世界展望
増大する食糧危機
◆ 「多くの有能な観察者たちは,ソ連および中共とアメリカの間の関係に雪解けが訪れた背後の真の理由は食糧の必要である,と考えている」とプログレッシブ・ファーマー誌は述べている。同誌はさらに,「食糧生産は……核兵器よりも重要になった」とも報じている。国連食糧農業機構は今や,中共の「不安定な穀物事情」,チリにおける1930年来の凶作,および必要不可欠な魚粉の慢性的な世界生産高の低下が,世界的規模の食糧不足を増大させる要素となっている,と述べている。一方,備蓄穀物が底をついたアメリカでは,増大する需要と,作付けを妨げた春期の降雨のために,食品価格は急騰した。米国農務省は今年の食品価格は1972年の2倍になるかもしれないと述べている。
飢きんを助長するもの
◆ 何年にもわたる干ばつによって引き起こされたアフリカの広範な飢きんは,害虫やねずみの害のためにいっそう深刻なものとなっている。収穫された穀物の三分の一近くはこうした害によって倉庫の中で失われているであろう。毎年,アフリカ全体で,優に5,500万人を養うに足る穀類が失われている,と言われている。しかもこうした事態が改善される見込みはほとんどない。“緑の革命”の生んだ新しい高収量種の穀物は普通のものよりも倉庫の中での害を受けやすいようである。チャド共和国では,400頭の飢えた象が穀物畑を踏み荒らすという,さらにやっかいな問題が生じた。その結果,何千ヘクタールものキビやカサバがだめになった。
逆転した経済事情
◆ 最近起きたアメリカ・ドルの切り下げと,他の国々の経済的な発展とは,「安いアメリカの労働力」という皮肉な現象を生み出した。その結果,アメリカの産業界に対する外国資本の投資か急激に増加し,アメリカ国内に外国系の大規模な製造工場か多数建築されるようになった。米国労働省の数字によると,過去におけるアメリカの労働単価は実質的には他の諸国より高かったものの,過去5年間における増加はわずか16%にすぎなかった。一方,西ドイツの労働単価はその間になんと85%も増加している。個人の財産や公益施設などをすべて考慮にいれた,西ドイツの国民一人当たりの平均所有財産(約161万2,000円)は今年の7月初旬におけるアメリカの水準(約158万6,000円)を超えた。両者よりも高いのはスウェーデン(約169万円)だけである。
凍結したマンモスの発見
◆ ソ連の科学ダイジェスト誌「スプートニク」は体高3㍍の凍結したマンモスが発見されたことを報じている。そのマンモスは,アラスカの北端とほぼ同緯度の北緯71度の北極圏で発掘された。「その内臓だけで400㌔はあった」。そのような発見は聖書に記録されている大洪水に再度注意を向けるものである。そうした洪水は,この生物を急速に凍結させるのに必要な急激な気候の変化をもたらしたであろう。
日食は宗教指導者のことばに反ばくする
◆ 最近起きた長い日食の間,アフリカの多くのイスラム教徒は東を向いて,「太陽を放してください」とアラーの神に懇願した。“マラブーツ”と呼ばれる宗教上の指導者たちは,アラーがいつ「太陽を捕える」かはだれにも予言できない,と言っていた。しかし,それら指導者たちのまちがっていたことが明らかになった今,この地域のある政府は,宗教ではなく,宗教指導者たちの中にまちがっている者がいたのだということを人びとに納得させるための運動を始めた。しかし,イスラム教のある学者は,それは大きな問題ではないとしてこう言っている。「忠信者は疑うことをしない,ただ信じる,という一種の宿命論がイスラム教の信仰にはある」。
ゆがめられた福音
◆ 時々,イエスに関する『驚くような新知識』がどこかの『学者』によって発表される。最近のある著作は,イエスは人間ではなく,薬物崇拝で使用されるキノコであった,と主張している。「アレキサンドリアのクレメントとマルコの秘福音書」と題する別の本は,マルコ伝の『秘版』を発表することを意図している。宗教家の中にはそうした考えを支持する者もいるが,新聞寄稿家ルイス・カッセルズはこう述べている。「イエスに関するこうした新発表を目的とする書物のすべてに言える驚くべき点は,記録された福音書のうち,自分たちの論題を支持するのに都合のよいところをできるだけ受け入れ,その同じ書物で,自分たちの好む考えと相いれない部分は無視したり否認したりしていることである」。
鋼鉄の使用
◆ アメリカ,ソ連,および日本は,世界の鋼鉄消費国の先頭に立っている。それら三国の国民1人当たりの年間平均消費量はインドの40倍である。
『説くところを行なって』いるか
◆ バチカンは最近,8年近くの年月をかけて作成した,全世界のカトリック司教に対する150ページの指導書を発行した。そこにまとめられた各司教の日常生活や職務に関する指針の中には次の点がある。「司教は富や社会的地位のゆえに偏った見方をすることがあってはならない……家の中の家具や造作にも同様に慎しみを保つべきである……たとえ見かけであっても,権威主義的な態度やこの世的な統治の仕方を避ける」。しかし,それが発表される数日前,ローマの聖パウロ教会堂の僧院長は,教会を「世の権力階級と密接に結びついたこの世の一勢力であり,霊的,経済的,司法的,政治的,また思想的な分野において資本主義的搾取行為との妥協を行なっている」と批判する教書を出した。
性を「売り物」にする教会
◆ ニューヨーク市のジャドソン・メモリアル教会は肉欲的なテーマのミュージカル・ショーを定期的に上演する。そのミュージカルは同教会の準牧師によって作曲・演出されるものである。そうしたショーの中で公然と扱われた主題の中には,獣姦や同性愛に関するものがあった。「そのほとんどすべての作品の中で,性が高く掲げられている」とウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。これに負けていないのは,オハイオ州クリーブランドのユニテリアン派の“無任所牧師”で,彼はラジオのあからさまなインタビュー番組を司会しているが,これが,嫌悪感をいだいた聴取者からわいせつ的であるとの非難を浴びている。彼はこう語った。「私は『不自然な性行為』ということばの意味を十分に理解していないと思う。なんでもふたりの人間が互いに引き付けられるのであれば,それは決して不自然ではないと思うからである」。
あすの親たち
◆ 子どもに対する虐待事件が知られているだけでも過去10年間に五倍になったことに気づいている人は少ないと,アメリカ医学協会に提出された一報告は述べている。「国家の恥」ともされることであるが,こうした虐待はアメリカの五歳以下の子どもの主要な死因となっている。その報告によると,今年中に5万人の子どもが死に,30万人の子どもが回復不能の身体的または精神的障害を負うものとみられる。その広範な影響についてこう述べられている。「それは,さらに多くの暴力をはぐくむ暴力的な病弊である。というのは,虐待された今日の子どもは,もし生き伸びるとすれば,自分の子どもを虐待する親となるからである」。こうした破壊的な悪循環は,いっそうの怒り,憎しみ,犯罪行為を生み出し,「いつの日か,たいていの者が街路にも出られなくなる時が来るであろう」。
怒りの報い
◆ カリフォルニア州チノでのこと,夜遅く路上で騒ぐ群衆に腹をたてたある男は,彼らを静かにさせるためピストルを手にして外に出た。やがて,取っ組み合いのけんかとなり,その最中にピストルが暴発し,そばに立っていた人が死んだ。それはその男の息子であった。
子どものアルコール中毒
◆ アルコール中毒防衛会の集まりで,ある11歳の子どもは1年間禁酒したとして,また別の10歳の子どもは1か月間禁酒したとして表彰された。アメリカには子どもおよび十代青少年のアルコール中毒者が45万人はいるものと,アルコール中毒問題の一権威者は推定している。「それは,われわれが想像していたよりもはるかに重大な問題である。……9,10,11,12歳の子どもが深刻なアルコール中毒の問題をかかえているのを見るのも珍しくない」。親の無関心さ,および麻薬に比べて酒類が容易に手に入ることがこの傾向を助長している。別の権威者は,「フランスには,6歳のアルコール中毒者が何万人もいる」と語っている。そして,ハンガリーからの報道はこう伝えている。「われわれの最大の関心は若者たちの間にアルコール中毒が急速に広まっていることである」。
欠勤者
◆ 「長期欠勤者のために産業界は毎年数億円にのぼる損失を被っている。しかも,問題はいよいよ悪化している」と,インダストリー・ウイーク誌は報じている。アメリカの場合,欠勤の80%が勤労者のわずか10ないし15%の人びとによることを,ある調査は示している。ポーランドの首相ピオトル・ヤロスゼィッズによると,ポーランドも欠勤問題をかかえている。同首相は,1,100万の労働人口のうち毎日70万人が欠勤していると報告している。風邪のような病気で欠勤する場合にも,給料の85%が支払われるように最近取り決められた点がこの問題を大きくすることに一役かっているものと思われる。
商業上の問題
◆ 「今日の商業界の最大の問題を作り出しているのは従業員であるとわれわれは感じている」。アメリカ最大の“買い物サービス”会社の副社長はこう語っている。同社の仕事は従業員の不正行為を発見して,それを商店主に報告することである。ボストン・グローブ紙上で,インタビューを受けたある当局者は次のように語った。それは,周囲の人びとに駆り立てられて「もう少し多くの物を持ちたい」という制御しがたい衝動がわき,それに「屈する」ためである。「特に現在,十分のお金を持っている人はいない。物を盗む機会がそこにあり,それは非常に容易である。そこで,従業員の不正が起こる」。
衰える告解の制度
◆ 「非常に多くの調査は,全米のどの教区においても告解をする人が40ないし80%減少したことを示している」と,ある寄稿家はセントピーターズバーグ・(フロリダ州)タイムズ紙上で語った。ノートルダム寺院の典礼研究部の主事は,「個人の告解という伝統的な慣行は深刻な危機に見舞われている」と付け加えた。同主事はその理由の中に,「告解の単調で決まりきった機械的な仕方に対する不満……『マリアに幸いあれ』『われらの父よ』などの2,3のことばを何度も繰り返す赦罪のための同じ罰,告解のあいだ一度も深い感動を覚えることなく教会を去らねばならぬこと」などをあげている。