若い皆さん ― 世の霊に抵抗してください
「そこで,わたしたちが受けたのは,世の霊ではなく,神からの霊です」― コリント第一 2:12。
1,2 (イ)世の若い人と,エホバの証人の会衆に交わる若者の間には,どんな対照が見られますか。(ロ)証人の若者の大多数に,どんな温かい褒め言葉を述べることができますか。
「今の若い世代は気力がなく,退けられ,反抗している」。そう言明しているのは,オーストラリアのサン-ヘラルド紙(英語)です。同紙は,こう付け加えています。「裁判所の記録によれば,由々しい暴行の容疑で出廷する青少年の数は,[前年の]22%増になっている。……自殺する子どもの割合は,1960年代半ばと比べて3倍になっている。……そのうえ,世代の断絶によって紛れもない溝が生じており,ますます多くの若者がその溝に滑り落ち,薬物やアルコールにおぼれて身を滅ぼし,世間に忘れ去られた状態に陥っている」。しかし,この状況は何も一国に限ったことではありません。世界じゅうで,親や教師や精神衛生の専門家が若者たちの現状を嘆いています。
2 今日の若者の大多数と,エホバの証人の会衆の中にいる健全な若者たちの間には,実に鮮やかな対照が見られます。証人の若者は完全だというのではありません。彼らにもやはり「若さに伴いがちな欲望」との闘いがあります。(テモテ第二 2:22)しかし,これらの若者は一つのグループとして,正しいことを守るという勇気ある立場を取り,世の圧力に屈することを拒んできました。わたしたちは,サタンの「ずる賢い行為」との戦いに勝っている若い皆さんすべてを心から褒めたいと思います。(エフェソス 6:11,脚注)使徒ヨハネのように,心に動かされてこう述べます。「若者たちよ,わたしがあなた方に書くのは,あなた方が強く,神の言葉があなた方のうちにとどまっており,あなた方が邪悪な者を征服したからです」― ヨハネ第一 2:14。
3 「霊」という言葉は,何を意味することがありますか。
3 それでも,邪悪な者との戦いに勝ちつづけるには,聖書の言う「世の霊」に力の限り抵抗しなければなりません。(コリント第一 2:12)ギリシャ語に関するある権威者によれば,「霊」とは「だれであれ各々の魂に満ち,また魂を統御する,気質もしくは影響力」を意味することがあります。例えば,だれかが気難しい場合,その人は「機嫌(英文字義,「霊」)」が悪いと言えるでしょう。人の「霊」,つまり気質または精神の傾向は,人の行なう選択を左右します。人はそれに促されて行動し,また語ります。興味深いことに,個々の人も一群の人々も何らかの「霊」を表わすことがあります。使徒パウロは一群のクリスチャンに,「主イエス・キリストの過分のご親切があなた方の示す霊と共にありますように」と書き送りました。(フィレモン 25)では,この世界はどんな霊を表わしているでしょうか。「全世界が邪悪な者[悪魔サタン]の配下にある」のですから,世の霊が健全であるとはとても考えられません。そうではないでしょうか。―ヨハネ第一 5:19。
世の霊を見分ける
4,5 (イ)エフェソス会衆に交わっていた人々は,クリスチャンになる以前,どんな霊の影響を受けていましたか。(ロ)「空中の権威の支配者」とはだれですか。この『空気』とは何ですか。
4 パウロはこう書きました。「あなた方は自分の罪過と罪にあって死んでいましたが,そのあなた方を神は生かしてくださいました。あなた方は,この世の事物の体制にしたがい,また空中の権威の支配者,不従順の子らのうちにいま働いている霊にしたがって,一時はそうした罪のうちを歩んでいました。そうです,それら不従順の子らの中にあって,わたしたちは皆,一時は自分の肉の欲望にしたがって生活し,肉と考えとの欲するところを行なって,ほかの人々と同じく生まれながらに憤りの子供でした」― エフェソス 2:1-3。
5 エフェソスのクリスチャンは,キリスト教の道について学ぶ前は,知らずに「空中の権威の支配者」悪魔サタンの追随者になっていました。その「空中」とは,サタンと配下の悪霊たちのいる,実際の場所のことではありません。パウロがこの言葉を書いた時,悪魔サタンと配下の悪霊たちは,まだ天に出入りすることができました。(ヨブ 1:6; 啓示 12:7-12と比較してください。)この『空気』という言葉は,サタンの世を支配している霊,つまり精神態度を意味します。(啓示 16:17-21と比較してください。)この霊は,周囲の空気のように,至る所にあります。
6 「空中の権威」とは何ですか。その権威は,多くの若者に対してどのように行使されますか。
6 しかし,「空中の権威」とは何でしょうか。それは,この『空気』が人々に及ぼす大きな影響力を指しているようです。パウロは,この霊が「不従順の子らのうちに……働いている」と述べました。ですから,世の霊は不従順と反抗の精神を生み出します。この権威は,一つには仲間の圧力というかたちで行使されます。エホバの証人である一人の若い女性は,こう述べています。「学校では,いつもみんなから,少し反抗的であることを勧められます。反抗と言えるようなことをすれば,ほかの子たちから一目置かれるのです」。
世の霊の表われ
7-9 (イ)世の霊は今日の若い人の間でどんなかたちで表われていますか。(ロ)あなたの住んでいるところでも,そのような事柄が観察されていますか。
7 世の霊は今日の若い人の間でどんなかたちで表われているでしょうか。不正直また反抗的な態度に表われています。ある雑誌は,大学3年生と4年生の70%以上はハイスクール在学中にカンニングをしたことがある,と伝えています。また,ぶしつけで,皮肉っぽい,汚れた話し方も広まっています。確かに,ヨブや使徒パウロも,義憤を表明するために,皮肉とも取れるような言い方をしたことがあります。(ヨブ 12:2。コリント第二 12:13)しかし,多くの若い人が口にする辛らつな皮肉は往々にして,言葉による虐待に等しいものです。
8 レクリエーションの度を過ごすのも,世の霊の表われです。若い人の間では,若者向けナイトクラブやレイヴaなどの奔放な浮かれ騒ぎが好まれています。また,服装や身繕いの面で極端に走ることも広く見られます。今日の若者の多くは,だぶだぶのヒップホップのスタイルによってであれ,ボディー・ピアスのような,ぎょっとさせるような流行によってであれ,世の反抗的精神に染まっていることを示しています。(ローマ 6:16と比較してください。)さまざまな物質的所有物に夢中になることも世の霊の表われです。ある教育誌によれば,「種々の企業は,絶えず子どもに宣伝攻勢をかけ,おびただしい種類の商品を売り込んで」います。米国の若者は,ハイスクールを卒業するまでに,36万ものテレビ・コマーシャルにさらされます。物を買うよう,仲間からも圧力をかけられることがあるでしょう。14歳の少女はこう言います。「みんないつも,『そのセーター,ジャンパー,ジーンズはどこのブランド?』って聞くんです」。
9 聖書時代から,不健全な音楽は,汚れた行動を唆すためのサタンの手だてとなってきました。(出エジプト記 32:17-19; 詩編 69:12; イザヤ 23:16と比較してください。)ですから,歌詞が ― 性的に露骨とまではいかなくても ― 性を暗示するものや,冒とく的なもの,また興奮をさそう激しいテンポの曲が好まれているのも驚くには当たりません。さらに,性の不道徳も,この世の汚れた精神の別の表われです。(コリント第一 6:9-11)ニューヨーク・タイムズ紙(英語)は,こう伝えています。「十代の若者の多くにとって,セックスはあたかも通過儀礼となっている……ハイスクール最上級生の3分の2以上は,すでに性交を経験している」。ウォールストリート・ジャーナル紙(英語)のある記事には,8歳から12歳までの子どもが「性的にいっそう活発になっている」証拠が掲載されました。最近退職した,あるスクールカウンセラーは,「6年生bの少女の中にも,妊娠する者が出はじめている」と述べています。
世の霊を退ける
10 クリスチャンの家庭で育ったある若者たちは,どのように世の霊に屈してしまいましたか。
10 悲しいことに,一部のクリスチャンの若者たちも,世の霊に屈してしまいました。日本のある少女は,「私も親や仲間のクリスチャンの前では立派な態度をとってましたが,もう一つの生活をしていました」と正直に述べています。ケニアのある若い女性も,このように述べています。「わたしはしばらく裏表のある生活をしていました。パーティーに出たり,ロック音楽を聴いたり,良くない友達と付き合ったりしていました。良くないのは分かっていましたが,考えないようにしました。いつかそのようなことはやめられる,と思っていたのです。でも,やめられませんでした。事態は悪くなるばかりでした」。ドイツの別の若い女性は,こう言っています。「良くない友達を持ったことがそもそもの始まりでした。その時から,たばこを吸うようになりました。親の気持ちを傷つけたかったのですが,自分が傷つくだけでした」。
11 カレブは,10人の斥候が良くない報告を持ち帰ったとき,どうして大勢の人の言いなりにならないでいることができましたか。
11 それでも,世の霊に抵抗する,いえ,世の霊を退けることは可能です。昔のカレブの手本を考えてみてください。10人の臆病な斥候が約束の地についての良くない報告を持ち帰ったとき,カレブはヨシュア共々,おじけづいたりせず,大勢の人の言いなりになったりもしませんでした。2人は勇敢にも,こう言明しました。「わたしたちが中を通って探ってきた土地,それはこの上なく良い土地です。もしエホバがわたしたちを喜びとしてくださっているならば,わたしたちをその地に携え入れ,それを,乳と蜜の流れるその地を与えてくださるはずです」。(民数記 14:7,8)カレブがそれほどの圧力に負けなかったのはなぜでしょうか。エホバはカレブについて,「他の者と異なる霊があ(る)」と言われました。―民数記 14:24。
「異なる霊」を示す
12 話し方の面で「異なる霊」を示すことが大切なのはなぜですか。
12 今日,「異なる霊」もしくは精神態度 ― 世とは異なるもの ― を示すには,勇気と強さが要ります。一つには,皮肉っぽい,不敬な話し方を避けることによって示せます。興味深いことに,「皮肉」に相当する英語の言葉(sarcasm)は,「犬のように肉を裂く」という字義のギリシャ語動詞から来ています。(ガラテア 5:15と比較してください。)犬が骨から肉を歯で引き千切るように,皮肉っぽい“ユーモア”も相手の人から尊厳をはぎ取るものとなりかねません。しかし,コロサイ 3章8節は,「そうしたものを,憤り,怒り,悪,ののしりのことば,またあなた方の口から出る卑わいなことばを,ことごとく捨て去りなさい」と勧めています。また,箴言 10章19節にはこう記されています。「言葉が多ければ違犯を避けられない。しかし,唇を制する者は思慮深く行動しているのである」。もしだれかに侮辱されたなら,自制して『他のほほを向けて』ください。加害者と二人だけで,落ち着いて穏やかに話すなどしてそうするのです。―マタイ 5:39。箴言 15:1。
13 若者は,物質的な事柄に対する平衡の取れた見方をどのように示すことができますか。
13 「異なる霊」を示すもう一つの方法は,物質的な事柄に対する平衡の取れた見方を保つことです。もちろん,良い物が欲しいと思うのは,ごく自然なことです。イエス・キリスト自身,上等の衣を少なくとも1着は持っておられたようです。(ヨハネ 19:23,24)しかし,あなたがあれこれ物を所有することばかり考えるようになって,親にはとても買う余裕のないものを,買ってほしいと,しきりにせがんだり,他の若者と同じようにしないと気が済まなかったりするなら,世の霊はあなたが思う以上にあなたに権威を行使していると言えるでしょう。聖書は,こう述べています。「すべて世にあるもの ― 肉の欲望と目の欲望,そして自分の資力を見せびらかすこと ― は父から出るのではなく,世から出(ま)す」。そうです,世の物質主義的な霊の権威に屈してはなりません。持っているもので満足することを学んでください。―ヨハネ第一 2:16。テモテ第一 6:8-10。
14 (イ)イザヤの時代の神の民は,レクリエーションに対する平衡の欠けた見方をどのように露呈しましたか。(ロ)一部のクリスチャンの若者たちは,ナイトクラブに行ったり奔放なパーティーに加わったりして,どんな危険に直面しましたか。
14 レクリエーションをあるべき位置に保つのも大切なことです。預言者イザヤは,こう言明しました。「酔わせる酒を求めるためだけに朝早く起きる者,遅くまで夕闇の中でだらだらと時を過ごし,ぶどう酒に身を燃やす者たちは災いだ! 彼らの宴には必ずたて琴と弦楽器,タンバリンとフルート,そしてぶどう酒がある。しかし,彼らはエホバの働きを見ず,そのみ手の業を見なかった」。(イザヤ 5:11,12)残念ながら,一部のクリスチャンの若者たちも,それとよく似た奔放なパーティーに加わりました。若者向けナイトクラブで何が行なわれているかについて,一群のクリスチャンの若者に尋ねたところ,ある若い姉妹は,「しょっちゅうけんかが起きます。自分がそのただ中にいたこともあります」と述べました。ある若い兄弟は,「お酒を飲んだり,たばこを吸ったり,というようなことです」と付け加えました。もう一人の若い兄弟は,正直にこう言っています。「みんな酔っ払って,ばかげた振る舞いをするんです。麻薬もあって,ひどいことがいろいろ起きます。そこに行っても影響を受けない,なんて思ったら大間違いです」。ですから聖書が,浮かれ騒ぎ,つまり「奔放なパーティー」を「肉の業」の一つに挙げているのも,当を得たことなのです。―ガラテア 5:19-21; バイイングトン訳。ローマ 13:13。
15 聖書はレクリエーションについて,平衡の取れたどんな見方を示していますか。
15 害になるレクリエーションを避けるとしても,喜びのない生活になるわけではありません。わたしたちは「幸福な神」を崇拝しており,その方はあなたが若い時を楽しむことを願っておられます。(テモテ第一 1:11。伝道の書 11:9)それでも聖書は,「歓楽[「娯楽」,ラムサ訳]を愛している者は窮乏に陥る者とな(る)」と警告しています。(箴言 21:17)そうです,レクリエーションを生活の中で最重要なこととするなら,霊的な窮乏に陥ってしまうのです。ですから,レクリエーションを選ぶにも聖書の原則に従ってください。自分を打ち壊すのではなく築き上げるような楽しみ事は,たくさんあります。c ―伝道の書 11:10。
16 クリスチャンの若者たちは,他と異なっていることをどのように示せますか。
16 慎み深い服装や身繕いをし,世の気まぐれな流行を退けることも,自分が他と異なっていることを示すものです。(ローマ 12:2。テモテ第一 2:9)音楽をよく選ぶこともそうです。(フィリピ 4:8,9)あるクリスチャンの少女は,「本当は捨てないといけない音楽もあるのですが,曲がすごくいいんです」と打ち明けています。同様に,ある青年も,正直にこう言っています。「僕の場合,音楽はわなです。それが大好きだからです。良くないところがあることに気づいたり,親からそのようなところを指摘されたりすると,実際,そのことを自分に言い聞かせて,心を従わせなければなりません。心ではその音楽が大好きだからです」。若い皆さん,「[サタンの]謀りごとを知らない」ままでいてはなりません。(コリント第二 2:11)サタンは若いクリスチャンをエホバから引き離そうとして音楽を用いているのです。ものみの塔の出版物には,ラップやヘビーメタルやオルタナティブ・ロックを取り上げた記事が掲載されてきました。d しかし,ものみの塔の出版物は,新たな形式や様式の音楽が登場するたびに逐一批評することはとてもできません。ですから,音楽を選ぶときは,自分で「思考力」と「識別力」を働かせなければなりません。―箴言 2:11。
17 (イ)ポルネイアとは何ですか。それにはどんな行為が含まれていますか。(ロ)道徳に関する神のご意志は何ですか。
17 最後に,自分を道徳的に清く保たなければなりません。聖書は,「淫行から逃げ去りなさい」と強く勧めています。(コリント第一 6:18)淫行に相当する原語のギリシャ語,ポルネイアは,結婚のきずなの枠外での,生殖器の使用を伴う,不義の性的な活動すべてを指しています。それには,オーラルセックスや,故意に性器を愛撫することが含まれます。クリスチャンの若者の中には,そのような行為に携わっていながら,自分は実際には淫行を犯していないと思っていた人もかなりいます。しかし,神の言葉は,はっきりこう述べています。「これが神のご意志(です)。すなわち,あなた方を神聖なものとし,あなた方が淫行を避けることです。そしてあなた方一人一人が,自分の器をいかに聖化と誉れのうちに所有すべきかを知(ることです)」― テサロニケ第一 4:3,4。
18 (イ)若者はどうすれば世の霊に汚されないですみますか。(ロ)次の記事では,どんな点が取り上げられますか。
18 そうです,エホバに助けていただいて,世の霊に汚されないようにすることができます。(ペテロ第一 5:10)それでも,サタンはよく,命取りのわなを見破られないように仕掛けます。そのため,危険に気づくには真の識別力の必要な時があります。次の記事は,若い人が知覚力を身につけるよう助けることを目的としています。
[脚注]
a たいてい夜通し続くダンス・パーティー。さらに詳しくは,「目ざめよ!」誌,1997年12月22日号,「若い人は尋ねる…レイヴは害のない楽しみですか」をご覧ください。
b 11歳前後の子ども。
c どんな提案があるかについては,「若い人が尋ねる質問 ― 実際に役立つ答え」の本,296-303ページをご覧ください。
d 「ものみの塔」誌,1993年4月15日号をご覧ください。
復習のための質問
□ 「世の霊」とは何ですか。それはどのように人々に対する「権威」を持っていますか
□ 世の霊は今日の若者の間でどんなかたちで表われていますか
□ クリスチャンの若者は,話し方やレクリエーションの面で「異なる霊」をどのように示すことができますか
□ クリスチャンの若者は,道徳や音楽の面で「異なる霊」をどのように示すことができますか
[9ページの写真]
多くの若者は,世の霊の「権威」のもとにあることを行動によって示している
[10ページの写真]
音楽をよく選んでください
[11ページの写真]
世の霊に抵抗するには勇気が要る