野菜料理 ― 中国風
最近,食品市場に行かれたことがありますか。欧米の大都市に住んでいる方なら特に,市場に変化が生じていることにお気づきかもしれません。見慣れたキュウリやにんじんのすぐ隣に,パクチョイ,さやえんどう,くわい,もやし,しょうがなど,なじみのない野菜が並んでいるかもしれません。
それらは中国の野菜です。そうした野菜のそばは通り過ぎてしまう料理人もあるかもしれませんが,少し冒険心のある人は,中華なべを買い込んで,自分で中国料理を試みています。少しの練習で,あなたも家族のために本当に喜ばれる食事を,しかも驚くほど安い費用で作ることができます。中国料理は野菜を上手に利用するからです。どうしてそう言えるのでしょうか。
中国料理の幾つかのこつ
欧米の人たちは,野菜を煮ると大抵その汁を捨ててしまいますが,そのようにすると,風味や水に溶ける滋養分がむだになります。中国の人は野菜を炒めるのです。伝統的な調理器具は中華なべですが,普通のフライパンでも満足のゆく結果が得られます。炒め煮にすると,風味と滋養分が逃げないうえに野菜が煮えすぎず,しかも柔らかくて歯切れがよいため,多くの人に好まれます。材料を強火で炒めたあと,少量の水またはだし汁を加えてふたをし,とろ火でちょっと煮ます。そして次にかたくり粉の水溶きを入れ,とろみをつけます。このようにすると,食べる時に調味料が食物に満遍なくからまっています。
中国料理のもう一つのこつは味つけにあります。例えば,しょうがを入れると風味がよくなり,そのうえ薬効もあると考えられています。しょうがの味を加える方法は,好みによっていろいろですが,かすかに匂う程度にしたい時は,フライパンに大さじ二,三杯の油を熱し,しょうがを一切れ加えます。熱い油でしょうがの風味が出るのです。それからしょうがを取り出し,風味のついたその油で材料の野菜を炒めます。
しょうがの風味を強めにしたい時は,しょうがを入れたまま炒めればよいわけです。食卓にもそのまま出すことがありますが,しょうがは食べません。3番目の方法は,角砂糖大のしょうが1個の皮をむき,それをみじんに切り,煮汁に入れて混ぜます。
生のにんにくも,以上のような方法で加えることができますが,にんにくは焦げやすいので,火を弱くする用心が必要です。
しかし,中国料理は決して厳格な菜食主義ではありません。肉と野菜の取り合わせは,中国料理の中でも一番人気があります。肉は野菜の風味を一層高め,野菜は少ない肉の量を増やす役目をします。費用の節約を第一に考えていないとしても,野菜を多く,肉を少なく食べることは,カロリーとコレステロールの摂取量を苦労せずに減らす方法です。
肉と野菜の取り合わせは,牛肉とブロッコリー,ステーキ用の肉とピーマン,えびとさやえんどう,鶏肉と野菜のミックスなど,幾らでもあります。
鶏肉と野菜の料理
骨のない鶏肉を使って作る,非常においしい料理が幾つかあります。鶏肉とマッシュルームの炒め煮などもそうです。これには新鮮な生の鶏肉を一羽全部,あるいは胸やももの部分を使います。まず皮を取り,その皮をゆっくり炒めて脂肪を出します。この脂肪は炒めものなどに使われ,中国の人々は,落花生油に次いでこの脂肪の風味を好みます。よく切れる包丁で肉を骨から切り離します。骨はスープや,東洋風の野菜を煮る時のだし汁を取るのに使われます。次に肉をみな一口ほどの大きさに切ります。
しょうゆ,ぶどう酒,砂糖を合わせたつけ汁に切った肉をつけ,かたくり粉を振り込んで混ぜ,30分ほどおきます。中華なべまたはフライパンに脂肪か油を熱し,肉を入れて炒め,炒めながら肉をほぐします。炒めた肉はなべから出し,別にしておきます。
なべに油をつぎ足し,かなり熱くなるまで熱してしょうがの薄切りを加え,30秒ほど炒めます。なべが熱い間に野菜を一度に全部加え,さっと炒めます。すると油がさめますから,みじん切りのにんにくを加えてもにんにくは焦げません。それからさらに1分ほど炒めます。次に,煮立っただし汁を加えてふたをし,とろ火でもう1分間煮ます。そしてふたを取り,次の五つの調味料を入れ,かきまわしながらかたくり粉の水溶きを徐々に加え,ほどよいとろみがついたら入れるのをやめます。最後に,炒めてあった鶏肉を入れ,肉が温まる程度に熱します。そして熱いご飯と一緒にすすめます。
もちろん勘を養うには,自分で料理を作ってみる以外にありません。自分で作ればそのうちに,別の異国風の料理を試してみる自信が生まれるでしょう。
ですから中国風の野菜料理を自分で試してみてください。家族に愛を示す方法がもう一つ増えることになるでしょう。家族が喜んでくれれば,料理のレパートリーをさらに増やそうという意欲もわくことでしょう。
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鶏肉とマッシュルームの炒め煮の材料:
つけ汁に入れるもの:
鶏肉……1カップ半から2カップ
しょうゆ……大さじ1杯半
ぶどう酒……大さじ1杯半
砂糖……小さじ1杯強
かたくり粉……大さじ2杯
このほかに:
しょうがの薄切り……2切れ(なくてもよい)
パクチョイa……4カップ
セロリの薄切り……2分の1カップ
新鮮なマッシュルームの薄切り……1カップ,またはかんづめのマッシュルーム……2分の1カップ
くわい……4分の1カップ
竹の子……4分の1カップ(なくてもよい)
さやえんどう……100㌘強
にんにく……大1片,みじん切り
鶏のだし汁……2カップ
塩……小さじ4分の3
砂糖……小さじ1杯強
しょうゆ……小さじ1杯
ごま油……小さじ1杯
ぶどう酒またはシェリー酒……小さじ2杯
かたくり粉4分の1カップを水4分の1カップで溶いたもの
[脚注]
a もしあなたの住んでいる地方でパクチョイが手に入らなければ,代わりに白菜,セロリ,キャベツなども使えます。くわいや竹の子は,かんづめになったものが食品棚にあるかもしれませんが,もしなければ,この料理の場合,省いても全体の味は変わりません。さやえんどうが手に入らないところでは,さやごと食べられる豆なら何でも使うことができます。