世界展望
莫大な新負債額
◆ 米国の1968年から1974年の期間は“負債経済”であると言われてきた。この時期にはあらゆる種類(政府,法人,個人)の負債の“塔”が2兆5,000億㌦(約500兆円)という記録的な高さに達した。「この塔はかろうじて倒壊を免れた」とビジネス・ウィーク誌は述べている。その後,ここ二,三年の“繁栄”によって過度の借金に歯止めがかかり,経済崩壊が広まる危険も避けられたと考える人がいる。しかし同誌は続けてこう述べている。「これほど真実とかけ離れた話はない。1975年の後半から,米国は新たに負債経済に陥った。その信用貸しの増え方は,1970年代初期の借金騒動が取るに足らなく見えるほど気違いじみた異常なものである」。負債額が今や4兆㌦(約800兆円)に上ったため,経済界は憂慮の色を濃くしている。ある経済学者は,「借金が減少するのは,経済活動が崩壊する時,景気後退ないしは不景気の時だけである」と指摘している。
40億人を突破
◆ 国連の概算によれば,1977年に世界人口は42億人に達した。現在の増加率は1.9%であるが,これは1963年から1972年までの2%という数字よりやや低いものの,約35年から40年で二倍の人口にふくれ上がる程の増加率である。国連は,西暦2000年には少なく見積もっても総計約60億人になるものと推定している。しかしこの数字を超えると考えられるのは,15歳以下の若い人々が多くの国々ではその大部分を,ある国では四割以上を占めているからである。そしてその年代の人たちは今ちょうど子供を産む年齢に達しつつある。
波の力
◆ 英国政府は,約7,200㌔に及ぶ海岸線を利用し,石炭や石油が尽きた場合のエネルギー源として海洋を活用する方法を研究している。スコットランド北西部とイングランド南西部の海岸や絶壁には,毎日北大西洋からの波が打ち寄せている。北海からの波はブリテン島の東海岸にやってくる。これらの波は莫大な量のエネルギーを産み出す。海岸に965㌔の長さの“エネルギー・マシーン”を据え付ければ,英国における現在の電気需要量の半分をまかなえると言われている。大きないかだをつなぎ合わせ,波の動きで上下に揺れさせるという案もある。その動きが水撃ポンプを働かせ,そのポンプが今度は交流発動機を動かすのである。そして海底電線で陸地へ送電される。日本にはすでにこれと同じ方法で発電する,実験的な実動模型がある。
ギリシャの人権会議
◆ 去年の秋,アテネで二日間にわたる国際人権会議が開かれた。この会議で新しかったのは何だろうか。アテネのデーリー・ポスト紙は「このような会議がギリシャで開かれたのは,これが最初である」と述べている。これまでギリシャは人権を侵害したとして他の国々からの批判の的になっていた。その侵害の中には,軍事的な中立ゆえにエホバの証人たちに繰り返し実刑を課したことも含まれる。ところがこの人権のはなはだしい侵害を排除するための立法措置がとられたにもかかわらず,地方の役人がそれに従わないという場合もあったことが報告されている。
女児がコブラをかむ
◆ インド,ニューデリーのキャラバン誌は,二歳の女の子とおそろしいコブラの珍しい出会いを伝えている。女の子は自宅の中庭で遊んでいてコブラをみつけ,無邪気にもそれを口の中に入れようとしたが,コブラが動いたので,蛇を強くかんでしまったのである。あわてた両親は娘の手からコブラをもぎ取り,その子を病院へかつぎこんだ。子供は「強健で元気旺盛」だったが,コブラはかまれて死んでいた。
古代アフリカ人の工業技術
◆ 人類学者たちは,タンザニアのハヤ族が,2,000年も昔に炭素鋼の製造に成功していたことを発見した。タイム誌によれば「この複雑な工業技術の発展が再度見られたのは,19世紀もほぼ終わりのころ,ドイツ生まれの冶金学者,カール・ウィルヘルム・シーメンスが……純度の高い最初の炭素鋼を生産した時からであった」。人類学者はハヤ族の人々が約50年前,ヨーロッパ製の安い鋼製の道具が手に入るようになった時には,すでに鋼作りをやめてしまっていたことも突き止めた。しかしその部族の非常に年老いた人はまだ,研究者たちのために鉱さいと泥で実際に使える炉を作ることができた。2,000年も前のものであるほぼ同型の炉13基の遺跡が,ビクトリア湖沿岸の洞窟の中で発見された。科学者たちはこの発見によって,「複雑な工業技術はアフリカではなく,ヨーロッパで発達したという学者や一般人の意見がくつがえされることになるだろう」と述べている。
戦争の“演習”?
◆ 北大西洋条約機構(NATO)は昨年西ドイツで“戦争演習”を行なったが,それは,少なくとも13人の人にとって死を意味するものとなった。「米国の一パイロットはヘリコプターが墜落して死亡。別の米兵は軍用トラックと乗用車の衝突で死亡。ドイツ兵四人,カナダ兵一人,それに英国の兵隊一人も,その模擬戦で命を落とした」とニュースデー紙は伝えている。
子宮頸部ガンの“原因”
◆ 英国の医学研究者たちは,乱れた性生活を送る婦人が処女や一夫一婦を守る婦人と比べてはるかに子宮頸部ガンにかかりやすい原因を発見した。シェフィールド大学のアルバート・シンガー博士とオーストラリアのそのチームは,発ガン性物質がある種の男子の精液によって運ばれると説明している。その物質とは,子宮頸管にとって有害とされるヒストンと呼ばれるアルカリ性蛋白質である。ロンドン・デーリー・メール紙は「シンガー博士の研究で,女性が何人かの男性と性関係を持つようになると,このヒストンを多く持った男性に出合う危険も高まることが分かった」と報じている。
出席率のよいのはどこか
◆ マッコールズ誌は「6万人の女性は宗教と道徳をどう見るか」と題する記事の中で,最近行なった調査を報告している。その調査で女性たちは,あなたは週末ばかりでなく週中にも教会の集会に出席しますか,という質問をされた。その調査によると,「たいてい出席している」人々は「エホバの証人(91%),モルモン教徒(52%),バプテスト派(48%)」だった。その記事はまた,「逆の側からの調査では,ユニテリアン万人救済派の59%,ユダヤ教の36%,クリスチャンサイエンティストの29%,そして監督教会派の26%は『実質的に全く』教会に行っていないと言った」と報告している。
大幅な寿命の延び
◆ ちょうど30年前,日本人の平均寿命は50歳だったが,今では他のどの国民よりも長生きしている。日本人の男子は平均72.69歳,女子は77.9歳まで生きられると見てよい。さまざまな国のうち,日本人の平均寿命の数字に近いのは,スウェーデンの男子(72.12歳),ノルウェーの女子(77.83歳)であると伝えられている。
黒人と白人の双子
◆ 西ドイツで双子の子を持つ母親が最近訴訟を起こし,その双子の父とされる二人の男 ― 一人は白人,もう一人は黒人 ― に子供の養育費を請求した。この二人の子供は確かに人種が異なっており,専門医も,責任を問われている二人の男から双子が生まれる可能性は十分にあると証言した。さらに,「卵子は,この女性と二,三時間以内に性関係を持ったと思われる二人の異なる男性の精子によって受精したものだろう」と語った。ところがこの婦人は,それ以前にも幾人かの他の男性と関係を持っていたことが明らかになって,訴訟に敗れた。
水泳用プールの危険
◆ 米国の消費者製品安全委員会による最近の調査は,水泳用プールで起きる大けがの大半は家庭やアパートのプールか,モーテルやホテルのプールで起きていることを明らかにした。多くの場合水の深さを示す目印がなく,水深1.2㍍以下のところで飛び込むとけがの多いことが明らかにされた。
無料で空気を入れる
◆ 米国インディアナ州の一商社は,ガソリンスタンドの経営者がタイヤをふくらませるのにエアーホースを使った人から25セント(約50円)の代金を請求する装置を市場に出した。しかし,ニューヨーク州のヘムステッドでは市議会が全員一致で反対しているため,500か所にあるガソリンスタンドで無料で空気を入れられるようになりそうだ。
食品の摂取量
◆ 公益科学センターの報告によると,米国民は以前ほどキャンディーやバターを食べなくなっているが,精糖と脂肪の摂取量は増加している。また,平均的な米国人は1945年には卵を403個食べていたが,1976年にはその数は276個に減っていた。
自動車の逆転
◆ 米国の自動車製造業者は,長年の間自国の“ガソリンを食う”大型車の売り上げが安い輸入車に押され気味で頭を悩ませてきた。しかし現在,事情は一転した。アメリカのドルの価値が暴落した国で,米国製の自動車は安価な輸入品となっている。ミュンヘンの一自動車販売店は,「私はアメリカの車を,これに匹敵するヨーロッパの自動車より約1万5,000マルク(約160万円)も安く売ることができる」と語り,ミュンヘン市のアーベントツァイツンク紙は「今や米国製の車を運転するのが“はやり”になっている」と述べている。西ドイツでは,米国の一自動車メーカーの1978年の売り上げが1977年の287%に上昇した。
“サタンの原爆”
◆ 新しくPCPという麻薬が流行しており,使用者はこれを“天使の粉末”と名付けている。しかし警察および麻薬取締官たちはこれを“サタンの原爆”,麻薬における“悪魔的な新しい次元”と呼んでいる。ロサンゼルス麻薬分室の一職員は次のように語っている。この薬を使う人々は「警官のピストルの銃口めがけて前進したり,燃えさかる家の中に入って行こうとしたり,空を飛べると思い込んで超高層ビルから飛ぼうとしたりする。この麻薬の影響を受けた14歳の少女を取り押さえるのに八人の職員が必要だった。……PCPを飲んで幻覚を見ている時は,普通の体格の男でさえ鋼鉄の手錠を引きちぎってしまう」。トゥー・ザ・ポイント・インターナショナル誌は幾つかの“ぞっとする話”を伝えている。例えば,数時間病院でおとなしくしていた人は突如飛び上がってある少女の鼻をかみ切り,ある母親は自分の赤ん坊を沸騰する湯の中に入れた。またある若者はテレビを見ていた両親を射殺し,別の男は自分の母親を犯そうとした。
妊娠期間中の水泳
◆ 産科医室岡一氏は,出産を容易にし,日ごろ感ずる疲れを除くため,妊婦は軽い水泳をすべきであると述べている。同氏は海女たちのお産が軽いことに注目し,この問題を調査した。室岡氏は50人の妊婦に一週間に三回,45分ずつの水泳の練習をさせた。母親と胎児を観察した結果,この練習後も何ら異常は見られず,その後に行なわれた婦人たちの出産のほとんどは無痛分娩とも言えるものだった。