世界展望
行きづまりを見せるアメリカの雑誌業界
◆ 郵便料金の値上がりを含む諸経費高騰のために,多くの雑誌社は深刻な財政問題をかかえている。ここ数年,ルック,サタデー・イブニング・ポスト,コリアーズその他大手の雑誌社が発行を停止した。ほかの業者は営業を縮小している。去る11月,ライフ誌はふたたび発行部数の削減を発表した。今回は6月までに700万部から550万部に削られる。同誌は昨年1月すでに発行部数を850万部から700万部に削減している。多くの宗教関係の出版物について,読者の関心が薄れ,諸経費が急騰しているため,宗教関係の出版を停止したところも少なくない。
訓練の必要を唱える
◆ アメリカ,コロンビア大学の元教授で,現在ある私立学校の校長をしているドナルド・バール氏は,教育界の放任主義的傾向に反対し,かなり強い訓練の必要を唱えている。同氏は,今日の教育の危機の責任を,子どもは自分自身で学びうると主張する「進歩的な教育者」に帰し,こう語った。「訓練されたことのない子どもは決して自分を抑制することができない。……子どもが幼い時には自滅的な放任主義で育て,手遅れになってから断固とした態度に出ようとするのが一般の傾向である」。
英国の失業者数は増加
◆ 英国は,1930年代の大恐慌以来最悪の失業問題に直面している。昨年11月末までに失業者の数はほぼ100万人に達した。
国連の財政難
◆ カナダのバンクーバー・サン紙は最近,社説に,「国連が企業であれば,関係者全員が刑務所入り」という見出しを掲げた。同社説の論評は次のとおりである。「国連は破産している。財政担当官の幹部のことばどおり,もし国連が企業体であれば,毎月支払う給料や最小限の運営費をまかなうために信託資金や特別会計から借金をしているのだから,関係者はおそらく刑務所入りであろう」。ウ・タント前事務総長はこう言明した。「われわれは文字どおりその日暮しをしている。事実,われわれは,新しい計画や拡張計画を率先して行なうことはおろか,現行の活動を続けてゆく能力をさえ真剣に疑わねばならない段階に来ている」。
ドルの流出,依然続く
◆ 昨年7月から9月にわたる3か月間に,アメリカの支払い残高はこれまでの最高の赤字を示した。アメリカは外国に対して,120億ドル(3兆6,920億円)の支払い超過を経験した。これはその前の四半期におけるそれの2倍を上回っている。8月から実施されている,アメリカの新しい経済政策はドルの流出を緩和させたものの,それを阻止してはいない。
どれほど多くの人が感染しているか
◆ 性的伝染病に関する世界最高権威者のひとりとされている,英国ロンドンのR・D・カッタロル博士の推定によれば,1970年に全世界で2億5,000万人の性病患者がいた。同博士は,今日みられる性的に放縦な態度,性病の中には医薬品に対して免疫性を持つようになったものがあること,医療関係者および一般の人々の無知,さらに伝染病に対して何の防御にもならない経口避妊薬が,性病の急速なまん延の原因であるとしている。世界で14人にひとりは性病に感染している。
堕落した趣味
◆ 西ドイツのネウエ・イルストリエルテ・レブエ誌は,最近,「ルッセルドルフから来た成り金の人食いたち」に関する次のような記事を写真入りで載せた。「軽薄な冗談を言いながら,ルッセルドルフの『成り金』たちは,ろうそくの光のそばのぶ気味な食事についた。『何にいたしましょうか。人の頭はいかがでしょうか』。雄牛の血がそれといっしょに供された。また,デザートとして,女性には,バナナと砂糖づけのくだ物でできた男性の性器が,男性には女性の生殖器の形をした練り粉菓子が出された。人の頭はパンで作られ,キノコの眼がついており,フランスしょうろで飾装が施され,まわりには牛の脳が盛りつけてあった。最も新しい出し物は,デザートに供される,妊娠5か月の人間の胎児を型どったスイス製のチョコレートである。
衰えゆく映画
◆ アメリカの映画館の入場者数は,1946年の約8,000万人を最高に,1963年には2,100万人に減少し,さらに最近の調査では1,800万人を下回っている。映画の質も低下し,暴力や性的不道徳を呼び物とした映画を上映する映画館がふえている。ある劇場チェーンの社長は,「われわれは,ここ10年から15年間に,質のよい映画の最も深刻な品不足に悩んでいる」と語った。
愛情を示すことが必要
◆ 子どもの発育に関する専門家のあいだでは,しばらく前から,幼児には親の愛情が必要であることが知られていた。ベッドサイド・ナース誌の報道によれば,専門家たちは,そうした愛情は単に感じられるだけではなく,示されねばならないという認識をますます深めているという。愛情のこもったやさしいことばをかけたり,抱きしめたり,また赤ん坊をしっかりと,だがやさしく抱いてやることは,赤ん坊の心身の必要を満たすのに助けとなる。
減少している放射性降下物
◆ 1940年代後期から1950年代にかけて,核兵器実験のために,放射能を帯びた何百万トンもの砕片が大気圏に吹き出された。1960年代の初期までに,ストロンチウム90およびセシウム137が驚くほど大量に食品や牛乳中に蓄積されていることが発見された。しかし,アメリカとソ連が,空中での核兵器実験をしないことに同意する条約に調印し,それ以来,フランスと中国の核実験の後少し増加したことを別にすれば,放射性降下物は減少している。英国のハーウェル研究所は,一昨年地上に蓄積されたストロンチウム90の量は,1963年に降下した量のわずか20分の1にすぎないと報告している。
鎌状赤血による貧血の治療
◆ アメリカの黒人の子どものおよそ400人にひとりは鎌状赤血球による貧血にかかる。そうした子どもはそのような体質をもって生まれるのである。そのために酸素を運ぶ赤血球はくずれて,正常な円形から鎌に似た形に変形する。それら異常な赤血球は未発達のまま死んでしまうため,致命的な貧血が起こる。研究者らは新しい化学療法を実験しており,試験管の中では,シアン化ナトリウムが,赤血球の鎌状の変化を防ぐ力を持つことが知られている。この療法が人体にも有効であるかどうかはまだわかっていない。
自分の食習慣に注意する
◆ アメリカにおいて心臓病で死んだ人は1年間に60万人以上にのぼり,心臓病は死因の第1位を占めているが,この病気のおもな原因は食習慣であるといわれている。アメリカ保健協会会長,アーニスト・ウインダー博士は,議会の委員会でこう証言した。「1918年にはほとんど注目されなかった〔心臓〕病が今ではアメリカの40歳を過ぎた男性の死亡者のうち50%を上回る人々の死因となっている。さらに,若い人々でも心臓病に冒される人が漸次ふえている模様である。実際,疫病が襲っているのである」。とりわけ同協会は,小食にして,摂取する食物の選択にもっと注意を払い,とくに油っこい食物や甘い物を避け,塩の摂取量を減らすことを勧めている。
天然痘の問題消える
◆ 天然痘に感染する危険は減少し,昨年天然痘の患者を報告したのはわずか23か国にすぎなかった。今では天然痘で死ぬ危険よりも種痘で死亡する危険のほうが大きい。このため,アメリカ公衆衛生局は従来の天然痘予防接種を廃止するよう勧めている。アメリカでは旅行者に対する予防接種の要求も緩和される見込みがある。
大気汚染と戦う
◆ 最近,フランスのパリでは,同市の大気汚染と戦うため,二つの巨大な空気浄化装置が設置された。設置されたその二つの塔は高さ5㍍幅1.5㍍で,実質的にいってそれは大型の真空掃除機である。空気は基部の開口から吸い込まれて,ろ過装置を通して吸い上げられ,最後に上端から放出される,もし満足のゆく結果が得られたなら,さらにいくつかの装置が取り付けられる見込みである。