14. 良い知らせを伝える活動をイエスが何よりも大切にしたのはどうしてですか。
14 この本のセクション2で考えたように,イエスは良い知らせを伝える点で素晴らしい手本を残しました。こう言っています。「私はほかの町にも神の王国の良い知らせを広めなければなりません。そのために遣わされたからです」。(ルカ 4:43)イエスがこの活動を何よりも大切にしたのは,主に神を愛していたからでした。でも,人を心から思いやり,神との絆を強められるように助けたいと思ったからでもありました。イエスはいろいろな方法で思いやりを示しましたが,一番大事だったのは,神を正しく知らず満たされない気持ちでいる人たちを助けることでした。では,イエスがそういう人たちのことをどう思っていたかが分かる出来事を2つ考えましょう。私たちもどういう気持ちで伝道すべきかが分かります。
15-16. どんな2つの出来事から,一般の人に対するイエスの見方が分かりますか。
15 イエスは2年ほど精力的に宣教を行った後,西暦31年にガリラヤの「全ての町や村を旅して回り」,より徹底的に伝道することにします。その時のことについて,マタイはこう書いています。「イエスは……群衆を見て,かわいそうに思った。羊飼いのいない羊のように痛めつけられ,放り出されていたからである」。(マタイ 9:35,36)イエスは一般の人たちに同情しました。その人たちが神のことをよく知らず,惨めな状態にあったからです。導いてくれるはずの宗教指導者たちからひどい扱いを受け,全く教えてもらっていませんでした。イエスは深い同情心から,人々に希望のメッセージを伝えるために奮闘しました。彼らは神の王国の良い知らせを何よりも必要としていたのです。
16 しばらくして,西暦32年の過ぎ越しが近づいた頃,同じようなことがありました。その時イエスと使徒たちは舟に乗り,ガリラヤ湖を渡って静かな場所で休もうとしていました。ところが,群衆が岸に沿って走り,舟より先に向こう岸に着いてしまいます。イエスはどうしたでしょうか。こう書かれています。「イエスは舟を下り,大勢の人を見て,かわいそうに思った。羊飼いのいない羊のようだったからである。そして,多くのことを教え始めた」。(マルコ 6:31-34)この時も,イエスは神をよく知らない人たちの惨めな状態を見て「かわいそうに思」いました。彼らはいわば「羊飼いのいない羊」のようにおなかをすかせ,さまよっていたのです。イエスがその人たちに伝道したのは,単なる義務感からではなく,その人たちのことを思いやったからです。
17-18. (ア)私たちが伝道を大切にするのはどうしてですか。(イ)どうすれば人への思いやりを深めることができますか。
17 イエスの弟子である私たちが伝道を大切にするのはどうしてでしょうか。この本の第9章で考えたように,私たちは伝道して人々を弟子とする任務を与えられています。(マタイ 28:19,20。コリント第一 9:16)とはいえ,単なる義務感から伝道するのではありません。何よりも,エホバを愛しているので,エホバの王国の良い知らせを伝えます。さらに,エホバを知らない人たちへの思いやりから伝道します。(マルコ 12:28-31)では,どうすれば人への思いやりを深めることができるでしょうか。
18 エホバを知らない人たちに対して,イエスと同じ見方をする必要があります。「羊飼いのいない羊のように痛めつけられ,放り出されて」いる人たちと見るのです。迷子の子羊を見つけたところを想像してみてください。牧草地や水場に連れていってくれる羊飼いがいないので,その子羊はおなかをすかせていて,喉も渇いています。かわいそうに思うのではないでしょうか。何とかして食べ物や水を与えようとすることでしょう。まだ良い知らせを聞いたことがない多くの人は,この子羊のようです。頼りになる牧者がいないので,心が飢え渇いていて,将来に希望を持てないでいます。私たちは,そういう人たちが必要としているものを持っています。聖書から得られる,心を養う食物と,心に染みる真理の水です。(イザヤ 55:1,2)真理を知らずにいわば迷子になっている人たちのことを考えると,私たちはかわいそうに思います。イエスのようにそういう人たちへの深い思いやりがあれば,王国の希望を伝えるためにできる限りのことをせずにはいられなくなります。
19. 聖書を学んでいる人が伝道に参加する資格を満たしているなら,伝道者になるようどのように励ませますか。
19 他の人がイエスの手本に倣えるよう,どのように助けられるでしょうか。伝道に参加するよう,聖書を学んでいる人やしばらく伝道をしていない仲間を励ましたい場合のことを考えてみましょう。ポイントは,行動したいという気持ちを起こさせることです。イエスは人々のことを「かわいそうに思った」ので,進んで教えました。(マルコ 6:34)それで,イエスのように良い知らせを伝えたいと思ってもらうには,人への思いやりを深められるように助けることが大切です。こんなふうに尋ねてみることもできます。「神の王国について知ることができて,どんなことが良かったと思いますか。まだ王国について知らない人たちにとって,良い知らせを聞くことはどれほど大切だと思いますか。どうしたらそういう人たちの助けになれると思いますか」。もちろん,私たちが宣教を行う主な理由は,神を愛していて,神に仕えたいと思っているからです。
20. (ア)イエスの弟子になるにはどんなことが必要ですか。(イ)次の章ではどんなことを考えますか。
20 イエスの弟子になるには,単にイエスの言動をまねればよいというわけではありません。イエスと同じ「考え方」ができるようになる必要があります。(フィリピ 2:5)イエスがどんな思いで行動したかが聖書に書かれているおかげで,私たちは「キリストの考え」を知ることができます。それによって,イエスのように人の気持ちに寄り添い,心からの思いやりを示せるようになります。(コリント第一 2:16)次の章では,イエスが特に弟子たちにどのように愛を表したかを考えます。