世界展望
家庭の「崩壊」
◆ ニューヨーク州イサカのコーネル大学で心理学を講ずるユーリー・ブロンフェンブレナー教授は次のように論評している。「家庭は崩壊しつつある……何世代かを含む拡大家族はそのすべての親族と共に,第二次世界大戦以後この国では事実上,消滅してしまった。父母,子供から成る小さな核家族でさえも減少している。今日,片親だけの家庭に生活している子供は,米国の子供全部の6分の1以上を占める。片親はたいてい母親である……そしてほとんどすべての場合,母親は全時間の勤めに出ている」。しかし二親のそろった家庭でも,今では夫婦共働きが多い。その結果についてブロンフェンブレナー教授はこう述べている,「家に帰ってもだれもいないという子供がますます増えている。読む力の低下,無断欠席,落伍,麻薬中毒,小児うつ病その他何であれ,問題の確かな前兆があるとすれば,おそらくそれは家に帰ってもだれもいないという子供から始まる」。
歯がたたなかったコンピューター
◆ 世界的なチェスの名人が,「世界一高性能のコンピューター」と対戦した。このコンピューターには世界で「最も成功を収めたチェスのゲームのプログラム」が組み込まれていた。チェスの名人がこまを動かすたびに,プログラマーがその動きをコンピューターの記憶装置に打鍵すると,コンピューターは直ちに答えを出す。次いで助手はコンピューターの出した答えに合わせて盤の上のこまを動かした。このチェスゲームの結果は“試合にもならなかった”。人間がコンピューターを決定的に負かしたのである。コンピューターの専門家はこう語っている,「機械は……実際にはゲームを少しも理解していない。それはきわめて幼稚であり,プログラム作成の不手際によって長期的な間違いをする」。根本的に違うのは,コンピューターの出す答えが組み込まれた事柄をひとつも出ないのとは違って,人間の頭ははるかに融通のきくものであり,事態に応じて異なった反応を示すという点である。
独り暮らしの増加
◆ 35歳以下で独り暮らしをしている米国人は,1970年以来,倍以上に増えた。国勢調査局の数字によると,この年齢層で独り暮らしの人は1970年に145万であったのが,1976年には339万人になっている。これは同時期における人口増加が20パーセントであるのに比べて133パーセントの増加である。
収入の良いロビー活動家
◆ ロビー活動というのは,議会のロビーに出入りして立法に影響を及ぼすために議員に働きかける活動のことで,米国では特定の法律が犯されない限り正当とみなされる。企業,消費者,組合,そして諸外国などは,ワシントン市にロビー活動をする陳情団を擁しており,ロビー活動家の中には高収入を得ている者もいる。ザ・US・ニューズ・ワシントン・レター紙によると,ロビー活動家の年収は3万㌦から30万㌦(約900万円から9,000万円)に上る。
家庭菜園
◆ 全米菜園協会によると,約20㌦(約6,000円)の資金と毎週数時間を使うだけで,夏の月々の間に300㌦(約9万円)相当の野菜を作ることが可能である。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は,同協会の「推定によると,昨年米国で3,200万世帯が家庭菜園を営み,96億㌦(約2兆8,800億円)相当の野菜を収穫したことになる」と伝えている。
「エステルは嫌い」
◆ ユダヤ教神学校の講師アン・ラピダス・ラーナー女史は,聖書に出てくる王妃エステルに言及して,「エステルは嫌いだ」と述べたといわれる。ニューヨーク・ポスト紙によると,ラーナー女史は,「邪悪なハマンの手から自分の民を救うため王に請願するようエステルに指示したのはおじのモルデカイであり,エステルは単にその指示に従ったにすぎない」という点を指摘した。王妃エステルは,古代のユダヤ人の間で神の意志として認められていた男性の頭の権に関する原則につき従ったとはいえ,確かに勇敢な行動を取ったと言える。聖書のエステル書全体を読めば,啓発を受け,豊かな報いが得られよう。
提案箱に関する記録
◆ ジェネラル・モーターズ社の社員レイモンド・ロバーツは,過去12年間に148件の提案を出し,会社側はそのうちの29件を採用した。その結果,同期間中に,ロバーツは自分のアイデアに対する報酬として10万5,392㌦(約3,162万円)を受け取った。全米提案システム協会の話によると,提案に対する報酬として彼の受け取った金額は,記録に残っている中では最高である。
海底温泉
◆ 最近,13人の科学者から成る一グループは,人間による最初の海底温泉探険を行ない,その中のあるものが生物で満ちているのを発見した。アルビン号と呼ばれるウッズ・ホール潜水艇を使い,ガラパゴス諸島北東300㌔余の地点にある太平洋の断層で,水深2,740㍍までの潜水が数回行なわれた。海底温泉の湧き出ている場所の周囲には,カニ,ムラサキガイ,そして幅25㌢もあるハマグリなどの生物が見られた。研究者たちは,温泉の湧いている場所の付近にたくさんの生物が集まっている原因は主として,海水に含まれている硫化水素にあると考えている。
死海と健康
◆ イスラエルを訪れる観光客は,死海で海水浴をして遊ぶだけでなく,健康のために海水浴をしたり,死海沿岸の温泉につかったりする。1950年代の初頭には,皮膚病の治療に関する研究が同地で行なわれるようになった。そして,デンマークの保険省はすでにかなりの期間,平均200人の乾癬患者に,一年のうち九か月間を死海で過ごさせてきた。「海洋フロンティアー」誌は次のように伝えている。「患者はコペンハーゲンから40人ずつのグループになって飛行機で同地に行き,そこに二か月間滞在して,海水浴や日光浴を行なう。この治療法で,慢性的なこの症状が完治するわけではないが,患者にはなかなか益がある。薬物による治療だけの場合よりも早く発疹が消え,効き目も長続きする」。
ヨーガでもうける
◆ インドの著述家で講演者でもあるビークシュー・チャマン・ラルは,ニューデリーのザ・インディアン・エクスプレス紙に掲載された記事の中で,「ヨーガは今日の物質主義的な世界で最ももうかる商売である」と述べたと言われている。ラルの言うところによると,35年間旅をしてきて,「世界中でヨーガを商売にしている人に出会ったが,その数は100人を下らない。髪を長く垂らし,ひげを生やしたインド人のヨーガ行者やインドのターバンを巻いた黒人のヨーガ行者,それにドイツ人,スイス人,英国人,スウェーデン人,およびノルウェー人のヨーガ行者がおり,ヨーロッパ諸国,米国,メキシコ,ブラジル,チリ,アルゼンチンなど,日本を除くほとんどすべての国で大もうけをしている」。ラルは,「僧院に住んで,ヨーガを売り物にしない,純粋のヨーガ行者」と呼べるような者たちがいることに触れながらも,次のように語っている。「外国人を欺くという重大な嫌疑の掛けられている者やインドの評判を落とす者のパスポートを,インド外務省が取り消すよう希望する」。(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)真のクリスチャンは,聖書に反する習慣としてヨーガを避けるということも,付け加えておけるだろう。「目ざめよ!」誌,1975年6月8日号,26,27ページ参照。
カエルの攻撃
◆ 南アフリカの特定の地域で,戦闘ガエル(学名pyxichepalus adspersus)の危険な種類が殖えている。最近,トランスバール州マイヤートンで,そのようなカエルが庭に出ていた主婦を襲い,助けに駆けつけた息子にも襲いかかった。この婦人の話によると,そのカエルは「サメのような歯」を持っていた。ケープタウン大学のゲイリー・クレイは,「戦闘ガエルはかみ付いたら最後,ブルドッグのように食い付いて離れない。下あごには二本の大きな門歯があり,上あごには後方に曲がった針のように鋭い一並びの歯が並んでいる」と語っている。従来,この種のカエルは,ローデシアとその近隣で見られた。
牛車の改良
◆ インドは輸送機関の分野で著しい進歩を遂げたものの,同国に住む3億人余りの農夫は相変わらず牛車を使っている。インド政府は,長い間使われてきたこの牛車のデザインを改良できるかどうかを調査する委員会を設置した。普通に使われている木製の車輪の代わりに,四本の空気タイヤを備えた牛車がわずかながらすでに出回っている。空気タイヤを使った牛車が普及すれば,毎年数百万㌦に相当する道路破損を軽減できる。また,空気タイヤは牛車の積載量を従来の約700㌔から約2.5㌧に引き上げる。改良された牛車の持ち主は,毎日の収入を1㌦(約300円)から5㌦(約1,500円)前後に増やせるであろう。しかし,その車を引く雄牛について,「的確な国際情勢」誌は次のように論評している。「動物虐待防止団体の支持者たちは,動物に対する虐待や積載オーバーがインドではまだ違反行為とみなされてはいない,と口惜し気に述べている。動物に対するあわれみの声は,あからさまな経済的な配慮によってかき消されてしまっている」。
電話の数
◆ 居住者1,000人に対して電話の数が一番多いのは米国で,657台である。二位はスウェーデンの594台,そして三位は英国で350台となっている。
害虫のまんえん
◆ 今年の殺虫剤の使用量は最高数の41億ポンド(約18億㌔)に達するにもかかわらず,世界中で生産される食糧の半分近くは害虫に食い荒らされている。41億ポンドと言えば,地上の人間一人当たり1ポンド(約450㌘)を上回る量である。最近,米国科学振興協会の年次総会の席上,コーネル大学のデービッド・ピミンテル博士は,過去五年間に殺虫剤の使用量が20%増加したと語った。しかし,ピミンテル博士とカリフォルニア大学のレイ・F・スミス博士によると,害虫は殺虫剤に対する免疫を身に着けてきている上,殺虫剤を使い過ぎた結果,害虫に寄生する生物や,害虫の天敵までいなくなってしまった。スミス博士はこう指摘している。「殺虫剤をもっと上手に使えば,作物の害虫の卵や幼虫の九割は自然の敵によって殺されてしまう。ところが,殺虫剤を使い過ぎているために,我々はその半分の成果をも上げていない」。ニューヨーク・ポスト紙はこう述べている。「ピミンテル,スミス両博士によると,世界で失われている食糧の33%は,収穫前に害虫に食い荒された結果である。さらに別の9%は,収穫後,多くの場合,ネズミに食い荒されて,出荷される前に失われてしまう」。
病原菌はいかが?
◆ 英国国防省は,最近,研究の副産物を市場に出した。様々な形の有毒な微生物を民間のユーザーにバーゲン価格で販売した際,政府機関は,“キロ売りバクテリア”という宣伝文句を使った。医学トリビューン紙は,「そのような宣伝がきっかけとなって,すでに出回っている致死的な産物に加えて,米国陸軍の細菌兵器が出回りでもすれば,新聞がどれほど大騒ぎをするか想像してみるがよい」と述べている。