ギリシャ風の料理の仕方
『汝往てよろこびをもて汝のパンを食へ』と賢明なソロモン王は書きました。(伝道 9:7)また,おいしい食べ物は確かに,生活から得られる喜びに寄与します。世界中の主婦はこのことを知っているので,食事を作る一層興味深い方法を知るよう努めている人は少なくありません。
ある国には独特の料理がありますから,ほかの国の人はそれを習って自分たちの食事をもっと変化に富んだものにすることができます。時には新しい調理法を試みると,主婦は食事を一層変化に富んだものにするだけでなく,食物の値段が上がっている今日必要なこととして,食費の予算を精一杯活用するという面でも助けられます。
ギリシャ料理をちょっと調べてみると,幾つかの興味深い調理法を知ることができます。ギリシャ料理にはいったいどんな特徴がありますか。どんな食べ物が好まれ,またどのように料理されますか。
典型的なギリシャの食べ物
ご存じかもしれませんが,ギリシャ人の好物は子羊の肉です。ギリシャ人の家庭では,赤身の肉と言えば事実上子羊の肉しか食べない所もあります。子牛の肉も時には料理されますが,それは第二の料理であって,牛肉は第三で,豚肉はめったに使用されません。
ギリシャ人のもう一つの好物は鶏肉です。また,お米を抜きにしてはギリシャ料理は考えられません。
魚の料理も一般的ですが,たいてい魚はオリーブ油,にんにく,玉ねぎ,トマトなどを使って料理され,輪切りにしたレモンを半分に切って添えます。ギリシャ人は普通のさまざまな種類の魚のほかに,たこやいかなども大いに好んで食べます。
野菜では,豆(乾燥したものや生のもの)となすびが好まれます。手に入る肉の量には限りがあるので,なすびがいため煮や蒸し焼き,揚げ物や詰め物にしたり,あるいはすりつぶしてクリーム状にしたりして盛んに使われています。
野菜料理の特徴の一つとしては,肉料理でも同じことが言えますが,風味をつけるためにトマトやトマト・ペーストが玉ねぎやにんにくと一緒に,あるいはそのどちらかと共に使われるのがギリシャ風の料理の仕方です。
ギリシャ料理には辛い香辛料は使いません。その代わり,料理人はたいていの場合,オレガノ,ミントの葉,スイート・ベーゼル,ベー・リーフ(月桂の葉),ゴマ,パセリなどで食物を調味します。少量のシナモンはギリシャ風の肉料理に独特の微妙な味わいを添えます。
レモンは大切な役目を果たします。事実,いろいろな料理やスープを酸っぱいクリーム状のものにする,卵とレモンジュースで作るソースの味ほど典型的なギリシャ料理の風味を添えるものはないくらいです。ギリシャ人の主婦は食卓に供するほとんどあらゆるものにレモンジュースを用います。サラダにも酢のかわりにレモンジュースが使われます。ギリシャ人はたいていの場合,食物を料理するのにオリーブ油を使いますが,この油はでき上がった料理の風味を増すためにも使われます。
ギリシャ風のサラダ
典型的なギリシャ風のサラダは生野菜で作りますが,その中には緑色野菜,細かいみじん切りのセロリの茎,薄く切ったきゅうり,ごく薄く切った玉ねぎ,縦に輪切りにしたトマト,薄く切ったピーマン,大根,パセリなどが入っています。
サラダは大皿に盛りますが,中央が山のように盛り上がるように整えます。まず最初に,大きなレタスの葉を皿の上に敷き,次に残りのレタスを小さくちぎったのを中央にこんもりと盛り,その上にほかの野菜をのせます。
サラダの調味料には,オリーブ油とレモンジュース(好みにより酢も使われる)のドレッシングに,オレガノや塩やこしょうなどを一緒に使います。大皿にはレモン1個分のジュースと1/3カップ分のオリーブ油が必要です。サラダの飾りつけにはアンチョビーや黒オリーブの実,フェタと呼ばれる,やぎの乳で作った,柔らかい,塩味の白いチーズの小片が使われますが,このチーズは簡単に粉々になり,独特の味わいをサラダに添えます。(ブルーチーズの小片をフェタの代用として使うこともできます。)
スープとレモンソース
多くの場合,スープが主要な料理で,厚切りのパンや典型的なギリシャ風のサラダを添えて食べます。大豆,エンドウ,レンズ豆などのスープは一般的です。好物のスープは,スーパ・アブゴレモノと呼ばれる,レモンの風味のあるチキンスープです。このスープは今では世界中のいろいろな場所の人々にも好まれています。
このレモン・チキンスープの簡単な作り方は次のとおりです。半カップ分の米をぬるま湯で洗い,15分間浸して置き,それから水を切ります。次いで,6カップ分の鶏のスープを煮たたせ,米を加え,弱火で15分間煮て,塩とこしょうで調味します。
今度はレモンと卵のソースを作りますが,まず2個分の卵白を十分にあわ立てます。十分にあわ立ったなら,次に卵黄を静かに卵白に加え,さらにあわ立てます。それから,大さじ2杯分のレモンジュースを加えて除々にあわ立てながら混ぜ合わせます。約1カップ分の熱いスープを除々に加え,固まらないように絶えずかき混ぜます。残りのスープを加え,煮たたせないようにしながら,休みなくかき混ぜます。
このおいしいスープの作り方はいろいろあります。料理人の中には鶏の背骨と手羽で独特のチキンスープを作るのを好む人もいれば,またほかには玉ねぎ1個をみじん切りにし,セロリの茎を1本乱切りにし,にんじんを2本乱切りにしてスープを作るのを好む人もいます。
ギリシャ風の肉料理
子羊の肉はローストにしたり,串焼きやあぶり焼きにするなどいろいろ違った仕方で料理されます。ギリシャ人でない人が子羊の肉を料理すると,多くの場合,肉のにおいが強すぎるのに,ギリシャ人が料理した子羊の肉を食べると,たいへんおいしくて,口当たりがよいことに気づくものです。それはギリシャ人の料理の仕方のせいです。
子羊のもも肉をローストにする場合,強いにおいを消すには脂肪を全部切り取ってしまいます。小さなナイフの先で肉に16か所くらい切れ目を入れ,にんにく4かけらを縦切りにして,その細片を切れ目にはさみ込みます。また,にんにくの細片と共に少量の塩とこしょうを入れます。レモンジュース,タイム,バター,少量の塩とこしょうを肉にすり込み,時々レモンジュースとバターを塗りつけます。肉汁が外に出ないようにするには,もも肉をアルミ箔で覆います。そして,オーブンに入れて摂氏200度で約3時間焼きます。
アルニ・スブラキアと呼ばれるギリシャ風のシシカバブを好む人は大勢います。この料理を作るには,厚切りの子羊の肉をオリーブ油とレモンジュースとぶどう酒を混ぜた汁につけて置きます。次いで塩,こしょう,少量のオレガノで調味し,串にさして,赤々と燃える炭火で焼きます。こうして料理する間,時々オリーブ油を肉に塗ります。
ラムチョップやステーキをギリシャ風の味にしたいと思われるなら,好みの焼き具合いに焼いたのち,細かく砕いたオレガノとレモンジュースをふりかけます。焼いたり,いためたりしたレバーもオレガノとレモンジュースで調味できます。鶏肉をローストにする場合には,バターとレモンジュースを塗りつけますが,オレガノを少しふりかけるのを好む料理人もいます。
ローストやステーキに変わったソースを使いたいのでしたら,次の方法を試してください。バターか油を温め,それに一かけらか二かけらのおろしたにんにくを加えます。その上におろしたセロリを少しと,みじん切りにした玉ねぎ少量を加え,ゆっくりいためます。よくいためたなら,かん詰めのトマトと少量のトマト・ペーストを混ぜ合わせます。ソースを温めて混ぜるときにオレガノを少し加えます。これで,肉にも野菜にも合う本当においしいソースができ上がりです。
ギリシャで最も一般的な料理の一つはムサカです。これはオーブンで焼く料理ですが,まずなすびと子羊のひき肉をいためて数段重ね,トマト,オレガノ,そして少量のシナモンで調味します。その上にホワイトソースとおろしチーズをのせ,ふんわりときつね色に焼き上げ,温かいうちに四角に切って出します。
たいへん有名なギリシャ料理の一つは,ぶどうの葉に詰め物をする料理(ドルマテと呼ばれる)です。子羊の肉か牛肉のひき肉と米をぶどうの葉に包んで,レモンと卵のソースを添えて供します。
この料理を3,4人前作るには,約450㌘のぶどうの葉を用意します。(キャベツの玉を柔らかくゆで,葉を1枚ずつはがし,茎を切り取ってぶどうの葉の代用にすることもできる。)ぶどうの葉を使う場合には,まず葉をゆでて柔らかくします。およそ450㌘の子羊の肉か牛肉をひいたものと,半カップ分の(粒の細長い)米,半カップ分のバターを溶かしたもの,1カップのかん詰めトマトとその汁,1カップ半の熱湯,中位の大きさの玉ねぎの細かいみじん切り2個分,大さじ2杯のオリーブ油,大さじ2杯のミントの葉,あるいは細かいみじん切りのパセリ,塩,こしょうなどを用意します。葉と水以外の材料を全部混ぜ合わせます。
それから,混ぜ合わせたものをぶどうの葉に一つずつ包みます。詰めものが葉の中におさまるように上端と両脇を封筒のように折り曲げます。このようにして詰め物を包んだものをフライパンか料理用鍋に数列並べて水を注ぎ,(包んだものが動かないよう)耐熱性の重い皿とふたで覆います。そして,とろ火にかけ,鍋の中でぐつぐつと約1時間,あるいはお米が煮えるまで煮ます。
また,既に述べた方法で卵とレモンのソースを作ります。しかし,この場合には卵を2個ではなく3個使いたいと思われるかもしれません。このソースはいつの場合でも肉や野菜を料理した汁で作るということをお忘れにならないでください。ですから,ぶどうの葉の包みを煮たあとの熱い汁を使いますが,ソースを煮たたせないようにしてください。ソースの酸味はレモンジュースの量によって加減してください。そして,シチューなべにぶどうの葉の包みを入れ,その上に卵とレモンのジュースのソースを注ぎます。これで,ぶどうの葉を用いた料理を食卓に出せます。
ギリシャ料理の作り方は料理をする人によってそれぞれ異なりますが,材料は基本的に言って同じだということを覚えておいてください。実際,ギリシャの主婦はいちいち調理法に従って料理することはめったにありません。記憶に頼り,工夫をしながら料理をするのです。トマト,トマト・ペースト,レモン,玉ねぎ,にんにく,タイム,オリーブ油などを手にすれば,たいていのギリシャの主婦はどんな料理にでも取りかかれますし,おいしい料理を作れます。
もちろん,ギリシャ料理も数ある料理法の一つにすぎません。どこかほかの国の調理法を試みてみたいと思われるなら,たいてい公共の図書館に行けば,世界中の調理法を説明した本を調べることができます。それで食事に変化を添えたいと望まれるのでしたら,ある食べ物をギリシャ風に料理してみてはいかがですか。