世界展望
身体障害にめげず業績をあげる
◆ 英国の物理学者で34歳になるケンブリッジ大学のスチーブン・ホーキングは身体障害にめげず,「ブラック・ホール」に関する新しい学説を最近,提出した。ブラック・ホールは核燃料を燃焼しつくして後に崩壊した星の残存物を指して普通用いられる用語である。ホーキングによれば,宇宙は原子の粒子の大きさにも満たないような「小さいブラック・ホール」によって事実上満たされている。これらの「ブラック・ホール」は宇宙原始の物質から形成されたという。「彼の学説におとらず顕著なのは,ホーキングが計算機を使わずに頭の中で数学的計算をすべてやってのけるという事実である」とニューズウィーク誌に述べられている。この若い物理学者は異型筋萎縮性脊髄側索硬化症として知られる神経の病気のために重い身体障害を負っていて,病状は悪化している。彼は話をすることが困難で,書くこともできず,車椅子から離れられないが,頭脳は依然きわめて鋭敏である。ニューズウィーク誌によれば,「ホーキングは今世紀の最も独創的な理論物理学者12人のひとりとして,一部の専門家からすでに評価されている」。
税金の負担
◆ フランスのパリにある経済協力開発機構は,各国における税負担を調査した結果を最近,発表した。税金が最も重い国はデンマークで,税金が国民総生産額(GNP)の46.7パーセントを上る。GNP1ドルあたりに税金の占める額をセントで表わした国別のリストは一部次のようである。デンマーク(46.7); ノルウェー(45.3); オランダ(45.2); スウェーデン(44.2); ルクセンブルク(40.8); オーストリア(38.1); ベルギー(38.1); ドイツ(37.6); フランス(37.5); フィンランド(36.3); 英国(35.6); カナダ(34.8); ニュージーランド(32.7); アイルランド(32.4); イタリア(31.9); 米国(28.9); オーストラリア(27.2)。
犬にも健康保険
◆ オーストラリア,シドニーの一保険会社は,メディペット ― 犬の健康保険を最近売り出した。飼い主は45(米国)ドル(約1万3,500円)の保険料で,犬の病気また事故の際に獣医への支払いをこの保険でまかなえる。また犬が人をかんだ場合にも保険による支払いができる。
高速道路での疲労と戦う
◆ カリフォルニア大学人間行動実験所の所長ローレンス・モアハウス博士は,車の運転に伴う疲労と戦う方法を提案している。同博士の勧めの中には,道路と計器盤を交互に見る,ハンドルを持つ手を変える,頭を左右に動かす,足の親指を動かすなどの運動が含まれている。
マラリアの危険
◆ マラリアは約60か国,およそ6億人は影響する重大な規模の病気である。アフリカ大陸だけでも毎年100万人の子供が,蚊の媒介するこの病気で死ぬと報告されている。マラリアの発生を抑えるひとつの方法は殺虫剤の大規模な使用である。しかし病気の媒介体である蚊のあるものは殺虫剤に対する抵抗力を持つようになっている。治療に使われる薬の中ではアモディアキンとクロロキンが最も効果的である。とはいえこの場合にもマラリア原虫の中には抵抗力を持つ変種が存在する。「約20年間の比較的に無活動な期間の後にマラリアは再びインドで大流行するきざしを見せている」と,トゥーザポイント・インターナショナルは伝えている。「世界保健機構(WHO)では,1980年までに1,200万人が蚊の媒介するこの病気にかかり,そのうち40万人が死亡するものと推定している。この事を考える時,同機構がいま発見に努めている,免疫を与える物質が早急に望まれる」。
“フリー・フロウ・システム”
◆ 米国の自動車組立て工場で流れ作業方式が採用されたのは1913年の昔であったが,本田技研工業では和光および熊本工場に新しい流れ作業方式を採り入れた。“フリー・フロウ・システム”と呼ばれるこの方式では,工員各自が足踏みペダルによって意のままにコンベヤーのベルトを止め,取りはずすことができる。「自分に課せられている作業に余分の時間を望むならば,ベルトを止め,エンジンを台から取りはずして手を加えることができる」とパレード誌は伝えている。新方式は製品の質と従業員の士気を向上させたと言われる。
自転車対自動車
◆ 「必要な輸送手段として自動車を使うのならば分かる」。フランス,ラ・ロシエル市のミシェル・クレポー市長はこう言明し,次の言葉をつけ加えた。「しかし社会的地位の象徴として車を使うのであれば,話は別である。それに車に乗ると卑劣になる手合いがいる」。数か月前に市長は市の購入した黄色の自転車250台を公衆の用に供することにした。市民は買物の時などに無料でそれを使うように勧められた。「良い考えには違いないけれど,自転車を見つけるのが大変だわ。人々は自転車を台なしにしてしまった」と,ある若い婦人は語っている。とは言え,大西洋岸のこの町では,自動車の騒音と排気ガスに対処するために自転車キャンペーンが推し進められている。
性病の新種がまんえん
◆ ペニシリンが全く効かない淋病の新種が色々な国から報告されている。その発生地はアジアおよびアフリカと考えられているが,今やカナダもこの病気の発生を報告した。すでに指摘されたことだが,トロントのスター紙はこう伝えている,「性病の治療にはふつうペニシリンが使われるが,この新種はペニシリンの中で繁殖さえすることが,研究者たちによって発見された」。
無痛で歯の治療
◆ むし歯の新しい治療法が米国マサチューセッツ州のタフツ大学歯学部で開発された。化学薬品をスプレーすることによって腐食部分が除去される。歯科医は針を使って化学薬品をむし歯の穴に注射するが,これによって腐食部分は何分もたたないうちに分解してしまう。薬の作用を確実にするため,あらかじめ歯を削ってむし歯の穴を十分に露出させることが必要な場合もある。その後は穴を適当な形にして充てんするだけなので,歯を削るのはごくわずかですむ。この方法はすでに人体実験が行なわれているが,一般に用いられるようになるのは何年も先のこととされている。
性的に虐待される子供
◆ ロサンゼルス警察の推定によると,性的に虐待される子供がロサンゼルスで毎年3万人に上っている。このうち14歳から17歳までの男の子約2万5,000人は,およそ1万5,000人の成年男子によって同性愛行為のために利用されている。これは家出した少年が金のためにこのような行為を許している場合が多い。警察の係官は次のように語っている。「これは当地で特に激しいとはいえ,ロサンゼルスだけの問題ではない。麻薬の濫用が広まるのと同様,これは伝染病のようなもので,米国中にひろがっている」。
栄養のとり過ぎという“病”
◆ 多くの国では,老衰を除くと栄養失調が最大の死因となっている。ところがワールドウォッチ研究所の研究者は次のように語った。「栄養のとり過ぎという現代病にかかっている人の数は,栄養失調に苦しむ人の数に近づきつつある」。食生活の豊富な人は多量の動物性脂肪,精製した食品と砂糖,加えて商業的に加工され,保存料を添加した食品をとっている。こうした食生活は十大死因のうちの六つと結びつけられてきた。この状態は米国で最も広く見られるが,西欧,日本,ソ連も同様になりつつある。
あなた専用のバス
◆ フランス北西部のアンジェル市では新奇なバス輸送方式が用いられている。これは定まった路線を走るデラックスな“ミニ”バスによって編成されており,この方式の加入者は使用の仕方によって一回8セントから25セントの乗車賃を支払い,年額4ドルの磁気カードを買うことになっている。このカードは路線沿いに何か所も設けられたシグナル・ボックスに挿入するもので,カードが差し込まれると,乗客の位置を示す信号が中央指令所に送られ,5分以内にバスが来て乗客を乗せる。バスの一部は20分間隔で定期的に運行され,残りは待機させられていて,定期バスから5分以上離れた地点から信号を送ると,待機バスの出庫が自動的に指令される。
義えん金は浪費されたか
◆ 1974年12月25日,竜巻の大被害を受けたオーストラリア,ダーウィン市のエラ・スタック市長が最近語ったところによると,被災者のために世界各地から寄せられた義えん金の大部分は浪費されてしまった。スタック博士はすでに解散した竜巻トレーシー救援基金の管理人代理を務めた人で,次のように語ったと伝えられている。「信託金1,000万ドルのうち850万ドルは直接の補助金として支出されたが,そのかなりの部分が浪費された。その多くは賭け事か,さもなければ飲食に費やされた」。
ブルーチーズは危険?
◆ 神経組織毒のひとつであるロークフォーティンが,ブルーチーズの七か国の製品中に発見された。カナダの医師二人が,フランスのロークフォート,英国のスティルトン,デンマーク,フィンランド,イタリア,ケベックおよび西ドイツのゴルゴンゾーラの中にこの物質を見つけた。米国化学学会では,この神経組織毒がハツカネズミに「けいれん性の発作」を起こさせることを報告している。「しかし」とサイエンス・ダイジェスト誌は述べている,「ブルーチーズを捨てる必要はない。医師によれば,2トンも食べるのでなければ,別に害はない」。
“ハンサム”な大仏
◆ 13㍍の「大仏が東京」乗蓮寺に最近,建立された。この大仏像は日本で三番目に大きいが,「寺では,この青銅の像が」日本一の奈良の大仏よりも「ハンサムであると自慢している」と読売新聞は伝えている。
生体リズムのうそ
◆ 肉体的,精神的,情緒的エネルギーのいわゆる「周期」つまり「生体リズム」は,人の作業能率に実際に影響するだろうか。ネブラスカ医科大学の臨床心理学者A・ジェイムス・フィクスは,大リーグの野球選手70人の記録を調べ,“好調”な日と“低調”な日を比較した。「好調な日の打率は平均して0.206であった」とニューヨーク・タイムズは伝えている。「低調な日の打率は0.250[21パーセント高い]であり,三つの周期すべてが中位である『トリプル・ゼロの日』の打率は0.276[34パーセント高い]であった」。
驚かされる象
◆ 最近アフリカ各地の象の数が減少していることについて驚きが表明されている。例えば,ウガンダのカバレガ国立公園では1973年に1万4,000頭の象が確認されたのに今では2,600頭に減っている。別の地域では1973年の2,700頭が現在ではわずか1,200頭になっている。象のいなくなった主要な理由のひとつは象牙の不法な売買である。しかしアフリカの全域が同じ影響を受けている訳ではない。タンザニアの5万4,400平方キロに及ぶ広大なセロウス鳥獣保護区には8万頭以上の象がいて密猟はほとんど,あるいは全くないことが最近の調査に示されている。