その2
1 (イ)大いなるバビロンが古代都市バビロンに座を占めていたのは,どれだけの期間ですか。(ロ)大いなるバビロンは,どのように他の世界強国をも支配しましたか。(ハ)どんな目的のために,彼女はその宗教上の支配力を利用しましたか。
偽りの宗教の世界帝国である大いなるバビロンの主要な座は,ユーフラテス河畔の古代都市バビロンにありました。それは紀元前539年,聖書歴史中の第三世界強国としてのバビロンが倒れ,メデア-ペルシャ世界強国にとって代わられるまでつづきました。バビロニア世界強国の前に二つの世界強国がありました。それは(1)エジプト,および(2)アッシリアです。しかしバビロン的宗教の世界帝国である大いなるバビロンのほうは,これら二つの世界強国をも支配しました。大いなるバビロンはその宗教的な勢力を利用して,これらの世界強国を神の女のすえに敵対させ,すえの出る系統を滅ぼそうとしました。大いなるバビロンは国際的な淫婦であり,その宗教上の野心を遂げるため,政治支配者に身をゆだねます。こうして宗教と政治とが結びつくのです。
2 エジプトにおいて,大いなるバビロンは何をしようとしましたか。その企てはどの程度まで成功しましたか。
2 族長イサクの孫でエジプトの総理大臣となったヨセフが死んでのち,宗教的な勢力である大いなるバビロンはエジプトのパロと共媒してヨセフの民ヘブル人を滅ぼそうとしました。ヘブル人は当時エジプトの地で寄留者となっていたのです。パロはヘブル人を奴隷にして激しく追い使い,彼らを絶やそうとしました。これが成功しないのを見たパロは,ヘブル人の男の子を生まれるそばから殺すことを命じました。大いなるバビロンは,エジプトにいたヘブル人すなわちイスラエルの子らによって代表されていた神の女に対して勝ち誇ったに違いありません。大いなるバビロンと宗教的な姦淫を犯したパロが悪魔的な手段を用いたにも拘わらず,男の子の赤ん坊はヘブル人につぎつぎに生まれて保護されました。その中にモーセもいたのです。
3 エジプトにおいて大いなるバビロンはどのように悩まされましたか。
3 モーセは40歳のとき,イスラエルの民を解放しようとしましたが,志を遂げず遠いミデアンの地に逃れました。その後40年たってエホバはモーセを預言者としてエジプトにお遣わしになり,イスラエルの民を奴隷の地から導き出されます。エホバは十の災をつぎつぎにエジプトに下して,女のすえのために行動をおこされました。「エホバは……彼らの神々にも罰をかうむらせ給へり」。これによってエジプトの初子はみな死にました。宗教的な大いなるバビロンにとって,これは大打撃であったに違いありません。そのすぐ後にエホバは追跡するパロの軍隊を紅海にことごとく滅ぼして,大いなるバビロンの宗教の無力なことを暴露されました。その時イスラエル人は紅海を無事に渡り,エホバがご自身の友アブラハムに与えると約束された土地に導かれたのです。―民数 33:4。詩 78:43-53。出エジプト 15:1-21。
4 (イ)イスラエルのどの王の家系は,敵の女の攻撃の目標となりましたか。(ロ)ソロモンはどのようにして遂に心を奪われましたか。
4 それから443年の後,エルサレムの要害シオンではダビデ王が全イスラエル12支族の主権者として治めていました。ダビデは神のみ心にかなう人であったために,エホバは永遠の御国がダビデの家系に留まるとの契約をダビデと結ばれました。(サムエル後 7:1-18。サムエル前 13:14)ダビデと結ばれたこの王国の契約によって,神の女はその約束のすえがダビデ王の家系から出ることを知りました。間もなく敵の女である大いなるバビロンもこの事を知り,ダビデの王統に敵対し始めました。ダビデの子ソロモンは父のあとを継いでシオン(エルサレム)の「エホバのくらい」につき,エホバの崇拝のために壮麗な宮を建てました。ソロモンはまたイスラエルの神の聖都としてエルサレムを更に美しくしました。しかしソロモンは約束された神の女のすえではなかったのです。宗教的な大いなるバビロンはその代表者すなわちソロモンの持った多くの異教徒の妻を用いて晩年のソロモンの心を奪いました。ソロモンは妻たちの神々のために崇拝の高い場所を築きました。―列王上 11:1-10。
5 ソロモンの死後起きたどんな出来事によって神の女の地上の代表は危険に陥りましたか。
5 不忠実なソロモンの死後,ダビデの家の王国は反逆のため二つにわかれました。反逆した北のイスラエルの国は自らの首都を設置して黄金の小牛の崇拝を始め,遂に第3番目の首都となったサマリアにおいてバアル崇拝が導入されました。しかしエルサレム(シオン)は,わずか二つの支族とエホバの宮に仕えるレビの支族を残すだけになったユダの国の首都としてつづきました。(列王上 11:41–16:33)こうして2世紀が過ぎ,キリスト前8世紀になってイスラエル人は新興の世界強国の支配を感じ始めました。紀元前740年,北のイスラエルの国の首都サマリアは,アッシリア王サラゴン2世の略奪を受け,国は覆えされて生き残ったイスラエル人もアッシリアの領土に連れて行かれました。何年かたってユダの土地は,サラゴン2世の子でアッスリア王となったセナケリブの侵略を受け,地上で神の女を代表するエルサレムは危険に陥りました。当時バビロンはアッスリアの支配下にありましたが,バビロン的宗教がアッスリアで行なわれていました。
6 アッスリアの王と神を代表する者によって,どんな嘲笑の言葉がエルサレムの町に投げかけられましたか。
6 ユダの町ラキシの前に包囲の陣をかまえたアッスリアのセナケリブはエルサレムに使者を送り,ごうまんに聖都の降伏をヒゼキヤ王に迫りました。町の城壁の前に立ったアッスリアの代弁者ラブシャケはセナケリブ王の神ニスロクの証人としてふるまい,城壁の上のユダヤ人に向かって大声で呼ばわりました,「ヒゼキヤ エホバ我等を救ひたまはんと言て汝らを勧るとも之に聴くなかれ 国々の神の中いづれかその国をアッスリアの王の手より救ひたりしや ハマテおよびアルパデの神々はいづくにある セパルワイム ヘナおよびアワの神々はいづくにあるやサマリアをわが手より救い出せし神々あるや,国々の神の中にその国をわが手より救いだせし者ありしや然ばエホバいかでエルサレムをわが手より救ひいだすことを得んと」― 列王下 18:9-37。
7 (イ)エルサレムは降伏しましたか。(ロ)エホバは預言者イザヤによってどんな返答をされましたか。
7 エルサレムは降伏を拒絶し,そのことをセナケリブに告げました。そこでセナケリブは再び使者を送り,エルサレムの神エホバをあなどりました。これに対してエホバは聖都の中から預言者イザヤによって次の大胆な言葉を告げられました,「処女なる女子シオンは汝をかろんじ汝を嘲る女子エルサレムは汝にむかひて頭をふる 汝誰をそしりかつののしりしや汝誰にむかひて声をあげしや汝はイスラエルの聖者にむかひて目を高くあげたるなり汝使者をもて主〔エホバ〕をそしりて言ふ……我わを汝の鼻につけ くつわを汝の唇にほどこして汝をもと来し道へひきかへすべし」― 列王下 19:1-28。
8 その成就として,セナケリブとその軍隊はどうなりましたか。
8 その晩エホバの天使はセナケリブの軍勢の18万5000人を打ち殺し,翌朝エホバはセナケリブの鼻に輪をかけてアッシリアの首都ニネベに引き戻しました。この敗北をこうむって後,セナケリブは反逆したバビロンを滅ぼしていますが,それでもエルサレムに対しては攻めることも滅ぼすこともできず,何も誇ることができませんでした。セナケリブはバビロンの再建中,その神ニスロクの宮で拝んでいるときに二人の息子に殺されました。(列王下 19:35-37)神の女の大きな勝利です!
捕われと救い
9 神の女に名を与えた都は,どんな経過を経て滅びましたか。
9 しかし神の女とその敵である大いなるバビロンとの戦いが終ったわけではありません。再建されたバビロンは次の世紀中にその大帝ネブカデネザル2世の下に世界強国となりました。その頃までにエルサレムとエルサレムにあったエホバ崇拝の宮は全く汚れてしまいました。その時に起きたことは,神の女にとって決定的な敗北であり,その敵にとって大勝利のように見えました。紀元前607年にエルサレムが滅びたからです。神の女はその町の名で呼ばれていました。
10 神の女は大いなるバビロンにむかって「我につきて喜ぶなかれ」となぜ言えましたか。
10 しかし神の女すなわち天のエルサレムは無事であり,地上のエルサレムの滅びは夫であるエホバが裁きを執行したためであることを知っていました。イザヤ,エレミヤその他のユダヤ人預言者の言葉から,彼女は地上のエルサレムの滅びが一時的なものであり,70年間に過ぎないことを知っていました。その後彼女の子たちはバビロンの捕われから解放され,エルサレムに戻って町と宮を再建するでしょう。それで地上のエルサレムによって表わされる神の女は,この荒廃のあいだバビロンおよびその実体である大いなるバビロンに向かって次のように言うことができました。「わが敵人よ我につきて喜ぶなかれ,我仆るれば興あがる幽暗に居ればエホバ我の光となり給ふ」― ミカ 7:8。
11,12 どんな預言がバビロンの上にまさに成就しようとしいてましたか。バビロンの王朝に対してどんなことわざを述べることができましたか。
11 バビロンはエホバに対して恐ろしい罪を犯しました。避けることのできない神の報復は,当然の報いとしてバビロンの頭に帰さなければなりません。バビロンが地上のエルサレムに飲ませた屈辱,略奪と破壊の杯が,こんどはバビロンに渡されます。エホバがむかし聖なる預言者によって語られた預言はまさに成就しようとしていました。エホバの預言にたがわず,国々から軍隊が集められてバビロンに敵対し,しかも預言された人クロスがこれらの軍勢を率いてきました。エホバは,河を守りとしたこの大いなる都市を略奪する心をクロスにお与えになりました。また侵入するクロスの軍勢のために城壁の門が開かれたままになるようにされました。ベルシャザル王の酒宴の部屋の壁に人の手が現われて文字を書きました。エホバがこの事をされたのです。その文字は彼の治世が数えられて終りに至り,王がはかりにかけられて目方の足りないことがあらわれ,国はわかたれてメデアとペルシャに与えられることを意味しました。それから間もなくして紀元前539年のその夜にベルシャザルは殺され,86年前にネブカデネザルの始めた王朝は終りを告げました。それで流刑にあったエルサレムの人々は,イザヤの述べたことわざをバビロンの王朝に対して声高らかに叫ぶことができました。
12 「黎明の子,明けの明星よ,あなたは天から落ちてしまった。もろもろの国を倒した者よ,あなたは切られて地に倒れてしまった。あなたはさきに心のうちに言った,『わたしは天にのぼり,わたしの王座を高く神の星の上におき……いと高き者のようになろう』。しかしあなたは陰府に落され,穴の奥底に入れられる」― イザヤ 14:3-15,新口。ダニエル 5:1-31。
13 捕われのユダヤ人は,バビロンの都にむかって何を言うことができましたか。
13 バビロンの都市そのものにむかって,捕われのユダヤ人はイザヤの預言的な言葉をいまや言うことができました。「バビロンの処女よ下りて塵のなかにすわれ,カルデヤ人のむすめよ座にすわらずして地にすわれ……カルデヤ人のむすめよなんぢ口をつぐみてすわれ,又くらき所にいりてをれ,汝ふたたびもろもろの国の主母ととなへらるることなからん」。同時にユダヤの捕われ人は,かつて自分たちを捕われの身にした者にむかって次のように言えました,「われらを贖ひたまふ者はその名を万軍のエホバ イスラエルの聖者といふ」― イザヤ 47:1-5。
14 捕われていた人々はどのように戻り,宮を再建しましたか。またエルサレムの城壁は修復されましたか。
14 イスラエルを贖いたまう者エホバは,バビロンの征服者ペルシャ人クロスを感動してユダヤの捕われ人を解放する布告を出させました。それによってユダヤ人はシオンの山に戻り,エルサレムとエホバの宮を再建することになったのです。エルサレム荒廃の70年目の終り頃,イスラエル人の忠実な残れる者と何千人に上る非ユダヤ人の僕が故国に帰り,以前に町のあったところに戻ってきました。エルサレムの荒廃は終り,エルサレムは苦しめられた眠りの状態から目ざめ,ちりを払いおとし,起きあがって聖都にふさわしい座につきました。紀元前537年,陰暦の第7の月のはじめの日に宮の境内に祭壇が築かれ,エホバの崇拝が再び始められました。何年にもわたる敵の妨害を受けながらも,宮の再建は紀元前516年に完成し,更に61年後にエルサレムの城壁は修復されました。エホバの崇拝に反対し,神の女のすえに敵対した敵どもはくやしがったに違いありません。
15 (イ)バビロンの町が衰えても,大いなるバビロンはどのように繁栄しつづけましたか。(ロ)すえが人間として生まれたとき,神の女と大いなるバビロンはそれぞれどんな反応を示しましたか。
15 こうしてエルサレム(シオン)はエホバの崇拝者に対して再び宗教上の力を持つようになりました。他方,異教の都市バビロンはもはや世界強国ではなくなり,政治的にも経済的にもおとろえる一方でした。しかしその大いなる実体である大いなるバビロンは繁栄をつづけ,異邦人の王,メデア,ペルシャ,ギリシャ,ローマの諸帝国を含めて世界強国の上に宗教的な支配をふるいました。彼女は約束されたエホバの女のすえの現われるのを待ちかまえていました。そして女のすえのくびすを砕く大いなる蛇サタン悪魔のために働く用意をしていました。紀元前2年の秋,ベツレヘムでユダヤ人の処女からこのすえが人間として誕生し,イエスと名づけられたとき,彼女は喜びませんでした。神の女を代表する天使の軍勢は喜び,「いと高きところでは,神に栄光があるように,地の上では,み心にかなう人々に平和があるように」と歌って神を賛美したのです。しかし大いなるバビロンはそれに加わりませんでした。むしろ彼女は,ローマの任命を受けてエルサレムの支配者となった非ユダヤ人のヘロデ大王の手によって,幼な子のイエスを殺そうとはかりました。
16 エホバはどのようにしばらくの間,すえの砕かれることを妨げましたか。
16 イエスはベツレヘムで育てられようとしていましたが,大いなるバビロンはその宗教家である東方の賢人また占星家をつかわして,ユダヤ人の将来の王が生まれたことをヘロデ王に告げさせました。疑うことを知らないユダヤ人の祭司,学者から情報を得たヘロデは占星家をベツレヘムにつかわしました。そこで彼らはもはや馬小屋の中ではなく家の中にいた幼な子をさがしあてたのです。(ルカ 2:7,12。マタイ 2:11)全能の神は,彼らがヘロデの許に帰って女のすえのありかを告げないようにされました。神の導きによって幼な子のイエスはしばらくの間エジプトに連れて行かれ,ヘロデの死後,ローマ支配下のガリラヤ地方のナザレに連れ戻されてそこで育てられました。このため大いなるバビロンは,すえのくびすを砕く機会を後まで待たねばなりませんでした。
17 一見したところ明らかな,すえに対する勝利はどのように得られましたか。だれが喜び,だれが悲しみましたか。
17 33年,政治的な野心を抱いた祭司と不信仰なユダヤ人の宗教指導者は,大いなるバビロンの手先となりました。彼らはイエス・キリストを卑劣な手段で捕えてぼうとくの罪に定め,エルサレムのローマ支配者の手に渡したうえ,苦しみの杭にかけて殺すことを要求しました。総督は遂にその要求に屈して,イエスはユダヤ人の過越しの日の午後,カルバリで死なれました。イエスが死んで葬られたとき,大いなるバビロンは喜び,地上のエルサレムでは過越しとそれにつづくたねを入れないパンの祝いが行なわれていました。しかし女のすえが人間となって地上にいたあいだ,女のすえに忠実に従ったユダヤ人の残れる者は悲しみました。
18 三日目に事態はどのように逆転しましたか。
18 ところがイエスの死後三日目に,事態は逆転したのです。天の父エホバ神がイエスを霊者の生命によみがえらせ,神の女がそのすえを天の領域に迎え入れたとき,イエスのくびすの傷は完全にいやされました。神の女は天使により,また死からよみがえらされてのち弟子たちに現われたそのすえによって,すえの追随者の残れる者に喜びを伝えました。彼らの歎きははかり知れない喜びに変りました。その後40日間,イエスは忠実な使徒と弟子たちに何回も現われました。それからイエスは昇天してエホバ神の前に現われ,エホバは愛する御子をご自身の右に坐らせたのです。エホバはみ子に不滅性をお与えになりました。大いなる蛇,悪魔はもはやイエスに害を加えることができません。
女のすえの残れる者は迫害される
19 五旬節の日,天のエルサレムの喜びとなったどんな出来事が起きましたか。
19 十日たってユダヤ人の五旬節の日となりました。そのときエホバ神はご自身の女が更に実を結ぶようにされました。神は地上の忠実な者たちに聖霊をそそぎ,すえのおもな者イエス・キリストの共同相続者となる人々,すなわちすえの残れる者たちをご自身の女がうみ出すようにされました。宗教的な大いなるバビロンにもはやつながれておらず,キリストによって自由にされたことを行動にあらわして,聖霊にみたされた弟子たちは解放を告げるすばらしい音信を伝道し始めました。おもな代弁者となった使徒パウロは,耳を傾けるユダヤ人に語りました,「イスラエルの全家は,この事をしかと知っておくがよい。あなたがたが〔杭〕につけたこのイエスを,神は,主またキリストとしてお立てになったのである」。(使行 2:36,新口)信じて悔い改めた3000人の人がバプテスマを受けて「聖霊の賜物」を与えられ,神の女の霊的なすえに加えられました。イザヤの預言(54:1-13)を成就して,大ぜいの霊的な子たちの母となった天のエルサレムは,「歌い呼ばわ」ることができました。
20,21 (イ)その後大いなるバビロンは,神の女のすえの残れる者の発展をどのように阻止しようと図りましたか。(ロ)エルサレムの滅びたとき,大いなるバビロンには喜ぶいわれがありましたか。
20 宗教的な大いなるバビロンは政治支配者に対するその支配力を用いて,神の女のすえのおもな者のくびすをこれ以上砕くことができません。イエスは天において不滅性を与えられ,神の右にあって力を持っているからです。そこで大いなるバビロンは神の女のすえの残れる者を迫害して死に追いやり,すえの発展を阻止しようと図りました。(西暦)64年まで彼女はエレサレムおよびローマ帝国の領土の内外にあった会堂の不信仰なユダヤ人をおもに用いました。そして旧ローマの大火が起こると,神の女のすえの残れる者は偶然に起きた大火の責任を負わされ,ローマ政府からは迫害されました。6年後,地上のエルサレムは恐ろしい滅びを受けました。地上にいた神の女の霊的な子たちの手によるのではありません。不信仰なユダヤ人がローマの支配に反抗したため,ローマがエルサレムを滅ぼしたのです。
21 地上のエルサレムが滅びても,大いなるバビロンは勝利を得たわけではなく,それを喜ぶことはできません。イエスの警告に従ったその弟子は,滅びに定められた町を逃れ,ローマ領であったユダの土地の外で崇拝をつづけたからです。
22 神の女には悲しむわけがありましたか。
22 神の女すなわち天のエルサレムについて言えば,紀元前607年にバビロニア人が地上のエルサレムと宮を滅ぼしたときのように歎く必要はありませんでした。地上のエルサレムはもはや神の女を代表していないからです。神の女の子らの残れる者はなお自由であり,これらの者は栄光を受けたイエス・キリストと共に霊的な宮をつくりあげます。大いなるバビロンは地上にある物質の宮またキリストの忠実な追随者がその中で崇拝をした建物を破壊しても,霊的な宮を破壊することはできません。
23 だれがキリストの花嫁となりますか。その人々は神の女とどんな関係にありますか。
23 キリストの忠実な霊的追随者14万4000人の会衆全体は,比喩的に言って主イエス・キリストの花嫁になります。神の女はそのすえの残れる者として14万4000人の全部を無事に生み出すつとめを委ねられました。こうして神の女はそのすえのおもな者イエス・キリストの花嫁をそなえます。ゆえに神の女はキリストの花嫁の母であり,花嫁である全会衆は神の女の霊的な娘です。
敵である大いなるバビロンを暴露
24 対抗すべき大いなるバビロンについて,ヨハネは神から与えられたどんな黙示を明らかにしていますか。
24 花嫁であるクリスチャン会衆が,ユーフラテス河畔のバビロンについて昔のヘブルス人預言者の語った預言を理解し,従ってそのことを予め知っていたかどうかは別として,キリストの12使徒の最後の使徒が死ぬ前に,クリスチャン会衆は大いなるバビロンと対抗しなければならないことを確かに知らされました。最後まで生き残った使徒ヨハネが神から与えられた黙示の中で,大いなるバビロンは指摘され,「大いなるバビロン,淫婦どもと地の憎むべきものらとの母」という神秘的な名前を与えられています。彼女を象徴的に描写した言葉から,クリスチャン会衆はこの宗教的かつ国際的な淫婦が「聖徒の血とイエスの証人の血に酔いしれ」ることを知っていました。それはキリストの花嫁すなわち14万4000人の弟子から成るクリスチャン会衆の成員の血です。彼らはこの女が,七つの頭と十の角を持つ赤い獣に乗ることを知っていました。この獣はどうもうな政治組織を表わし,それ自体は「第八の王」すなわち8番目の世界強国です。使徒ヨハネの時代には,ローマ帝国がキリストの花嫁となる人々を迫害していました。
25 キリスト教国はどのように成立し,また大いなるバビロンの僕となって,すえの残れる者に敵対しましたか。
25 4世紀初めにコンスタンチン大帝は異教ローマの最高僧院長となり,しかもクリスチャンになるふりをしました。そして(西暦)325年,旧ローマではなく小アジアのニケアに司教を集めて最初の公会議を開きました。コンスタンチンは自分と妥協した司教たちと共に,いわゆる「最初のキリスト教国家」を成立させ,こうしてキリスト教国が始まったのです。大いなるバビロンの僕となったキリスト教国は,キリストの花嫁が全くととのえられるのを妨げようとして,神の女のすえの残れる者を最も激しく迫害する者となりました。今でもそのことは変りません。
26 (イ)ローマ帝国の崩壊後,大いなるバビロンは世界強国を支配しつづけましたか。(ロ)赤い獣は何ですか。だれがその獣に乗っていますか。
26 神聖ローマ帝国をも含めてローマ帝国が滅びると,大いなるバビロンは次の世界強国すなわち7番目の英米世界強国を宗教的に支配するようになりました。第一次世界大戦後,戦勝国の英米世界強国の主唱によって,十の角と七つの頭を持つ赤い獣の象徴する第8の世界強国すなわち国際連盟が形成されました。20世紀の歴史は,国際的な淫婦である大いなるバビロンが国際連盟の背に乗っていることを証明しています。聖書のいう大いなるバビロンはローマ法王のいるローマすなわちバチカン市ではなく,バビロン的な宗教の世界帝国であってすべての偽りの宗教を含みます。
27 赤い獣は何時,底のない所に行きましたか。何時そしてどんな形でそれは底のない所から上り,どんな乗り手を得ましたか。
27 黙示録 17章7,8節の預言にたがわず,また現代の歴史に記録されている通り,赤い獣は第二次世界大戦のあいだ無力となり,無活動の底なき所に落ち込みました。1945年,戦勝国英米世界強国の助けによってそれは底なき所から出てきて国際連合の形をとりました。直ちに大いなるバビロンはその背に乗りました。「地には平和」と題する前法王の回状も,バビロン的な宗教の世界帝国が赤い獣に乗っていることを示す多くの証拠のひとつです。
28 (イ)その乗り手はどのように獣の背からひきずりおろされますか。(ロ)エホバのどんな裁きが彼女に臨みますか。どんな結果となりますか。(ハ)清い宗教を愛する人は,その前に何をなすべきですか
28 しかしそれも長くはつづきません。使徒ヨハネは,神の天使が大きな石うすほどの石を海に投げ込むのを見,次のように言うのを聞きました。「大いなる都バビロンは,このように激しく打ち倒され,そして,全く姿を消してしまう。預言者や聖徒の血,さらに,地上で殺されたすべての者の血が,この都で流されたからである」。(黙示 18:21-24,新口)彼女は第8の世界強国の背からひきずり落されてしまうでしょう。すでに早くから定められていたエホバの裁きは,あたかも「一日のうちに」臨み,その宗教組織は地に打ち倒された都のように燃えつきてしまいます。昔のバビロンと同じく,彼女は荒廃に帰するでしょう。(黙示 17:12–18:20)その事が起こらないうちに,清い真の宗教を愛する人々は,神の女の昔の敵から是非とも離れなければなりません。その突然の滅びにまき込まれないようにして下さい。
29 (イ)敵の女のほかにだれが滅びますか。(ロ)悪鬼の影響によって彼らはどこに集められていますか。(ハ)最後にだれがすえから処置を受けますか。
29 その滅びは,昔の敵に対する神の女の大きな勝利です。しかしそれで終りではありません。大いなるバビロンが宗教的に支配し,宗教的な姦淫をした相手の政治権力も,つづいて滅ぼされます。いまでさえ政治支配者は悪鬼に導かれてハルマゲドンの戦場にむかっており,神の女のすえのおもな者メシヤによる神の国の宇宙支配に挑戦しています。ハルマゲドンにおいて神の女のすえは天の軍勢をひきいてこれらの敵を攻め滅ぼし,ご自身が王の王,主の主であることを示されるでしょう。神の女のすえのくびすを砕いた悪魔が次に処置され,悪鬼と共に底のない所に投げ込まれてそこに閉じこめられます。こうして神の女のすえは遂に蛇のかしらを砕きます。
30 なぜ神の女は更に喜びますか。
30 この勝利の後に神の女は更に喜びを得ます。すえのおもなる者と彼女の象徴的な娘である花嫁との婚姻が完了し,天の父エホバ神はご自身の女すなわち天の宇宙的な組織と共に喜ばれます。最後に何人になるかはまだわかりませんが,そのとき地上には「大ぜいの群衆」がいて,ハルマゲドンの宇宙戦争を生き残るこれらの人々は花むこと忠実な処女である花嫁との婚姻に喜ぶことでしょう。神の女が都によって象徴されていたのと同じく,14万4000人から成る花嫁の組織は天の聖なる都,新しいエルサレムに似たものとなります。比喩的に言って栄光に包まれた新しい天は正義の新しい地を支配します。―黙示 21:1-21。
31 感謝の心を持つ地上の男女のもとに,神の御座からどんな祝福が流れてきますか。
31 神と神の小羊のごとき御子イエス・キリストの御座から天の新しいエルサレムを通って生命の水の河が流れ,河の両側には生命の木があります。それは感謝する心を持つ,地上のあらゆる男女がこれらの備えに与って永遠の生命を得るためです。神の記憶にある死人さえもよみがえされて,生命をもたらす備えに与る祝福された機会に恵まれるでしょう。全地は楽園となります。アダムとエバから受け継がれた死はもはやありません。キリストを通し,昔からのあらゆる敵に対する勝利を神の女に与えられたエホバ神への賛美で,正義の新しい地は何時までもみたされます。
[210ページの図版]
紀元前539年ベルシャザル王はメディア人とペルシャ人の手にかかって殺される