神の目的とエホバの証者(最終回)
「『あなたがたは私の証者です』とエホバは言われる。」― イザヤ 43:10,新世訳
神の御国の日
さて大会も終りに近づきましたが,前にお話した通り,プログラムは最終日の日曜日,神の御国の日に最高潮に達するように組まれていました。その期待ははずれませんでした。
天にとっても地にとっても最終日の日曜日午後は楽しい時であった。ぼう大な聴衆に向かってひと時に一人の代弁者により神の国が宣べられたことは,天のおおいなる王エホバ神と支配している御子イエス・キリスト,天使たちにとり大きな喜びであったに相違ない。会場にあてられた二つのスタジアムを埋めつくした25万人に余る人々,正確には25万3922人は天から注目されたことであろう。ヤンキースタジアムに設けられた演壇の背後にあたる外野には何千人が列をなし,第2会場の天幕も満員となり,スタジアムと天幕の外の歩道も人で埋まった。何週間にもわたって広く宣伝された講演の題は,「神の御国は支配す ― 世の終りは近いか」である。協会の会長はエホバの代弁者として力強く語り,聖書のことばと1914年以来成就している預言から,キリストによる神の国が1914年以来天で支配していることを証明した。この事からわかる通り,政治,商業,宗教を問わずこの世の終りは近い。ハルマゲンにおける全き終りの後に空白が生ずることはない。神の新しい世,正義の住む永遠の世は,ハルマゲンの後,天と地に栄光をもたらし,神のみ心は天に行なわれる通り,楽園の地にも行なわれる。
これは確かにこの大ぜいの聴衆を歓喜させずにはおかなかった。聴衆の拍手は御国の音信に対して与えられたものであった。講演の終了後,人々は講演の全文をのせた冊子2冊を無料で受け取った。金曜日午後の聴衆の大きさから判断して,いま支配している神の国の喜ばしい音信を聞くためにやって来た一般の人々は約6万人と思われる。a
この6万人の多くは,休けいの後行なわれた会長の閉会の言葉を聞くようにとのすすめに応じました。最後のプログラムを聞いた人は21万778人で,これは大会を通じて2番目に大きな聴衆でした。閉会の言葉を聞いた人々は,たしかに居残ったかいがありました。
この御国の音信を伝道したいと望む人々は大ぜいいる。4月だけをとって見ても,78万7967人の奉仕者がいた。これは昨年の伝道最高数にくらべて7万1066人の増加にあたる。これらの伝道者は54万6968の聖書研究を毎週,司会している。昨年の平均は41万3049であった。1年前にくらべると,毎週司会されている聖書研究の数は13万3000も多い。よいわざに励みつづけよ! そうすれば来る1年間に7万1000人以上の伝道者が制度の中にはいってくるであろう……
我々の責任は何か。〔1958年〕4月の記念式には115万9212人が出席した。これは前年よりも8万4049人多い。他の羊は集められている。記念式に出席した115万9212人と4月に野外宣教に携わった78万7967人との開きは大きく,従って増加の可能性は大きい。少なくとも記念式に出席するだけの興味を示した人は37万人に上るわけで,やがてこれらの人々も伝道者となるであろう。しかし37万人の増加でとどまるわけではない。現在50万以上の聖書研究が司会されており,エホバの証者は増加している。エホバの証者は全地の国々に対してしるしであり,不思議である。今後ともそうであるように努めようではないか。
エホバの証者の新世社会は急速に成長しているが,残れる者は減少している。1957年には1万5628人が象徴物に与ったが,今年,1958年には1万5010人がこれに与り,618人の減少を示した。しかし大きなわざの進められているのを見る残れる者の喜びは大きい。b
会長は大会中に発表された数々のすばらしい出版物のことを次に語り,次のように問いました。
次に発表するものと言えば,いまその事について少しお話しましょう。ものみの塔聖書冊子協会では,コロンビヤハイツ124所在の現在のベテルから道を隔てたところに新しい建物の建築を計画しています。案内係は通路から各段にいる大人の人数を数えてその数だけ絵ハガキを渡して下さい。皆さんは絵ハガキを手にしながら話を聞いて下さい。この絵ハガキは皆さんにさし上げます。
この新しい建物はどうして必要になりましたか。答えは簡単です。皆さんがご自分のまわりを見回せば,その理由がおわかりになるでしょう。この組織は成長しており,ベテルは手狭になりました。ベテルの要員の宿舎となる建物が必要です。ベテルの要員は全世界であらゆることばを使う皆さんの必要をみたすために働きます。もちろんこの建物は少なくとも向う1年間には完成しません。現在その敷地にあるアパートに住む人々は1959年1月1日までに立ち退き,エホバの過分のご親切によってそれから建物のとりこわしと12階建の新しい建物の建築が始められます。
ご存知のように,協会のひとつの目的は奉仕者を訓練することです。そしてこの建物はこのような大がかりな訓練のためにも使われます。エホバの導きと聖霊の導きとによって教育計画は拡大されることになり,協会は世界各地から奉仕者をベテルに呼んで10ヵ月の訓練を与えることになりました。この制度は発展しています。世界各地においてわざを監督する奉仕者が更に必要であり,協会はブルックリンにおいてこのような奉仕者の訓練を計画しています。
このため教室も準備され,教授の任にあたる人々も任命されるはずです。協会のニューヨーク法人の定款は,ものみの塔協会が宣教のわざのために奉仕を訓練することを定めており,全世界に御国の福音を伝道する大きな宗教活動に人々を訓練することを,私たちは願っています。
この新しい訓練課程が発足しても,ニューヨーク州サウスランシングのギレアデ学校はひきつづき運営されます。ただしこれは拡張されるはずで,エホバのみ心ならば,1961年までにカナダ,トロントの支部,英国ロンドンの新しい建物,ウエスバーデン,パリ ― その他各国の支部においてギレアデと同様の学校を開くことを,協会は希望しています。
これらの学校においてまず地域,巡回の僕がその必要とする訓練を受け,次に会衆の僕が訓練を受けます。その期間は長いものではなく,2週間から1ヵ月です。それで勤め先を1ヵ月休める人々は(巡回および地域の僕以外の人),監督を訓練するこの学校にはいれるでしょう。
教育のわざは後退することなく,前進をつづけています。そのことはこの大会でも如実に示されました。今度,姉妹を訓練することになった会衆の神権宣教学校は,教育の面で大きな前進の歩を進めるでしょう。読み書きを教える冊子も大会で発表されました。私たちは理解の程度を高め,みことばに表わされたエホバのお考えを更に深く知り,そのお目的を理解したいと思います。それで何年にもわたって御国の福音を伝道する大きなわざを続行することが神のみ心ならば,協会は全世界の主要な支部において長期にわたり,監督の訓練を続けることを希望しています。
1961年度の計画の詳細は追って発表されます。しかしいま皆さんにお伝えしたいのは,エホバのことばとお目的の理解を深めるため,協会が前途を見て遠大な計画を立てつつある事です。毎年7万人の人々が組織に加えられている現在,私たちの責任は大きなものになっています。教える者が必要です。真理を理解している人,そして他の人を助けて理解を与えることのできる人が必要です。このような教える人の一人になることをお望みですか。c
トム: 私たちも是非そうなりたいと思います。過去16週間に見たり聞いたりしたことから,神のみ心を行なう道はただひとつであることを確信しました。この間からロイスと二人で話していたのですが,私たちは良いたよりの伝道に参加し,励みたいと決意しています。あなたとマリアさんの援助をお願いします。
ジョン: 喜んでご援助しましょう。今はちゅうちょしている時ではありません。1958年夏の心を躍らせるこれらの出来事も神の御心国際大会における協会会長の閉会の言葉をもって終了し,新しいプログラムのあるものは早速,実施され始めました。1958年11月25日,ベテルの新館の建つ場所にある古い建物のとりこわし契約が調印され,12月8日にとりこわしが始まりました。1959年3月25日,新しいベテルの設計図が認可されて建築許可もおりました。4月7日にとりこわしが完了し,4月16日にはジーゼルエンジン・シャベルが据えつけられ,基礎工事が始まったのです。
協会は建築費の面で兄弟たちが助力する機会を設けました。寄付をつのったのではなく,年3分の利子,100ドル単位で協会に融資する人々に約束手形を発行することにしたのです。アメリカのエホバの証者に宛てられた1959年4月1日付の協会の手紙の一部を読んでみましょう,
皆さんの中にはご存知のかたも多いと思いますが,1926年と1946年,また1955年に建築された新しい建物と付帯設備の建設費は,協会がエホバの民から借り入れた資金によってまかなわれました。この借入金はすでに返済されています。いま1959年の増築を支障なく終らせるため,エホバの証者は資金の融資を望んでいると思います。この特権に与ることを望むエホバの証者はそうすることができます。協会は融資を望むエホバの証者から資金を借り入れ,1959年6月30日付で約束手形を発行します。
ニューヨーク法人ものみの塔聖書冊子協会の約束手形の金額は100ドル単位とします。
1959年2月21日,協会の会長は空路アフリカに向ってニューヨークをたち,3ヵ月半にわたる協会の支部および宣教者の家の視察旅行に出ました。この旅行中,会長は会衆の僕を訓練する新しい学校を開設するアフリカおよびヨーロッパの大きな支部全部を視察しました。
ヤンキースタジアムにおける発表直後から,この学校で使う教課を編む仕事が始められました。これは御国宣教学校と呼ばれ,24日間にわたって96回の授業と20回の講義が行なわれます。課目は御国の教え,野外宣教,話し方および監督の四つです。
トム: 非常にすぐれた実用的なカリキュラムのようですね。最初のクラスが始まったのは何時でしたか。
ジョン: 最初のクラスにはいったのは,ギレアデを卒業していないアメリカの巡回の僕とその妻25人でした。学校は1959年3月9日,ギレアデにおいて始まり,4月3日に終了しました。第2番目のクラスは4月13日に始まり,5月9日に終っています。
ロイス: 心をふるい立たせる出来事が進んでいるのを知ると,私たちも早く加わりたい気持ちになります。今まで無為に過してきたような気がします。神の御心国際大会に出席していたら本当によかったのに ―。
ジョン: それはもう不可能ですが,それでも大会を経験し,そのおもな出来事をありのままに見られます。
ロイス: それはどうしてですか。
ジョン: 1959年5月の「御国奉仕」のこのところをごらん下さい。
「エホバの証者の神の御心国際大会」と題する新しい映画を発表するのは協会の喜びです。1959年5月2日以降,この映画はすべての巡回大会において土曜日晩に上映され,そのあと40分にわたる特別なプログラムがあります。
土曜日の晩に新しい映画を上映するため,いままで兄弟たちに役立ってきた巡回区活動の集会 ― 今回は家庭聖書研究での教え方をとりあげます ― は,金曜日の晩,奉仕会と学校に代って行なわれます。
3日間の巡回大会にはじめから終りまで出席することを計画して下さい。また新しい伝道者,善意者を励まして一緒に出席して下さい。d
この映画はカラーで1時間15分,解説がついています。是非ごらんになって下さい。
ロイス: 是非見たいと思います。今まで多くの時間をついやして新世社会の成長のありさまを目に見えるように説明して下さったことを,本当に感謝しています。世界各地の兄弟が大会に集まった様子を見られるならば,どんなことがあってもその機会を逃したくありません。私たちの巡回大会は何時ですか。
ジョン: この次の週末です。私とマリヤは喜んでお二人をお連れしましょう。いままで一緒に聖書を勉強してきた若いご夫婦も出席するはずです。そのかたたちにお引き合わせしましょう。そのご夫婦もはじめて大会に出席するのです。
全世界で大ぜいの人がエホバの証者に加わり,御国奉仕の喜びを味わい始めています。新世社会は発展の一途をたどり,昨1958年の12月には80万5401人の伝道者最高数が報告されました。e 1959年3月23日の主の夕食には全世界で120万人以上が集まりました。しかしパンとぶどう酒の象徴物にあずかったのは1万4400人余りに過ぎません。f この数字から見て更に何千人の福音の伝道者が加えられるでしょう。1959年4月すなわち4ヵ月にわたる「ものみの塔」誌予約運動の最後の月には86万人以上が伝道に加わり,神の御国の支配していることと世の終りの近いことを宣べ伝えました。これらの人々は170ヵ国にいますが,驚くことにエホバの証者の7分の1すなわち14パーセントはいま鉄のカーテンの背後にいます。g
トム: ほんとうですか! ハルマゲドン前に何が起きようと,たしかにエホバの証者は神のお目的の中で確固とした地位を占めてきたわけですね。
ジョン: そうです。神の預言はエホバの証者が永遠にとどまり,更に奉仕の特権を享受することを保証しています。それはエホバの宇宙至上権を立証するものとなるでしょう。昼も夜も神に仕えるその決意と一致して1959年の聖句には黙示録 16章15節が選ばれました。これは栄光のイエス・キリストがハルマゲドンの戦いに来ることを警告し,エホバの霊的な官にいる追随者に語りかけたものです。「目をさまし着物を身に着けている者は,さいわいである」。それでエホバの証者は宣教に目ざめつづけ,キリストの来られる時,宣教の上着を永遠に保つにふさわしい者と裁かれることを望んでいます。
トム: 私もこのような宣教の「上着」を一刻も早く着けたいと思います。
ロイス: 私もトムと一緒に!
ジョン: それはたいした心意気ですね。しかしそのためには勉強と活動が必要です。
トム: 私もロイスもその事はよくわかっています。それでこれからあなたとアリアさんは毎週,宅にいらして下さるのですね。今度はエホバの証者の現代歴史を話して下さるだけでなく,私たち自身がエホバの証者になるのを助けて下さるためです。家庭聖書研究を始めて下さい。その時間をさいていただけますか。
ロイス: どうぞお願いします。
ジョン: それは私にとっても喜びです。来週のこの晩からさっそく始めましょう。家庭聖書研究で役立ってきた手引は,ものみの塔出版物のひとつ「神を真とすべし」です。26章あって,神のことば聖書の基礎的な教えを説明しています。
トム: 私とロイスの分をさっそく求めたいと思います。どうぞ持っていらして下さい。また予習しておくところを教えて下さい。準備しておきたいと思いますから。
マリア: 火曜日の晩もあいていますか。
トム: ええ,なぜですか。
マリア: 火曜日の晩に世界中のエホバの証者は奉仕中心地と呼ばれるところでグループの聖書研究を開いています。これはたいてい信者の家です。ご近所では私どもの宅で開かれていますから出席なさるのが便利です。12人ほど集まって1958年の国際大会で発表された本「み心が地に成るように」を勉強しています。また勉強の前1時間ほど,付近を伝道します。
ロイス: まあ,それは主人も私も知識を得ると同時に伝道を始めるのによい機会ですわ。
トム: ほんとうにそうです。また証者が御国会館で開いている集会にもぜひ出席したいと思います。私たちはエホバの設けられたすべてのものから益を受けなければなりません。それは私たちもまた神のお目的の中に位置を占め,あなたがたと共に何時までもエホバの証者として奉仕するためです。
[脚注]
a (ソ)1959年度年鑑,44,45頁。
b (ツ)「会長の閉会の言葉」の原稿。
c (ネ)「会長の閉会の言葉」の原稿
d (ナ)1959年5月,「御国奉仕」。
e (ラ)1959年ものみの塔,164頁。(英文)
f (ム)協会会長事務所報告,1959年3月。
g (ウ)協会長事務所の報告,1959年4月。