「上からの知恵」により成し遂げられる建設
「もろもろの民は皆,それぞれ自分たちの神の名によって歩む。しかしわたしたちは,定めのない時に至るまで,まさに永久に,わたしたちの神エホバの名によって歩む」。(ミカ 4:5)世の一般の人々は自覚しているかどうかにかかわりなく,自らが神とするものの名によって歩んでいます。ある人々は科学技術や自分の考えを絶対視し,それを神としているかもしれません。しかしわたしたちはミカが述べる通り,「わたしたちの神エホバの名によって」歩みます。
それにはエホバに全幅の信頼を置き,神の権威を尊重し,その律法を守ることが含まれています。「エホバの名によって歩む」人は,自分の全生活で神に由来する知恵を反映します。その「上からの知恵」は海老名ベテルの建設の業にも反映されています。―ヤコブ 3:17。
内面の貞潔さを反映する外面の清さ
「上からの知恵はまず第一に貞潔」であるとヤコブは説明しています。貞潔な人は悪から離れ,清くなければなりません。ベテルの建設現場は,肉と霊のいずれの面でも貞潔な働き人だけに働くことが許される所です。(コリント第二 7:1)清い心の状態は外面にも表われなければなりません。特にこの点で興味深いのは,1982年に献堂されたベテルのホーム棟の外壁の周りに現在足場が組まれていることです。これはホーム棟の外壁を塗り替えるための足場です。こうすることによって,建物の外観は美しく保たれベテルにふさわしい清さを反映することになります。
建設現場でも,完成時にエホバの証人の貞潔さを反映するよう外回りを整備する仕事が進んでいます。そのために9月12日から新たに外構班が設けられました。22名から成るこの班の成員は,重機・電気・土工・大工・鉄筋・設備など様々な部門から選ばれました。建物周辺の道路を整備し,駐車場を新設し,造園の仕事をするには様々な仕事が必要とされるからです。―出エジプト記 36:1,2。
道路や駐車場を造るため,現場にある幾つかの作業場を解体し,植木を移植しなければなりませんでした。移植された木の中には七,八トンもあるヒマラヤ杉やイチョウの木もありました。移植は将来の景観を考えて行なわれています。
平和のうちに行なわれる作業
「上からの知恵」の別の側面は,「平和を求め(る)」ことです。世の一般の建設現場では,配管や配線をする業者と壁板をはる業者の間に協力態勢が欠けているために難しい問題の起こることがあります。多くの場合,作業に従事する人が自分の都合で自分のしたいことをし,互いの便宜を図ることがありません。
海老名の新ホーム棟の内装工事では部門間の意思の疎通がスムーズにゆくよう段取りがなされます。毎週金曜日の夕方には各部門の監督と補佐が集まり,現場の監督から翌週の工程を受け取ってその詳細を検討します。工程で他の部門とかち合うような時には調整が図られます。最終的に1週間の仕事の流れが決まると,月曜日の朝の建設学校で建設奉仕者全員に作業の手順が知らされます。さらに細かい点は現場で作業に当たる兄弟たちの間で詰められていきます。
こうして作り出される平和な雰囲気は,周りの状況に左右されることがありません。例えば今年の9月は雨天の日が多く,ちょうどそのころ外壁の塗装をしなくてはなりませんでした。晴れ間の見られない日が毎日続く中,塗装部門の兄弟たちはいらいらすることなく,作業ができる屋内やひさしの下での塗装作業に携わりました。そのため晴れ間が出た時に大変忙しく働かなくてはなりませんでしたが,「上からの知恵」を反映する平和な雰囲気は壊されることがありませんでした。個々の人が本当に平和を求めている時に初めて,こうした作業がスムーズに行なわれてゆくのです。
融通を利かせる
エホバからの知恵を反映する人は,『道理にかなった』人でもあります。「道理にかない」と訳されている語は,字義通りには「すぐに応じる」ことを意味しています。つまり,自分のやり方に固執しないでその時々に必要とされる事態に対応するのです。
今回の建設工事でも,関係する兄弟たちは「すぐに応じる」態度を示してきました。一例として,新ホーム棟の2階と工場の2階を結ぶ陸橋の設計変更が挙げられます。最初この陸橋を,全面総ガラス張りにする予定で仕事が進められていました。しかし,工事そのものに手間がかかる上,かなりの費用がかかることも分かってきました。それで簡単でもっと安い方法が用いられ,写真にあるような実用性を重んじた陸橋が完成したのです。
また,新工場が完成した後に,大きな仕事が建設の兄弟たちに与えられました。それは以前に製本部門があった旧工場2階の改装です。これは元々の工程に入っていませんでしたが,新ホーム棟を仕上げる前にこの旧工場の改装の仕事が入りました。手狭になっていたグラフィックス部門をそこに移すための突貫工事が行なわれたのです。現像液を処理するための特殊な配管をしなければなりませんでした。この工事は手間のかかるものでしたが,兄弟たちは「すぐに応じる」態度を示しました。
同じような態度は新ホーム棟の通用門の設計変更にも見られました。ベテルの兄弟たちが事務棟に一番近い出入り口から出入りできるよう洗濯物取り出し口にするはずだった出入り口に変更が加えられたのです。簡単な通用口のような所が,風よけ室のあるきちんとした出入り口に変更されました。このことには,神に由来する知恵の別の特色も反映されていました。
『進んで従う』
世界中の建設の業を指導するブルックリン本部の建設部門の方針の中で実際的であることが示されている点に基づき,支部委員会はこの変更を加えました。設計室の兄弟たちは『進んで従う』謙遜な態度を示しました。
同じことが園芸倉庫についても言えます。当初2階建ての園芸倉庫は従来通り鉄筋コンクリートで建てられる予定でそのための基礎が据えられていました。しかし,ティルト・アップ工法を実施可能なところでは取り入れたいとの考えから,日本支部は園芸倉庫をティルト・アップで建てることに決めました。現場の兄弟たちはその決定にこたえ応じたのです。(ティルト・アップ工法については,「目ざめよ!」1988年10月8日号,22ページをご覧ください。)
通常の鉄筋コンクリートで園芸倉庫を建てた場合,現場でその倉庫を建てる作業に6週間ぐらいかかります。一方,ティルト・アップを使うと現場の作業は十日ほどで完成してしまいます。設計を担当して日本でティルト・アップが法律的に可能かどうかを調べた兄弟は,「最初は日本では無理だと思っていましたが,実際に調べてみると可能なことが分かりました」と語っています。そしてこの工法の益についてこう述べました。「この方法だと,建設期間だけでなく,延べ人数もずいぶん少なくてすみます。また将来は費用も安く,強度も強くなることでしょう」。
千葉大会ホールの設計を担当する兄弟たちもティルト・アップ工法を学ぶために海老名にやって来て,園芸倉庫の建設を見守っています。将来この優れた工法によって神権的な用途を持つ多くの建物が建てられてゆくことでしょう。この園芸倉庫は日本におけるティルト・アップ工法のモデルケースになるはずです。
エホバの建てる業
このように海老名における建設工事は「上からの知恵」により着々と成し遂げられています。ここで働く兄弟たちは,「憐れみと良い実とに満ち(て)」おり,世の現場とは異なり,ここには「不公平な差別」も見られず,「偽善的」な態度も入り込むすきがありません。(ヤコブ 3:17)建設に携わる兄弟たちひとりひとりが,「上からの知恵」を反映することによってこのような優れた雰囲気がかもし出されているのです。
建設奉仕者たちは何に動かされて神に由来するそのような知恵を反映するよう努めているのでしょうか。それは,「エホバご自身が家を建てるのでなければ,建てる者たちがそのために骨折って働いても無駄である」という詩編作者の言葉に対する認識です。どんなに骨折って働いても,物事をエホバの方法で行なわない限りその建てる業は無駄になってしまいます。このことを考え,建設奉仕者たちは「上からの知恵」を表わし,自分が「わたしたちの神エホバの名によって」歩んでいることを示しているのです。―詩編 127:1。ヤコブ 3:17。ミカ 4:5。
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旧ホーム棟外壁の塗り替え作業
新ホーム棟南側
[4ページの図版]
平和のうちに…
…共に働く
植木の移植
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新ホーム棟と旧工場を結ぶ陸橋
設計室の兄弟たちも『進んで従う』
広くなったグラフィックス部門
[6ページの図版]
園芸倉庫の基礎