世界展望
顧みられなかった警告
◆ 食糧不足が近づいているという警告は,これまでほとんど顧みられなかった。スミソニアン誌の一記事はそうした警告をこう回顧している。「10年ほど前に,何人かの学者が次のような陰うつな予言をした。人口の増加が現在と同じ規模および割合で続くなら,人類はまちがいなく一連の大飢きんや社会および政治上の崩壊を経験するであろう。また,中にはあえて,1975年までには問題は本格化しはじめているかもしれない,と言う者さえいた」。西アフリカの飢きんについて考慮した後,同誌はさらにこうことばを続けている。『人々は,人騒がせな予言者とみなされ,簡単に退けられたこうした学者の予言を,今やもう一度考え直すべきではないだろうか,と考えている』。
製油所の不足
◆ たとえ,アラブ諸国が最近のように石油の供給を削減しなかったとしても,アメリカはエネルギー危機に直面していた恐れがある。なぜだろうか。なぜなら,製油能力が不十分なのである。現在のところアメリカでは,新しい製油工場は建てられていない。積み出し禁止令が出される以前のそうした理由として,石油会社は,輸入原油量の制限,廉価な石油製品の小売価格,環境上の制限などをあげていた。一つの製油所を建てるには,2億㌦(約600億円)の経費と3年の歳月を要する。現在のアメリカの製油能力が1日当たり1,360万バレルであるのに対し,同国の石油消費量は1,700万バレルである。輸入量が増えれば,重大な影響が生じる。
高くついた,主教の侮辱行為
◆ ナイジェリアの高等法院の一判事は,ケルビムとセラピムの連合教会の指導者に,弁護士の顔につばを吐きかけ,乱暴なことばを使った賠償として4,500㌦(約135万円)支払うよう命じた。そのさい,判事はこう述べた。「主教という高い地位にある被告人の行状は最低である。それは幼稚であり,いかなる文明社会においてもその進歩を汚すものである」。
激しく非難された教会会議の政策
◆ 「急進的で常軌を逃した主義やグループを支持することによって,[アメリカ・]キリスト教全国会議の素顔が明らかになった」と,インディアナポリス・ニューズ紙は報じている。「彼らが固執したその政治的宣言は,教会の座席から人々を散らした」。同会議が経済的支援を与える幾つかの政治上の急進主義に言及した後,同紙はこうことばを続けている。「当然のこととして,キリスト教全国会議が支持を表明したような左翼活動家や退廃的企画を支援するためなどに……わずか1セントでも寄付したいとは思わない熱心な信者は少なくない」。
フィリピンの内政問題に関与する教会
◆ 「フィリピンにおける教会と国家の隔たりはますます大きくなっている」と,ワシントン・ポスト紙は報じている。積極的行動派の司祭による現政府に対する抵抗運動がそのき裂をいっそう押し広げている。ある教会筋は,「第二バチカン公会議は,われわれが社会的また経済的発展にいっそう気を配るべきことを明らかにした」と語っている。そのため教会は,ここ10年ほどの間に社会活動に深入りするようになった。中には,政府に敵対する共産主義的反乱グループに加わっている司祭や修道女もいる。
低下する,宗教に対する敬意
◆ 最近のギャラップ調査の示すところによると,アメリカの30歳以下の人々の間では,僧職をふさわしい職業とみなす人々の数が過去10年間に75%も低下した。他の職業より僧職を良いとした人は,1962年には全体の4%であったが,現在ではわずか1%にすぎない。他の世論調査によると,宗教団体を信頼の置ける機関とみなしているアメリカ人は,全体の三分の一以下である。病院などの諸機関やごみ集収業などさえ,国民の半数以上の信頼を得ている。なお,政府に対する信頼は最低に近い。
世界じゅうで感じられる宗教の苦悩
◆ 「北米(ローマ・カトリック)教会は完全にすたれた」。これは,パナマの司祭T・レオ・マホンの語ったことばである。英国国教会の主教R・W・ストップフォードも南アフリカのヨハネスブルクで語ったさい同様の点を認めた。同主教はこう語っている。「もしわれわれが自分自身に正直であるなら,教会があまりにもしばしば……奥歯にもののはさまったような話し方をし,またつじつまの合わない音信をさえ伝えてきたことを認めねばならない」。ジュネーブにある世界教会協議会の司書A・J・ファン・デル・ベント博士は宗派連合の見込みについて次のことを認めている。「その戦いは,今や見せかけの戦いとなった」。
就任式で用いられた聖句
◆ アメリカでは初めてという,任期途中で生じた副大統領の空席を埋める就任式が昨年の12月初旬に行なわれ,ジェラルド・フォードが第40代めの副大統領に就任した。就任式の宣誓にさいし,フォードはその手を,詩篇 第20篇が開かれているエルサレム聖書の上に置いた。そこにはこう書かれている。『願わくは,ヤハウェ悩みの日になんじに答え,ヤコブの神のみ名なんじを守らんことを』。このように,副大統領の職が任期途中で空席になったのは,過去16期間で初めてのことであった。
ガンによる死亡者の増加するアメリカ
◆ 「1972年には,ガンの死亡率は加速度的に増加し,過去22年間で最大となった。……増加率は1950年以来の年間平均増加率の3倍にもなった。……こうした増加が見られたのは,われわれを取り巻く環境の中に大量の発ガン化学物質があるためである」と,アメリカ・ガン協会は報告している。ガンによる死者の男性と女性の割合は,1974年には男性54に対し女性46になるものと予想される。「男性の間に見られる[1936年以降の]ガン罹患率の増加は,主に,肺ガン患者が1,400%も増加したことによる」。喫煙の習慣が肺ガンの増加をもたらしたことに疑いの余地はない。ずっと昔に,イングランドの王ジェームズ一世はたばこについてこう語った。それは「見るだけでも汚らわしく,不快なにおいを放ち,脳に有害で,肺に危険である」。
ガンの移植
◆ 臓器移植を受けた患者に投与して,移植された器官の拒否反応を抑える抑制剤は,同時に病害に対する抵抗力をも弱める。コロラド大学医療センターのイスラエル・ペン博士は,腎臓移植患者を対象に行なった長期にわたる研究の結果,移植後のガンの発生率は「同じ年代の一般の人々の発生率の約100倍である」ことを発見した。
貧しい人々の間に広まる疫病
◆ 世界保健機構(WHO)は,1973年8月7日現在,全世界に9万人以上の天然痘患者がいると報じている。これは1972年同期のほぼ2倍にあたり,1967年に世界保健機構が天然痘撲滅計画を開始して以来最高の数である。天然痘が流行している国は,バングラデシュ,エチオピア,インド,パキスタンなどである。アフリカの熱帯地方,グアテマラ,メキシコ,ベネズエラ,その他の国々で,推定2,000万人が川めくらとも呼ばれるオンコセルカ(糸状虫)疾患に現在かかっている。世界保健機構の話によると,皮膚の中に寄生している糸状の虫が「たまらないむずがゆさを引き起こすため,自殺をする者さえいる」とのことである。この虫は目にも入り込み,やがて目が見えなくなる。西アフリカのボルタ川流域に住む1,000万の住民のうち約7万人がこの病気にかかってめくらになり,生産的な仕事を行なえないでいる。
ソ連の悲惨な道徳の現状
◆ ソ連のある社会学者は,道徳の問題がしだいに深刻化していることを嘆いている。同氏は,港湾都市オデッサの14歳から17歳までの学生を対象に行なった研究の結果を,青年向けの新聞モスコフスキー・コムソモーレッツの紙上に発表した。研究の対象となった学生は,同氏が“産業心理”と呼ぶ心理的行動を示した。産業心理とは,「愛を単なる肉体的心要とのみみなす」心理状態のことである。同氏は,青少年の四分の一が「すでに性交の経験を持っている」と語っている。性病は,1950年代には抑制されていたものと思われるが,1965年以来急増している。
英国とアメリカ
◆ アメリカと英国は依然として強いきずなで結ばれている。最近,英国のユーモア高級週刊誌パンチの編集長ウイリアム・デイビスは,同誌のまじめな記事の中でこの点を論証し,こう語った。「個人として,自分がヨーロッパ人であると感じている[英国]人はきわめてわずかである。われわれは,大陸のテレビ,文学,またポップ・ミュージックに関してさえ驚くほど無知である。……英国の新聞やテレビは依然として,ヨーロッパ大陸よりもアメリカにはるかに大きな関心を示している。また当然のことであるが,われわれはテレビの画面を通して,フランスやイタリアの生活よりもアメリカの生活のほうをしばしば目にしている」。聖書の預言を研究している人々は,正しく“英米世界強国”ということばを用いている。
医師もまちがっていることがある
◆ 手術に関する医師の見解に異議をとなえることをちゅうちょする人は少なくない。しかし,そう感じる必要はない。ビジネス・ウィーク誌は,アメリカ医学協会の副会長補ウイリアム・R・バークレイ博士の次のようなことばを載せている。「患者は,自分に指導権があることを自覚すべきである。なぜなら彼らは,代価を払っていわば医療奉仕を買っているからである。もし患者が他の医師の意見に従いたいと思うなら,そうすることを少しも気まずく感じるべきではない」。
暴力行為の代価
◆ 最近,テキサス州ダラスの下町で行なわれた抗議デモのさいに暴力事件が発生し,そのため「警戒令」が出されて,市の全警察官が12時間警戒態勢下に置かれた。警察官に求められた超過勤務は,合計3万時間以上におよんだ。警察当局および納税者は,警察の装備が受けた被害の代価また警察官に支給した超過勤務手当てとして23万3,000㌦(約6,990万円)以上を支払うことになる。
再び力を得るドル
◆ 石油危機は,世界の通貨の価値をいわば手品にかけたように変えてしまった。アメリカは現今の石油事情によってある程度の影響を被ってはいるが,日本や西ヨーロッパ諸国ほど深刻な打撃を受けてはいない。そのため,米ドルはこうした国々の通貨に対して今や強くなっている。これは,昨年の夏にドルが暴落したことと全く対照的である。今年の1月下旬までに,フランスのフランに対するドルの価値は1973年中期の低値に比べて35%以上も上がった。さらに,英国のポンドに対しては17.4%,西ドイツのマルクに対しては23.8%,イタリアのリラに対しては16.7%,日本の円に対しては17.3%,スイスフランに対しては24.7%,オランダのギルダーに対しては19.5%上がった。一方,金の価格は,今年の1月21日にチューリッヒとロンドンで1オンス当たり142ドル(約4万2,600円)という高値を記録した。