高くなる食費 ― どのように対処できますか
日本の家庭の主婦も,アメリカの主婦が取り上げたこの問題に関心を持っておられることでしょう
「この物価高の中でどうやって家族を食べさせていったらよいのかしら」。これは,幾百幾千万の主婦たちが尋ねている質問です。この点で多くの場合に役だつ二つの基本的な原則があります。(1)自分の払うお金が,広告や“便利さ”のためではなく,ほんとうに食物のためであるようにする。(2)欲望や外見ではなく,栄養価を求めて買い物をする。
さて,これら二つの原則を頭に置いて買い物に行ってみることにしましょう。
誘惑的な冷凍食品の陳列があります。何が並んでいますか。いろいろ物がありますが,中でも,調味と配合をすませた野菜類,“テレビ・ディナー”などがあります。穀類食の棚には,すでに砂糖をまぶし,干し果物をさえ混ぜたこうばしい穀類食が並んでいます。それはとかく子どもが欲しがるものです。たれその他も添えて手軽に調理できるようにしためん類食の“セット”もあります。さらには,すでにたいたごはん,簡単にひとりずつに給仕できるようにしたスープ,穀類食,プディンなども見かけるでしょう。これらの物にはみな“余分な”ものがかかっています。これらの物を買う場合,わたしたちが買っているのは食物だけではありません。AP通信の解説が述べるとおり,「消費者が自分で容易にできることを他の人に頼むなら,それには必ず費用がかかる」のです。それで,これらの食品はあなたが買うべきものですか。節約が必要なのであるなら,そうではありません。
食費が高くなるのを防ぎたいなら,たいていの食品をその最も単純な形で買うことが必要です。ほんとうに忙しい場合には,ある種の便利食品が役だつかもしれません。でも,それが,節約する時間に見合うものであることを確かめてください。
飲み物類の売り場には各種の清涼飲料が並んでいます。それを買う場合,あなたが得るものはなんでしょうか。それはおおむねただの水ではないでしょうか。びん詰の水に砂糖と多少の風味や色彩を施したものに多くのお金が払われていることにはむしろ驚くべきものがあります。そうしたものをほんとうに求めているのであれば,粉末やシロップを買い,自分で水と甘味を加えることもできます。
買い物のさいには,どの商標のものを選ぶかをも決めなければなりません。よく広告宣伝されている品に手を伸ばすのが常であれば,あなたのお金の幾分かは広告代にあてられていることになります。例えば,乾燥穀類食の場合,値段の約五分の一は広告費であることをご存じでしたか。こうした点で節約が必要であり,また手に入るのであれば,それほど広告されてない,土地の品,あるいはその商店の商標を付けた品を使ってみることもできます。そのほうが値段の安いのが普通です。商標が違っても同じメーカーによって製造されている場合のあることをご存じでしたか。
買い物のさい,値段が安いという理由で小さな包みに手を伸ばす傾向がありますか。大きなサイズで買う場合に比べれば,実際には単位量当たりに対して余分のお金を払っていることになるでしょう。まとめて買うほうが経済的であるのが普通です。したがって,置く場所があるかぎり最大のサイズのものを買うのが一般に言って得策です。特に,保存のきく重要品目の場合はそうです。でも,まず外装に表示された内容量を調べてそれがほんとうに節約になることを確かめるのがよいでしょう。包装は人の目を欺く場合もあります。容器を大きくし,内容を少なくしている製造業者もいます。
お金の価値と食品の価値が同じでない場合
「なんでも自分が払っただけのものを買うのだ」と言ったことがありますか。値段の安い食品の中に値段の高い食品より栄養価に富むものがあることをご存じでしたか。
権威者たちは,健康のために次の四種の食品が必要であるという点で一般に一致しています。(1)魚肉や鳥肉を含む肉類,および卵や豆類。(2)野菜,果物類。(3)ミルクおよび乳製品。(4)穀類食。それぞれのグループ内の最も経済的な食品を使うなら節約となります。
最上級のステーキ肉のほうが安い切り身より良いと考えがちですか。興味深いことに,肉の切り方や等級分け,かん詰食品・卵・バター・果物・野菜などの等級分けは,その食品の価値そのものとはほとんど関係ありません。したがって,こうした食品については,自分の目的にかなう範囲でいちばん経済的な品を選ぶのが賢明です。肉を料理しようと思う場合には,くび肉,シチュー肉など,低い等級で値段の高くないものを使えます。良い料理の本を見れば,そうした肉のおいしい料理の仕方を学べるでしょう。食品の価値は高い切り身と変わらないという点を忘れないでください。
もう一つ考えるべき点があります。自分の献立にはいつでも肉が必要でしょうか。ヒマラヤ山中フンザ地方の高齢種族はめったに肉を食べず,百歳以上生きる人が大ぜいいます。必要なたんぱく質はほかのものから得ているはずですが,それはなんでしょうか。豆類(えんどう,いんげん,ひらまめなど)とミルク,およびチーズをはじめとする乳製品です。そして,これらの食品は,肉のように料理しても縮まないことにお気づきですか。
豆類から得るたんぱく質の費用は,肉類からそれを得る場合の何分の一かですむことに気づいておられるでしょう。チーズ,ミルク,卵などから得るたんぱく質についても同様のことが言えます。しかし,肉のかわりとして豆類を料理する場合には,植物性のたんぱく質(大豆のたんぱく質を除く)が一般に“不完全”であり,必要なアミノ酸すべてを含んでいないことを忘れないでください。わたしたちの体は,すべてのアミノ酸がそろっている場合にたんぱく質を最大限に活用します。それで,豆類を供する場合には,ミルクやチーズなどを添えるのもよいでしょう。
乾燥した穀物食をただ鉢にあけるだけの手軽さを好んでいる人が多くいますが,これはオートミールを煮て食卓に出す場合の二ないし四倍の費用がかかることをご存じでしたか。さらに,このようにして料理した穀物食のほうがたんぱく質やビタミン類を多く含んでいます。朝食の穀類食は自分で料理したほうが安くなります。
たいていの店では,ポテトチップ,プリッツェルその他の“スナック食品”がよく売れています。それらを買う場合,あなたは実際には何を得ているでしょうか。それはご家族にとってほんとうに栄養のある食品ですか。実際には,それほど食品価のないものにたくさんのお金を払っていることになります。家族の軽食用には,チーズ,また季節の果物や野菜類を準備するほうが家族に対して親切なことでしょう。
あなたの家計の中で牛乳がかなりの出費になっていますか。脱脂粉乳を使うなら,栄養価を減らさないでミルクの費用を半分近くにすることができます。「家の者たちが粉ミルクの味を好かない」と言われますか。市乳と半分ずつ混ぜて一晩おく方法,あるいは指示されているよりも五割ほど濃く作る方法を試みたことがありますか。これで問題は解決できたと言う人たちもいます。
ほかの節約の方法
買い物に出かけるさい,あなたは買う品物の表を持って行きますか。その表からそれないようにすればお金の節約になります。ただ衝動で買うことを避け,実際に必要なものだけを買うようになるからです。その表を作るさいには,広告されている“売り出し品”に注意を払うとよいでしょう。そのために二,三の店をまわらなければならないとしても,そうした売り出しを十分に活用すれば,食費を平均して二割ほども節約することができます。
冬にいちごを食べるのは楽しいことかもしれません。しかし,その出盛り季に食べるほうが家計の面から見てやはり得策でしょう。他のすべての果物や野菜類についても同じことがいえます。また,週の終わりや,店先で熟しきった時に買うことはどうでしょうか。早く売るために値段が下がっているのではありませんか。
新鮮な野菜の値段も高くてなかなか買いにくいということもあります。そのような場合には,自分で栽培してみようと思う人もいるでしょう。10平方㍍程度の庭であってもいろいろな野菜を植えることができ,数百円の種代で年に二,三万円もの節約を見ることができます。都会のアパートに住む場合でも,日の当たる窓べや屋上に,二,三の野菜を植える場所を求められるかもしれません。この面で経験がないなら,野菜づくりについて知っている人,あるいは土地の図書館や専門の機関から幾らかの知識を得るようにするとよいでしょう。
もう一つの点があるいは役だつかもしれません。タイム誌1972年12月18日号は,「率直に言って,アメリカ人は食べすぎている」と述べました。いろいろな研究の結果は,子どもを丸く太らせるよりは,むしろほっそりしているほうが子どもの健康に良いことを示しています。それで,高カロリー,低栄養の食べ物を求める欲望を満足させようとすることは,必ずしもご家族に対する親切とはなりません。