解放をもたらしうる政治
今人類の上に容赦なくのしかかっているもろもろの圧力から解放されたら,どんなにほっとすることでしょう。そのような解放をもたらしうる政府をあなたは歓迎しないでしょうか。
実はそのような政府があるのです。どこに? それはだれの政府ですか。それは間もなく地の事柄をすべて完全に制御する,天に基礎を置く政府 ― 神のみ子キリスト・イエスによる神の王国です。
「なあんだ,もっと現実的なことを言ってくださいよ!」と,あなたは言うほうですか。
では次を読んでください。そしてこの時代の事情に通じている人々が,真の解放に必要なものを何と認めているか見てください。それから神のみ子の政府がその必要を満たす方法を,聖書がどのように予告しているかに注意してください。
解放は世界的でなければならない
たとえそれが人間にできたとしても,一国だけを,あるいは地球の一部分だけを,今日の有害な圧力から解放したところで,それから永続的な幸福が生まれることはありません。著名な科学者アイザック・アシモブは最近このことを次のように指摘しました。(1971年4月19日号,ケミカル・アンド・エンジニヤリング・ニュース)
「今日の重要問題 ― 人口の着実な増加…環境の破壊,都市の腐敗,生活の質の低下 ― はすべて相互に依存しており,すべて世界的な性質のものである」。
世界的な問題は世界的な監督と管理を要求します。それで科学者のアシモブは次のように述べています。これは多くの人がもっている考えです。
「その国際協力は,必要な決定を下しかつ実施するだけの実力をもつ世界政府の形をとらねばならない。その決定に対し,個々の国は武器を取って立つ権利も力も有してはならない」。
しかし人間は,国際連盟,国際連合のような国際組織をつくりませんでしたか。たしかにつくりました。しかしそれらは真の世界政府ではありません。なぜなら,加盟国は自国の主権を固持して,世界政府が持たねばならない権力を渡そうとしないからです。
現実的に,地球が反目し敵対し合う諸政府の間で分割されているかぎり,世界政府は存在することも,解放をもたらすこともできません。このことも事情に詳しい人々は認めています。「大英百科事典」(1959年版)は「国際平和」という項目のところで次のように述べています。
「諸主権国家の国際政府によって平和を確保する試みはすべて,これらの試みそのものに内在する矛盾の犠牲になった。……〔その矛盾〕は,国家主権そのものを直接攻撃することによってのみ除去し得る」。(傍線は当誌)
国家主義の垣は取り除かれる
しかし聖書は遠い昔にこのことを明示しました。ダニエルの預言には,敵対し合う政府や帝国のもとにおける地の分裂的支配が描写されています。そして次に,それらの政府に対して神の王国が何をすると同預言は述べているか注意してください。そのことはダニエル書 2章44節にしるされています。
「この王等の日に天の神一の国を建たまはん是は何時までも滅ぶることなからん この国は他の民に帰せず却てこの諸の国を打ち破りてこれを滅せん 是は立て永遠にいたらん」。
別の箇所では,この激減は,いわゆる『ハルマゲドンの戦い』で生ずることが示されています。(黙示 16:13-16)この戦いは,混乱した,役にたたない,そしてしばしば圧制的な地の政治支配を終わらせるだけでなく,全地の事柄を統御する完全に新しい秩序を招来します。
したがってハルマゲドンでは,地を分割する国境はすべて消滅します。そして遊星であるこの地球は,その大陸,島々,大洋もろとも,ひとつの政府,神のみ子による神の王国の支配下にはいります。王国の法律と命令は,地の隅々にまでゆき渡るでしょう。そしてその王国は,反抗の余地を少しも残さずに,それらの法律や命令を実施する力をもつでしょう。
力と法律以上のものが必要
しかし,力と法律だけが,今人類を悩ましている圧力からの解放をもたらすのではありません。どんな政府でも真の解放をもたらすには,種々の圧力の根源である人間の心と思いを動かす必要があります。前の記事で示したように,現代の事情に通じている人々はこの必要をも認めています。
すべての人間の政府が失敗したところを,神のみ子による神の政府が成功する理由はまさにここにあります。なぜなら,神の政府は全地で義を施行し,すべての非行者を罰する力があるからです。しかしそれだけではありません。
王国政府の地的臣民として生活する特権を得る人々は,強制されて義を行なう人々ではないのです。これが大きな原因となって神の政府は成功します。彼らはそうすることを望み,そうするほうを好むのです。
現在の圧制的な世界体制の終わりを生き残る人々は,すでに神の王国政府の法律を知り,それに自分から従って生活する人々です。その基本的な法律はこれです。「なんぢ心を尽し,精神を尽し,思を尽して主なる汝の神[エホバ]を愛すべし」。「おのれの如く,なんぢの隣を愛すべし」― マタイ 22:37-39。
愛は強制できるものではありません。また立法手続きによって人の心に入れることもできません。しかし愛を培うことはできます。神の政府はまさにそれをするのです。今でさえそれをしています。
正義の支配機関は休みをもたらす
イエス・キリストは地上におられたとき,疲れた人々に対して,「すべて労する者・重荷を負ふ者,われに来れ,われ汝らを休ません」と言われました。―マタイ 11:28-30。
聖書の示すところによると,キリスト・イエスは天の政府において,14万4,000人の仲間の支配者をもたれます。それらの人々はみなためされ,試みられた弟子たちのなかから選ばれます。(黙示 5:10; 14:1)キリスト・イエスの政府はまた見える代表を地上にもちます。(詩 45:16。イザヤ 32:1,2)彼らはみなイエス・キリストが示される模範に従わねばならないので,わたしたちは,彼らがけんそんな態度で奉仕し,人々をよく助けて同胞に休みを与えるという確信をもつことができます。
真の公正と永続する平和
ですから,イザヤ書 11章3,4節の預言が,神のみ子とその王国の支配を予告していても不思議ではないわけです。
「かれはエホバを畏るるをもて歓楽とし,また目みるところによりて審判をなさず,正義をもて貧しき者をさばき,公平をもて国のうちの卑しき者のために断定をなし,その口の杖をもて国をうち,その口唇の気息をもて悪人をころすべし」。
キリスト・イエスの支配下には「断絶感」もなければ,わずらわしい「官僚的形式主義」から生まれるいらいらや欲求不満,政治的共謀,政治問題や裁判における腐敗などはないでしょう。
すべての人間の心を読むことができるので,この王は,人間がどうしてもなし得なかったこと,つまり地から悪人を除くことをします。背後から襲って首を締める強盗や強姦者,人殺しだけでなく,表面で“品位”を装いながら,より狡かつな方法で故意に盗みを働いたり,致命的な圧迫を加えたりする者たちも除去します。王国支配下の地の住民は,不正直な商行為や人間にごまかされたり,だまされたり,詐取されたりしないように絶えず警戒している必要はありません。生活費のうなぎ上りはとまり,土地と水と空気のひどい汚染も終わるでしょう。
軍備競争は廃止され,全面的核戦争の脅威が人々をおびやかすこともなく,また今日アジアや他の地域で何千何万もの人々を殺傷しているいわゆる「局地」戦争の脅威さえもなくなります。なぜですか。なぜなら,生き残ってこの政府の支配する新秩序にはいるには,まず最初に各人がイザヤ書 2章4節の次のことばを成就することが要求されているからです。
「かくてかれらはその剣をうちかへて鋤となし,その鎗をうちかへて鎌となし,国は国にむかひて剣をあげず,戦闘のことを再びまなばざるべし」。
現在,年間61兆6,000億円を上回っている軍事費の重圧もなくなるでしょう。この膨大な額が示す人間の労と物質を考えてごらんなさい。そして人間の努力と地球の物質が全部建設的で役だつ活動に向けられたらどれだけ良いことができるか考えてごらんなさい。
快適な生活と労働環境
現代の工業化された社会は,人々を都市と呼ばれる巨大なコンクリートのジャングルのなかにすしづめにし,ほこりと雑音そしてプライバシーのない環境のなかに住まわせています。多くの事実は今,このことが人間の福祉を害したことを示しています。このような,犯罪,病気,汚染,貧困,人種的憎しみ,麻薬中毒などの温床もなくなります。聖書の示すところによると,神は人間が庭園のような状態のもとで生活することを意図され,そして神の王国政府はそれを実現させます。―創世 1:28; 2:15。マタイ 6:10。
古代イスラエルが,バビロンにおける長い圧制のあと再び神の恵みを享受したのと同じく,きたる新秩序においても人々は,『家をたててそれに住み,ぶどう園を作ってその実を食べるでしょう。……彼らは自分の手のわざをあますところなく用いるでしょう。彼らの働きはむだにはなりません』。そうです,彼らは『それぞれ自分のぶどうの木の下に座し,いちぢくの木の下におるでしょう。そして彼らをおののかせる者はいないでしょう」― イザヤ 65:21-23。ミカ 4:4。
そのときにはだれも,連続式製造機の単なる“歯車”として,知性や能力になんの挑戦も投げかけない単調な仕事をし,自分の知らない人々のために働き,真の個人的な誇りの持てない物を作って,“毎日ぐるぐる回る”ということはなくなります。彼らは生活に真の目標をもち,創造者にほまれをもたらす事柄を行ない,創造者が住みかとして与えてくださった地球を美化します。
健康と生命
心臓病,胃かいよう,がんを含め今日の病気の多くは「文明病」と呼ばれています。神の新秩序における緊張やストレスからの解放は自然,人類の精神的,肉体的健康の増進に大きく役だつでしょう。しかしそれよりももっと重要なことは,人類を買いもどすためにあがないの価としてご自分の命を与えられたキリスト・イエスが,全臣民の霊的健康を増進させ,彼らに霊的栄養を与えられることです。霊的健康の増進は,受け継いだ罪と不完全性をいやします。そしてついに,黙示録 21章4節の神の約束は完全な成就を見ます。
「[神は]かれらの目の涙をことごとく拭ひ去り給はん。今よりのち死もなく,悲歎も,さけびも,苦痛もなかるべし。前のもの既に過ぎ去りたればなり」。
がんその他の致命的な病気や人を不具にする病気と診断される恐れがなくなったら,どんなにほっとするでしょう。永遠に生きる特権を得,何十年かの短い不確実な寿命の圧迫から自由になることは,なんとすばらしい希望でしょう。この『希望は失望には終わりません』。なぜならそれは神の確かな約束にもとづいているからです。(ロマ 5:5)しかし神の政府は,圧力を生み出す諸問題を地から除く行動をいつ開始するのでしょうか。わたしたちはいつごろ完全な解放を楽しむことができるのでしょうか。
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神の王国は国家主義の垣を永遠に除去する。そしてあらゆる人種が一つの政府のもとで平和に暮らす
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神のことばである聖書は,神の王国政府の支配する楽園の地上での快適な暮らしと労働環境を約束している