昔の敵に対する神の女の勝利
「わが敵人よ我につきて喜ぶなかれ我仆るれば興あがる幽暗に居ればエホバ我の光となり給ふ」― ミカ 7:8
1 どんな二人の女が昔から互に敵となっていますか。この敵対関係についてどんな質問が起きますか。
4200年のあいだ神の女は昔からの敵と向かい合ってきました。そしてたいていの場合,昔からの敵である女は神の女に対して優勢のように見えました。今日二人の女は互にどんな地位を占めていますか。二人の敵意が消滅するのは何時ですか。それはどのように無くなりますか。妥協点を見出して友好関係を結び,共存に努めることですか。あるいは一方が滅ぼされて,他方が永久の勝利を得ますか。単なる二人の女が自分たちのことで争い合っているのならば,争いの結果がどうなろとう私たちには余り関係ありません。しかしこれはそうでないのです。その結果は私たち全部に関係します。そう思っても思わなくても,私たちすべてはいずれか一方の女とかかわりを持たない訳にはいきません。二人に対してどんな関係を持つべきかを知ることが必要です。しかも今すぐに知らねばなりません。しかしどうすれば知ることができますか。
2 (イ)この問題について知る手がかりはどこにありますか。(ロ)だれが勝利を得ますか。人類にどんな結果が及びますか。
2 この問題についてもれなく書きしるされている本があります。それはどの本ですか。それは女性が存在するようになり,私たち全部の母となった由来を述べている本です。女性に関して,この本は他のどんな本にもまさる健全なさとしを与えています。それは聖書です。その最初の本創世記から最後の本黙示録にまでわたって,この二人の女の間に敵意が始まり,さまざまの曲折を経,遂に神の女が昔の敵である女に対して輝かしい勝利を得るまでのことがしるされています。それで私たちはその一人と共に勝利を得るか,あるいは他方と共に敗北を蒙むるかを前以って知り得るのです。敵の女と共に敗れるならば,私たちに永遠の将来はありません。神の女と共に勝利を得るならば大いなる父である神の宇宙的家族の中で至上の幸福に包まれた,終りのない生命が保証されます。
3 (イ)敵の女の正体をいま知ることができますか。(ロ)「神の女」という言葉をどのように理解してはなりませんか。
3 この敵の女とはいったいだれですか。それは長いあいだ神秘でしたが,いまではその正体を明らかにできます。また神の女とはだれですか。「神の女」という言葉は昔の預言者モーセ,エリヤ,エリシャ,さらにはクリスチャンの監督テモテが「神の人」と呼ばれたのと同じ工合に,女の人を指すのですか。そうではありません。この場合の女は神の妻であるという意味で神の女なのです。しかし天の神は何時から婚姻されているのですか。神の妻とはだれですか。それは私たちの崇拝すべき女神ですか。これらの質問には当然に答が要求されます。しかしまず注意して下さい。世の国々の神話には神々とその妻である女神が出てきますが,神の女をそれと同じように考えてはなりません。神ご自身の本である聖書によれば,神の妻はそれとは全く異なったものです。
4 どんな事情の下で,またどんな言葉を用いて,神はご自身の女のことをはじめて人類にお告げになりましたか。
4 人類の歴史が始まって間もない頃,神はご自分の女すなわち妻のことを述べられました。その場所はエデンの園です。最初の人間アダムとエバは偽りを語った蛇にさそわれたために罪を犯しました。天の父である神は,そむいた地上の息子と娘をおしらべになり,二人は神の律法を破ったことを認めます。二人が罪を犯したのは偽りを語った蛇のためですが,偽りを語ったのは地をはう蛇ではなく,蛇の背後には,知性のある,見えない者がいました。この偽り者,そしる者,神の敵対者にむかって,神は文字通りの蛇に対する言葉で次のように言われました。「おまえは腹で這いあるき,一生,ちりを食べるであろう。わたしは恨みをおく,おまえと女とのあいだに,おまえのすえと女のすえとの間に。彼はおまえのかしらを砕き,おまえは彼のかかとを砕くであろう」。(創世 3:14,15,新口)ここに言われている女とはだれですか。
5,6 (イ)自分がその女であると考えることは,エバにとってなぜできないことですか。(ロ)天の女の存在は,どのようにエバに明らかになり始めましたか。
5 肉体を持つ女エバは,自分がこの女であると考えたかも知れません。しかし父である神に罪を犯したエバが,はたして「神の女」になれますか。はじめからエバはアダムの妻であり,神の妻ではありません。
6 エバは別に女が存在していることを理解できませんでした。この女はエバの目に見えなかったからです。彼女は天にいました。それでエバのように肉体を持って地上に住むのではありません。この女の存在を示す証拠は,エバが夫と共にエデンの園を追われたとき,エバの前にはじめて現われました。そのときエバのかつて見たことのない人が見えないところから突然に現われ,番人として園の入口に立ちました。それはどうして起きたのですか。それは神の奇跡でした。創世記 3章24節は次のように述べています,「神は人を追い出し,エデンの園の東に,ケルビムと,回る炎のつるぎを置いて,命の木の道を守らせられた」。(新口)これらのケルビムは神の天の女の代表者でした。聖書全巻にしるされた記録によれば,この「女」は,見えない大いなる蛇のかしらを砕くすえを生み出す者となったのです。
7,8 どなたがエバの妻を私たちに紹介していますか。どんな手段によって?
7 神に天の妻があるということは,私たちの考えではありません。神ご自身が婚姻状態また妻のことをお告げになっています。また私たちにいわばご自身の妻を紹介なさっています。神はキリスト前8世紀に預言者イザヤを用いて,そうされました。キリストが神の小羊として苦しみを受け,ついで栄光を受けることを預言したのち,預言者イザヤは神の女に向かって次のように語りかけています。
8 「なんぢ孕まず子をうまざるものよ歌うたふべし,産のくるしみなきものよ声をはなちて謳ひよばはれ,夫なきものの子はとつげるものの子よりおほしと,こはエホバの聖言なり,なんぢを造り給へる者はなんぢの夫なり,その名は万軍のエホバ,なんぢを贖ひ給ふものはイスラエルの聖者なり,全世界の神と称へられ給ふべし,エホバ汝をまねき給ふ,棄てられて心うれふる妻また若きとき嫁ぎてさられたる妻をまねくが如しと,此はなんぢの神の聖言なり,なんぢ苦しみをうけ暴風にひるがへされ安慰をえざるものよ,我うるはしき彩色をなしてなんぢの石をすえ青き玉をもてなんぢの基をおき くれないの玉をもてなんぢの櫓をつくり,むらさきの玉をもてなんぢのの門をつくり,なんぢの境内はあまねく宝石にてつくるべし 又なんぢの子らは皆エホバに教をうけ,なんぢの子らのやすきは大ならん」― イザヤ 54:1,5,6,11-13。
9 イエス・キリストはイザヤの聖句を引いて,それをどのように適用しましたか。
9 神の小羊イエス・キリストはイザヤのこの預言を引用して,神の女の子となる者はすべて神のみ子であるご自分のもとに来ると言われました。イエスの奇跡によってパンと魚から食物を得たカペナウムのユダヤ人に向かって,イエスは言われました,「わたしは天から下ってきたパンである……わたしをつかわされた父が引きよせて下さらなければ,だれもわたしに来ることはできない。わたしは,その人々を終りの日によみがえらせるであろう。預言者の書に,『彼らはみな神に教えられるであろう』と書いてある。父から聞いて学んだ者は,みなわたしに来るのである」― ヨハネ 6:24,25,41-45。
10 イザヤの預言の中で,神の女を象徴するため,何が用いられていますか。このように象徴された彼女は何を経験しますか。
10 イザヤの預言の中で神の女に与えられた神の言葉は,彩色をなして彼女の石をすえ,青い玉をもってその基をおき,くれないの玉をもってその櫓をつくり,むらさきの玉をもってその門をつくり,その境内をあまねく宝石でつくると述べています。このことから神の女は都市によって象徴されていることが明らかです。都市によって象徴される神の女は,苦しめられ,嵐にもてあそばれ,慰められず,子供すなわち住む者のない状態を経験します。彼女は再びその神エホバのものとなるために,贖われることが必要です。やはり夫のことを述べたエレミヤの預言(3:14,20; 31:32)はイスラエル民族に語りかけたものですが,イザヤの言葉はそれと異なり,イスラエル民族に対するものではありません。その点に注目して下さい。預言者イザヤによって告げられた神の言葉は,子供のないうまずめの状態から救われ,子供たちつまり住む者で満ちた都にむかって語られています。そして夫であるエホバご自身が彼女の子供たちを教えられます。
11 「都市」とは何ですか。更にどんな質問が起きますか。
11 都市はひとつの組織であり,従って神の女は女の性質を備えた一人の人ではなく,人々の組織であって,その人々は「しげくつらなった町」として結びついています。(詩 122:3,新口)さてこの組織はどこにあるのですか。それはイザヤまたエレミヤの時代のイスラエル民族のように地上にあるものですか。
神の女は明らかにされた
12,13 都市を女にたとえたパウロは,地上のエルサレムが神の女ではないことをどのように示していますか。
12 文字に書かれた神ご自身のことば聖書は,神の妻のごとき組織がどこにあるかを明らかにしています。神の女はこの地上にある肉のイスラエル民族ではありません。クリスチャン使徒パウロは前述のイザヤの預言を引用してその事を示しています。このユダヤ民族は今日新しいエルサレムの町を首都とし,旧来のエルサレムは回教国ヨルダンのものになっています。使徒パウロが都市を女にたとえ,地上のエルサレムは神の女ではないことを示しているのに注意して下さい。ヘブル人の先祖アブラハムの妻サラと,その仕女エジプト人の女ハガルとをたとえに用いて,パウロは霊的クリスチャンに次のように書いています。
13 「アブラハムにふたりの子があったが,ひとりは女奴隷から,ひとりは自由の女から生れた。女奴隷の子は肉によって〔年齢の上から見てまだ子供を産むことのできたハガルによって〕生れたのであった。さて,この物語は比喩としてみられる。すなわち,この女たちは二つの契約をさす。そのひとりはシナイ山から出て,奴隷となる者を産む。ハガルがそれである。ハガルといえば,アラビヤではシナイ山のことで,今のエルサレムに当る。なぜなら,それは子たちと共に,奴隷となっているからである。しかし,上なるエルサレムは,〔サラのように〕自由の女であって,わたしたちの母をさす。すなわち,〔イザヤ書 54章1節に〕こう書いてある,『喜べ,不妊の女よ。声をあげて喜べ,産みの苦しみを知らない女よ。ひとり者となっている女は多くの子を産み,その数は,夫ある女の子らよりも多い』。兄弟たちよ。あなたがたは,イサクのように,約束の子である。しかし,その当時,肉によって生れた者が,霊によって生れた者を迫害したように,今でも同様である。しかし,聖書はなんと言っているか。『女奴隷とその子とを追い出せ。女奴隷の子は,自由の女の子と共に相続をしてはならない』とある。だから,兄弟たちよ。わたしたちは女奴隷の子ではなく,自由の女〔上なるエルサレム〕の子なのである」― ガラテヤ 4:22-31,新口。創世 21:1-10。
14,15 第二の証人は,エホバの妻をどのように明らかにしていますか。
14 これは神の女すなわちエホバの妻が天の組織であることを明らかにしています。聖書はこれを「上なるエルサレム」と呼んでいるのです。この事実を更に裏づける言葉が,ヘブル人のクリスチャンに宛てられた霊感の手紙にしるされています。まずアラビアのシナイ山に言及して,ヘブル書 12章18-28節の一部は次のように述べています。シナイ山はイスラエル民族と結ばれた神の律法契約の十戒が与えられたところであり,つかえ女ハガルによって表わされている山です。
15 「あなたがたが近づいているのは,手で触れることができ,火が燃え,黒雲や暗やみやあらしにつつまれ〔た〕 ……山ではない…しかしあなたがたが近づいているのは,シオンの山,生ける神の都,天にあるエルサレム,無数の天使の祝会,天に登録されている長子たちの教会,万民の審判者なる神,全うされた義人の霊,新しい契約の仲保者イエス,ならびに,アベルの血よりも力強く語るそそがれた血である……あの時には,御声が地を震わせた。しかし今は,約束して言われた,『わたしはもう一度,地ばかりでなく天をも震わそう』。この『もう一度』という言葉は,震われないものが残るために,震われるものが,造られたものとして取り除かれることを示している。このように,わたしたちは震われない国を受けているのだから,感謝をしようではないか。そして感謝しつえていこう」。つ,恐れかしこみ,神に喜ばれるように,仕
16 (イ)ヘブル書 12章18-28節のどんな言葉は,神の女が天の組織であることを証明していますか。(ロ)サタンに対するエホバの宣告の言葉は,神の女とそのすえにとって何を意味しますか。
16 上なるエルサレムはここで「生ける神の都,天にあるエルサレム」と呼ばれています。それは「無数の天使」より成る天の組織です。天使のこの組織は,ほとんど6000年前エデンの園で神が大いなる蛇に宣告を下したとき,天にあってエホバ神と共にいました。それでエホバが蛇と「女」の間に敵意をおき,女のすえが蛇のかしらを砕くと言われたとき,エホバの女すなわち妻は天でエホバと共にいたのです。彼女はこの事を成し遂げるすえを生み出す「女」でした。この勝利を得る者として彼女が直接に生み出したのは,神の独り子でした。地上においてイエス・キリストとなった神の独り子は,「わたしは天から下ってきたパンである」と言われました。
17 (イ)何時そしてどのようにイエスは,天のエルサレムの霊的な初子となりましたか。(ロ)何時イエスは完全な資格を備えた子となりましたか。
17 この事の第一歩は紀元前2年のイエスの誕生でした。しかし30年後の西暦29年になって天のエルサレムは,イエスをその最初の霊的な子として生み出しました。その年にイエスが水のバプテスマを受けたとき,天の父は聖霊をそそいでイエスを霊的な子として生み出しました。「これはわたしの愛する子,わたしの心にかなう者である」と言われた神の声は,そのことを宣言するものです。3年半ののち,大いなる蛇の加えたかかとの傷を神がいやして,イエス・キリストを死から天の霊者の生命によみがえらせたとき,天のエルサレムは十分の資格を持つ霊的な子としてイエスを生み出しました。そのとき天のエルサレムは,天に住む天使たちの組織の中にイエスを迎え入れました。しかしこの度は天使のおさたる者,天使長の地位にある者としてイエスを迎え入れたのです。―マタイ 3:13-17,新口; 27:27–28:10。ペテロ前 3:18,19。
18 そのとき天のエルサレムは,サラと同じくどのように喜びましたか。
18 このすばらしい出来事に天のエルサレムが喜び,叫んだのは当然です。エデンの園においてすえが約束されて以来ずっと子のなかった彼女は,最も栄光のある御子をいま全く生み出しました。年老いたサラが独り子イサクの誕生を喜んだように,彼女は喜んだのです。
19 天のエルサレムは,他にどんな子供たちを持つことになっていましたか。
19 しかし使徒パウロはクリスチャンの兄弟に向かって,「兄弟たちよ。あなたがたは,イサクのように,約束の子である……だから,兄弟たちよ。わたしたちは……自由の女の子なのである」と述べました。(ガラテヤ 4:27,28,31,新口)この言葉から明らかなように,天のエルサレムは創世記 3章15節に記録された,女のすえに関するエホバのお約束を成就して更に多くの子たちを持つことになっていました。
20 他の霊的な子たちは何時生み出され始め,エホバの女が喜び歌う理由となりましたか。
20 しかもイザヤ書 54章1節の預言の如く,彼女の子たちは,肉のイスラエル民族の形をとってエホバ神と一時のあいだ結ばれていた象徴的な奴隷の女の子たちよりも多いのです。創世記 3章15節に約束された他の霊的な子たちは,イエス・キリストの復活後50日を経た五旬節の日に生み出され始めました。そのときエルサレムで待っていたイエスの忠実な弟子120人の上に聖霊がそそがれたのです。(使行 2:1-39)そのときエホバはご自身の霊によってその人々を生み出すことをされました。これを見てエホバの女すなわち長いあいだ子のなかった天のエルサレムが大いに喜び,更に喜びの声をあげたのは当然でした。今年1964年,この霊的なすえの残れる者が地上におり,天において完全に生み出される時を待っています。
敵の女
21 (イ)神の女は何時から地上のエルサレムによって象徴されましたか。(ロ)敵の女は何時現われましたか。
21 天のエルサレムの敵となっている女は,いったいだれですか。また神の女がこの敵の女とはじめて相対したのは何時でしたか。キリスト前11世紀にダビデ王がエルサレムの要害を攻め取ってそこを首都として以来,神の女は地上のエルサレムによって象徴されるようになりました。事実,神の女はこの地上の都市の名で呼ばれるようになったのです。(サムエル後 5:1-9)地上のエルサレムの町の起源はサレムの町にあります。そこではキリスト前20世紀の族長アブラハムの時代に,王メルキゼデクが「いと高き神の祭司」となっていました。(創世 14:17-20,新口)しかし神の女すなわち天のエルサレムはもちろんその前から存在しています。敵の女は昔のサレムの時代にすでに存在しており,族長アブラハムの行きめぐった土地も,敵の女が支配した領域の一部でした。敵の女が現われたのは,アブラハムの生れるおよそ200年前です。
22 (イ)敵の女はどうして古代都市バビロンにちなむ名を持つようになりましたか。(ロ)敵の女が実際の都市よりも大きいことは何から見てわかりますか。
22 聖書の最後の本によれば,敵の女は地上の都市の名前で呼ばれています。大いなるバビロンという彼女の神秘的な名前は,キリスト前23世紀にシナルの地ユーフラテス河畔に建設された都市バビロンから出ているのです。この都市は大いなるバビロンの象徴となりました。しかし大いなると呼ばれている以上,敵の女はユーフラテス河畔にあった実際のバビロンよりも大きいのです。昔のバビロンは廃墟と化して1000年以上経っていますが,敵の女は今でも存在しています。(黙示 14:8; 17:5)たしかに大いなるバビロンの起源は古代バビロンにありますが,大いなるバビロンは昔の驚異の都よりも大きく,長い生命を保ち,世界に大きな力を及ぼしています。
23 だれがバビロンを建設しましたか。町の建設者の目的は何でしたか。
23 ノアの時代の世界的洪水の次の世紀に,この河畔の都市は建設されました。その建設者はかの敬虔な人ではなく,彼の曾孫で野心を抱いた反逆の人ニムロデでした。その建てた町は大洪水後の最初の都市として聖書に出ており,ニムロデの王国のはじめとなりました。(創世 10:8-12)それは人の住みかとして造られた地に関する神のお目的を阻止する目的で建てられたのです。それは町の建設者が「町と塔とを建てて,その頂を天に届かせよう」としたことからもわかるように,偽りの宗教の中心地となりました。この企てはノアの神の名をあげるためではなく,町の建設者たち,とくに「エホバの前にありて権力ある猟夫」と呼ばれるようになった王ニムロデの名をあげるために進められました。
24 エホバがこの計画を喜ばれなかったことは,どのように示されましたか。その結果どんな混乱が起きましたか。
24 天のエホバ神とエホバ神の女は,この企てを喜ばれず,この町を祝福しませんでした。そこで神の不興を示し,この企てを阻止するために神は建設者の言語を乱しました。互に話が通じなくなり,一緒に働くことのできなくなった建設者は,少数の人をニムロデの支配下の町に残して,おのおのの言語に従い散って行きました。この宗教の中心地で人々の言語が乱され,しばらくのあいだこの町には混乱がつづいたため,その名は混乱と呼ばれるようになりました。ノアおよびその忠実な息子セムの言語ヘブル語で,バベルは混乱を意味します。はじめてギリシャ語に訳されたヘブル語聖書の中で,その名前はバビロンとなっています。―創世 11:1-10。
25 (イ)散らされた塔の建設者は何を携えて行きましたか。(ロ)その結果,何時またどのように大いなるバビロンは敵の女として現われましたか。
25 ニムロデ王はバベルすなわちバビロンを中心として八つの都市を含む小規模な自分の帝国を建設しました。エホバに敵対するものであったニムロデ自身の宗教は,もちろんニムロデの帝国で栄えました。しかしバビロンの偽りの宗教はそれよりも広範囲にひろまりました。言葉を乱されて遠いところに散らされた建設者たちは,バビロンの宗教を携えて行きました。ただ彼らの言語だけが新しかったのです。その宗教思想は前と同じであり,ただ異なる言語で表現されたに過ぎません。それはどんな結果になりましたか。バビロンの宗教を共通の基盤とした偽りの宗教の世界帝国が形成されました。それはさまざまの複雑な組織を持っていますが,教義また宗教行事の面から見ると,いずれも根本的にはバビロンのものです。ここに大いなるバビロンは闘争の場に姿を現わしました。ここで神の女である天のエルサレムすなわちシオンは,敵の女すなわち古代バビロンの宗教に基づく偽りの宗教の世界帝国と向かい合うようになったのです。
26 バビロン的宗教の世界帝国を支配しているのはだれですか。
26 バビロンとその宗教的な塔の建設の背後にあり,またその偽りの宗教の背後にいたのは大いなる蛇,偽り者のサタン悪魔でした。サタン悪魔はバビロンとその偽りの宗教の見えない神であり,聖書にいう「この世の神」(コリント後 4:4,新口)となりました。それで今なおバビロン的宗教の世界帝国を支配しています。
27 (イ)神の女の宗教は何ですか。(ロ)地上でだれがその宗教を実践しましたか。その人々の宗教はなぜ反対を受けましたか。
27 これとは正反対に神の女すなわち天のエルサレムの宗教は,その夫であり唯一の真の神であるエホバの崇拝です。この宗教は地上で手ごわい反対にあいました。大洪水の後,宗教の対立が始まったのです。地上において敵対する宗教から反対にあっても,天のエルサレムすなわち神の女は直接に影響を受けませんでした。ただ地上にはノア,セム,セムの子孫である族長アブラハムなど,神の女の宗教を実践する人々がいました。このような敬虔な人々とその家族はその宗教のために大いなるバビロンの反対を受け,直接の影響を受けたのです。この敵の女がノア,セム,アブラハムおよびその敬虔な子孫に対してしたことは,神の女に対してしたのと同様でした。これら忠実な人々の家系から神の女のすえが出ることになっていたために,とくにそう言えます。
28 アブラハムは人類のどの系統から出ましたか。エホバはアブラハムに何を約束されましたか。
28 ノアが息子のセムを祝福したことから,この地上に人間として現われるときの神の女のすえは,ヤペテとハムではなくてセムの系統から出ることがたしかになりました。(創世 9:24-27)セムの生涯中にエホバ神はセムの子孫アブラハムをシナルの地バビロンの近在から導き出されました。アブラハムを導き出したとき,エホバはアブラハムに言われました,「わたしはあなたを大いなる国民とし,あなたを祝福し,あなたの名を大きくしよう。あなたは祝福の基となるであろう……地のすべてのやからは,あなたによって祝福される」。バビロンから西に何百かマイルも離れた約束の地にアブラハムが着いてのち,エホバは「わたしはあなたの子孫にこの地を与えます」と言われました。
29 (イ)エホバは,約束のすえがアブラハム,イサクから出ることをどのように確かにされましたか。(ロ)大いなるバビロンは,なぜアブラハムの子孫に敵対しましたか。
29 30年以上ののち,アブラハムがエホバの命ぜられた通りに独り子のイサクを犠牲にしようとしたとき,エホバの天使はアブラハムをとどめて言いました,「わたしは大いにあなたを祝福し,大いにあなたの子孫をふやして,天の星のように,浜べの砂のようにする。あなたの子孫は敵の門を打ち取り,また地のもろもろの国民はあなたの子孫によって祝福を得るであろう。あなたがわたしの言葉に従ったからである」。(創世 12:1-3,7; 22:1-18,新口)これによって,神の女のすえがアブラハムおよび息子のイサクの系統から地上に人間として現われることが確かになりました。このすえが権力を得るとき,大いなる蛇,サタン悪魔すなわち大いなるバビロンは打撃をこうむります。この理由で神の女の敵である女は,すえとすえの生れる家系に敵対しました。
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アブラハムは奴隷の女ハガルとその子イシマエルを去らせる