世界展望
人権を守るアピール
◆ ヨーロッパ会議のある集まりの席上で,ギリシャのエホバの証人の身を案じた多数の代議員たちが一つのアピールを提出した。エホバの証人は,良心的に兵役を忌避するため,同国で繰り返し懲役刑を受けている。懲役期間は大抵の場合,兵役の期間である二年半の数倍の長さになる。そのアピールは,同会議の閣僚委員会に次のような疑問を提起している。「こうした刑罰は,ヨーロッパ人権協議会規約第三条に反するものとみなされるべきではないか。懲役期間が兵役期間に比例していないからである。……これは一般に受け入れられている道徳的公正さの原則,すなわち犯罪と刑罰は釣合いの取れたものでなければならないという原則に反している」。
分かりやすい言葉で書いた契約書
◆ 法律用語や複雑な文章などのために,ローンの合意書やアパートの契約書のような消費者向け契約書を読むのに困難を覚える人は少なくない。この度,ニューヨーク州では,そのような契約をはっきりと,理解しやすく,専門語を用いずに,「普通の,分かりやすい意味の言葉」を使って書くよう求める法案が議会を通過し,昨年から実施されることになった。ニューヨーク・タイムズ紙はこう論評している。「弁護士が分かりにくい言葉遣いを歓迎しているのではないかという疑いも強い。言葉遣いが難しければ,それを理解するために弁護士を雇わねばならなくなる。ある推定によると,訴訟全体の二割までは,契約書の言葉遣いがお粗末だったために起きたものである」。
環境は脳に影響を及ぼす
◆ 八年間かけて行なわれた一連の九つの研究の結果,“豊かな”環境に置かれたネズミは,貧弱な環境に置かれたネズミよりも物理的に脳が大きくなることが分かった。豊かな環境に置かれたネズミは,6匹から12匹くらいまでのグループに分けられて大きなかごの中に入れられ,ネズミの頭脳を刺激するように作られた様々な物を与えられた。他のネズミは,小さくて殺風景な個々のかごに単独で入れられた。試験期間後の注意深い分析の結果,より多くの社会的なやり取り,および頭脳に対する刺激を受けたネズミの脳のほうがより良く成長することが明らかになった。この一連の試験に関係した科学者たちは,ノイロンと呼ばれる脳細胞の中には適度の刺激があって初めて十分に成長するグループがあると考えている。人間の脳の成長も同じような影響を受けると考えられている。
最大の人造ダイヤ
◆ 日本の科学者たちは,20カラットの人造ダイヤを作り出した。これは人造ダイヤとしては世界最大のものである,と彼らは言う。それ以前に作られた最大の人造ダイヤはわずか5カラットにすぎない。大阪大学の科学者たちによれば,彼らは数多くの小さな人造ダイヤに6万気圧の圧力をかけ,2,000度の熱に五分間当ててこのダイヤを作った。このダイヤは色が黒く,工業用で宝石としては使えないが,トンネル用穿孔機の歯などには好適。
放射能の影響
◆ 厚生省の発表によると,「様々な種類の病気にかかる率は,普通の人よりも被爆者のほうがはるかに高い」。日本の二つの都市に原爆が投下されてから30年後に,1万6,912人の生存者を対象に行なわれた調査は,被爆者の59%が何らかの病気をかかえていることを明らかにしている。それに比べて,一般の人の間で病気を持っている人は全体の29%にすぎない。
作物に海水を?
◆ 水さえあれば産出的な土地になるような砂漠は少なくない。しかし,大抵の作物は海水ではなくて真水を要求する。一方,不毛の地となっている海岸地帯では,海水なら無限に手に入るというところが少なくない。ところが,カリフォルニア大学(デービス校)の科学者たちは,塩度が海水の90%という塩水で種々の大麦を育てた。それらの中のあるものは実を結んだ。それら実を結んだ種を100%の海水で育てたところ,最も収穫高の良いものは,真水で育てた大麦の半分近くの収量があった。これからの実験によって,大麦やその他の作物を海水で灌漑しても採算が取れるようになることが望まれている。
水難救助
◆ 水難者が四,五分も水に没していると回復の見込みのない脳障害を起こし,見つかったときに紫色になっていて,息をしていなければ確かに死んでいる,と長い間考えられていた。しかし,こうした仮定に疑いが持たれている。というのは,水が冷たく,救助された後すぐに蘇生手段が講じられた場合,四,五分どころか20分以上水に没していた人でも息を吹き返すことがあるからである。一人の子供は,38分間水に没していた後,救い上げられて息を吹き返した。体が冷水の中に沈むと,“潜水反射”という作用を起こすというのが定説になっている。この反射作用は,動脈から酸素を別の経路で心臓,脳,および胸などに送ることによって,窒息を遅らせる不随意反応である。冷水の中に長い間沈んでいた後に息を吹き返した人の大半は子供だった。子供のほうが大人よりも“潜水反射”が強いためであろう。
屋内の汚染
◆ カリフォルニア大学(バークリー校)の二人の科学者によると,屋内の大気汚染のほうが屋外の大気汚染よりもひどくなっている家庭が多い。ある家では特定の有害な汚染物質の量が標準許容量の二,三倍にも上っていることが同科学者たちの研究によって分かった。ある汚染物質の測定値は,それが普通の日に戸外で測定される量の約一千倍であった。物理学者ジョージ・トレイノーは,「我々が最も心配しているのはガス器具である」と語った。不適当なデザインや不良供給などのため,ガス器具は,一酸化炭素,窒素酸化物,二酸化窒素,および二酸化硫黄などの汚染物質を出すことがある。閉め切った部屋でのたばこの煙も主な汚染物質として挙げられている。
なぞは解けたのか
◆ 1908年,バイカル湖から約800㌔離れた,シベリアのポドカメンナヤツングスカ川の渓谷に巨大な火の玉が落ちた。それは地上近くで大爆発を起こしてばらばらになり爆風を引き起こして,30㌔四方の樹木をマッチ棒の様になぎ倒した。火事による周囲の森林の被害は甚大であった。当初この爆発は,米国アリゾナ州のミーティア・クレーターを作ったのと同じような巨大な鉄の隕石によって引き起こされたものと考えられていた。しかし,クレーターは見つからなかった。数多くの調査団が派遣され,土壌と樹木の検査が行なわれた今日,ソ連の科学者の中には,地面に衝突する前にばらばらになった彗星がこの現象を引き起こしたと考える人がいる。
サハラ砂漠を越すトラック
◆ サハラ砂漠は,ラクダの隊商を除く商業的な陸上運送にとって,長い間通行不能の障壁となっていた。ところが,アルジェリア自動車輸送公社は現在,アルジェ港からサハラ砂漠を横断してナイジェリアのラゴス港まで,五台ないし十台のトラック部隊を毎週走らせている。これは,ラゴス港の膨大な積荷滞貨を緩和するために行なわれている。こうして,地中海はサハラ砂漠を越えて大西洋と南北に結ばれることになった。アルジェからラゴスまでのルートは全長3,520㌔で,横断に予定されている期間は九日間である。この距離の半分以上は,起伏の多い砂漠の小道である。各トラックには運転手のほかに整備士が同乗しており,どの部隊にも,燃料と部品を積んだ修理専用トラックが随行する。
好かれるペット
◆ 家で飼う動物のうち,英国人はどれをペットとして好むだろうか。「フィッチ?」という消費者雑誌は,値段,飼育費,手入れ,寿命,そして飼い主の楽しむ度合などによって,家で飼う動物14種類を評価した。読者の投票の結果,犬が一位になった。二位は馬および小馬,三位は猫だった。主な考慮の対象となったのは,ペットが飼い主の愛情にこたえる度合であった。例えば,最下位になったのはカメで,それはカメが「愛を示さない」からであった。
イガイの“接着剤”
◆ 科学者たちは,イガイがぬれた岩場や杭に付着する際に使う“接着剤”に目を見張っている。イガイの用いる物質は非常に強力であるために,それが付着した物が何であれ文字通りその一部になってしまう。科学者たちはその秘密を解き明かそうとしてこの海の生物を研究している。シー・フロンティアー誌は最近,イガイ“接着剤”の強度と耐久力が,歯を治療する際の充填物質にそれを用いることもできるとして,歯科医の注目を浴びていることを取り上げている。
襲われること83回!
◆ 米国ニュージャージー州パセイックのある住民はこれまでに83回追いはぎに襲われた。市警当局によると,過去五年間にこの人の遭った追いはぎの被害は「いずれも記録に残っている」。ニューヨーク・ポスト紙はこう報じている。「病院に収容されたことは20回余りに上る。刃物で刺され,鉄棒で頭を打たれ,銃で二度そ撃された。耳の一部は切り取られ,鼻はへし折られ,肋骨は内側に折られ,歯はなぐられてなくなり,頭がい骨も割られたことがある……車は4回盗まれた」。56歳のこの男の人は,小柄で,つえをついて歩いている。
ミミズを利用した再生システム
◆ 「岡山の製紙工場から出るヘドロを,ミミズが毎月1,000㌧の割合で消化している」と,日本の英文読売紙は報じている。ヘドロは,「地元の農夫が経営する」ミミズ飼育所に投棄される。これらの農夫は,ミミズの排せつ物によって作られる「肥料を利用できるので,これらのミミズを貸している」。後に,ミミズは,つりのえさとして売られる。米国の一企業が,同様の施設をオレゴン州のユージーンに建造する権利を入手している。
共産主義と妥協する諸教会
◆ 共産主義国で,ある教会は自由に活動し,他の教会の活動が制限されているのはなぜかと不思議に思う人は少なくない。ルーマニア・ブリティン誌の最近号は,その理由を理解する手掛りを与えてくれる。同ブリティンは,「良心の自由はルーマニア憲法によって完全に保障された市民権の一つである」と誇らしげにうたい上げている。同誌は続いて,ルーマニア国内で活動が法的に認められている14の宗教団体の名を列挙していた。その中には,ギリシャ正教会,ローマ・カトリック教会,セブンスデーアドベンティスト派,バブティスト派などが含まれている。これら14の宗派はいずれも社会主義者合同戦線(Socialist Unity Front)に属している」と,同ブリティンは述べている。同戦線は共産主義者の政治組織である。
無血手術
◆ 米国インディアナ大学医学センターの医師たちは,外科手術の際の出血をほとんど皆無にしてしまう,新しい外科用メスを考案した。この“プラズマ・メス”は,超高温アルゴンガスを小さな吹き出し口から噴出させ,切開すると同時に切り口の組織をふさいでしまう。最も難しい手術でさえ,「一滴の血も流さずに」行なえるということである。