として,イスラエル人がエジプトを去った後,ファラオが強大な軍隊を率いて追い掛け,紅海の岸辺にいて無力に見える民に襲い掛かろうとしました。しかし,その強力な軍勢がイスラエル人を追って乾いた海底を渡り始めると,エホバは戦車の車輪を外し,エジプト人を海の中に払い落としました。「誰一人生き残」りませんでした。(出 14:25-28)エホバはご自分の民への「揺るぎない愛」ゆえに,エジプト人に対して怒りを燃やしたのです。(出エジプト 15:9-13を読む。)
10 ヒゼキヤ王の時代にも,エホバはご自分の民への愛ゆえに行動しました。当時最も強力で残酷だったアッシリアの軍勢が,エルサレムに攻めてきました。エホバに忠実に仕えていた人たちは,包囲されて徐々に悲惨な死を迎えるしかないように思えました。(王二 18:27)しかし,エホバが遣わした,たった1人の天使が,わずか1晩のうちに敵兵18万5000人を殺しました。(王二 19:34,35)翌朝のアッシリアの陣営の様子を想像してみてください。やりや盾や剣は置かれたままで,兵士たちを起こすラッパの音も呼び集める声も聞こえません。不気味な静寂が辺りを覆い,天幕が立ち並ぶ陣営は死体で埋め尽くされています。
11. 民が敵に脅かされる時にエホバがどのように行動するかを示す例から,元気や勇気をもらえます。なぜそう言えますか。
11 学べること: 民が敵に脅かされる時にエホバがどのように行動するかを示すこれらの例は,私たちの敵にとって強烈な警告となります。「生きている神」が憤りを抱く時,その「手に掛かるのは恐ろしいことです」。(ヘブ 10:31)一方,私たちはこうした例から元気や勇気をもらえます。主要な敵であるサタンが成功しないことを知ると,元気づけられます。サタンが支配する「短い」時は間もなく終わるのです。(啓 12:12)それまでの間,勇気を抱いてエホバに仕えることができます。どんな人も組織も政府も私たちが神の望むことを行うのを阻止できない,と知っているからです。(詩編 118:6-9を読む。)使徒パウロが神に導かれて記した言葉に,私たちの確信が言い表されています。「もし神が私たちの味方であるなら,誰が私たちに敵対できるでしょうか」。(ロマ 8:31)
12. 大患難の際に,エホバが激しい怒りを燃え上がらせるのはなぜですか。
12 やがて来る大患難の際に,エホバは私たちを守るために行動してくださいます。かつてエジプト軍に追い詰められたイスラエル人や,アッシリア軍に包囲されたエルサレムのユダヤ人を守ったのと同じようにです。敵が私たちを滅ぼそうとする時,エホバが激しい怒りを燃え上がらせるのは,私たちを深く愛しているからです。愚かにも私たちを攻撃する人たちは,いわばエホバの瞳に触れることになります。エホバは速やかに断固たる行動を取ります。(ゼカ 2:8,9)結果として,前例のない規模で人々が殺されることになります。しかし,エホバが敵たちに怒りを浴びせる時,敵が驚くべき理由は何もありません。なぜでしょうか。