正典(聖書正典)
「聖書正典」という表現は,聖なる力の導きによって記された真正な聖典として受け入れられている書の集まりを指す。そうした書の一覧を「正典目録」と呼ぶ。
正典を意味する「カノン」という語はヘブライ語のカーネ(アシ)に由来する。アシの茎は定規や測定の道具として使われた。(エゼ 40:5)確かに,聖書の目録つまり聖書正典を「物差し」として,信仰,教義,振る舞いを判断できる。
ヘブライ語聖書の正典は紀元前5世紀末までに確立された。ユダヤ人の伝承によれば,熟練した書記で聖書筆者のエズラがその仕事を始め,ネヘミヤが完成させた。(エズ 7:6,脚注)ギリシャ語聖書は,キリストの弟子たちが聖なる力による特別な能力を授けられている間に書き終えられた。(ヨハ 14:26。啓 1:1)「神からの言葉を見分ける能力」を授けられたクリスチャンもいた。(コ一 12:10)それで,いわゆる教会会議にかけることなく,会衆の受け取ったどの手紙が神の聖なる力によるものかを判断できた。最後の使徒ヨハネが死ぬと,神の聖なる力を受けて聖書を記す人たちはいなくなった。それで,「啓示」の書,ヨハネの福音書,ヨハネの3通の手紙をもって聖書正典は完結した。それ以降に聖なる力に導かれずに著述家たちが述べた証言は,聖書正典を確認する点では価値があるが,聖書正典を導き,認定したのは神の聖なる力だった。