今こそ,み言葉を宣べ伝える時
「彼らは毎日神殿で,また家から家へとたゆみなく教え,キリスト,イエスについての良いたよりを宣明しつづけた」― 使徒 5:42。
1,2 (イ)聖書の中には,1世紀に王国を宣べ伝えたどんな結果が記されていますか。(ロ)イエスはマタイ 28章19,20節と使徒 1章8節で,この宣べ伝える業がご自分の追随者たちの業になることをどのように示されましたか。
ペンテコステの日に聖霊を注がれたあと,イエス・キリストの追随者たちは,キリスト・イエスについての良いたよりをたゆみなく教え宣明し続けるための力と勇気を注ぎ込まれました。では西暦1世紀にはどんな結果がもたらされましたか。イエスの追随者たちの話を聴いていた人々の多くが信者になったと記されています。実際,信じた男の人の数は合計約5,000人に達しました。(使徒 4:4)別のときには,主を信ずる者たちが,男も女も大勢加えられていったと書かれています。―使徒 5:14。
2 ペンテコステの日の直後,イエスの追随者たちがたゆむことなくキリストについての良いたよりを教え続けた結果,信者となった人々は文字通り幾千という数に達しました。西暦1世紀において「良いたより」の宣明にあずかった人々が成し遂げたことを読むのは胸の躍る経験です。それは,イエスの死と復活,およびそうしたすばらしい業を成し遂げるために聖霊が注がれた直後に行なわれたことです。西暦1世紀の忠実な兄弟姉妹たちは,主イエス・キリストから割り当てられた事柄を行なう真の働き人,熱心に働く人々でした。―マタイ 28:19,20。使徒 1:8。
3,4 (イ)現代において,宣べ伝える業を再開するための舞台が整ったのはいつですか。(ロ)キリスト教世界が王国を宣べ伝える活動を妨害したにもかかわらず,エホバはご自分の業を達成すべく前進されましたか。そして人類史上最も苦難に満ちた時代にどんな結果がもたらされましたか。
3 これは20世紀には当てはまらないことでしょうか。事実を調べてみましょう。西暦1世紀とキリスト教の始まりに関する次の点を思い起こしてください。それは一人の人,主イエス・キリストから始まりました。そして3年半という短期間のうちに,イエスの宗教上の敵対者たちが,「見なさい,世は彼について行ってしまった」と言うほどに広がって行きました。(ヨハネ 12:19)現代,それも特に19世紀の終わりごろ,キリスト・イエスを通して行なわれるエホバ神の偉大な収穫の業の始まる時が近づいていました。(マタイ 13:24-30,36-43)キリスト教世界は幾世紀もの間舞台に登場してはいましたが,キリスト・イエスに関する,そしてクリスチャンたちが祈りまた求めるべき王国の良いたよりに関する真理の光を前進させるのではなく,自らの多くの偽りの教理や教えによってその光を覆い隠してきました。しかしエホバは,ご自分のみ子が王国の権力を執る時を目の前にして,妨害されることはありませんでした。エホバの聖霊は,熱心な聖書研究者たちの一団を通して,これら義を愛し,神のご意志と業を行ないたいと誠実に願う人々に洞察力を与え始めました。この時代以降の出来事は,西暦1世紀の場合と同じく感動的なものです。20世紀を迎える直前の時代に,自らの希望を公に宣明する業に4,000人という多くの人々があずかっていたものと考えられています。
4 西暦1900年に入ってから80年ほど過ぎましたが,人類史上最も苦難に満ちた期間にもエホバはキリストとその王国に関する良いたよりをふれ告げるこれら奉仕者たちの隊伍を増やし続けてこられたことが分かります。(使徒 16:5と比較してください。)そして活動に満ちたエホバの証人の1981奉仕年度も,世界中の王国宣明者たちに多くの祝福をもたらした年となりました。
現在生じていること
5 (イ)エホバの証人および関心ある人々は,主の夕食を記念する面で,1981年にどのような関心を示しましたか。(ロ)その年の間,出席した人々のうち少しでも王国を公に宣明する業に参加した人はどのくらいいましたか。
5 まず最初に,クリスチャンの年間予定表の中で最も重要な日であるキリストの死を記念する主の夕食の祝いに目を向けてみましょう。1981年の4月19日(ユダヤ暦でニサン14日)日曜日には,世界中の4万3,870の会衆で,この祝いのために598万7,893人が集まりました。これらの幾百万という人々は,聖書で教えられている,主の死に関する真実かつ正確な意味について話されるのを聞きました。世界中のそれらの人々のうち,1981奉仕年度には,224万7,486人の人が206の国々や島々で定期的に王国の良いたよりを宣べ伝え教える活動にあずかりました。そしてこの年のいつか,神から割り当てられた奉仕の務めに参加した証人たちの最高数は236万1,896人でした。それらの人々は何を成し遂げましたか。他の人々を助ける面でその音信はどれほど効果的ですか。調べてみましょう。
み言葉を広める
6 (イ)幾世紀もの間中南米を支配してきたのは,どの宗教組織の教えですか。その結果どんな状態が生じていますか。(ロ)しかし,これらの国々でどんな変化が生じていますか。
6 ローマ・カトリック教は,中南米の人々の思考を幾世紀にもわたって支配してきました。そのせいで大多数の人は聖書の真実の教えに対して認識らしい認識をほとんど示しません。(コリント第二 4:4)その結果として,キリスト・イエスおよび王国の良いたよりに関する知識の欠如ゆえに,人々は打ちのめされ,虐待されてきました。それはイエスが目にした,書士やパリサイ人たちの圧制下にあった当時のユダヤ人の状態によく似ています。(マタイ 9:36)しかし,20世紀にエホバの証人がこれら中南米の国々で宣べ伝え,その活動に神の祝福が注がれたため,すばらしい変化が生じています。地を覆っていた霊的な暗やみに光が輝きいで,幾千幾万という正直な心を持った人々がエホバの組織の側に集められてきました。―イザヤ 60:1,2,8。
7 アルゼンチンに住む12歳の少女の立派な経験のあらましを述べてください。
7 聖書の真理はあらゆる年齢層の人々に影響を与え,エホバの王国の側に立つように助けます。(詩篇 119:129,130)アルゼンチンの12歳になる一伝道者は,まだバプテスマを受けていませんが,8件の聖書研究を司会することの喜びを語り,こう書いています。「特に休みの時期になると,わたしはできるだけたくさんの時間を戸口から戸口の業,再訪問,聖書研究の業に用います。この活動はどれも,とてもわたしを幸福にしてくれます。そして,真の神であられるエホバを知るよう多くの人々を助けるため,そのみ手の器としてエホバに用いていただけるのは大きな特権だと思います。この特権をいつも保てるようにわたしは祈っています」。この少女は間もなくバプテスマを受け,開拓者を目標に前進してゆく計画を立てています。これが,12歳の少女の経験なのです。神の言葉には,正しい考え方をさせるなんと強い力があるのでしょう。
8 中南米では1945年以来,どのように王国宣明者が増加していますか。
8 全世界を荒廃させた第二次世界大戦が終わった1945年,メキシコを含めた中南米には,王国の良いたよりを宣べ伝える業に参加する人が全部で4,720名いました。この同じ国々で,1981奉仕年度には最高37万3,919人の伝道者たちが「良いたより」を宣べ伝えました。確かに,これらの乾き切った土地でも真理の水は手に入るようになり,渇きを覚える人々はすばらしい方法でこたえ応じてきました。―ヨハネ 7:37,38と比較してください。
9 20世紀に入ってから,ヨーロッパにおける王国宣明者たちはどんな状況にありますか。
9 王国の良いたよりは,ヨーロッパの多くの国々で深く根を下ろしています。20世紀の初めから,ある国々ではそれ以前から,当時国際聖書研究者として知られていたエホバの証人は人々の間で王国の良いたよりを広めました。例えば,ドイツで行なわれた証しの最初の記録は,今世紀への変わり目の時にまでさかのぼります。ものみの塔協会の初代会長チャールズ・T・ラッセルは1891年にドイツを訪れ,その後一部の書籍やビラをドイツ語で印刷する取決めが設けられました。ドイツ人の会衆は,ドイツにおいて1901年になって間もなく設立されました。
10 ドイツでのどんな経験は,家から家の奉仕の務めが依然として効果的であることを示していますか。
10 ドイツのエホバの民は今日に至るまで,家から家の業がエホバの王国の良いたよりを人々に広める上で最も効果的な方法であると考えています。(ルカ 9:1-6)家から家の業で会った一組の夫婦に証言した結果,12ないし14人の人々が共に集まって家庭聖書研究が始まりました。その家族は後にオーストラリアに移住しましたが,そこでも,結婚した一人の娘を除き家族全員がエホバの証人と勉強を続けました。母親と父親はそれからバプテスマを受けました。
11 西ベルリンに住む,身体障害のある老齢の証人は,自分の奉仕の務めに関しどう感じていますか。
11 西ベルリンに住む84歳のある姉妹は,重度の身体障害を負いながら補助開拓奉仕を行なっていますが,その姉妹の言ったひと言から,彼女が真理と,神の言葉を今宣べ伝える必要性とに対して抱いている認識をある程度うかがうことができます。この婦人は言いました。「私はエホバを大変愛していますから,それをエホバに示すために,どうしても奉仕に参加したり集会に出席したりしないではいられないのです」。―詩篇 122:1と比較してください。
12 (イ)特に1945年以来,イタリアで王国の良いたよりはどの程度受け入れられてきましたか。(ロ)イタリア,ポルトガル,スペインでの王国の業に関し,どんな励ましとなる情報がありますか。
12 ローマ・カトリック教会が幾世紀も人々の宗教生活を支配してきたイタリアでは,近年様々な出来事によって,エホバの証人の業が以前にも増して際立ったものとなっています。1945年にはわずか90人ほどしかいなかったエホバの証人が,イタリアで2番目に大きな宗教組織に成長したのです。(イザヤ 60:22)同国の支部は1981奉仕年度に,最高9万553人の王国宣明者を報告しました。イタリアやヨーロッパの他のラテン民族の国々では,王国の良いたよりを宣べ伝えるための機が,いよいよ熟してきました。今述べたように,イタリアには1945年当時90人ほどの伝道者がいましたが,その年にスペインとポルトガルで王国の良いたよりをふれ告げていたエホバの証人がいたという記録はありません。ところが1981年のこれら3か国の伝道者数を合計すると,15万9,972人になります。イエスが述べられたように,「収穫は大きいですが,働き人は少ないのです」。―マタイ 9:37。
ほかの場所での収穫
13 (イ)アフリカ大陸に「良いたより」が広がっていることに関して,様々な記録は何を示していますか。(ロ)義を愛する人々をさらに多く収穫するための機が確かに熟していることを,どんな経験が示していますか。
13 アフリカの多くの場所では,忠実なエホバの証人が20世紀にそこでふれ告げてきた真理の音信に何千という多くの人々がこたえ応じてきました。ナイジェリア,南アフリカ,ザンビア,ジンバブエ,マラウィなどでは,真理の種は1923年,あるいは1927年という古い昔にまかれました。一方マリやモーリタニア,オートボルタ,ルワンダなどの国でその音信から王国伝道者が生み出されるようになったのは1962年から1970年の間のことです。確かに今は,この業は完了した,とエホバが言われる前に,渇いた人々が真理の水のもとに来る上で助けになることを何でも行なうべき絶好の時です。ザンビアで一人の特別開拓者は,王国の音信に鋭い関心を示した村長に会いました。この村長は他の人々をも話に誘い入れたため,全部で18人の人が特別開拓者の音信に聴き入りました。その結果,かなりの数の家庭聖書研究が始まりました。間もないうちにその土地の会衆の伝道者の隊伍は65人から86人に膨れ上がりました。今日アフリカ大陸には,エホバの証人が「良いたより」を宣べ伝えていない所はごくわずかしかありません。
14 トレス海峡の島々での非常に興味深いどんな経験が報告されていますか。
14 世界の他の場所からの報告も,昨奉仕年度が祝福と進歩の年であったことを示しています。オーストラリアの北端近くにはトレス海峡の島々が横たわっています。この群島には100の島々があり,そのうち人が住んでいるのは20島です。その一つ木曜島では,エホバの証人の会衆が繁栄しています。一人の巡回監督と木曜島に住む二人の兄弟がシューと呼ばれる他の群島の一つを訪れ,そこで温かな歓迎を受けました。この島の委員長と呼ばれる人から,聖書の真理とエホバの証人の業に関心があるので訪問してほしいと頼まれていたのです。この人はエホバの証人の出版物を持っていました。この委員長が島民の行状だけでなく,清潔さや整理整頓についても非常に厳格であることを知って,兄弟たちは本当に驚きました。この人は霊的な交わりのようなものを人々が持てるように,定期的に取決めを設けます。訪問期間中に兄弟たちはこうした集まりの中でうたわれた何曲かの歌を聴きましたが,その歌詞はものみの塔協会の出版物から取られたものでした。兄弟たちは約40名の人に話をし,協会の出版物を使って聖書研究を行なうよう彼らを励ますことができました。
全世界的な証し
15 そのため,エホバの王国の奉仕者に引き続き課せられる責任とは何ですか。
15 「王国のこの良いたよりは,あらゆる国民に対する証しのために,人の住む全地で宣べ伝えられるでしょう。それから終わりが来るのです」という,マタイ 24章14節に記されているイエスの言葉は幾度となく引用されてきました。王国の証しはエホバの忠実な僕たちの言葉と行ないによって行なわれています。最終的な判断はエホバ神にかかっていますが,十分な証しが行なわれ,それから終わりが来ます。ですからわたしたちがこれからも行なってゆく割当ては,世界が目撃することの中でも最も重要な出来事,つまり統治しておられる王,わたしたちの主イエス・キリストの手中にあるエホバの王国の到来について証しを行ない続けることです。
16 (イ)エホバの証人が,今こそみ言葉を宣べ伝える時であるとの認識を抱いていることを,どんな統計が示していますか。(ロ)ですから,わたしたち各人は,どんな個人的な質問をしてみるべきですか。
16 昨年206の国々や島々で,王国のこの良いたよりの伝道者236万1,896人が,3億5,858万1,547時間を費やして,この胸の躍る音信を広めました。彼らは全世界で147万5,177件の家庭聖書研究を司会し,書籍と小冊子を3,144万4,062冊,「ものみの塔」誌と「目ざめよ!」誌を2億3,416万3,921冊配布しました。このことは,20世紀の多くの歳月を費やして行なわれてきた山のような証しと相まって,エホバの民が持っている,自らの使命を果たしたいとの願いを示す十分な証拠となっています。その使命とは,『柔和な者たちに良いたよりを告げ,心の打ち砕かれた者を包帯で包み,とりこにされた者たちに自由を,エホバの側の善意の年とわたしたちの神の側の復しゅうの日とをふれ告げ,嘆き悲しむすべての者を慰める』ことです。(イザヤ 61:1,2,新)あなたは今,神の言葉と,約束されている王国を宣べ伝える業にあずかっていますか。
17 エホバの祝福に関する別のどんな証拠を次に考慮しますか。
17 1981奉仕年度には,エホバ神に自らの命をささげ,それを水のバプテスマで象徴した人々の隊伍に11万9,836人の人が加わりました。わたしたちはこれらの人々を皆クリスチャンの兄弟関係の中に受け入れたいと思います。1981奉仕年度における王国を宣べ伝えるエホバの証人の活動の概略を示している,この雑誌の付表を調べるなら,東洋からも西洋からも何千人もの人々が,神の言葉の中に備えられている命と真理の水の下に来て,王国の良いたよりを宣明する業に加わっていることがお分かりになるでしょう。
18 残されている時間は日を追って減少してゆくので,わたしたちの宣べ伝える業の重要性に関して何と言えますか。したがって,わたしたちはどんな決意を抱くべきですか。
18 この邪悪な事物の体制のために残されている時は日を追って少なくなってゆきます。これは「良いたより」を宣べ伝える機会がいよいよ重要な意味を帯びてきていることを意味しています。日々懸命な努力を払ってイエスの忠実な追随者であることを証しし,純粋の崇拝を促進された方としてのイエスの生き方に倣い続けることができますように。忠実なダビデと同じように,エホバの家と清く純粋なその崇拝に対する熱心に動かされて,エホバが業は完了したと言われるまで堅く忠誠を保ち,王国宣明者の隊伍にとどまり続けたいものです。―詩篇 69:9。
[23ページの囲み記事/図版]
中南米における伝道者の増加
1945年…… 4,720人の伝道者
1981年……373,919人の伝道者
[24ページの囲み記事/図版]
スペイン,ポルトガル,イタリアにおける王国宣明者の増加
1945年…… 90人の伝道者
1981年……159,972人の伝道者
[25ページの囲み記事/図版]
アフリカにおけるエホバの証人の増加
1945年…… 19,083人の伝道者
1981年……300,989人の伝道者
[26-29ページの図表]
全世界のエホバの証人の1981奉仕年度の報告
(製本した雑誌を参照)