世界展望
“両刃の剣”
◆ オハイオ州シンシナチのキリスト病院実験医学部発行の研究室会報の最近号は,「輸血に伴う危険」と題する見出しを掲げている。同会報は次のように述べている。「血液療法は両刃の剣である。現在用いられている薬物療法の中で,血液および血液成分の注入ほど,有害な副作用の危険を伴う療法はまずあるまい。……この危険のゆえに,輸血の副作用と,輸血がもたらしうる益とを比較考量する際には,『善をなせ,あるいは少なくとも害を与えるな』というヒポクラテスの助言を銘記すべきである」。
血液の使用がひき起こすおそれのある7通りの異なった悪い反応を詳しく述べた後,この文書は,「輸血の結果,病状の悪化ではなくて改善」を期待する患者から裁判に訴えられる可能性のあることを警告している。「要するに輸血は危険で,致命的となるおそれさえある療法という事を認識し,患者の受ける益が危険を明らかに上回る場合にのみ用いるべきである」と同会報は述べている。―1979年1月31日号。
宝くじを当てて損をした人
◆ 日本で年末に売り出された宝くじのうち,ある男の人の買った40枚の中に一千万円の当たりくじがあった。英文読売の伝えるところによれば,「ころがり込んだ大金はうわさの種となり,彼の対人関係は緊張して,ある人々は彼と口をきくことさえしなくなった」。宝くじを当てた当人はこれに堪えられなくなり,当たりくじを職場に持って行くと,面くらった同僚の面前でそれを燃やしてしまった。しかし燃やしたのは残りの39枚であって,当たりくじではないと,いまだにねたんで言う人がいる。英文毎日によれば,この男の人は,「この出来事以来,そのショックで正常な生活ができないようである。『宝くじ騒ぎのお陰で外出することもマージャンをすることもできない』と彼はぼやいている」。
超越的黙想のルーツ
◆ ワシントン在住のガリー・L・フォレスト医師は,アメリカン・メディカル・ニューズに寄稿した記事の中で超越的黙想を評して「伝統的なヒンズー教の崇拝」であると断言している。その裏付けとして同医師は,超越的黙想の教師たちとマハリシ(大聖人)との間に交わされた同意書を挙げているが,それによると教師たちは「神聖な伝統に尽くし,必要とするすべての人に神の光をひろめる者として認められている」。また同医師の注目している点として,超越的黙想のカリフォルニア州法人団体の定款第14条に「この組織の目的は宗教的なものである」と記されている。医師が超越的黙想を患者に勧める場合,宗教との結びつきを患者に知らせないならば,「欺きを永続させることになる」と彼は言明している。
消える有名なビヤホール
◆ ヒトラーがナチス革命を宣言したことで有名なミュンヘンのビヤホールは,市の開発によって消えようとしている。ヒトラーが政党を組織し,ナチズムにとって特別な場所となった建物は,新しいショッピング・センター建設のため取りこわされることになった。1923年,ヒトラーが2,000人以上の突撃隊を率いて政府を襲撃した,いわゆるビヤホール・プッチュ(革命)によって,この“ビールケラー”は歴史のページに名を留めていた。
ポーランドの冬はオオカミを飼いならす
◆ ポーランドおよびヨーロッパ各地を25年ぶりに襲った厳冬で音を上げたのは,人間だけではなかったようである。ポーランドの新聞ポリティカとジーチェ・ワルシャーヴィの報ずるところによれば,一度に8頭から10頭ものオオカミが村や農場の人家に現われて食物をねだったという。ある農家の主婦の話では,二頭の飢えたオオカミがドアをひっかいたので,ドアを開けてみると,オオカミはただ座りこんで,「訴えるような目つきで」彼女を見たという。飢えたオオカミから家畜を守るため,村や農場の人々は毎日,交代ですべての家から残飯を集め,オオカミが食べるよう外に出しておいた。ポーランドではオオカミは保護獣となっている。
無駄な熱を利用するデンマーク人
◆ デンマークの海岸の町ブリズリシアでは,肥料工場から出る無駄な熱を家庭暖房に利用することになった。工場から出る無駄な熱をこのように利用するのはこれが最初の試みと言われるが,このシステムにより各家庭で年間に節約できる暖房費は平均して約200㌦(約4万円)に上るものと推定されている。肥料の製造過程で生ずる莫大な量の熱湯は,町の集中暖房システムの燃料である石油の不足を埋め合わせるために利用されるが,これで石油の消費量は半減するという。
火山から噴出されたガスが命を奪う
◆ インドネシア,中ジャワのシニラ山が最近,爆発し,溶岩と共に高濃度の有毒ガスを噴出した。近くのプチュカン村では住民の多くが睡眠中にガスにやられ,逃げ出そうとした人々も溶岩とガスに襲われて,村道には死体が横たわった。そのガスによる死者は,救援隊の中の犠牲者を含め,少なくとも155人に上る。死者を出したこの爆発の直前には七回にわたる地震と一回の地下爆発があった。
くずれ去ったほうれん草の神話
◆ ほうれん草の嫌いな子供は多いが,ほうれん草の鉄分含有量について明らかにされた新事実は,母親がそれを真剣に受けとめるならば,一部の子供たちをあんどさせるものとなろう。フライブルク大学のG・W・ロール教授は,ドイツのウィースバーデンにおける最近の医学会議で,ほうれん草が多量のミネラルを含むとされているのは全くの誤りであると語った。同教授によると,古い食品分析表は,小数点の位置を間違えた誤植のために鉄分の含有量を10倍も多く記載している。この間違いはその後の教科書にも引き継がれ,食品分析表の定期的な改訂が科学者によって行なわれるまで発見されなかった。またほうれん草の鉄分は,いずれにしても体内に容易に吸収される形で含まれているのではないと,同教授は言明している。
増える交通事故死
◆ 数年前に米国で時速55マイル(約88㌔)の制限が課された時,交通事故による死者は大きく減少した。ところが今,運輸省の報告によると,1978年に米国内で交通事故死した人の数は5年ぶりに5万人を超えた。これは前年に比べ,5パーセント近い増加にあたる。速度制限は今でも実施されているが,それを無視する人が多い。
外見は重要
◆ 米国の最高裁判所は,最近,スーパーマーケット・チェーンには,“あごひげ禁止”の規則を,ある従業員に課す権利があると述べた地方裁判所の決定を支持した。裁判に持ち込んだのはひげそりを拒否して解雇された一人の男の人だった。その人は,黒人の男子に共通した皮膚病があり,短くした毛が皮膚の方へちぢれると,刺激を受けたりばい菌が入ったりすることになると申し立てていた。地方裁判所は,「それが従業員に多少の圧力となるにしても,この食料品チェーンはこの規則を設けるに足る業務上の目的を有する」という判決を下したことがアメリカン・メディカル・ニューズ誌に報じられている。
カリフォルニア州議会は,男子は会議場で背広の上着やネクタイの着用を含め,「ふさわしい服装」をしなければならないという決定を下した。この議事を提出した議員は,「外見は重要であり」,人々はある程度の威厳を期待していると述べている。宇宙の最高の立法者エホバ神を代表すると称する人々にとっても,これは確かに真実である。
英国の商業を芽ばえさせる
◆ 大ブリテン島における宗教の衰退に伴い,教会の骨とう品の売買が盛んになりつつある。1979年には,なんと790の教会の建物が売却され,教会の家具や備品も,古物愛好家のお目当ての品となりそうな気配である。大英博物館では,貴重な歴史的遺物が,外国人の収集家の手に渡ってしまう可能性を憂慮していると言われている。多くの品物は安売りされることになる。
動脈の若さを保つ
◆ 医学研究者たちは,南アフリカのツワナ族のある村で,老齢の黒人たちの動脈が白人の若者のそれと同じように若々しいことを発見した。だが,多くの工業国では,若者の動脈はすでに老化している。その医師たちは,ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル誌に寄稿した報告の中で,老齢のツワナの人々には,冠状動脈の障害も見られないと記している。彼らはこう説明している。「南アフリカで農業を営む黒人たちは,繊維が多く,動物性蛋白質や脂肪の少ない食事で生活している。子供たちは活発で,年取った人々も元気が衰えることはない」。たばこを吸う人はほとんどなく,食事の大部分を占めるのは,穀類,野菜,野生の青物であって,肉と牛乳は全くといっていいほど取り入れていない。
母親の飲酒は危険
◆ アルコール飲料の販売を監督している米国財務省は,妊婦が過度の飲酒にふけると,生まれてくる子供たちに深刻な問題が生じうることを警告している。それらの子供たちは,“胎児アルコール症候群”として知られる障害を持って生まれてくる。その病気には知恵遅れと目や顔の他の器官の奇形が伴う。目下のところ,この病気に対する治療法は見つかっていない。少量のアルコールでも,妊娠した婦人が飲むと有害な働きがあるという考えには異論を唱える向きもあるが,妊婦の飲酒量が増えれば増えるほど,その子供たちに及ぶ危険はますます高まるということは,異論を差しはさむ余地のない事実である。
『野火のように広がる』
◆ メディカル・トリビューン誌の伝えるところによれば,性病の一種である非淋疾性尿道炎(NGU)が,「野火のように広がっている」。この疾患の原因は,「一部はバクテリア,一部はビールス」の特色を持つ微生物であると,マサチューセッツ伝染病部門の部長,ニコラス・J・フィウマラ氏は語っている。NGUは女性の骨盤の組織に炎症を引き起こすことがあり,それが不妊症や,この病気を持った婦人たちから生まれる赤ん坊の目の疾患と肺炎につながってゆく。男子の場合,NGUの症状は淋病に似たもので,英国では,NGUにかかる男子の数は,淋病にかかった男女の総数を上回っている。今年,淋病患者が男女を含め約100万人を数えるものと予測されている米国の場合,多くの性病科医院において,NGU患者の数は淋病患者を追い越しつつある。
採血なしの血液測定
◆ 西ドイツのマックス・プランク協会は患者から血を抜き取ることなく,血液中の糖分,脂肪分,アルコール分,尿酸の量を測る装置を開発した。この測定はレーザー光線を用いて行なわれる。この方法によれば,現在使われている方法よりもより正確に,血液中にあるこれらの物質の濃度を測定することができ,血液を失うことも,不快な副作用を生じさせることもないと言われている。また米国オハイオ州のクリーブランドでは,デンマークで最初に開発され,見本の血液を取ることなく,患者の血液中の酸素量を見定める装置が,ある会社によって作られている。それは皮膚に取り付けられた電極によって酸素量を測るもので,特に早産児の測定に向いていると言われている。