結婚関係に忠節であるゆえに神はあわれみを示される
『われ……〔義と公平と愛のこもった親切[忠節な愛]〕とあわれみとをもてなんじをめとり かわることなき真実をもて汝をめとるべし 汝エホバを知らん』― ホセア 2:19,20,〔新〕。
1 この20世紀においては,姦淫の罪を犯した妻に対する夫の処置についてどんな疑問が起きますか。
姦淫の罪を犯した不貞な妻が,法律上の夫のあわれみを期待できる理由はありません。配偶者以外の恋人たちがいつも養ってくれることを当てにして安心感を得る確実な理由もありません。長期間性的満足を得たあとは,情熱的な恋人たちでさえそのようなみだらな姦婦にいや気がさし,他の肉欲を求めるかもしれません。そうなった場合,彼女はどこへ行くことができますか。結婚契約に忠節であるなら,法律上の夫のもとに戻る気になるはずです。しかし,夫は姦淫を行なった妻を,あわれみをもって受け入れてくれるでしょうか。この20世紀のあわれみの薄れた世の中で,そのようなことがどれほどあるでしょうか。
2 だれの思いと行動が人間のそれよりも優れていますか。それでその方はご自分の契約の民のために西暦前537年に何を行ないましたか。
2 しかしながら,人間に対して次のように言っているかたがいます。『わが思いはなんじらの思いとことなり わが道はなんじらのみちと異なれり 天の地よりたかきがごとく わが道はなんじらの道よりも高く わが思いはなんじらの思いよりもたかし』。そのような卓越した思いと行動のかたとはだれのことでしょうか。それはわたしたち人間の上の高い天にいますかたです。このかた,すなわち前述のことを語ったかたは,ご自分がエホバであることを明らかにしておられます。ご自分の古代の預言者,アモツの子イザヤを通してそれを明らかにされました。(イザヤ 55:8,9; 1:1)流刑の身である契約の民を,異教の地バビロンから中東にあるご自分の与えた地に帰還させることを予告する際に,神はこれらのことを語られました。人間のすべての思いや推論に反し,このあわれみの神は,西暦前537年に,その帰還を実現させられました。
3 この帰還は,どんな問題を扱うことに関連して生じましたか。アラビアのシナイ山はこのこととどのように関係していましたか。
3 流刑の身であった民はこうして,彼らの故郷が無人の地と化して70年を経たのちそこへ戻りましたが,そのことはエホバがかかえておられた結婚上の問題を扱うことと関連して生じました。1,000年ほど昔に,エホバはその流刑の身の民,すなわち古代のイスラエル国民と結婚しておられました。その結婚が行なわれた場所は,アラビア半島の西端の低いところにあるシナイ山の近辺でした。結婚当事者の間に立って司式したのは預言者モーセで,彼は神と人々の間の仲介者の役を務めました。結婚関係を支配する基本的な規則として神は十戒を発表されました。その最初の戒めはこれです。『我は汝の神エホバ汝をエジプトの地その奴隷たる家より導きいだせし者なり 汝我が面の前に我のほか何物をも神とすべからず』― 出エジプト 20:1-3。
4 それら解放されたイスラエルの12部族は実際にはだれのものでしたか。彼らはどんな関係を,どのように,結ぶことを選びましたか。
4 エホバはイスラエルの12部族を,古代エジプトにおける不当な抑圧と抑留から解放することにより,この「妻」なる国民をご自分のために実際に買い戻されました。(イザヤ 63:7-9)彼女は正当にエホバのものでした。それでエホバは,夫なる所有者として,この妻のような国民と結婚契約を結ぶことにされました。それは神の法典に基づいた厳粛な契約で,一般にモーセの律法契約と言われています。神を自分たちの天的所有者とすることから来る祝福と安全を得るために,イスラエル人はその結婚関係に入りました。彼らはその結婚契約,すなわちモーセの律法契約に忠実であることを約束し,地上における唯一の,神の契約の民となりました。それでエホバは,『我かれらを娶りたり』と仰せられました。―エレミヤ 31:31,32。
5 不道徳な世の中で,イスラエル国民は何に忠実であることのむずかしさを知りましたか。ホセアの妻ゴメルは,だれの行状を示す例として用いられましたか。
5 バアルその他の多くの偽りの神々を愛する不道徳な世のただ中で,イスラエル国民は,その結婚契約,神また夫なる所有者エホバとの契約に忠実であることが非常に困難であるのを知りました。それで国民一般はそれにくじけ,エホバに対し霊的姦淫の罪を犯しました。(ヤコブ 4:4)西暦前997年,12部族のイスラエル王国内で分裂が生じました。10部族イスラエル王国と呼ばれた部分の不貞な行状は,預言者ホセアの妻ゴメルの例によって示されました。
6,7 (イ)どんないきさつからエホバは10部族のイスラエルに対して正当な言い分を持たれるようになりましたか。(ロ)そのイスラエル王国はだれの後を慕って思いを果たすことができず,だれのところへ戻ることを望みますか。
6 ゴメルは「淫行の婦人」に変わり,「淫行の子等」を産みました。(ホセア 1:1-3)このことは10部族のイスラエル王国が,偶像崇拝を行なう国々と政治同盟を結んだことを示しました。妻のようなイスラエル国民は,その夫なる所有者エホバに頼ることをせずに,そのような異教の国々に頼り始めました。経済的に豊かな生活ができることをエホバの恩恵とは考えずに,そうしたこの世的な国々の恩恵と考えるようになりました。彼女はそれらの国の神々を崇拝し始め,自分の贖い主である夫なる所有者エホバとの結婚契約を破るという破廉恥な行ないをしました。そのためエホバには,霊的姦淫にふけるこのイスラエル王国に対して正当な言い分がありました。結婚契約の条件に従えば,エホバには背教したイスラエルを処罰する法的権利と義務がありました。最後にエホバはそれを実行されました。エホバは彼女に次のように仰せになりました。
7 『この故にわれ荊棘をもてなんじの路をふさぎ垣をたてて彼にその径をえざらしむべし 彼はその恋人たちの後をしたいゆけども追及ことなくこれをたずぬれども遇うことなし ここにおいて彼いわん 我ゆきてわが前の夫にかえるべし かのときのわが状態は今にまさりて善りきと 彼が得る穀物と酒と油はわがあたうるところ 彼がバアルのために用いたる[または,彼らがバアルの像を作った]金銀はわが彼に増しあたえたるところなるを彼はしらざるなり』― ホセア 2:6-8,[新世訳脚注]。
8 それでエホバはだれを懲罰する決意をされましたか。しかしどの決定を取り消す意図はお持ちになりませんでしたか。
8 この言葉によると,エホバは10部族のイスラエル王国の民を懲罰する決意をされました。しかしそれによってこの国の王政が救われるということではありません。前にホセアの預言の中で言ったことを取り消すことなどエホバはされないからです。『我……イスラエルの家の国をほろぼすべければなり その日われエズレルの谷にてイスラエルの弓を折るべし』― ホセア 1:4,5。
9 (イ)イスラエル王国に対する懲戒処分からだれが益を受けることができましたか。(ロ)どんな出来事があった時に,イスラエルとエホバの結婚契約は終結しましたか。
9 それでも,背教の国民に加えられた懲戒処置から益を得た個々のイスラエル人がいました。例えば,バアルにひざをかがめなかった7,000人のイスラエル人がそれです。(列王上 19:18。ローマ 11:1-5)次の事実を見逃さないようにしましょう。それは,西暦前740年にイスラエル王国を終わらせ,生き残ったイスラエル人をアッシリアに追放した時に,エホバは全イスラエル国民との結婚契約を解消されなかった,ということです。西暦前607年,エルサレムを滅ぼし,生き残ったユダヤ人をバビロニアに捕囚として連れ去ることを許した時にもエホバは,モーセの律法契約,すなわち12部族のイスラエルがエホバを天的夫として結婚関係を結ぶ基礎となった契約を,廃止されませんでした。エホバと全イスラエルとの法的婚姻関係は,西暦33年にユダヤ教の指導者たちがイエス・キリストを殺させる時まで,解消されなかったのです。―コロサイ 2:14。
10 イスラエル王国の「情熱的な恋人たち」はどのように彼女を見捨てましたか。しかしだれがエホバの懲戒処分から益を受けられましたか。
10 10部族のイスラエル王国は,かつて彼女の情熱的な恋人たちであったこの世の諸国に助けを求めましたが,イスラエルに言い開きを求めるエホバの時は容赦なく彼らの上に臨みました。彼女が心を熱くして慕い求めた「恋人」の中には,彼女を助け得る者は一人もいませんでした。通り抜けられないいばらのやぶで囲まれたかのように,彼女は有力な助けを垣でさえぎられました。かつての恋人たちは,たとえ助けたいと思ったとしても,必要な助けをイスラエルに与えることはできませんでした。アッシリア人による三年にわたる包囲の後,イスラエルの首都サマリアは西暦前740年に陥落しました。生き残ったイスラエル人は,彼らを捕えた者たちの国に追放されました。その10部族のイスラエル王国が,神から与えられた土地に復帰することはありませんでした。ではだれが,エホバの懲戒処分から益を受けることができましたか。アッシリアに追放された流罪人の中の個々の人だけでした。彼らは問題を熟考しました。先祖たちが,天的夫また神としてエホバに仕えていたとき,物事がいかに良い状態にあったかを思い出しました。今や彼らは以前の状態のほうが良かったことに気づき,バアル崇拝から離れて,エホバとの契約関係を回復することに努めました。
11,12 エルサレムにおけるエホバの崇拝に戻る機会が,アッシリアで流刑の身になっていたイスラエル人に与えられたのはいつでしたか。それはどのように実現しましたか。
11 アッシリアで流刑の身となっていたイスラエル人には,エホバの指定された場所で行なわれるエホバの崇拝に一致して戻る機会がいつ差し伸べられましたか。最初は西暦前537年に,新しい世界強国により与えられました。なぜそうですか。西暦前632年ごろ,アッシリアの首都ニネベはバビロニア人の手に落ち,世界強国バビロンは最高の地位を獲得しました。そのため,流刑の身のイスラエル人がいたアッシリアの諸州は,バビロニア帝国の州となりました。それから約25年後,今や背教者となったユダ王国の上に,エホバの刑罰の裁きが執行されました。こうして西暦前607年,エホバはエルサレムとその神殿を滅ぼすことを許されました。生き残った何千ものユダヤ人はバビロニアに追放され,かつてのアッシリアの諸州に流刑の身となっていたイスラエル人に加わりました。
12 その時から70年目にエホバは,ご自分のわがままな妻のような地上の組織は十分に懲罰を受けた,とお考えになりました。エホバはそのあわれみにより,予告されていたペルシャ人クロスを起こし,西暦前539年,バビロンを覆させました。その後まもなく,すなわち西暦前537年,エホバはこのクロス大王を動かし,悔い改めたイスラエル人を解放してその愛する故国に帰還させる,という宣言を行なわせました。
13 申命記 24章1節から4節に照らして考えるとき,なぜこれはエホバの妻のような契約の民に対する神の側の特別のあわれみであったと言えますか。
13 それは,契約の民である12部族のイスラエルに対する天的夫の特別のあわれみある措置ではありませんでしたか。確かにそうです。なぜなら,モーセの律法契約によればそれは期待できないことだったからです。律法には次のように記されています。『人妻を取りてこれを娶れる後恥ずべきところのこれにあるを見てこれを好まずなりたらば離縁状を書きてこれが手にわたしこれをその家より出すべし その婦これが家より出たる後ゆきてほかの人に嫁ぐことをせんに 後の夫もこれを嫌い離縁状を書きてその手にわたしてこれを家より出しまたはこれを妻にめとれるその後の夫死ぬるあるも これはすでに身を汚したるによりて これを出したるその先の夫ふたたびこれを妻にめとるべからず これエホバの憎みたまうことなればなり 汝の神エホバの汝に与えて産業となさしめたまう地に汝罪を負わすなかれ』― 申命 24:1-4。
14 エホバはエレミヤ記 3章1節の中で,イスラエルを永久に離婚する理由があったことを,どのように述べておられますか。
14 エホバは預言者エレミヤの時代に,ユダ王国に住む契約を破ったユダヤ人に対してこの律法を強調されました。イスラエルを永久に離婚する理由がご自分にある事実を強調し,エホバはエレミヤに霊感を与えて次のように語らせました。「『もし人がその妻を離婚し,女が彼のもとを去って,他人の妻となるなら,その人はふたたび彼女に帰るであろうか。その[ユダの]地はおおいに汚れないであろうか。あなたは多くの恋人と姦淫を行った。しかもわたしに帰ろうというのか』と〔エホバ〕は言われる」― エレミヤ 3:1,口〔新〕。
15 結婚関係はいつどのように断たれましたか。そしてエホバのあわれみは個々のユダヤ人に対してどのように表わされましたか。
15 こうしたことを前にしながら,西暦前607年にエルサレムが滅ぼされた後も幾世紀もの間,全イスラエルとの結婚契約が引き続き保たれて来たのは,ひとえにエホバの極めて優れたあわれみによりました。しかし西暦33年,その契約が破棄される時が来ました。それは同国民がメシアなるイエスを退け,エルサレム城外でイエスを殺させた時でした。その時,同国民とエホバ神との結婚関係は断たれました。それ以後のユダヤ人の歴史はそのことを証明しているでしょうか。証明しています。しかしエホバはあわれみ深くも,メシアであるイエスを信じた個々のユダヤ人が,新しい契約,すなわちメシアなるイエスの仲介による契約において,エホバとの関係を新たにすることを許されました。
16 霊的イスラエルの残りの者はなぜキリスト教世界と共に滅びませんか。ほかにだれがエホバのあわれみを利用していますか。
16 今日,キリスト教世界は新しい契約の下にあると主張します。しかし,彼女のその主張や,カトリック教会の1975年聖年,また他の宗教的リバイバルにもかかわらず,キリスト教世界は,この不敬虔な世に迫りつつある「大患難」の間に滅びる定めにあります。それにもかかわらずエホバは,その愛情深いあわれみにより,悔い改めた霊的イスラエルの残りの者を,バビロン的なキリスト教世界から呼び出されました。このようにして彼らは,彼女と共に滅びることを免れます。(啓示 18:4)しかし,霊的イスラエルの残りの者だけが彼女から出て来たのではありません。ほかにも羊のような人々の「大群衆」が,西暦1935年以来,エホバの拡大されたあわれみを利用してきました。彼らは大いなるバビロンのあらゆる部分から出てきて残りの者に加わり,エホバに専心の献身を行ないました。―啓示 7:9-17。ヨハネ 10:6。
霊的姦淫に対する刑罰
17,18 (イ)キリスト教世界は神ののろいを受けないわけにはいきません。なぜですか。(ロ)その警告として,エホバはホセア 2章9節から13節でなんと言われましたか。
17 キリスト教世界の宗教組織は,聖書の神と契約関係にあると主張しているので,政治家や軍事家との交友によって売春を行なったことに対する刑罰を受けなければなりません。古代イスラエルが,妻のような組織の天的夫であるエホバと結んだモーセの律法契約を犯し,その罪に対する刑罰として間違いなく神ののろいを受けたことを,彼らは忘れてはなりません。その警告としてエホバはホセアにさらに次のように仰せられました。
18 『これによりて我わが穀物をその時におよびて奪い わが酒をその季にいたりてうばい またかれの裸体をおおうに用ゆべきわが羊の毛およびわが麻[または亜麻]をとらん 今われかれの恥ずるところをその恋人等の目のまえに露すべし 彼をわが手より救うものあらじ 我かれがすべての喜楽すなわち祝筵新月のいわい 安息日およびすべての節会をしてやましめん また彼のぶどうの樹といちじくの樹をそこなわん 彼さきにこれらをさしてわが恋人の我にあたえし賞賜なりと言いしが われこれを林となし野の獣をしてくらわしめん われかれが耳環 くび玉などを掛けてその恋人らをしたいゆき 我をわすれ香をたきて事えしもろもろのバアルの日のゆえをもてその罪を罰せん エホバかく言いたまう』― ホセア 2:9-13。
19 律法契約によると,エホバには,姦淫を行なう国民に対してどんな義務がありましたか。
19 イスラエルがエホバを忘れたことに注目しましょう。彼女はどんな刑罰に値しましたか。イスラエルとの結婚契約に含まれているエホバの明確な警告によると,彼女は天的夫としてのエホバに忠実でなかったのですから,エホバは物質面で祝福することを差し控えざるを得ませんでした。姦婦,つまり契約を破ってバアルの像の崇拝に転じ,この世的な恋人と不倫な関係を結んだ国民を,エホバが養う義務はありませんでした。エホバは当然同国民の道徳面での頼りなさ,放縦さを衆目にさらすことができました。その結果,同国民のこの世的な同盟国さえさげすんで敵対しました。
20 エホバは姦淫を行なう国民を,どのように林のようにされましたか。どんな方法で彼女をエホバの刑執行の手から奪い取ることは,だれにもできないことでしたか。
20 エホバはそれを,野獣からの保護と安全をだれにも与えない無人の林のようにされました。同国民は,忠実な族長アブラハム,イサク,そしてヤコブ(イスラエル)の息子であった12部族の頭たちの子孫であるというだけの理由で,罰の免除を主張することはできませんでした。そういう人々との血縁関係は,エホバが不利な裁きを執行される時に同国民をエホバの手から奪い取るための力とも功ともなりません。
21 イスラエルは,その家系にもかかわらず,昔のどんなエホバの契約の成就にあずかるのにふさわしくないことを示しましたか。
21 といってもそれは,エホバが,西暦前1943年という昔にご自分の友アブラハムと結ばれた契約を忘れて守らなかった,ということではありません。エホバはその契約が真実であることまたそれを破らないことをご自分をさして誓われました。しかし不倫なイスラエルは,アブラハムの生来の子孫ではありましたが,その契約の成就の一端にあずかる価値のあるものであることを証明しませんでした。エホバは彼らの先祖アブラハムに言われました。「あなた自身祝福となりなさい。そうすればわたしは,あなたを祝福する者たちを祝福し,あなたに災いを下す者を呪う。地のすべての家族はあなたによって必ず自分の祝福を得る」。(創世 12:2,3,新)「わたしは必ずあなたを祝福し,あなたの胤を殖やして天の星のように,海辺にある砂粒のようにする。あなたの胤はその敵の門を手中に入れるであろう。そして,あなたの胤によって地のあらゆる国民は必ず自らの祝福を得るであろう」― 創世 22:17,18,新。
22 イスラエル王国とユダ王国を覆すことをお許しになったにもかかわらず,なぜエホバはアブラハムの胤を保存されましたか。またその残りの者に何を行なわれましたか。
22 アブラハムの胤の主要な者,すなわちメシアは,西暦前740年のサマリアの滅びの時にはまだ到来していませんでしたし,西暦前607年のエルサレムの破滅の時にもまだ到来していませんでした。それでも,アブラハムのメシアなる子孫は,アブラハムの自然の,骨肉の家系から出なければなりませんでした。確かにエホバは敵がイスラエル王国とユダ王国を滅ぼすことを許されましたが,それでも生来のアブラハムの胤を保存しなければなりませんでした。なぜなら,この家系から地のあらゆる国民の祝福となるメシアが来なければならなかったからです。(マタイ 1:1-3。ガラテア 3:8-29)そういう目的があって,エホバはあわれみ深くも悔い改めたイスラエル人の残りの者を,エルサレムのユダ王国の破滅後続いた70年の捕囚期間中ずっと保護されました。エホバは忠実な残りの者との結婚契約を忠実に守られました。次いでエホバはメシアを予表していた者,すなわちバビロン征服者クロスを起こされました。この解放者を通してエホバは,アブラハムの胤の残りの者をユダの地に帰還させました。
23 ご自分と妻のような契約の民とのきたるべき和解を予告するために,エホバはホセア 2章14節から16節でなんと言われましたか。
23 それでご自分の妻のような契約の民との和解を予告するために,エホバは預言者ホセアに霊感を与えてさらに次のように語らせました。「それゆえ,見よ,わたしは彼女をいざなって,荒野に導いて行き,ねんごろに彼女に語ろう。その所でわたしは彼女にそのぶどう畑を与え,アコルの谷を望みの門として与える。その所で彼女は若かった日のように,エジプトの国からのぼって来た時のように,答えるであろう。〔エホバ〕は言われる。その日には,あなたはわたしを『わが夫』[ヘブライ語: イシ]と呼び,もはや『わがバアル[所有者]』とは呼ばない」。(ホセア 2:14-16,口,〔新〕)あるいは文語訳から引用するなら16節は次の通りです。『エホバ言いたまう その日にはなんじ我をふたたびバアリ[わが主]とよばずしてイシ(わが夫)とよばん』― ホセア 2:18。
24 エホバはその妻のような組織に「荒野」の中でなんと言われましたか。彼女に「そのぶどう畑」を与えるということにはどんな意味がありましたか。
24 イスラエル人はバビロン捕囚の間,「荒野」にいるかのようでした。エホバはあわれみ深くも残りの者をそこへ『いざない』,『ねんごろに彼女に語られ』ました。愛情をもって懲らしめることにより,そして預言者エゼキエルとダニエルにより,エホバは彼女に語られました。エホバは,ご自分の妻のような懲らしめられた組織に「そのぶどう畑」を与える約束をされました。その意味は,エホバが彼女をバビロンの「荒野」から連れ出して,長期間荒廃していたユダの地とエルサレムに帰還させるということでした。
25 エホバがご自分の妻のような組織に「アコルの谷を望みの門として」与えるということは,彼女にとってどんな意味がありましたか。
25 エホバが「アコルの谷」のことを語られたとき,その谷は次のことを思い起こさせました。進撃するイスラエル人がカナンの都市エリコを滅ぼした後,貪欲なアカンは,エホバの命令に背いたために家族と共に石打ちの刑に処せられました。そのようにアカンは,戦利品を取るという利己的で不従順な行ないをして,イスラエルを悩ませました。アカンが石打ちにされた谷は,それにふさわしく「アコルの谷」と呼ばれました。アコルという名称には「悩み」という意味があります。(ヨシュア 7:10-26)したがって,妻のような組織に,「アコルの谷を望みの門として」与えるというエホバの約束は,彼女がその谷のある故郷に連れ戻されることを意味しました。
26 「荒野」の妻のような組織はエホバにどのように反応しましたか。結婚関係が新たにされたことをエホバはどのように証明されましたか。
26 ところで,エホバの妻のような組織の,悔い改めた残りの者はどうでしたか。彼らはエホバの説得するような態度や,「ねんごろ」な話し方に対して「答え」ましたか。あるいは反応しましたか。聖書の歴史によると彼らはそれに答えました。ずっと昔,彼女がイスラエル国民として「若かった」時に,彼女は心をこめて「答え」ました。または反応しました。モーセの律法契約をエホバと結ぶことにより,エホバの妻のごとき組織になるようにとのエホバの招きに応じました。それと同様に,バビロンにいた悔い改めた残りの者も,イスラエルと彼女の天的夫エホバとの結婚のきずなを新たにするため,その招きに応じました。この結婚関係を新たにした証拠として,エホバは予表的メシアなるクロス大王を用い,忠実なイスラエルの残りの者をユダとエルサレムの地に帰還させました。
27 残りの者は今やバアル崇拝に対してどんな道を取りましたか。その妻のような組織はエホバを「わが夫」と呼ぶことにより何を明らかにしましたか。
27 復帰したエホバの契約の民は,もはやバアル崇拝や他の形の偶像崇拝に逆戻りすることはありませんでした。元の状態に戻された残りの者は,彼らに与えられていた土地で,熱意を傾けて,彼らの神であるイスラエルの天的夫の崇拝を復興しました。彼らの先祖が,エジプトとその軍隊から救出された時に感じたのと同じ深い感謝の念を彼らは感じました。イスラエルの天的夫がより身近に,より親密な者に感じられました。妻のような組織は自然と,より親密な,愛情のこもった言葉でエホバに呼びかけました。その組織はエホバを「わが所有者」と呼ぶよりもむしろ,霊的に言って,「わが夫」と呼びました。彼女はもはや,奴隷所有者のものとしてただ「所有されている」という感じを好まなくなりました。最初の女エバがその夫アダムの助け手とされたように,エホバの助け手のような気持ちになることを望みました。(創世 2:19-24)それはなんとうるわしい情景だったのでしょう!
28 昔の神のあわれみの表明のように,今日でも同じようにうるわしいのは何ですか。
28 この20世紀の現代に起きたそれと同様の出来事も,うるわしいものです。エホバのあわれみは今日でもなんとすばらしい効果を生み出しているのでしょう。エホバは,霊的結婚契約に忠節であるゆえにあわれみを示されるのです。今エホバのあわれみを経験している人々は本当に幸せです!