支出を減らすことができますか
物価は上昇の一途をたどっています。今日では,かさんでゆく生活費のため,人々がこつこつとためたわずかな蓄えさえ底をついてしまうほどです。特にそれは,固定した収入で生活している人にとって大きな打撃となっています。
物価の上昇による打撃を和らげるために行なえることがありますか。問題に対する取組み方で,ある人々が実際的だと気付いているものについて考えてみましょう。
それはどうしても必要なものですか
何かを買いたいと思うとき,「それは本当に必要なものだろうか」と自問してみるのが有益なことにお気付きでしょう。例えば,あなたにとって自家用車の利用価値は,車の減価償却による損失は言うまでもなく,車の購入費,保険の支払い,燃料費,修理費などの出費を相殺してなお余りあるものですか。本当に車が必要だとしても,車での外出を前もって計画し,場合によっては公共の交通機関を利用するなどして,車の使用回数を減らすことができますか。また車を共同で使用するのはいかがですか。ただ男の人たちが仕事に出かけるためだけでなく,友人同志で買物に行ったり,他の活動に一緒に参加したりする取決めも設けられます。
それほどお金をかけないで必要な衣類を整えることができますか。チリのサンチアゴ市に住む一主婦は,ある日自分のコートが古くなっているのに気付きましたが,新しいのを買う余裕もないので困っていました。彼女はこう語っています。「ある日のこと,わたしが一人の友人のコートをほめたところ,彼女はこう答えました。『あら,これは古い冬オーバーを裏返ししただけなのよ』。わたしも同じようにしてみましたが,コートの縫い目をほどき,裏側を表に出して縫うのはそれほど難しくはないことに気付きました。ただ以前の縫い代の跡をたどり,えりやポケットに少し変化を加えるだけで,わたしのコートは新品のように見えました」。
このつましい主婦は,セーターのひじの部分がすりへって薄くなっているのに気付くと,両そでをはずして左右に置き替え,ひじの当たる部分に生地の新しい部分がくるようにします。これと同じような方法で,あなたもお金を節約できるでしょうか。
安く買えますか
何か新しい物が本当に必要な場合でも,特売に注意していれば,支出を減らすことができます。ある土地では,「在庫一掃セール」が毎年決まった時期に行なわれるので,そうしたセールを利用すればかなり節約できます。
良い店ほど良い特売を設け,多くの場合そうした特売品を早く売りさばこうとします。そのような店は思い切った割引価格で,一日か二日の特売日を設けることもあります。しかし,品質について一言述べるなら,長期間着用する背広など厚手の衣類は,長い目で見て,良質の品の方が,安くて品質の劣るものより,結局安くつくことが分かります。
「きずもの」の衣類を買って家で修理すれば,衣料費をさらに節約できますし,中古衣料を買うという方法もあります。中古衣料が高価な新品より品質の良い場合も少なくありません。
あなたは品物をより安く買うために値引きをしてもらうことがありますか。買い物上手なある主婦はこう述べています。
「市場で値引きをしてもらうのが日常のならわしとなっている国で二年間暮らしたのち,アメリカに戻って家事のやりくりを始めましたが,ここではそうしたならわしはほとんど知られていません。照明用器具が幾つか欲しかったので,新聞で特売を探し,やっとあるよく知られたデパートの特売を見付けましたが,欲しいと思った照明用器具の総額を聞いてたじろいでしまいました。
「その時わたしは,もっと安い値で買うために値を引いてもらってはどうかと思い付いたのです。そこで店の『仕入れ係』を呼び,自分が必要としている物と,その費用についてどう考えているかを説明しました。わたしたちは,さらに安い値で折り合うことができました。ですから,こうした仕方で値を引いてもらうことをマナーの欠けたことだと考えないでください。もし商人が値上げをするのが悪いことでないなら,顧客がそれを割り引いてもらおうとするのも悪いことではないはずです」。
あなたはカタログによる通信販売で物を買うことのできる土地に住んでいますか。この方法で季節はずれの商品や,売行きの良くない品目をかなり割り安に買える場合があります。
家庭で行なえるびん詰による食品貯蔵
今日では,食費が特に高くなっています。食品を貯蔵することによって食費を節約できるでしょうか。あまり費用をかけないでそうする方法は,家庭で食品をびん詰にすることです。びん詰にするさいの加熱処理により,酵母菌,かび,バクテリアなどを除くとともに,食品の変質を起こす化学反応をくい止められます。
家庭用保存食作りには,たいてい食品保存用の密閉ガラスびんを用います。びんの口にぴったり付いたゴム輪が「パッキング」の働きをします。この部分に金属製のふたを回しながら締め付けると密封され,空気やバクテリアが中へ入らないようになります。ある国では,広口びん,密封用のふたなど,家庭で食品をびん詰にするための器具を求められます。しかし,こうした物が商品化されていない所にお住みでしたら,自分で器具を作って間に合わせることができます。ある主婦は自分で実験してみて,次のように勧めています。
「回して締めるふたのついた広口の空きびんを取っておきます。その場合でも,まずびんの最上端をぐるっと指でなでてみて,どこも滑らかであるかどうかよく確かめます。刻み目や割れ目が少しでもあれば,密封できません。それから,古タイヤのチューブのような薄いゴムから,びんの口に合うように輪を切り取ります。ふたを回して締め,出来具合を調べてください。ぴったりと閉まりますか。びんに半分ほど水を入れ,逆さにしても水漏れしませんか。もし漏れなければ,家庭でのびん詰作業を始める準備ができたわけです」。
肉,魚,ふつうの野菜など,酸性の低い食品を保存するには,特別な蒸気圧によるびん詰用の器具が必要ですが,ほとんどすべての果物と,たいていのトマト類(全部ではありませんが)など酸性の高い食品は沸騰したお湯だけで作れます。
まず最初の段階では,全部の容器,ゴム輪,ふたなどを熱い石けん液で洗います。すすぎののち,これらの器具を煮沸し,風の当たらない所に置いて乾かします。
傷んでおらず,熟れ過ぎてもいない良い状態の食品をぜひ選んでください。その食品をびんの上端から1㌢余り下の所まできちんと詰め込み,沸騰した液を上からかけますが,上部にはやはり1㌢余の余裕を残しておきます。その液は果汁やふつうの水で間に合いますが,味付けに少量の塩や砂糖を入れることもできます。トマトをびん詰にする場合には,水を加える必要はまったくありません。トマトをびっしり詰め,トマト自体の果汁がかぶさるようにするだけでよいのです。
封をする箇所に食物のかけらなどが付いていて密封の妨げにならないように,よく調べてください。煮込んでいる間にたまる圧力を外に放出するような型の容器であれば,ふたを回して堅く締めておきます。中身が詰まったびんは,次に沸騰中の湯沸かしに入れますが,その湯沸かしは,熱湯がびんの上を約3㌢から5㌢覆い,その上勢いよく沸騰してもよいように,水面上にさらに約3㌢から5㌢の空間を空けられるほどの深さのものであれば好都合です。びんを金網状のたなに乗せ,びんの底の方へも沸騰した湯が行き渡るようにたなを湯沸かしの底から少し持ち上がった所にかけます。
湯沸かしにふたをし,中の物を煮沸します。煮沸に要する時間は食品の種類によって異なりますが,トマトなら10分ほどで十分です。びん詰の作り方は,良い料理の本や,家庭用びん詰器具の製造会社,また米国ならワシントン特別区20025にある米国農務省情報局発行の公報などから得られます。
沸騰した湯からびんを取り出し,タオルまたはたなの上にまっすぐ立てたまま冷まします。びんが冷めるときに,ふたの中央が引っ込んでくぼみができるかどうかよく見てください。そのようになり,しかもびんをそっと取り扱うなら,その食品は数か月間もちます。もしくぼみができないなら,冷蔵庫に入れない限りあまりもたないので,早目に召し上がってください。
フリーザーが節約の助けとなりますか
家庭で行なうびん詰に次いで,冷凍することも食品を保存するために広く用いられている方法です。フリーザーは支出を減らすのに助けとなりますか。
それには幾つかの要素が関係しています。1974年5月号のチェンジング・タイムズ誌に,次の点が指摘されました。
「専用のフリーザーを動かすのに,一年に平均30ドル(約9,000円)から50ドル(約1万5,000円)かかる。それで節約の効果を上げるには,食品貯蔵のできるフリーザーの利点を活用できる特別な物を買うとか,冷凍が可能な食物を栽培するとかして,それ以上のお金を節約しなければならない」。
もしフリーザーに入れる物を全部小売価格で買えば,節約は望めないでしょう。しかし,食物を自家栽培したり,まとめて買ったり,出盛り中の特売を利用すれば節約できるかもしれません。
乾燥による食品貯蔵
世界中の多くの人々は,乾燥させることによって食品を貯蔵します。それはどんな器具をも要しません。ほとんどどんな物でも,清潔で平らな所に置いたり,つるしたりすることができます。多分はえよけに薄い布をかぶせることができるでしょう。空気と太陽が残りの仕事をしてくれます。しかし乾燥させるのに湿度が高過ぎる場合はどうしたらよいでしょうか。米国西部に住むある婦人の経験は興味深いものです。
「わたしは幾らかのいちじくを乾燥させるために網だなに並べましたが,この土地の湿度は84%もあるため,そのうちのあるものは傷んできました。パンを焼き上げたところでしたので,天火にはまだぬくもりがありました。中の空気は十分乾燥していると判断し,いちじくを高温のオーブン中に10分か15分入れました。それから一時間ほど低温にし,最後に電気のスイッチを切って,オーブンが冷えるまでそのままにしておきました。
「ある部分からは汁が出ていたので,それに対して同量の砂糖を入れ,沸騰させて一つ一つのいちじくをそれに浸してから網だなに戻し,もうしばらくの間天火に入れました。水気がなくなってねばねばするようになれば,いちじくを袋に入れ(布製のが望ましい)数か月間空気に当てるためつるしておきます」。
食品を乾燥させるには普通天火さえ必要でありません。ロイ・ダイカスは「組織的菜園作りと農業」という本の中で,次のように書いてその点を指摘しています。「ボール箱を作りかえて,りんご,桃,豆,かぼちゃ,牛肉,しかの干し肉,果物の皮,レーズン,干しすもも,トマトなどの乾燥器にすることができます。急いでいる場合には,種や薬草・香草をも乾燥させることができます」。どうすればそのようなことができるのですか。
その記事の説明によれば,細長く切った食物を箱の両側にかけ渡された何本もの細い棒にぶら下げておき,乾燥に必要な熱は,箱の内側に差し込んだ電球から取ります。簡単ではありませんか。
物価上昇のただ中で,お金を節約することは確かに一つの挑戦となります。もしあなたが便利さを求める代わりに,勤勉に働くなら,支出を減らすことができるでしょう。
[17ページの図版]
多くの主婦は,家庭でびん詰を作ると節約できることを知っている