神の律法と原則によって良心を訓練しましょう
「あなたの諭しがわたしの思いとなっている」。詩編 119:99
歌: 61,69
1. 人間はどんな点で動物より優れていますか。
人間が動物より優れている点の一つは,良心を持っていることです。人間は創造された時,エホバから良心を与えられました。アダムとエバはエホバの命令に背いた時,エホバから隠れようとしました。良心が痛んだからです。
2. 良心はコンパスとどのように似ていますか。(冒頭の挿絵を参照。)
2 良心があまり訓練されていない人は,欠陥のあるコンパスで航海する船に似ています。正確なコンパスがないと危険です。風や海流によって簡単に針路からそれてしまうでしょう。コンパスをきちんと調整していれば,正しい針路を進むことができます。正邪の感覚である良心は道徳上のコンパスのようです。正しい方向に進むには,良心を訓練しなければなりません。
3. 良心が正しく訓練されていないと,どうなりますか。
3 良心が正しく訓練されていないと,簡単に悪いことを行なってしまいます。良心が警告を発しないからです。(テモ一 4:1,2)「悪は善である」とさえ考えるかもしれません。(イザ 5:20)イエスは弟子たちにこう警告しました。「あなた方を殺す者がみな,自分は神に神聖な奉仕をささげたのだと思う時が来ようとしています」。(ヨハ 16:2)ステファノを殺した人たちがそうでした。(使徒 6:8,12; 7:54-60)今日でも,殺人などの犯罪を犯しながら,神のためにしているのだと主張する人たちがいます。でも実際には神の律法を破っています。(出 20:13)良心によって間違った方向に進んでいるのです。
4. どうすれば良心が正しく機能するようになりますか。
4 どうすれば良心が正しく機能するようになりますか。聖書の律法と原則は「教え,戒め,物事を正し,義にそって訓育するのに有益です」。(テモ二 3:16)聖書を勤勉に学び,読んだ事柄を黙想し,生活に当てはめるなら,良心は神のお考えを敏感に感じ取るよう訓練されます。そのような良心は,わたしたちが正しい方向に進む助けになります。エホバの律法や原則は,良心を訓練するうえでどのように役立つでしょうか。
神の律法によって自分を訓練する
5,6. 神の律法に従うなら,どんな良い結果になりますか。
5 神の律法から益を得るには,それを読んで内容を知るだけでは不十分です。神の律法を大切にし,愛さなければなりません。聖書が勧めているように,「悪を憎み,善を愛[する]」必要があります。(アモ 5:15)そのためには,エホバの見方を学び,それに倣うよう努力しなければなりません。例えで考えてみましょう。あなたが不眠症に悩まされているとします。医師に相談すると,食事や運動やライフスタイルについてアドバイスしてくれます。アドバイスに従った結果,よく眠れるようになり,生活の質が改善されます。あなたは医師に深く感謝することでしょう。
6 同様に,エホバは律法を与えてくださいました。わたしたちが悪い行ないやその有害な結果を避け,より良い生活を送れるようにするためです。例えば,うそ,欺き,盗み,性的不道徳,暴力,心霊術などを禁じる聖書の律法に従うなら,良い結果になります。(箴言 6:16-19を読む。啓 21:8)エホバに従って良い結果を経験すると,エホバとエホバの律法に対する愛と感謝が深まります。
7. 聖書中の実例を読んで黙想するとよいのはなぜですか。
7 教訓を学ぶために,神の律法を破って苦い経験をする必要はありません。聖書に記録されている人々の失敗から学ぶことができます。箴言 1章5節にあるとおり,「賢い者は聴いて,さらに多くの教訓を取り入れ」ます。聖書中の実例を読んで黙想するなら,神から大切な教訓を教えていただくことができます。例えば,ダビデ王が神の律法を破ってバテ・シバと姦淫を犯した時に味わった苦しみについて考えてください。(サム二 12:7-14)この記述を読んで黙想してください。こう自問できます。「どうすればダビデはこのような心痛を味わわずにすんだだろうか。自分が同じような状況に置かれたら,どうするだろうか。ヨセフのように誘惑から逃げ去るだろうか。それともダビデのように誘惑に負けてしまうだろうか」。(創 39:11-15)罪の悪い結果についてよく考えるなら,「悪を憎[む]」気持ちを強めることができます。
8,9. (イ)良心はどのような役割を果たしますか。(ロ)聖書の原則は良心を働かせるうえでどのように役立ちますか。
8 わたしたちは神が憎まれる行ないを避けます。でも,聖書が明確に述べていない事柄もあります。何が神に受け入れられ,喜ばれるかをどのように見極められますか。ここで大切な役割を果たすのが,聖書によって訓練された良心です。
9 エホバは愛情深くも,良心によって物事を決定するのに役立つ原則を教えてくださいました。こう述べておられます。「わたし,エホバは,あなたの神,あなたに自分を益することを教える者,あなたにその歩むべき道を踏み行かせる者である」。(イザ 48:17,18)聖書の原則について深く考え,神のお考えに従いたいという願いを強めましょう。そのようにして良心を正し,訓練し,形作るなら,賢い決定ができるでしょう。
神の原則に従う
10. 原則とは何ですか。イエスはどんな原則を教えましたか。
10 原則とは,考えや行動の基準となる基本的な真理や原理のことです。神の原則を理解するには,神のお考えと,神が特定の律法を与えた理由を理解することが必要です。イエスは弟子たちに,特定の考えや行動がどんな結果につながるかに関する基本的な真理を教えました。例えば,怒りが暴力につながることや,不道徳な考えが姦淫につながることを教えました。(マタ 5:21,22,27,28)良心を正しく訓練するには,神の原則に従うことが必要です。そうすれば神に栄光をもたらすことができます。(コリ一 10:31)
11. 良心上の決定は人によって異なることがあります。例を挙げてください。
11 聖書によって訓練された良心を持つ2人の人が,ある事柄について全く異なる決定をすることがあります。飲酒について考えましょう。聖書は節度を保ってお酒を飲むことを禁じていません。しかし,飲み過ぎたり酔ったりしないよう警告しています。(箴 20:1。テモ一 3:8)では,節度を保つことだけを考えればよいのでしょうか。そうではありません。たとえ自分の良心がお酒を飲むことを許すとしても,他の人の良心を考慮に入れなければなりません。
12. ローマ 14章21節から,他の人の良心に配慮することについてどんなことを学べますか。
12 パウロは,他の人の良心に配慮することの大切さについてこう述べています。「肉を食べること,ぶどう酒を飲むこと,また何にせよあなたの兄弟がつまずくような事は行なわないのが良いのです」。(ロマ 14:21)自分に行なう権利がある事柄でも,自分とは良心が異なる人をつまずかせる可能性があるなら,どうしますか。それを行なわないでしょう。ある兄弟は,真理を知る前にアルコールを乱用していたため,今は禁酒しているかもしれません。そのような兄弟を以前の習慣に逆戻りさせるようなことは決してしたくありません。(コリ一 6:9,10)家に招いたゲストがお酒を断わっているのに,飲むよう強く勧めるのは,愛の欠けたことです。
13. テモテは良い知らせを伝えるために,どんな犠牲を払いましたか。
13 テモテは恐らく10代後半か20代初めごろ,痛みの伴う割礼を受けました。これから良い知らせを伝えようとしていたユダヤ人をつまずかせないためです。テモテはパウロと同じ見方をしていました。(使徒 16:3。コリ一 9:19-23)あなたもテモテのように,他の人のために進んで犠牲を払いたいと思いますか。
「円熟に向かって進んでゆきましょう」
14,15. (イ)どうすれば円熟に向かって成長できますか。(ロ)クリスチャンとしての円熟はどのように表われますか。
14 わたしたちは皆,「キリストに関する初歩の教理を離れ」て,「円熟に向かって進んでゆき」たいと願っています。(ヘブ 6:1,2)でも自動的に円熟したクリスチャンになれるわけではありません。「進んでゆ[く]」つまり努力し続ける必要があります。円熟に向かって成長するには,知識や理解を深めていかなければなりません。聖書を毎日読むことが繰り返し勧められているのはそのためです。(詩 1:1-3)あなたはそのように努力していますか。毎日聖書を読めば,エホバの律法と原則を一層深く理解することができます。
15 クリスチャンにとって最も大切なのは愛の律法です。イエスは弟子たちにこう言いました。「あなた方の間に愛があれば,それによってすべての人は,あなた方がわたしの弟子であることを知るのです」。(ヨハ 13:35)イエスの異父兄弟ヤコブは,愛が「王たる律法」であると述べました。(ヤコ 2:8)パウロは,「愛は律法を全うするもの」だと述べています。(ロマ 13:10)愛が強調されているのは当然のことです。「神は愛」だからです。(ヨハ一 4:8)神の愛は単なる感情ではありません。ヨハネはこう書いています。「わたしたちの場合,これによって神の愛が明らかにされました。すなわち,神はご自分の独り子を世に遣わし,彼によってわたしたちが命を得られるようにしてくださったからです」。(ヨハ一 4:9)神は愛を行動で示されました。円熟したクリスチャンは,エホバ,イエス,兄弟姉妹,他の人々に豊かな愛を示します。(マタ 22:37-39)
16. 円熟に向かって進歩するために,原則に従うことが大切なのはなぜですか。
16 律法が特定の状況に当てはまるのに対して,原則はもっと広い範囲に適用できます。クリスチャンは円熟に向かって成長するにつれ,原則に従うことの大切さをいっそう理解するようになります。例えば,子どもは幼い時,悪い友達と遊ぶ危険を理解していないかもしれません。それで親は子どもを守るため,何かの規則を設けるでしょう。(コリ一 15:33)でも子どもは成長するにつれ,思考力を身に着け,聖書の原則に基づいて考えられるようになります。友達を選ぶ際にも賢い決定ができます。(コリント第一 13:11; 14:20を読む。)わたしたちも神の原則に基づいて考えるなら,良心は神のお考えに調和するようになり,正しい決定をする助けになります。
17. 賢い決定をするうえで役立つどんなものがありますか。
17 わたしたちは,エホバに喜ばれる賢い決定をするうえで必要なものをすべて持っています。聖書には,「十分な能力を備え,あらゆる良い業に対して全く整えられた者となる」うえで役立つ律法と原則が収められています。(テモ二 3:16,17)「何がエホバのご意志であるかを見分け[る]」ため,聖書の原則を探しましょう。(エフェ 5:17)そのために役立つ様々なツールがあります。「ものみの塔出版物索引」,「エホバの証人のためのリサーチガイド」,Watchtower Library,「ものみの塔 オンライン・ライブラリー」,JW Libraryなどです。こうしたツールを個人研究や家族研究で活用しましょう。
聖書によって良心を訓練するなら祝福される
18. エホバの律法と原則に従うなら,どんな祝福を得られますか。
18 エホバの律法と原則に従うなら多くの祝福を得られます。詩編 119編97-100節にはこうあります。「わたしはどんなにあなたの律法を愛していることでしょう。それは一日じゅうわたしの思いとなっています[または,それを一日中じっくり考えます]。あなたのおきてはわたしをわたしの敵よりも賢くします。それは定めのない時に至るまでわたしのものだからです。わたしは自分のすべての教師に勝る洞察力を得るようになりました。それは,あなたの諭しがわたしの思いとなっているからです。わたしは年長者に勝る理解力をもって行動します。それは,わたしがあなたの命令を守り行なったからです」。時間を取って,神の律法と原則を「じっくり考え」ましょう。そうすれば,知恵と洞察力と理解力をもって行動することができます。神の律法と原則によって良心を訓練するなら,「キリストの満ち満ちたさまに属する丈の高さ」に達することができるでしょう。(エフェ 4:13)