天と地の創造者の家をなおざりにする
1 この「家」はどんな実在とつながりを持っていますか。
この「家」は,あらゆる存在のうちの最大の実在とつながりを持っています。それは何ですか。人間に見える物も見えないものも,すべてのものを造られた偉大な創造者です。電波は言うに及ばず,望遠鏡や顕微鏡によって人間の視界に移された宇宙さえきわめて広大であり,わたしたちはその創造者を無視してはなりません。
2 (イ)最近発見された「クエイサー」と星とを比べなさい。(ロ)天文学者によれば,宇宙が拡大していることから,クエイサーの光が地球に達したことについて何が言えますか。
2 大きさについて言うなら,「クエイサー」をご存じですか。最近,天文学者は疑似星電波源(クアシステラー・レイディオ・ソーシス)と呼ばれるものを発見しました。この名前を短かくしたのがクエイサーです。これは天文学上の物体であり,光と電波のかたちでぼう大なエネルギーを放出しています。クエイサーは星のようにも見えますが,「明らかに数百万倍大きく,数十億倍明るく,律動するものもある」のです。クエイサーは40ほど知られていますが,そのうち一番遠いものの発見が発表されたのは1965年5月17日です。それは3C-9a と名付けられました。この天体は非常に遠く,宇宙時間の始まりに近いのではないかと言われています。「その光は非常に遠く,想定されている宇宙の誕生後間もなく発せられた光がようやく地球に達している」。その光が数十億年をかけて地球に到達する間に,こうしたクエイサーの本体は恐らく消滅したでしょう。このように報ぜられました。「宇宙の拡大する比率は観測されており,それに従って言えば,宇宙はおよそ130億年前に一点として始まったらしい。これは地球の年齢の約3倍である」。―1965年5月18日付ニューヨーク・タイムズ1,2頁
3,4 (イ)このことから,神が地上の家に住むことについて,どんなことが言えますか。(ロ)キリスト教国は神がご自身を小さくされたとして,どんなことを教えますか。しかし,パウロは異教アテネの人々に何と語りましたか。
3 この発見からどんな結論を出すべきですか。こうです,このような途方もなく大きいものの創造者である神は地上の家にはいるにはあまりにも大きすぎるということです。小さな地球上の人工の家にこのような神が住まうなどということはばかげた話に聞こえます。20世紀の科学者にとっては正にそうです。そのような神がどうしてそれほど小さくなれますか。ところがキリスト教国の牧師は,神は自らを小さくし,ユダヤ人の処女マリヤの子宮内の卵子にはいったと唱えます。聖書そのものはそのようなことを教えていません。聖書が教えているのは,創造者である神がご自身のひとり子の命を天からこのユダヤ人の処女の胎内に移し,人間イエスにならせたということです。この者がのちにキリストと呼ばれるようになりました。天使ガブリエルがユダヤ人の処女マリヤに告げたところにしたがえば,マリヤの長子は神ご自身ではなく,神のみ子でした。マリヤは神の女ではなく,神の子の母でした。(ルカ 1:26-33をごらん下さい)しかし創造者である神ご自身については,クリスチャン使徒パウロが異教のギリシャ人に語った次の言葉があります。
4 「アテネの人たちよ,あなたがたは,あらゆる点において,すこぶる宗教心に富んでおられると,わたしは見ている……この世界と,その中にある万物とを造った神は,天地の主であるのだから,手で造った宮などにはお住みにならない。また,何か不足でもしておるかのように,人の手によって仕えられる必要もない。神は,すべての人々に命と息と万物とを与え,また,ひとりの人から,あらゆる民族を造り出して,地の全面に住まわせ…このように,われわれは神の子孫なのであるから,神たる者を,人間の技巧や空想で金や銀や石などに彫り付けたものと同じと,見なすべきではない」。―使行 17:22-29。
5 (イ)神は宮の偶像と同じ仕方で建物の中に住まわれるのですか。(ロ)ソロモンの宮の場合のように,崇拝の行なわれる建物について神はどんなことができますか。
5 それゆえ聖書が教える神は,この世界の偶像崇拝的な宗教の寺院,パゴダ,ワットなどにある金,銀,石などの像と異なり,地上の物質の建物には住まれません。しかし天と地のまことの神は,ご自分の指示に従って建てられた幕屋や宮を聖別することができます。神はまたこうして聖別ないしは清めた建物にご自分の名前を置くことができます。そのような宮は「神の家」と呼んでもよいでしょう。神ご自身が実際に住む所というのではなく,神の清い崇拝が行なわれる家という意味です。紀元前1027年にソロモン王がエルサレムに完成した宮について,ちょうどこのことが言えました。ソロモン王の祈りに答えて神はこう言われました。「あなたが,わたしの前に願った祈と願いとを聞いた。わたしはあなたが建てたこの〔家〕を聖別して,わたしの名を永久にそこに置く。わたしの目と,わたしの心は常にそこにあるであろう」。―列王上 9:3,〔新世〕。
6 自分が建てた宮についてソロモンは神に何を祈りましたか。
6 エルサレムのモリヤ山上に建てられたこの壮大な宗教建築物を献堂した時,宮の建設者ソロモン王は,天と地の偉大な創造者が文字通りその宮に住むとは考えていないことを明白に述べました。献堂の祈りの中でソロモン王はこう言いました。「しかし神は,はたして地上に住まわれるでしょうか。見よ,天も,いと高き天もあなたをいれることはできません。ましてわたしの建てたこの〔家〕はなおさらです。しかしわが神,〔エホバ〕よ,しもべの祈と願いを顧みて,しもべがきょう,あなたの前にささげる叫びと祈をお聞きください。あなたが『わたしの名をそこに置く』と言われた所,すなわち,この〔家〕に向かって夜昼あなたの目をお開きください。しもべがこの所に向かって祈る祈をお聞きください」。―列王上 8:27-29,〔新世〕。
7,8 (イ)ソロモンの宮における神の臨在はどのように表わされましたか。(ロ)これは十戒および神の偉大さとどのように一致していますか。
7 ソロモン王は道理をわきまえていました。神の家については,聖書と同じくわたしたちも理性的に考えねばなりません。ソロモン王の建てた宮に神をあらわす像は置かれませんでした。この宮におけるエホバ神の臨在はシエキナの光と呼ばれるものによって象徴されました。これは宮の最奥の部屋,至聖所を奇跡的に照らした光です。この奇跡的な光を見る特権を得たのは,神聖な契約の箱の前であがないの犠牲の血をふり注ぐため,毎年のあがないの日にこの部屋にはいった大祭司です。―レビ 16:11-17。
8 これを別にして,エホバの宮にエホバをあらわす像や象徴物はありませんでした。事実,エホバが与えた十戒の第1条と第2条は,手で造った像ないしは彫像を作り,それを偶像化することを絶対に禁じていました。(出エジプト 20:1-6)これは,生きたまことの神がご自分の創造物の直接の崇拝を求められること,また人工の宮が神をいれるには小さすぎることと一致しています。
9 宮に関して神はソロモンにどんな警告を与えましたか。
9 エルサレムにおける最初の宮が献納されたのち,神は建設者ソロモン王と後継者の王たちとに警告して言われました。「あなたがた,またはあなたがたの子孫がそむいてわたしに従わず,わたしがあなたがたの前に置いた戒めと定めとを守らず,他の神々に行って,それに仕え,それを拝むならば,わたしはイスラエルを,わたしが与えた地のおもてから断つであろう。またわたしの名のために聖別した〔家〕をわたしの前から投げすてるであろう。そしてイスラエルはもろもろの民のうちにことわざとなり,笑い草となるであろう。かつ,この〔家〕は荒塚となり,そのかたわらを過ぎる者は皆驚き,うそぶいて『なにゆえ,〔エホバ〕はこの地と,この〔家〕とにこのようにされたのか』と言うであろう」。―列王上 9:6-8,〔新世〕。
10,11 (イ)神のこの警告が単なるおどしでなかったことはどんなことに示されましたか。(ロ)この史実を軽く見てよいですか。この点についてパウロはなにを語っていますか。
10 ここで警告されたことがソロモン王の建てた宮に実際に起こりました。それは二,三の例外を除き,イスラエルの歴代の王がエホバの家ないしは宮を汚し,また冒とくしたからです。紀元前607年の夏,宮はネブカデネザル王の率いるバビロニア軍により荒廃させられました。イスラエルが神の家を大切にしていたなら,これは起こらなかったでしょう。イスラエル人はエホバ神の名前の置かれた家を尊敬せず,神の警告の単なるおどしでないことが明らかになりました。紀元前607年から537年までの70年間,宮は荒廃に眠り,故国を追われたイスラエル人は遠くバビロニアの地で捕われとなっていたのです。今日のわたしたちは,自分たちに無関係なこととして,この史実を軽く見てよいですか。いいえ,軽く見てはなりません。イスラエル人の歴史の注釈者でもあったクリスチャン使徒パウロがこう警告しているからです。
11 「これらの出来事は,わたしたちに対する警告であって,彼らが悪をむさぼったように,わたしたちも悪をむさぼることのないためなのである。だから,彼らの中のある者たちのように,偶像礼拝者になってはならない。……また,ある者たちがしたように,わたしたちは不品行をしてはならない。ある者たちがしたように,わたしたちは〔エホバ〕を試みてはならない。……また,ある者たちがつぶやいたように,つぶやいてはならない。つぶやいた者は,『死の使』に滅ぼされた。これらの事が彼らに起ったのは,他に対する警告としてであって,それが書かれたのは,〔事物の制度〕の終りに臨んでいるわたしたちに対する訓戒のためである。だから,立っていると思う者は,倒れないように気をつけるがよい」。―コリント前 10:6-12,〔新世〕。
再建された家をなおざりにする
12 わたしたちはイスラエルのどの世代にならうことを望みませんか。ユダヤの総督ネヘミヤを模範とするのはなぜですか。
12 歴史,とくに聖書の歴史の教訓に心をとめないかぎり,新しい世代は以前の世代の誤ちを繰返しがちです。そして新しい世代は神の家に対する悪行を重ねて,昔の人と同じような苦汁をなめねばなりません。現代のわたしたちは,紀元前5世紀にユダヤ地方の総督であったネヘミヤにならうべきです。神の選ばれた民のなかで神の家が見捨てられ,なおざりにされないように,ネヘミヤは果断な処置を講じました。これは紀元前7世紀に破壊されたソロモンの宮ではなく,敬けんなユダヤ人の残れる者がバビロンからエルサレムに帰ったのち,紀元前6世紀に再建した宮です。強大なバビロンがメデア人とペルシャ人の手に落ちた紀元前539年,ユダヤ地方はクロス大王の治めるペルシャの属州となりました。紀元前455年,ペルシャのアルタシャスタ王はネヘミヤを任じてユダヤ地方とエルサレムの総督としました。ネヘミヤはそれまでのユダヤ人の歴史を忘れませんでした。復帰した自分の時代のユダヤ人が先祖の誤ちを繰返して,災を受けることを望まなかったのです。この目的のためにネヘミヤは総督の権限を使いました。
13 西暦70年に神の宮はどうなりましたか。これがネヘミヤの責任であったかどうかは何が示していますか。
13 この再建されたエルサレムの宮がチツス将軍配下のローマ軍団によって西暦70年に破壊されたのは,ネヘミヤの失態によるのではありません。その時に破壊されたエホバの宮は今日まで再建されておらず,宮の跡に今日建っているのは,マホメット教すなわち回教のアラーに献じられた,岩の丸屋根と呼ばれる別の建物です。こうした事態の原因をたどると,そこには再建されたエホバの宮の誤用ないしは悪用があります。ネヘミヤが心を用いたのは当然です。彼は問題を過大視したのではありません。わたしたちはネヘミヤがどんな処置を取ったかを知るべきです。
14 はじめにネヘミヤは何の建設工事を監督しましたか。祭りを祝ったイスラエル人は,チスリの24日以後,どのようにふるまいましたか。
14 ネヘミヤはまず,エルサレムの防壁を再建するため,元の土地に帰っていたユダヤ人を募り,これを52日で完成させました。ついで宮のこととユダの人々の霊的な状態とに心を向けました。(ネヘミヤ 6:15–7:5; 8:1-9)エルサレムの城壁が完成した次の月,すなわち月暦チスリの24日に,エルサレムで仮庵の祭りを終えたばかりの人々は,いっそう真剣な気持ちで集まって「断食し,荒布をまとい,土をかぶ」りました。―ネヘミヤ 9:1。
15,16 (イ)この時なにが読まれましたか。人々は何を言いあらわしましたか。(ロ)この時ささげられた祈りは,奴隷となっていることと,「堅い契約」とについてなにを述べましたか。
15 この時までに,ネヘミヤ記とマラキ書を除き霊感によるヘブル語聖書はすべて(全39冊)書き上げられていました。しかし,この厳しゅくな時に読まれたのは「律法の書」(モーセの五書)だけです。昼間の4分1の(3時間)をかけてこれが読み上げられたのち,人々は自分と先祖たちの罪を言い表わし,ひれ伏して神エホバを拝みました。ついで,奉仕の職についていたレビ人が台の上に立ち,民全体のために祈りをささげました。ネヘミヤ記 9章36節から38節に記録されるとおり,祈りは次の言葉で結ばれました。
16 「われわれは今日奴隷です。あなたがわれわれの先祖に与えて,その実とその良き物とを食べさせようとされた地で,われわれは奴隷となっているのです。そしてこの地はわれわれの罪のゆえに,あなたがわれわれの上に立てられた王たちのために多くの産物を出しています。かつ彼らはわれわれの身をも,われわれの家畜をも意のままに左右することができるので,われわれは大いなる苦難のうちにあるのです。……このもろもろの事のためにわれわれは堅い契約を結んで,これを記録し,われわれのつかさたち,レビびとたち祭司たちはこれに印を押し〔ます〕」。〔新世〕
17 申し合わせの記録に印を押した者の中にはだれがいましたか。人々は印を押した者たちをどのように助けましたか。
17 ネヘミヤ自身も民のつかさ,すなわちかしらの一人であり,この堅い申し合わせを記録したものに印を押して誓いを立てました。民の残りはすべて荒布をまとい,土をかぶってつかさ,祭司,レビ人の代表たちを助け,この堅い申し合わせにかかわる誓いとのろいに加わりました。すべての者は神の律法と要求に従うことを決意していました。―ネヘミヤ 10:1-29。
18 結婚,安息日,神の家を財政的にささえること,祭壇で使うたきぎなどについて,人々はどんなことを決意しましたか。
18 こうして人々は,自分の土地とその周囲に住む異教徒との婚姻を一切避けねばならないことをあらためて認めました。また,毎週の安息日のほか,イスラエル人の兄弟の負債をすべて取消す7年目ごとの安息年をもかたく守ることに決めました。そしてエルサレムに再建されて61年になる「わたしたちの神の家」については,宮で行なわれる礼拝の費用として一人が年に3分の1シケル(約70円分の銀)ずつ納める事を自ら定めました。また,日毎に数多くの犠牲がささげられた祭壇でたくたきぎも沢山備えられねばなりませんでしたが,時を定めて必要な量を準備する仕事も分担されることになりました。
19,20 (イ)神の律法に従い,什一のほかにどんなものがささげられることになりましたか。(ロ)こうした物質面の援助が与えられたのは,どんな職務に対する報酬としてですか。
19 この他,神の律法によりイスラエル人に定められた初なりのささげ物がありました。すなわち田畑と果物畑の初なり,羊や牛など家畜の初なり,そして人間の腹の初なりである長子がささげられることになっていました。
20 「わたしたちの神の家」でいつも奉仕した祭司とその下で働いたレビ人を養うため,毎年の収穫の10分の1,すなわち什一がささげられましたが,これらはこの什一のほかにささげられたものでした。宮で奉仕したレビ人でさえ,自分の什一すなわち自分が受け取った物の10分の1をささげることになっており,それは祭司に与えられました。こうして宮のレビ人も什一の取りきめにはいり,神の家を維持するために自分なりの寄付をしたののです。(民数 18:26-32)宮には「聖所の器物」を置くところがあり,この他にその器物を使う祭司,また門衛,歌うたう者などがいました。これらの者のすべては霊的な職務に対する報酬として物質面の扶助を必要としていました。
21 これらのものの納付を怠ることは,何をするのと同じでしたか。イスラエル人はなぜ今,そうしたなおざりの罪を犯そうとはしませんでしたか。
21 宮の奉仕者をささえ,また宮の働きを保つために必要なこれらの物の納付を怠るなら,エホバ神の宮,すなわちエホバ神の家をなおざりにすることになったでしょう。そしてとくに今,「堅い契約」を結んで記録に残し,それに伴う神からののろいにも誓いを立てていましたから,イスラエル人はそうしたなおざりの罰を繰返えすべきではありませんでした。ユダヤの総督ネヘミヤは,「(あなたがたではなく)わたしたちの神の家をなおざりにしない」と述べて,この務を自分にも課しました。―ネヘミヤ 10:30-39,新世。
覚えかつ守るべきもの
22 ネヘミヤがエルサレムを再び訪れたことはどんな関心のあらわれでしたか。ネヘミヤがユダヤ人に見たのは堕落した肉のどんな傾向でしたか。
22 国民全体がエホバ神に献身し,エホバ神を崇拝する者であることを自任していたユダヤ人に対する,ネヘミヤのいかにも力強いこの言葉は,覚え,かつ守るべき言葉ではありませんか。また堕落した肉の人間の心には,物質主義に属し,霊的な事柄を無視する傾向がひそんでおり,これは神の家をなおざりにすることとなってあらわれます。総督ネヘミヤはそれを見のがしませんでした。総督として12年間働いたのち,ネヘミヤはペルシャ王の王宮に帰りました。それは「(征服した)バビロンの王アルタシャスタの三十二年」でした。(ネヘミヤ 13:6)どれだけの期間であったかは明らかにされていませんが,しばらくエルサレムを離れたネヘミヤは,ペルシャ王の許しを得て再びユダとエルサレムに帰りました。ネヘミヤ自らは神の家への関心を失っていませんでしたが,悲しいことにユダの人々は関心を失っていたのです。
23 大祭司エリアシブは宮にだれを入れていましたか。これについてネヘミヤは何をしましたか。
23 大祭司エリアシブは,エルサレムの城壁再建に反対したアンモン人のトビヤを宮の中に入れていました。エリアシブはまたトビヤと縁組みしており,宮の中庭にあった食堂の一つをトビヤの私用にあてていました。それは以前,宮で働く人々の扶養に必要な物を貯えるために使われた所でした。これは申命記 23章3-6節の神の戒めに逆らうことでした。宮の大祭司が許したことは民によっても見過ごされました。しかしネヘミヤはこれを許しませんでした! ネヘミヤはこう語ります。「わたしは非常に怒り,トビヤの家の器物をことごとくそのへやから投げ出し,命じて,すべてのへやを清めさせ,そして神の〔家〕の器物および素祭,乳香などを再びそこに携え入れた」。―ネヘミヤ 13:4-9,〔新世〕。
24 大祭司エリアシブは宮のレビ人についてどんなことを怠っていましたか。どんな事態が起きていましか。
24 大祭司エリアシブは好ましくない敵アンモン人を宮の部屋に入れていただけでなく,神の定めに従って宮で職務につくべきレビ人を守るためになんの処置も取っていませんでした。エリアシブはイスラエルの納めるべき10分の1の寄付すなわち什一が滞るのを許していました。そのため奉仕の仕事をするレビ人は必要な物質面の扶助を受けていませんでした。レビ人の中にはやむなく宮の仕事を離れてレビ人の町に帰り,自分と自分の家族の食物を得るため,近くの畑を耕さねばならないと考える者も多くいました。それでネヘミヤは何をしましたか。
25 これについてネヘミヤは何をしたと報告していますか。
25 ネヘミヤはこう報告しています。「わたしはまたレビびとがその受くべき分を与えられていなかったことを知った。これがためにその務をなすレビびとおよび歌うたう者たちは,おのおの自分の畑に逃げ帰った。それでわたしはつかさたちを責めて言った,『なぜ神の〔家〕を捨てさせたのか』。そしてレビびとを招き集めて,その持ち場に復帰させた」。ネヘミヤは直ちにつかさたちを動かし,ユダの住民すべてが宮の倉に各自の什一を携えて来るように手配しました。―ネヘミヤ 13:10-12。民数 35:1-8,〔新世〕。
26 これに関連して,宮の奉仕者のためにネヘミヤはどんな任命をしましたか
26 ネヘミヤは放らつな大祭司エリアシブをあてにしませんでした。彼はこう述べています。「わたしは祭司シレミヤ,学者ザドクおよびレビびとペダヤを倉のつかさとし,またマッタニヤの子サックルの子ハナンをその助手として倉をつかさどらせた。彼らは忠実な者と思われたからである。彼らの任務は兄弟たちに分配する事であった」。(ネヘミヤ 13:13)それゆえ,レビ人の奉仕者が家に帰る必要はもうありません!
27,28 (イ)どんな行ないをよりどころとして,ネヘミヤは神に覚えられることを祈りましたか。(ロ)ネヘミヤが大祭司の孫に果断な処置を取ったのはなぜですか。どんな処置が取られましたか。
27 そのうちネヘミヤは,自分を覚えて下さいとエホバ神に祈っています。このような願いのよりどころとして,ネヘミヤはどんなことをあげましたか。ペルシャ王の酒人としての地位を離れてはるばるエルサレムにまで旅をし,敵の威かくを恐れずに52日間でエルサレムの城壁を建て直した事ですか。そうではありません! ネヘミヤは自分が神の家のために何をしたかについて語りました。彼の祈りはこうです。「わが神よ,この事のためにわたしを覚えてください。わが神の〔家〕とその勤めのためにわたしが行った良きわざをぬぐい去らないでください」。ネヘミヤは清いしもべが神の家で働くことを重視しました。大祭司エリアシブはそうではありませみん。エリアシブは異教徒と婚姻を結び,孫の一人を敵のサマリア人,ホロニびとサンバラテの娘と結婚させていました。このことについてネヘミヤはこう語ります。
28 「大祭司エリアシブの子ヨイアダのひとりの子はホロニびとサンバラテの婿であったので,わたしは彼をわたしのところから追い出した」。―ネヘミヤ 13:14,28,〔新世〕。
29 結びの言葉によると,祭司の職と宮の奉仕者の契約が汚されていたことについて,ネヘミヤは何をしましたか。
29 神の家のためにとられたこの処置について報告したネヘミヤは,自分の名前のついた本の結びのところで,さらにこう続けています。「わが神よ,彼らのことを覚えてください。彼らは祭司の職を汚し,また祭司およびレビびとの契約を汚しました。このように,わたしは彼らを清めて,異邦のものをことごとく捨てさせ,祭司およびレビびとの務を定めて,おのおのそのわざにつかせた。また定められた時に,たきぎの供え物をささげさせ,また初物をささげさせた。わが神よ,わたしを覚え,わたしをお恵みください」。―ネヘミヤ 13:29-31。
なおざりにしなかったことを覚えられる
30,31 (イ)神はネヘミヤの祈りを聞かれますか。ヘブル書 6章10節のどんな原則がこれにあてはまりますか。(ロ)エホバを恐れる者について預言者マラキはどんな適切な言葉を書きましたか
30 エホバ神はこの24世紀前のネヘミヤの祈りに答えられますか。答えられます。それはネヘミヤの永遠の幸福のためです。エホバ神は不正な方ではなく,総督ネヘミヤがエルサレムの神の家にした善行を忘れません。かならずこれに報いられます。エホバはネヘミヤの祈りを霊感による聖書の一部とし,永遠の記録としてとどめられました。真の「神の家」のためにさらに偉大な奉仕をしたのはイエス・キリストです。このイエスに従うヘブル人に対して次の言葉が宛てられました。「神は不義なかたではないから,あなたがたの働きや,あなたがたがかつて聖徒に仕え,今もなお仕えて,御名のために示してくれた愛を,お忘れになることはない」。(ヘブル 6:10)ネヘミヤについても同じです。ネヘミヤは心からエホバ神を恐れました。そして,再建されたエルサレムの町にあって,ネヘミヤと時代を同じくしたと思われるマラキの書いた物の中に,わたしたちは次の適切な言葉を見るのです。
31 「その時,〔エホバ〕を恐れる者は互に語った。〔エホバ〕は耳を傾けてこれを聞かれた。そして〔エホバ〕を恐れる者,およびその名を心に留めている者のために,主の前に一つの覚え書きがしるされた」。―マラキ 3:16,〔新世〕。
32 (イ)ネヘミヤはどのように報われますか。その時どんな事を学びますか。(ロ)ネエミヤはどんなことのすぐれた実例となりますか。
32 今ネヘミヤはシェオールないしはヘーデース,すなわち死人一般の墓で死の眠りについています。しかし,「メシヤなるひとりの君」の一千年の統治期間に,ネヘミヤは死からのよみがえりをもって報いられるでしょう。(ダニエル 9:24-27)その時ネヘミヤは,エルサレムのモリヤ山にエホバ神の物質の宮がもはやないのを知るでしょう。そして,エルサレムにあったユダヤ人の最後の宮が西暦70年にどうなったかを学ぶでしょう。それは神の子イエス・キリストの予告の通りになりました。(マタイ 23:37–24:2。ルカ 19:36-44; 21:5,6)ネヘミヤはエルサレムのモリヤ山上にあった物質の宮が予影したもの,すなわち神の霊的な宮について学びます。また,この霊的な宮の偉大な大祭司に従う人々によって,この宮のつとめが守られていることを知るでしょう。ネヘミヤ自身も地上に住む他の忠実な人々に加わって,高められたこの霊の宮によりエホバ神を崇拝する者となるでしょう。そしてネヘミヤは,神の家をなおざりにしない者が必ず,そして豊かに報いられることのすぐれた実例となるでしょう。
[脚注]
a 3C-9の記号は,ケンブリッジ大学電波源便覧,第3の9番を意味します。
[105ページの図版]
物質的な物をたずさえて宮の奉仕者を助ける