清められる地
1,2 地上にはどんな状態が見られますか。人間はどうして地を清めることができないのですか。
わたしたちは,汚染され,汚された地に住んでいます。このことを否定できる人はほとんどいません。河川や湖沼,海洋や大気などの文字どおりの汚染という観点からだけでなく,倫理的な意味においてもそういえます。高位者の腐敗,道徳的退廃,また疾病も見られますし,殺人や戦争による流血で地は汚されています。―民数紀略 35章33,34節と比べてください。
2 地を清めるには何が必要ですか。その点では人間は役に立ちません。なぜなら,人間は腐敗の源に触れることができないからです。人間の手の届かないその源とは何ですか。聖書は,「マゴグの地」と呼ばれる,目に見えない領域が問題の出所であることを示しています。ゴグ,すなわち天から放逐されたサタン悪魔は,その見えない領域に住む者たちの首領と呼ばれています。その領域に住んでいる者たちとはだれですか。それは悪魔の仲間の悪霊,つまり邪悪な霊者たちです。彼らは,神に反抗して滅びの宣告を受けたみ使いたちです。(ペテロ前 3:19,20。ペテロ後 2:4。ユダ 6)イエスが地上におられた当時,それらの悪霊が人類を悩ましていたことを示す証拠があります。―ルカ 4:33-35; 8:27-33。
3 悪霊の反対はどのようにしてその最高潮を迎えようとしていますか。
3 今日,神に対するそれら悪霊の敵対行為や地を悩ますそのしわざは,最高潮を迎えようとしています。なぜですか。なぜなら,その滅びが非常に近づいているからです。また,今では彼らの活動は,この地球だけに限られているからです。人間の目には見えない,その限られた領域は,聖書では「マゴグの地」と呼ばれています。サタン悪魔はその地の君です。「諸国民の定められた時」が1914年に終わって,イエス・キリストの手に神の王国が立てられるとともに,悪霊たちはその君であるサタンもろとも「地に投げ落とされ」ました。すてばちになった彼らは,正しい物事すべてに反対し,また神の真の崇拝と関係のあるものすべてを除こうとして,世を退廃状態に陥れています。聖書はこう述べます。「地と海には災いが来る。悪魔が,自分の時の短いことを知り,大きな怒りをいだいてあなたがたのところに下ったからである」― 黙示 12:5,7-12,新。
4-6 (イ)エホバはなぜ事態がそれほどまでに進展するのを許しておられるのですか。(ロ)エホバはご自分が行なおうとしていることをどのように描写しておられますか。
4 「ゴグ」の及ぼす影響は非常に強力ですから,聖書では彼は「この事物の体制の神」と呼ばれています。(コリント後 4:4,新。ヨハネ伝 12章31節; 14章30節と比べてください。)使徒ヨハネは,「全世界(は)邪悪な者の配下にある」と書きました。(ヨハネ第一 5:19,新)ゆえに,たとえ支配者自身は気づかないにしても,人間の作り出した,地上のさまざまな政府の,人間による支配は,悪魔によって制御されてきました。したがって,それら人間の作った政府は神によって滅ぼされなければなりません。しかしエホバは,ゴグすなわち悪魔がそれら諸政府を結束させ,エホバのクリスチャン証人に対して直接公然と攻撃させる時まで待っておられるのです。そのようにして,それら諸政府は滅ぼされるにふさわしいことが,あらゆる観察者の目に明らかにされます。したがって,エホバはゴグに向かってこう言われます。
5 『〔主権者なる〕主エホバ言いたもう ロシ,メセク,トバルの君ゴグよ 見よ我汝を罰せん 我汝をひきもどし汝をみちびき汝をして北の極より上りてイスラエルの山々にいたらしめ 汝の左の手より弓をうち落とし右の手より矢を落ちしむべし 汝と汝のすべての軍勢および汝とともなる民はイスラエルの山々に倒れん 我汝をもろもろの類のあらき鳥と野の獣にあたえて食わしむべし 汝は野の表に倒れん 我これを言えばなり』― エゼキエル 39:1-5〔新〕。
6 ゴグがその地上の全組織を動かして,地上にいるエホバの代表者たちに攻撃を加えさせ,エホバに敵対させるとき,エホバはゴグをいわば『現行犯で』捕えます。地上のすべての人はそれを見ることができるでしょう。ゴグに組する人はすべて死ななければなりません。のがれる場所はどこにもありません。島々のように遠く離れた場所すら避難所とはなりません。
7,8 目に見えない領域である「マゴグの地」に住んでいる者たちについてはどうですか。
7 しかし,サタンの住んでいる,目に見えない領域,つまり「マゴグの地」についてはどうですか。「北の極」と呼ばれている,そのような孤立した所すら滅びを免れることはできません。エホバはこう言われます。
8 『我マゴグと島々に安らかに住める者とに火をおくり彼らをして我のエホバなるを知らしめん 我わが聖き名をわが民イスラエルのうちに知らしめ重ねてわが聖き名を汚さしめじ国々の民すなわち我がエホバにしてイスラエルにありて聖者なることを知るにいたらん』― エゼキエル 39:6,7。
9,10 エホバはだれを通して,またどのように『マゴグに火』を送りますか。
9 エホバの用いられる総司令官であるイエス・キリストは,悪魔を無に帰せしめる力と権威を兼ね備えた霊者です。(ヘブル 2:14)このかたを通してエホバは『マゴグに火』を送ります。このことは,黙示録 16章14,16節(新)および19章11-21節で予告されている「全能者なる神の大いなる日の戦争」の直後に起きます。その戦いの後,キリストはみずからゴグに対して行動を起こします。黙示録の記述が続けて述べるとおりです。
10 「それからわたしは,ひとりの使いが底知れぬ深みの鍵と大きな鎖を手にして天から下って来るのを見た。そして彼は,悪魔またサタンである龍,すなわち初めからのへびを捕えて,千年のあいだ縛った。そして彼を[地の近くの拘禁された場所から]底知れぬ深みに投げ込み,それを閉じて彼の上から封印し,千年が終わるまでもう諸国民を惑わすことができないようにした。これらのことののち,彼はしばらくのあいだ解き放されるはずである」― 黙示 20:1-3,新。
11-13 マゴグの軍勢の戦いの装備について預言は何と述べていますか。
11 地上に留まっている人たちはどんなにかほっとすることでしょう。しかし,その戦いで死んだ,ゴグの地上の組織のおびただしい数の人びとや,彼らの戦いの装備はどのようにして始末されるのでしょうか。預言は次のことを明らかにしています。
12 『〔主権者なる〕主エホバいいたもう 見よこれは来たれり成れり これわが言える日なり ここにイスラエルの町々に住める者いできたり 甲胄 大盾 小盾 弓 矢 手槍 手矛および槍を燃やし焼きこれをもて七年のあいだ火を燃やさん 彼ら野より木をとりきたることなく林より木をきりとらずして甲胄をもて火を燃やし またおのれを掠めし者をかすめ おのれの物を奪いし者の物を奪わん』― エゼキエル 39:8-10〔新〕。
13 エホバが宇宙内の他のあらゆる者の上にご自分の名を高める勝利を収めた後,前節で『イスラエルの町々に住める者』と呼ばれている,地上の生存者たちは確かに,死をもたらす忌まわしい戦いの道具を何一つ記念品として保存するようなことはしません。彼らはそうした道具を処分し,その材料は有益な用途に供します。
14-16 死人を埋めるのに「七月」かかることを述べた預言は,何を表わしていますか。
14 『あらき鳥』や「野の獣」が,殺された,神の敵たちのしかばねを存分に食べたのち,生存者たちは,しかばねを埋めるたいへんな仕事をするのでしょうか。エゼキエルの預言の次の箇所はどのように理解できますか。こうしるされているからです。
15 『[主権者なる主エホバいいたもう]その日に我イスラエルにおいて墓地をゴグに与えん これ往き来の人の谷にして海の東にあり これ往き来の人をさまたげん そこに人ゴグとその群衆を埋めこれをゴグの群衆の谷となづけん イスラエルの家これを埋めて地を清むるに七月を費やさん 国の民みなこれを埋め これによりて名をえん これわが栄光をあらわす日なり』― エゼキエル 39:11-13。
16 死者が非常に多いため,病気が発生する重大な危険もあることでしょう。また,その仕事は,地上に残っている比較的少数の人びとにとっては,あまりにも膨大なものでしょう。ゆえに,「七月」という表現は,おびただしい数の人びとが滅びることを単に示すことばづかいにすぎないことがわかります。そのうえ,イスラエルでは死骸は汚れたものとみなされていましたから,それを『埋める』ということは,ゴグとその不敬虔なしもべたちがもたらした汚れた状態からこの地を浄化することを意味しています。―民数 19:11-13。ペテロ後 3:13。
17 ゴグの群衆の谷に入れられる死人は,どのように『往き来の人をさまたげ』ますか。
17 地を汚し,また神を侮るゴグの攻撃に加わった者たちに関する記憶は,それら生存者たちにとって,ゴグの群衆の腐敗した死骸の発する悪臭のように,吐き気を催させるものとなるでしょう。それは比喩的にいって,『彼らの鼻の穴をさまたげる』でしょう。殺された者たちは永遠の汚名を着せられるのです。彼らを戦争の英雄として祭る記念碑などはありません。メシヤの王国のもとで地が完全に清められる情景を生き生きと描写するため,エホバはゴグの攻撃に生き残る者たちに関してこう述べておられます。
18,19 ハモナという町は何を表わしていますか。
18 『彼ら定まれる人を選ぶ その人国のうちをゆきめぐりて往き来の人とともにかの地の表にのこれる者を埋めてこれを清む 七月の終われる後かれら尋ぬることをなさん 国を行き巡る者往き来し人の骨あるを見るときは そのかたわらに標をたつれば死人を埋むる者これをゴグの群衆の谷に埋む 町の名もまた〔ハモナ〕ととなえられん かくかれら国を清めん』― エゼキエル 39:14-16〔新〕。
19 ハモナと呼ばれる町には,生き残って『国を清める』人たちが住みます。ハモナという名称の文字どおりの都市が設けられると考えるのは,合理的ではないようです。というのは,ゴグの攻撃とその軍勢の滅びは世界的規模のものである以上,生存者は全地の至る所にいることになるからです。むしろ,ゴグの群衆の谷沿いの,生きた人びとの住む,ハモナ(「群衆」の意)という町は,ゴグの群衆のおびただしい死人の群れとは対照的な,生きた人びとの組織を表わしているようです。
20-23 ハルマゲドン後,死者はおそらくどのようにして始末されますか。
20 ゴグの地上の群衆の中にいる者たちには,適切な懲罰が臨みます。彼らは人間を殺しただけでなく,全くの慰みのため,あるいは貪欲な商業主義のために動物をむやみに殺しました。エホバはさらにこう言われます。
21 『汝もろもろの類の鳥と野の獣に言うべし 汝ら集い来たり我が汝らのために殺せるところの犠牲に四方より集まれ 即ちイスラエルの山々の上なる大いなる犠牲に臨み肉を食らい血を飲め 汝ら勇士の肉を食らい地の君たちの血を飲め 牡羊 小羊 牡山羊 牡牛などすべてバシャンの肥えたるものを食らえ 汝らわが汝らのために殺せるところの犠牲につきて飽くまで脂を食らい酔うまで血を飲むべし。
22 汝らわが席につきて馬と騎者と勇士ともろもろの軍人にあくべしと〔主権者なる〕主エホバいいたもう』― エゼキエル 39:17-20〔新〕。
23 黙示録の預言もまた,サタンの地上の軍勢の滅びを描写して,「神の大きな晩さん」に来るよう鳥を招いています。(黙示 19:17,新)昔,神の公然の敵のひとりは,犬に食いつくされ,葬ろうとしたときには,ほんのわずかの骨を残すだけになっていました。(列王下 9:30-37)しかし,動物だけでは,ハルマゲドンで殺される者すべてを始末することは決してできません。そのため,全能の神は,意のままに用いうる高度に科学的な手段を行使して,腐敗したしかばねの残りを衛生的な仕方で速やかに除去するに違いありません。全地球的な大洪水を生き残ったノアとその7人の仲間は,箱船を出て地上でエホバの崇拝を再び開始した後,当時の世界的大災害の犠牲者たちを埋めるつらい仕事を課されなかったことが思い出されます。―創世 8:18-22。
24 ゴグのおびただしい軍勢が滅ぼされることに関するエゼキエルの記述を読んで,ぞっとする必要がないのはなぜですか。
24 多数の人間がそのように滅ぼされるのを考えると,ぞっとしますか。とかくそのように感ずる人は,次のように自問するのがよいでしょう。わたしは第1次および第2次世界大戦に対してそのような反応を示しただろうか。それとも,エホバの正しさを立証するために戦われたのでもなければ,地を清めて義の宿る所にするものともならなかった,そうした血なまぐさい戦争を,わたしは積極的に,あるいは暗黙のうちに支持しなかっただろうか。わたしたちが銘記しなければならないのは,エホバはこの戦いによって地をご自分の宇宙主権のもとに完全に引き戻し,悪を除いて,二度と再び悪が人類を支配できないようにするということです。神を憎む者たちが滅ぼされるのです。もしわたしたちがほんとうに神を愛するなら,わたしたちは神の側に,また神の霊的なイスラエルの側に立場を取るはずです。そうすれば,わたしたちは,エホバが次にエゼキエルに言われたことを享受できるでしょう。
25-27 神の民を思いのままに迫害できると考えた諸国民は,何を見過ごしてきましたか。
25 『我わが栄光を国々の民にしめさん 国々の民みな我がおこなう審判を見わがかれらの上に加うる手を見るべし この日より後イスラエルの家われエホバのおのれの神なることを知らん また国々の民イスラエルの家の捕えうつされしはその悪によりしなるを知るべし 彼らわれに背きたるによりて我わが面を彼らに隠し彼らをその敵の手にわたしたれば皆剣に倒れたり 我かれらの汚れと咎とにしたがいて彼らをあつかい わが面を彼らに隠せり』― エゼキエル 39:21-24。
26 こうしてエホバは,諸国民が一見なんら罰を受けずに地上の神のしもべたちをあしらいえた時分に,諸国民がもたらした間違った印象を一掃されます。それら諸国民は,エホバがご自分の民を懲らしめ,訓練を受けさせておられたことに気づきませんでした。諸国民は,神がご自分の契約の民に対して厳しく対処されたのは,その民が諸国民の前で神のみ名を代表していたためであるという事実を認識しませんでした。また,エホバはご自分の民をそのあやまちのゆえに,しかもそれとは知らずに犯した間違いのゆえに懲らしめさせました。なぜなら,エホバは彼らを愛していましたし,また後日人びとに真の祝福をもたらすのに用いられる者となるよう彼らを取り扱っておられたからです。(ヘブル 12:7-11。創世 22:18)彼らは耳を傾ける人たちに王国の良いたよりを伝えただけでなく,清められた地を治める千年統治の期間中,イエス・キリストとの共同の王また祭司となるべく訓練されていたのです。―黙示 20:4,6。
27 神に敵して戦う者として描かれている者たちはまた,西暦1919年にエホバがご自分の民に対する懲らしめをついに終え,恵みのみ顔を彼らに向け,エゼキエルの預言の少し前の箇所で述べられているように,その民の霊的平和と安全を確立されたことをも見落としました。(エゼキエル 38:8,11)それどころか諸国民は,引き続き神の民を憎み,彼らを見下げてきました。そして,ついには,エホバの民を完全に滅ぼそうとするゴグの試みに加わって悲惨な結果に陥るのです。(マタイ 24:9)国々の民の中のごく少数の,心の正しい人たちだけが,神がその民と交渉を持っておられることを認め,その民と交わりました。ですから,神はこう仰せになります。
28,29 エホバは霊的なイスラエルとの交渉によって,ご自分の聖なるみ名に対する専心の献身をどのように示されましたか。
28 『我今ヤコブの捕われ人を帰しイスラエルの全家を憐れみ わが聖き名のために〔専心の献身を示す〕 彼らその地に安らかに住まいて誰もこれを恐れしむる者なきに至る時はその我にむかいてなしたるところのもろもろのもとれるわざのためにはずべし 我かれらを国々より導きかえり その敵の国々より集め彼らをもて我の聖き事を多くの国民にしめす時 彼らすなわち我エホバのおのれの神なるを知らん こは我かれらを国々に移し またその地にひき帰りて一人をもそこにのこさざればなり 我わが霊をイスラエルの家にそそぎたれば重ねてわが面を彼らに隠さじ』― エゼキエル 39:25-29〔新〕。
29 エホバが預言された事がらと調和して,霊的なイスラエルの成員は,神によって集められたことを喜びとしてきました。一致結束した彼らは,神のメシヤの王国の良いたよりを世界中で宣べ伝えられるようにすることができました。とくに,「キリスト教国」と呼ばれる国では,エホバという名を知らない人はほとんどいません。人びとは,エホバの証人がエホバのメシヤの王国を断固として支持し,世の争いや政治的派閥に関しては中立の立場を取ってきたことを知っています。
30 (イ)エホバはご自分の油そそがれた証人たちを清めることによって,諸国民の間にどんな結果をもたらしましたか。(ロ)霊的なイスラエルとその仲間は,どんな気持ち,またどんな見込みをいだいてゴグの攻撃を考慮しますか。
30 それらエホバの油そそがれた証人たちは神のみことばの原則にしたがって自らを清め,神の霊の実を生み出しながら,今や神の新秩序を目ざして生活しています。(ガラテヤ 5:22,23。エペソ 4:20-24)国々の民の中からは幾十万もの人びとが出てきて,それら証人たちの『霊的な楽園』の中に彼らとともに住むようになりました。それらの人たちは,ハルマゲドンの戦いでゴグが敗れるさいに生き残り,地上で永遠に生きる「大群衆」を構成します。(黙示 7:9-17。マタイ 25:31-40,46。ヨハネ 10:16)彼らは今,ゴグの攻撃に関する警告に注意を払い,エホバの勝利とそのみ名の立証を待ち望んでいます。そして,空気や水や食物の文字どおりの汚染から清められた,道徳的腐敗もない地上で生活できる前途に大きな期待を寄せています。というのは,王であり,牧者であられるイエス・キリストについて次のように書きしるされていることを,彼らは知っているからです。『[彼は]正義をもて貧しき者をさばき公平をもて国のうちの卑しき者のために断定をなし……正義はその腰の帯となり忠実はその身のおびとならん』― イザヤ 11:4,5。