あなた次第で空の旅はもっと安全になる
フィンランドの「目ざめよ!」通信員
飛行機は現在,速くて一般的な交通手段となっています。そのうえ最も安全な交通手段であるとも考えられています。
その安全性は,危険を取り除くために当局と航空会社とが一致結束して努力してきた結果です。安全には多くの要素が関係しています。航空会社は定期的な点検修理を行なって自社の飛行機を整備しておくことにより安全を図ります。また積載に関する細かな計画や指示が各便ごとに慎重に与えられます。その指示に基づいて,手荷物,貨物,郵便物が貨物室に積み込まれ,飛行のための正確な重量配分が計算されます。人目につかないところでこれだけの準備が行なわれていることを考えたことがありますか。
ではこれで安全にフライトできるのでしょうか。とんでもありません! 乗客の一人としてあなたにも直接貢献できることがあるのです。どのようにですか。あなたは自分でも気づかないうちに危険人物になることがあり,逆に空の旅の基本的なルールを知って守るならフライトの全般的な安全を高めることができるのをご存じでしたか。
航空会社とあなたの安全
国連の監督下で運営されているICAO(国際民間航空機関)は,民間航空会社と協力して飛行安全性の向上に努めてきました。安全性に関してはIATA(国際航空運送協会)やATA(米国航空運送協会)もICAOと非常に密接な関係にあります。これらの団体は指導書や資格取得書を発行し,訓練用の資料や情報を会員や一般の人のために準備しています。
乗客が,次々に開発される新素材や,化学合成物質,電気機器などを用いるようになった結果,危険な要素が増加しました。ひいては安全対策を増し,乗客へ事前に注意を喚起する必要を増やすことになりました。
どんな危険な状況が生じ得るか
致命的な事故に至りかねない以下のような状況が実際に生じました。
(1)スキーチームの一員のスーツケースが機内に積まれる前に手荷物のベルトコンベヤーの上で燃えだしました。原因を調べたところ,スキー板のワックスを落とすのに使う溶剤が中に入っていたことが分かりました。中身が容器から漏れていたのです。スーツケースの中にはガスライターも入っており,スーツケースが揺れて生じた火花でスーツケースの中身が燃えだしたのです。幸いこれらすべては地上で起きたことでした。もしも高度1万1,000㍍の貨物室の中で生じていたなら取り返しのつかない大惨事となっていたことでしょう。
(2)同じようにごく普通のマッチも乗客のスーツケースの中の摩擦で燃えだしたことがあります。
(3)ある空港では職員がガス漏れしている携帯用ボンベを発見しました。そのボンベはすんでのところで時限爆弾となるところでした。
(4)電動式車椅子のバッテリーから酸が漏れたために機体が腐食し,著しい損傷を受けました。飛行機は清掃と修理のため数日間離陸できず,航空会社は経済的な損害を被りました。
機内に持ち込めないもの
先ほど述べた国際的な団体は,航空会社や運輸業者のために「危険物規則」と呼ばれる手引き書を発行しています。その中の規定の多くは各国の航空法の一部となっています。規定には何千種にも上る危険物のリストと,それらのこん包と輸送に関する詳細な指示が載せられています。
あなたが飛行機では決して運べない物品が幾つかあります。また手荷物に入れて運ぶことはできないものの,特定の条件を満たせば航空貨物として輸送が許可される物もあります。さらに危険物に分類されていても,各航空会社の規則によっては少量であれば手荷物に入れるなどして機内に持ち込むことが許可される物もあります。不明な点は出かける前に航空会社に問い合わせるとよいでしょう。
必要な情報はどこで得られるか
たいていの航空会社は時刻表に危険物に関する規定を載せています。航空券にも制限品目のリストが載っています。加えて,世界各国の航空会社が一堂に会して開かれた1989年の会議では,知らずに作り出してしまう危険な要素に一般の人々の注意を喚起することが決議されました。1990年の初めに航空会社は旅行者向けのキャンペーンを始めました。空港や旅行代理店にポスターを貼って,危険物一覧表が航空券に付いてくることを一般の人に知らせました。
危険物には何が含まれるか
一見無害でも,機内の特定の状況下では危険物と同じような反応を示すものがたくさんあります。例えば飛行中の気温や気圧の変化で容器に入った物の中身が漏れだすことがあります。安全に思える物であっても,通常は無害に思える他の物と接触すると化学反応を起こして発火したり有毒ガスを発生したりする場合があります。ですからスーツケースに入れるものに気をつけることはとても大切です。
先に挙げたように,持ち込みが禁止されているものには普通のマッチやたばこのライターなどが含まれています。それらは機内持ち込み手荷物に入れる場合に限り許可されます。
可燃性の液体はすべて持ち運びが禁じられています。シンナーやアセトンなどの溶剤は言うまでもありませんし,ペンキ,ニス,接着剤も危険物となる場合があります。
ライターやキャンプに使う詰め換え用のガスなど,可燃性ガスはどれも機内に持ち込むことはできません。
火薬,花火,発煙筒などもその危険な性質のため禁止されています。
おそらく家庭ではいろいろな種類の化学製品や工業製品を使っておられることでしょう。飛行機を利用する場合,そのうちのあるものは持ち込めないことをご存じでしたか。禁止品目には,各種スプレー,農薬,漂白剤,洗剤などが含まれています。それらは機体やそれに付随した他の部品の腐食,酸化,損傷を招く恐れがあるのです。
磁気製品は飛行機の計器類の働きを狂わせることがありますし,放射性物質も放射能による損傷を引き起こすかもしれません。
あなたは航法装置に悪影響を与えてしまうことがある!
ここ数年エレクトロニクスの分野で新たに発明された商品をあなたも利用してこられたことでしょう。ラジオ,小型のビデオカメラ,CDプレーヤー,携帯電話,リモコン式のおもちゃなどは広く普及しています。通常これらは電池を外しておけば手荷物に入れることができます。各航空会社によって規則が異なることがあるので,荷造りをする前に旅行代理店に問い合わせてみるべきです。しかしどの航空会社の規則も,飛行機の航法装置の働きを妨げる機器は飛行中に用いることができないという点で共通しています。
搭乗者は個人で使う少量の医薬品,化粧品,アルコール飲料を携帯することができます。またヘアースプレーや発汗抑制剤などのスプレー類なども普通は手荷物に含めることができます。
あなたは機内の安全を高めていますか
あなたはこうした規則をすべて守っておられますか。ご自分の責任にお気づきでしょうか。次の旅支度を始める前に腰を据えて,輸送規則,特に危険物に関する規則をじっくりとお読みになってください。この点について一般的な規定を取り上げましたが,航空会社によって規則に少しずつ違いがあるかもしれません。
ある物品に関してよく分からないことがあれば,ためらうことなく航空会社に問い合わせて確認してください。そうすれば,知らずに規則を破ってしまうようなことを避けられます。またそうすることによって,あなた自身や他の乗客,航空会社の資産を危険な状況にさらすことも避けられます。あなた次第で空の旅はもっと安全になるのです。
[25ページの図版]
手荷物に入れてはならない物がどれだかお分かりですか